障害者権利条約

【初任者研修資料 ~2015.2.24 Tue.~】
権利擁護と虐待防止
渡島・檜山圏域障がい者総合相談支援センター めい
地域づくりコーディネーター 藤原 茂法
本日の内容
◆障害者権利条約とは
◆H27年4月 障害者差別解消法施行
◆障害者虐待防止法が施行され2年が経過
§障害者権利条約
《2006年(H18年)12月採択》
☆あらゆる障害者の尊厳と権利を保障するため
の人権条約である。
⇒生活の様々な場面において、障害のある人
の人権、あるいは尊厳を尊重するということが
国際条約(国際ルール)になる。
⇒障害のある人自身が策定経過に深く加わった
“Nothing About Us Without Us”
(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)
第1条から第50条で構成
権利条約の基本的考え方
障害のある人は「権利の主体」
⇔「権利の客体」
障害のある人は保護の対象というのは従来の
考え方。「措置制度」と呼ばれていた時代。
⇒行政が障害のある人の暮らしぶりや必要な
サービスを決める仕組み 「行政による保護」
§日本の動きとして
・2007年(H19)9月日本政府署名(存在を認めること)
⇒ 「署名」から批准まで時間を要した
・2013年(H25)2月国会で批准(内容に同意して仲間入りすること)を承認(141番目)
・2014年(H26)1月国連事務局で承認
・2014年(H26)2月発効
§法律上の権利条約の位置づけ
憲 法
障害者権利条約
障害者基本法
障害者総合支援法
などの各法律
条 例
国内法
である
障害者虐待防止法
障害者差別解消法も
千葉県・北海道・岩手県・熊本県
障がい者条例 市町村条例
• 日本は早い段階で条約に署名(存在を認めるこ
と)をしていたが、批准(内容に同意して仲間入り
すること)までには時間を要した
• これは、条約にふさわしい国内法制度の整備を優
先したため
• ⇒障害者基本法改正、障害者総合支援法の成立
など制度改革が行われてきた。
◆障害者虐待防止法も出来、虐待防止の取り組み
も進んでいる。
◆2012(平成24)年9月、内閣府の障害者施策委
員会のもとに差別禁止部会意見(「部会意見」)が
まとまりました。
2013(平成25)年6月、国会で
障害者差別解消法が成立しました。
§権利条約の主な条項
条項の名称
条文のポイント
第4条
一般的義務
条約における権利を実現するための立法措置や、公
的機関が条約に従って行動することなどを規定
第5条
平等及び無差別
法律上の平等性や差別の禁止の規定
第8条
意識の向上
障害者に対する誤った認識や無理解の解消を規定
第19条
自立した生活及び地域社会へ
包容
どこで誰と生活するかを選択する機会や、地域生活に
必要な住宅サービスの利用機会の保障などを規定
第20条
個人の移動
必要な時に、自ら選択する方法で、負担しやすい費用
で移動出来ることなどを規定
第24条
教育
障害者が住む地域で、合理的配慮が提供され、質の
高い初等・中等教育が受けられることなどを規定
第28条
相当な生活水準
清潔な水の利用や貧困から脱却、公営住宅の利用な
どを規定
第31条
統計及び資料の収集
障害者施策を立案するに適当な統計資料や研究資
料の収集などを規定
第35条
締結国による報告
条約の批准から2年以内、その後少なくとも4年ごとに
国連へ状況報告するなどを規定
◆「障害者の権利」とは、人として当たり前に生活する権利のことを指す。障害のない人であれば当たり前に認
められている権利、ということも出来る。いずれにしても、障害のある人だけを特別に優遇する意味での「権利」
でない、といことです。ただ当たり前を実現するためには、障害特性に応じた支援は不可欠です。
§障害者差別解消法って、どんな法律?
