要求仕様書の文書構造を考慮した 品質特性の重要度取得法の提案と 支援ツールの実現 海尻海谷研究室 M2 谷川正明 目次 • • • • • 背景・目的 提案手法 分析法・支援ツール 実験 まとめ・展望 2 背景・目的 3 背景・目的 ソフトウェア品質特性と計測 • ソフトウェア開発において、その品質要求は明示的な 機能要求と同等に重要である • しかし品質とは明確に定義されていない場合や、いく つかの仕様文中に遍在する物が多く、取り扱いが困 難である • ISO9126を指針とした計測 ソフトウェアの品質を6つの特性、21の副特性に分類 4 背景・目的 ソフトウェア品質特性と計測 • 分析データ 「品質特性スペクトル」 • スペクトル 複雑な情報を何らかの成分に分解し、その成分ごとの大 小にしたがって並べたもの 5 背景・目的 品質分析手法 • 分析器の確立 • 既存の分析手法 TCM(単語-品質特性対応表)を用いた分析手法 TCMの利用により、エキスパートの負担軽減、分析時の データの再利用性向上 6 背景・目的 • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 7 背景・目的 • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 8 背景・目的 • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 9 背景・目的 • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 10 背景・目的 • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 11 背景・目的 • 既存の分析手法の問題点 現状では、ある特定の品質と関連付いた単語が仕様書内 で多数の要求文に出現する場合、その品質についてのス ペクトル値が異常に高くなる 要求仕様書に“セキュリティが最も重要である”と書かれて いても、他にセキュリティについての記述がなければ、 出現頻度が低いためセキュリティは大して重要ではないと 判断されてしまう 単語の出現頻度に依存 12 背景・目的 重要度となり得るスペクトルの取得を目指す • 重要度となり得るスペクトルを取得するため、既存の 分析手法を拡張した新たな手法を提案する 13 提案手法 14 提案手法 • 重要度となるスペクトルを取得するため、既存の分析 手法を拡張した新たな手法を提案 • 既存の分析手法は『Term DATA(単語)』ベースであ るが、それでは重要度を取得するには不十分だった ため、新たに『Chapter DATA(章・節)』を付加する 15 提案手法 • 要求文: 「すばやい検索を行えるものとする」・・・① ①は時間効率性の品質を保持するものとする・・・② 上記①のような要求文が存在したとき、①は本来 “検索機能全体に対する言及”である • 特定の範囲に言及する 16 提案手法 よって全ての検索機能に対する要求文は、②より時間効 率性を考慮する必要性があると考えられる つまり『検索機能』という章(または節や項)があれば、その 章に含まれる要求文は全て②より時間効率性の品質を保 持すべきであるというもの 要求仕様書 品質分配 目的の章 検索機能の章 時間効率性の品質 を保持すべき! セキュリティの章 17 提案手法 ①のような(特定の範囲に言及する特徴的)要求文を見つ け出し、その要求文の保有する品質を適切に分配する これにより品質の底上げを行い、単語の出現頻度ではな い意味的な品質(重要度)を取得する 特定品質に言及し、特定の範囲に言及する特徴的な要求 文を“特徴的要求文”とする 18 提案手法 • 多くの要求文の中から、どれが特徴的要求文かを どのように判断するか? 要求文に含まれる単語の出現頻度から判断 関連する品質が2つ以下 • 特徴的要求文が持つ特性を、どの(範囲に属す)要求 文に品質分配するのか? 特徴的要求文に含まれる単語と、一致する見出しタイトル である章や節を見つけ出し、そこに含まれる要求文に分配 19 提案手法 • 提案手法における分析手順 手順1:既存の分析手法にて要求仕様書を分析 手順2:各要求文のChapter DATAを取得 手順3:特徴的要求文の取得 手順4:品質分配 手順5:スペクトル値の算出 20 提案手法 • 提案手法を手作業にて行った結果は良好 エキスパートの考える重要度に近いスペクトルの取得成功 • しかし手作業で提案手法を行うのは時間がかかりす ぎてしまう 全体を再度見直す必要があるので時間がかかる • そこで支援ツールにて提案手法をサポート 提案手法を機械的に行い、重要度を取得可能とするツー ルの作成を行う 21 分析法・支援ツール 22 分析法・支援ツール • ツール概要 新手法を実行し、重要度の取得を可能とする • 既存の分析手法を実現する旧ツールの拡張機能として実現 • 提案手法の分析手順1~5の全てを実現 新手法における特徴的要求文と章・節との関連付け • 関連付けを全自動で行う『AUTO型』 • 関連付けをGUIベースで分析者が確認しながら行う『GUI型』 アウトプット • グラフ出力およびスペクトル値の確認 • Excelへのアウトプットを可能とする 23 分析法・支援ツール • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 手順1:既存の分析手法にて要求仕様書を分析 24 分析法・支援ツール • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 手順2:各要求文のChapter DATAを取得 25 分析法・支援ツール • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 検索機能 検索方法 手順2:各要求文のChapter DATAを取得 26 分析法・支援ツール • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 AUTO/GUI 手順3:特徴的要求文の取得 27 分析法・支援ツール • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 AUTO/GUI 手順4:品質分配 28 分析法・支援ツール • 要求文: 「正確かつセキュアに保有する個人情報を検索できるものとする」 手順5:スペクトル値の算出 29 分析法・支援ツール 画面例1 30 分析法・支援ツール • 新手法を実現し、重要度の取得が可能 画面例2 31 分析法・支援ツール • GUIによる特徴的要求及び関連付けの確認と選別が可能 画面例3 32 分析法・支援ツール • 旧ツールでは対応していなかったツールのみでのグラフ出力 およびスペクトル値の確認が可能 画面例4 33 分析手法・支援ツール • 旧ツールで対応していなかったExcelへのアウトプットが可能 画面例5 34 実験 35 実験 • 実験内容 エキスパートが考える重要度を既存の分析手法、提案手 法にて得られたスペクトルと比較を行う • 実験に使用する要求仕様書は2つ 重要度の上位5つの品質との比較を行う 支援ツールを用いた実験を行う 36 実験 • エキスパートの考える重要度(上位品質5つ) 順位 要求仕様書A 要求仕様書B 1 時間効率性 時間効率性 2 規格適合性 セキュリティ 3 セキュリティ 正確性 4 相互運用性 変更性 5 資源効率性 規格適合性 記述量が多いため重要と判断された品質や 時間効率性のように記述量が少ないにもかかわらず 重要と判断された品質も存在する 37 実験 • 要求仕様書Aについての各手法の結果 順位 重要度 既存の分析手法 提案手法 1 時間効率性 運用性 時間効率性 2 規格適合性 資源効率性 セキュリティ 3 セキュリティ 規格適合性 規格適合性 4 相互運用性 セキュリティ 相互運用性 5 資源効率性 理解性 運用性 重要度と比較して、3/5が一致するが、 重要度と比較して、4/5が一致する 最重要である時間効率性はランク外 さらに時間効率性を重要と判断 38 実験 0.3 0.25 0.2 既存の分析手法 0.15 提案手法 0.1 0.05 0 合 正 相 標 セ 成 障 回 理 習 運 時 資 解 変 安 試 環 設 規 置 • 要求仕様書Aに対する既存の分析手法と提案手法による各スペクトル 39 実験 • 要求仕様書Bについての各手法の結果 順位 重要度 既存の分析手法 提案手法 1 時間効率性 正確性 セキュリティ 2 セキュリティ 運用性 時間効率性 3 正確性 セキュリティ 規格適合性 4 変更性 資源効率性 相互運用性 5 規格適合性 変更性 正確性 重要度と比較して、3/5が一致するが、 重要度と比較して、4/5が一致する 最重要である時間効率性はランク外 さらに時間効率性を重要と判断 40 実験 0.35 0.3 0.25 0.2 既存の分析手法 提案手法 0.15 0.1 0.05 0 合 正 相 標 セ 成 障 回 理 習 運 時 資 解 変 安 試 環 設 規 置 • 要求仕様書Bに対する既存の分析手法と提案手法による各スペクトル 41 実験 • 考察 • 品質の重要度はエキスパートの考える様々な指針から成 り立っている 記述量 達成目的 文章 etc 42 実験 • 考察 既存の分析手法によるスペクトルは純粋に記述量から品 質の重要性を取得した言及度であるため、エキスパートの 考える重要度とある程度の類似性は示す しかし実験における時間効率性のように、記述量は少ない にもかかわらず重要と判断すべき品質が存在する場合、 適切な判断ができない 43 実験 • 考察 提案手法によるスペクトルは既存の分析手法を拡張した 手法であり、記述量+特徴的要求文の品質分配によるス ペクトル値の底上げにより文書構造を考慮した分析を行な っているため、エキスパートの考える重要度と高い類似性 を示した 実験における時間効率性のように、記述量は少ないにも かかわらず重要と判断すべき品質に対しても、適切な判断 が行われている 44 まとめ・展望 45 まとめ • 既存の分析手法にて適切に取得できない重要度を 取得する新たな手法を提案 文書構造を考慮した新たな手法:提案手法 • 実験による提案手法の有用性確認 重要度と高い類似性 既存の分析手法では取得できない“重要だが記述量の低 い品質”にも対応 2つの要求仕様書において提案手法の有用性を確認 46 展望 • 提案手法における特徴的要求文取得法の質向上 特徴的要求文の取得は現状単語の出現頻度を指針として 機械的に取得している 特徴的要求文の保有する品質が分配(底上げ)されること になるため、さらに適切な取得法の考案 • 提案手法における品質分配の質向上 品質分配は章や節のタイトルに特徴的要求文の保有する 単語が含まれるか否かを単純に判断しているのみである 機械的な品質分配を適切に行える分配法の考案 47 以上 • 御清聴ありがとうございました 48
© Copyright 2024 ExpyDoc