障害者虐待防止のための 相談窓口職員等が担う 初動体制・ネットワークづくり 【 社団法人日本社会福祉士会の資料から 】 障害者虐待防止等に係る具体的枠組み ◇ 養護者による虐待 虐 待 発 見 通報 ・住民 ・民生委員 ・相談支援 事業者 等 市町村 虐待対応協力者 (障害者虐待防止センター) (相談支援事業者等) 対応協議 ・事実確認(立入調査) ・虐待の有無の認定 ・一時保護、後見審判請求 ・虐待対応支援計画策定 ・虐待対応ケース会議 ・支援の実施 ・モニタリング(評価会議) ・終結または支援の継続 ・情報共有 ・情報収集、提供 ・ケース会議 等 ※市町村の責務 相談・助言、居室確保、連携確保 障害者虐待防止等に係る具体的枠組み ◇ 障害者福祉施設従事者による虐待 ( 相 談 支虐 援待 事発 業見 者 等 ) 都道府県 市町村 (障害者虐待防止センター) 通報 報告 ※設置者等の責務を明示 ◇ 使用者による虐待 ( 相 談 支虐 援待 事発 業見 者 等 ) ①監督権限等の適切 な行使 ②措置等の公表 都道府県 都道府県労働局 (障害者権利擁護センター) 通知 通報 市町村 報告 ①監督権限等の適切 な行使 ②措置等の公表 (障害者虐待防止センター) ※事業主の責務を明示 ○障害者虐待対応の流れ 初動期段階 ・相談、通報、届出の受付 ・相談内容の共有と事実確認のための協議 ・事実確認、コアメンバー会議(事実・緊急性の判断) ・当面の対応方針の実施 ・初動期段階の評価会議 市町村の権限行使 対応段階 ・情報収集、虐待発生要因の分析 ・虐待対応ケース会議 ・対応段階の評価会議 終結段階 ・虐待対応の終結(相談支援に引継 等) 個別ケース会議 支援計画・ モニタリング ○ 市町村と相談支援事業者との連携 ・ 虐待対応の基本的視点 地域の相談支援やサービス等利用計画作成の際 に障害者虐待を発見しやすい立場にある相談支援 事業者と虐待対応にあたる市町村及び障害者虐待 防止センターが密接に連携することが大切。 虐待対応は、初期相談機関によるチーム対応が 基本。 ○ 市町村と相談支援事業者の役割分担 (相談支援事業者) 総合相談 → 虐待に関する相談も受ける 情報収集と提供 行政(センター)への通報 ○市の担当課、もしくは市民 (市町村) 相談等に直接入ることもあり。 庁内情報の収集 ○具体的な役割分担はケース 事実確認のための調査 会議等の場で確認すること。 コアメンバー会議の招集 個別ケース会議の招集 市町村権限の行使(立入調査、一時保護など) 相談支援の中での気づき • 相談内容に「虐待」という言葉が含まれていなかっ たとしても、内容として虐待が疑われるものがあ れば、「虐待」としてとらえて聞き取る事が必要。 • 特に困難事例の相談は注意が必要。不適切なケ アが見え隠れする。 • 個人対応での見落としを防ぐために、それぞれの 職員が受けた相談を一人で抱え込まず、相談内 容を組織として共有していく「仕組み」が必要。 障害者虐待の通報・相談の受付 • 相談支援の中で「虐待かもしれない」「不適切な 状況があるかもしれない」と感じたら、虐待対応 に必要と思われる情報を聞き取る。 – 「体にあざが多く見られる」 – 「十分な食事が与えられていない」 – 「障害年金を保護者が生活費に充てている」 – 「職場で嫌がらせを受ける」 – 「障害者施設を訪問時に利用者から相談された」 – 「相談支援専門員自らが通報の対象となった」 等 情報収集・事実確認について 本人、養護者の生活の中での関わりを考え ながら動くこと A:これまで本人、養護者と関わりのあった相談支援 者とペアで訪問しますか? B:これまで本人、養護者と関わりのあった機関に 尋ねますか? C:初めて連絡する公的機関は、市担当者と一緒に 動いた方がいいと思いますか? D:親戚、兄弟へはだれが連絡しますか? 