・この法律は26の本則の条文と附則から出き
ている。
①障害を理由に差別的な取り扱いや権利侵害
をしてはいけない。
②社会的障壁を取り除くための合理的な配慮
をすること
③国は差別や権利侵害を防止するための啓発
や知識を広めるための取り組みを行うこと
障害者差別解消法は
障害者基本法4条を具体化する法律
※障害者基本法は、障害者施策に関する方向性を定めた法律
⇒具体化するための法制度が必要 、それが障害者差別解消法
§障害者基本法第4条における障害者差別関連規定
条 文
趣 旨
第1項
何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の
権利利益を侵害する行為をしてはならない。
障害を理由と
する差別的取
り扱いの禁止
第2項
社会的障壁の除去はそれを必要としている障害者現存し、かつ、そ
の実態伴う負担が過重でない時は、それを怠ることによって前項の規
定に違反することとならないよう、その実施について必要克つ合理的
な配慮がなされなければならない。
障害のある人
に対する「合
理的配慮」の
提供
第3項
国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識
の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報収
集、整理及び提供を行うものとする。
差別の解消つ
ながるような
啓発や情報
収集
§障害者差別解消法における「差別」の類型
◆障害を理由とする差別的な取り扱い
①「見えない」「聞こえない」「歩けない」といった機能障がいを理由にして、区別(分ける
こと)や排除、制限をすること
(例1) それまで利用していたインターネットカフェが、その人に精神障がいがあるとわ
かった途端、店の利用を拒否した。
(例2) 聴覚障がいのある人が、一人で病院を受診したところ、「筆談のための時間が取
れない」との理由で、手話通訳の派遣の依頼もせずに受診を断られた。
② 車いすや補装具、盲導犬や介助者など、障がいに関連することを理由にして、区別
や排除、制限すること
(例) 盲導犬を連れた人が「動物は店には入れることができません」とレストランの入店を
拒否された。
ただし、上の①、②の行為が、だれがみても目的が正当でかつ、その扱いがやむ得ない
ときは、差別にはなりません。
◆合理的配慮を行わないこと(合理的配慮の不提供)
障がいのある人とない人の平等な機会を確保するために、障がいの状態や性別、年齢
などを考慮した変更や調整、サービスを提供することを「合理的配慮」と言い、それをし
ないと差別になります。
ただし、その事業者などにとって大きすぎるお金がかかる場合などは合理的配慮を行
わなくても差別になりません。「変更や調整」とは、
★時間や順番、ルールなどを変えること
(例1) 精神障がいがある職員の勤務時間を変更し、ラッ シュ時
に満員電車を利用せずに通勤出来るように対応する。
(例2) 知的障害がある人に対して、ルビをふったりわかりやすい
言葉で書いた資料を提供する。
★設備や施設などの形を変えること
(例) 建物の入口の段差を解消するために、スロープを設置するな
ど、車いす利用者が容易に建物に入ることが出来るように対
応する。
★補助器具やサービスを提供すること
(例1) 視覚障がいがある職員が仕事で使うパソコンに音声読み上
げソフトを導入し、パソコンを使って仕事が出来るようにする。
(例2) 発達障がいのために、他人の視線などをさえぎる空間を 用
意する。
補足 合理的配慮の不提供
※法規定のポイント
①社会的な障壁の除去の実施について必要か
つ合理的な配慮をしないこと
②障害のある方から申し出があること
③実施主体の負担が過重でないこと
§主体による差別解消対応の違い
主 体
行政機関
(国、地方公共団体など)
民間事業者
障害を理由とする差別
的な取り扱い
禁止
合理的配慮の
提供
負担が過重
でない限り提供
できるだけ提供(努力義務)
障害者差別解消法に対する期待 そして不安
§差別解消法に期待すること(主な事項の抜粋)
期待するすること
背景にある出来事など
他の子どもと同じように地域の保育園
や学校へ通えるようになって欲しい
・障害を理由に保育園の入園、学校入学を断られた
・教員の無理解から必要な配慮が得られず、退学した
行政機関における差別的扱いがなく
なって欲しい
・知的障害であることを理由に公営住宅の単身入居を拒否された
・成人式の案内が届かなかった
・グループホームの建設に際して地元説明会を強要された
誰でも利用しやすい公共機関になって
欲しい
・自閉症特有の独語が迷惑だから降りてくれと言われた
・路線バスの運転手に「本当に一人で乗れるのか」と迷惑がられた
障害があっても働く意欲があれば働くこ
とが出来るようになって欲しい
・面接のはじめから「知的障がいの人は採用しない」と言われた
・業務指示が難しい漢字や長い文章で書かれているので理解出来ない
周囲からの偏見や無理解な言動をなく
して欲しい
・自閉症の飛び跳ねた行動を警察に通報され、変質者扱いされた
・重度知的障がいのため多目的トイレを利用していたら、車椅子利用者
から「ここは車椅子トイレだ」と言われた
§差別解消法における不安要素
不安要素
具体例
合理的配慮は本人からの申し出が必要
知的障がいで発語が不明瞭なために「本人からの
申し出がない」と見なされ、職場での業務指示書な
どに配慮してもらえなかった
「差別」をあまり強調してしまうと、「共生」から離れて
しまう
親切心から知的障がいのある人のレジ会計順を後
回したところ、「差別するな」と叱責され、二度と配慮
すまいと思うようになってしまった
§なぜ、障害者虐待防止法ができたのですか?
A.
障害のある人への虐待に、きちん
と法律で対応出来るようにして、
虐待防止の意識を高めるため
です。
障害者虐待防止法ができるまでに起きた事件







白河育成園事件
(施設)
カリタスの家事件
(施設)
水戸アカス事件
(職場)
サン・グループ事件
(職場)
札幌市三丁目食堂事件 (職場)
浦安事件
(学校)
宇都宮事件
(病院)
障害者虐待防止法制定の経過
★2005(H17)⇒厚生労働省内「障害者虐待防止についての勉強会」
⇒カリタスの家(福岡県)、知的障害者更正施設での事件がキッカケ
(当時厚生労働大臣 尾辻氏も施設を視察)
▼2009(H21) ⇒麻生政権の通常国会(第171回)法案提出~解散に伴い廃案
2010(H22) ⇒鳩山政権の臨時国会(第173回)再提出~継続審議、法案撤回
2011(H23) ⇒菅政権の通常国会(第177回)で成立(3度目法案提出)
(東日本大震災復興支援の中で、 6月17日成立)
2012(H24)10月1日施行(46条 第8章からなる)
《正式名称》
◆障害者虐待の防止、
障害者の養護者に対する支援等に関する法律
※2013(H25)6月成立⇒障害者差別解消法成立(2016年4月施行)
◇ 障害者虐待防止法とは
障害者虐待を行った と思われる方 を “罰する” ものではない
○障害者虐待の行為に対する“罰”は、他の法律で対応
・ 刑法 ・・・ 身体的虐待(暴行、傷害)、経済的虐待(詐欺) など
・ 社会福祉法、障害者自立支援法等
・・・ 事業所で不適切な対応を行った場合、指定取消、改善命令、公表 など
障害者虐待を未然に防ぐための“体制整備”、障害者虐待が
起きてしまった場合の“対応方法” を定めたもの
○障害者虐待は「あってはならない」、しかし、どこでも・いつでも起こり得る
可能性あることを踏まえた上で、防止策、対応策を常に考える
・ 障害者虐待を防止するための国、都道府県、市町村、保健・医療・福祉・教育
関係者の責務を規定
・ 障害者虐待の通報・届出の受付窓口を明確にし、各受付窓口が責任をもって
障害者虐待の解決に取り組むことを規定
法律の目的(第1条)
◆「障害者の尊厳(基本的人権)」
◆障害者の自立及び社会参加を推進する
◆養護者(多くの場合は同居している親族)
への負担を軽減
§かかわり、支援のあり方を見つめる
=「かかわりが虐待に見えるかも」いう見方
「本人が困っているのでは」という見方
「かかわっている人が困っているのでは」
※ 権利擁護の視点に立っての支援
§誰に対する、どんなことが
虐待とされるのですか?
A.
◆障害者(障害者基本法の定義)
⇒「心身の機能障害を持ち、社会に存在す
るバリアによって生活に制限を受けてい
る人」(社会モデルの定義規定)
障害の程度や手帳の有無は問わない
◆身体への暴力や言葉の暴力・・・
「虐待」にはさまざまな種類があります。
【虐待の種類と内容】 ~5類型~
種
類
内
容
身体的虐待
暴力的行為などで、身体に傷やあざ、痛みを与える行為。
身体を縛り付けたり、過剰な投薬によって身体の動きを抑制
する行為。 ※(「正当な理由がない身体拘束」も含む)
心理的虐待
脅しや侮辱などの著しい暴言や威圧的な態度または無視、
嫌がらせなど著しい拒絶的な対応など、心理的外傷を与え
る言動。
性的虐待
本人との間で合意形成されていない、あらゆる形態のわい
せつな行為をすること。
ネグレクト
(介護、世話の
放棄・放任)
食事や排泄、入浴、洗濯など身辺の世話や介助をしない、
必要な医療や福祉サービスを受けさせないなどにより生活
環境を悪化させること。
※セルフ・ネグレクト(自己放任)⇒ゴミ屋敷、周囲との関係
拒絶、食事もカップラーメンのみ
~今後の課題~
経済的虐待
(親族も範囲)
本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する
金銭の使用を理由なく制限すること。(養護者の経済的虐待
についてのみ、「障害者の親族」が付け加えられている。)
つまり、実際に養護や同居をしていない親族からの虐待も
含まれる。)
※上記の内容が虐待防止法第2条に定義として位置付けられている。
20
§誰による虐待が対象となっていますか?
A.
「養護者」(家庭)
「施設の職員」(支援者)
「職場の使用者」(同僚・管理者)等が、
障害者の生活の場にかかわる人が直接の 対象。
⇒ 「学校」「保育所」「病院」は施行後3年後の見直し
※障害者虐待の2条による定義規定の他、
3条に国民の責務として「何人も、障害者に対し、虐
待をしてはならない」と虐待行為の禁止を規定して
いる。(すべての国民においてなくすことの宣言)
【障害者虐待防止法が施行された調査結果】
・25年度
(・平成24年10月から平成25年3月末まで)
養護者 障害者福 使用者による障害者虐待
による障 祉施設従
事者等に
害者虐 よる障害
(参考)都道府県
待
者虐待
労働局の対応
市区町村
等への相
談・通報
件数
4635件
(3260件)
1860件
(939件)
市区町村
等による
虐待判断
件数
1764件
(1311件)
263件
被虐待
者数
1811人
(1329人)
628件
(303件)
虐待判断
件数
(事業
所数)
253件
(133件)
(80件)
455人
(176人)
被虐待
者数
393人
(194人)
■どんな権利侵害・虐待が起きているのか
ー事業所・施設での虐待ー
★見て見ぬふりの恐怖
◆カリタスの家事件(2004年)
*暴力、とうがらしを目にすり込む、木酢液を飲ませる、
熱湯を口に流し込む
*ある職員の告白
「よい施設だと評判だったが、支援の難しい利用者が
次々に入ってきて職員は疲れ切りパニック状態だった。
だれかが叩いてしまう。目撃した他の職員は止められ
ない。これではいけないとみんな思っていた」
◆内部告発からの救済
*白河育成園(1996年)
⇒夜に睡眠薬、内部告発から発覚
★親の言葉を免罪符にしない
• 「こんな可哀そうな子、雇ってもらえるだ
けでありがたい。社長は神様みたいだと
思っている」⇒ある父親から
• 「どこにも行き場がなかったのを受け入
れてくれた。少々のことは仕方がない」
• 「わがままに育ててしまった。厳しくしつ
けてやってください」
札幌市三丁目食堂事件
北海道・札幌市内の食堂で、住み込みで働いていた人
たちは13~31年間、無報酬で一日十数時間働かされ
ており、休日は月に2日だけ、入浴は休日にしか許され
ないという劣悪な生活を強いられていた。通帳を勝手に
作られて、障害基礎年金も横領されていた。
(2008年発覚)
⇒生活寮と就労の場 両方で虐待が行われていた。
■実は学校でも虐待が..
また愛知県
の特別支援
学級でも
◆浦安事件
(2007年)
◆埼玉県内 特別支援学校 (2012年)
⇒間接的防止措置(虐待防止のための必要な措置)
§現状を考えていくと
障害者虐待防止法には、学校と病院も必要
では? との意見も
今年度の見直し時期に再度検討を!
通報後のスキーム
養護者による
障害者虐待
障害者福祉施設
従事者等による
障害者虐待
使用者による
障害者虐待
発
見
発
見
発
見
市町村
通報
通報
通報
市
町
村
市
町
村
①事実確認(立入調査等)
②措置(一時保護、後見審判請求)
都道府県
①監督権限等の適切な行使
②措置等の公表
報告
都
道
府
県
労働局
報告 ①監督権限等の適切な行使
②措置等の公表
通知
窓口として
「市町村障害者虐待防止センター」「都道府県障害者権利擁護センター」を設置
◆「障害者虐待」を考える
§障害者虐待はなぜ起きるのですか?
A.
障害のある人が生活する環境の中で、
共通する構造的な原因があります。
虐待の起こる背景
◆障害者は、家庭、施設、職場等の生活空間
において、密室の環境下にあり、従属的な
人間関係に置かれている。
◆虐待を受けているという認識がないことや被
害を訴えても理解を得られない等の要因か
ら顕在化しない。
◆職員に行動障害などに対する専門的な知識
や技術がない場合に起こりやすく、次第にエ
スカレートしていく。
事業所内における虐待の構造の例
厚労省「障害者虐待防止についての勉強会」(2005年3月第3回)より
保護者
・入所させて頂いてい
るという弱い立場
利用者
・重度の障害でコニュ
ニケーションが困難
・行動障害などを伴う
法人
・法人組織が機能
していない
・ワンマン経営、運
営
・権利擁護の機能
が不十分
行政
・指導、監督が不十分
・重度の方を受け入れ
る法人への評価
支援者
・人権意識が不足し
て いる、支援の技術
が十分でない
・施設長や経験者の
影響
その①
★どこでも虐待の芽は生まれる
×絶対に虐待はない~絶対にしてはいけない
~虐待起きたら大変~起きるはずがない
虐待を否定する心理の形成
○いつ虐待の芽が生まれるかわからない~感
性、謙虚さ、風通しの良い職場
虐待をエスカレートさせない
その②
★職員の自覚なくても虐待
•
•
•
•
無知
主観への過信
利用者の思いをくみ取れない感性
無意識のうちに責任転嫁
その③
★利用者が言わなくても虐待
• 認知できない
• 必死に訴えているが周囲がくみ取れない
「障害特性」「問題行動」へのすり替えによって
利用者に責任転嫁、さらに権利侵害を繰り返
す構造
• あきらめている(学びとった無力感)
⇒ラーンドヘルプネス
その④
★職員の言い訳
①比較による弁解
⇒他の職員はもっとひどいことをしている
②主観的自己評価による責任の分散
・厳しく罰したからがまんできるようになった
・厳しく接して関係性が築けた
・上司に指示されているから仕方がない
◆責任の転嫁◆
その⑤
★連続性の錯覚
⇒「指導」「療育」の名の虐待
• 食事中動き回る利用者を抑える
• 「薬をください」と何回、何十回と言わせる
• 作業中にトイレに行かせないで休憩時間まで
我慢させる
• 挨拶がきちんとできないときに食事を遅らせ
る。食事を抜く
• 平手打ちする
§虐待予防に向けてそれぞれができることは?
A.
虐待の起こらない環境づくりのため、
虐待につながる要因を減らしていきま
しょう。
■障害者虐待防止法で期待したいこと
ー改めて、研修の徹底をー
*虐待・「不適切な対応」
小さな不適切な対応(行為)の積み重ねが大きな
虐待・事件を起こす
⇒「これくらいなら許される」の積み重ねーカリタス
の家事件
対応や支援の中で、質の低下、負の支援
⇒「魔のスパイラル」、虐待の連続性の錯覚
⇒職員自らのリスクに気づき
セルフリセット出来るような研修の実施
※絶え間ない研修の大切さ
先輩職員の支援がおかしいと感じても多数派
に自分の意見を合わせてしまう。そして数年も
すれば自分自身が後輩に同じ指導をしている。
職員全員で検討しているとかえって自分が深く
考えなくても決定されて物事が進んでいく。分
野別専門職同士の結束力が強まり集団対立で
支援の統制が無くなる。このような負の力学を
予防したり解消したりする方法は職員研修がも
っとも効果的です。
(椙山女学園大学 手嶋雅史氏より)
点検してみましょう
□ ①施設の理念はしっかりと職員に共有されていますか?
□ ②利用者への言葉使いは適切ですか?
□ ③子ども扱いはしていませんか?
□ ④利用者のマイナス面や問題行動ばかりに目が行っていま
せんか?
□ ⑤利用者の「自己決定」を言い訳にに使っていませんか?
□ ⑥「見守り」を「見張り」と勘違いしていませんか?
□ ⑦トラブルがあった時の連絡体制や責任者は明確ですか?
□ ⑧利用者の訴えにきちんと耳を傾けていますか?
□ ⑨家族や外部の人がいつでも気軽に出入り出来ますか?
□ ⑩障害が重いから少々不適切な対応は仕方がないと思って
いませんか?
□ ⑪ヒヤリ・ハットについて原因の検証はされていますか?
身体拘束・行動抑制
「緊急やむを得ない場合」とは?
【三要件】
①切迫性
利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、
権利が目前で危機にさらされている
②非代替性
身体拘束や行動制限する以外には防ぐことができない
③一時性
身体拘束や行動制限が一時的なものである
⇒上記3つの要件が認められるか
⇒取るべき手続き(組織決定、個別支援計画への理由等の明記、
拘束時における記録、本人や家族等への説明)が押さえられて
いるか
○ 「見張り合う社会」ではなく、
「見守り合う社会」の実現に向けて
○ 障害のある方の「自己実現」、
「幸福の追求」を目指すことが、
虐待防止の目的であり、手段とな
る。
(憲法13条)
最後に
*虐待はどこでも起きる可能性があります。
*あなたの支援している障害者は今は何も言わなくて
も、もしかしたらあなたの対応に苦痛を感じているか
もしれません。心の痛みを隠しているのかもしれませ
ん。必死に自分なりに何か訴えているのに周囲がく
み取れていないのかもしれません。
*職場で同僚と協力して虐待の≪芽≫を摘んでくださ
い。障害者の沈黙に耳を澄ませてください。
ほんの少しの勇気と知識があればいいのです。
《野沢 和弘氏より》