情報収集項目の検討・決定 • 庁内(自治体内)の情報の例 – 世帯構成 • 住民票 – 障害福祉サービス • 障害程度区分認定の有無 • 手帳の交付の有無 • 利用施設の情報(通所状況など) – 経済状況 • 収入状況 • 障害年金 • 国民健康保険納付状況 組織的判断を行う際の留意点 • 通報された内容について、緊急対応の必要性が 高いと予測されるのに、障害者虐待防止センターの 担当職員が留守にしている等、すぐにセンター内で 協議ができる状況でない場合には、行政担当者との 連絡・協議を行う。 – 大切なのは「できるだけ一人で判断しない」ということ • 緊急事態に一人の時に遭遇してしまった際の連絡 手順や対応手段をあらかじめ組織的に決めておく。 事実確認の方法 • 方法 – 面接調査・・・訪問か来所か、面接者は誰か • どのような形で訪問するか • 誰が障害者から話を聞くか • 何をみてくるか→事実確認票等の帳票の整備が必要 – 関係者からの聞き取り・・・・ケース会議等 • 事実確認期限 – 速やかな事実確認 – 児童虐待防止法では48時間以内に事実確認 訪問による事実確認 • 初回訪問の留意事項 – 通報者の情報を漏らさない – 複数人・複数職種で行き、直接目視をすることが原則 • 信頼関係を築きやすい形で訪問 ☆別の理由で訪問 例)障害者相談支援事業の紹介 ☆友好な関係をすでに持っている者と共に訪問 例)友人、ヘルパー、民生委員など • 本人と養護者は別々に対応 • プライバシー保護に留意した環境で 虐待の発生状況の確認 その後の情報収集や対応を考える上で重要 • 始まった時期 – その頃の生活上の変化の情報も収集すると、虐待の発生要因 がわかることも • 頻度 – 増していれば緊急性がより高いといえる • きっかけ – きっかけに対応することで虐待を防止できる – 失禁がきっかけのことも多い • 発生しやすい時間帯 – 原因が特定できなくても、発生しやすい時間帯に人の目を入れ る事で虐待を抑制できる。 – 対応を考える上でヒントになる。 本人や養護者の訴え • 「主観的にとらえている事実」と「意思・意向」の確認 - 本人は虐待の事実をどうとらえているか - 本人はどのように生活したいと望んでいるのか - 養護者は虐待の事実をどうとらえているか - 養護者はどのように生活したいと望んでいるのか ☆ 対応を考えていく上で重要な情報 ☆ ただし、本人、養護者の「虐待への自覚」や「意思」は虐待の 事実があるかないか、という判断には関係しないことに注意 初回訪問後の情報収集とアセスメント • 訪問を受けて、関係者から話を聞きたい点に ついてさらに情報収集を行い、客観的事実を 明らかにし、必要な支援が何かをアセスメント していく。 • 情報収集についても、支援についても、優先 順位を意識する。 初動期のコアメンバー会議 • 誰による – 担当市町村職員、担当部局管理職(必須)、市町村障害者虐待 防止センター専門職、委託先の相談支援専門員 等 • 何のための – 虐待の有無、緊急性の判断、当面の支援方針を決定するため の会議 – 措置や立入調査といった緊急対応についての判断も行う。 • 具体的には – 市町村障害者虐待防止センター専門職、委託型相談支援事業 所職員、市町村の障害者担当職員、障害福祉係長、福祉事務 所長が参加した会議 コアメンバー会議で決定すべき事項 • 虐待の有無の判断 – 疑いありの場合にそのまま放置しない – 無しの場合でも予防的かかわりや権利擁護の支援の必要性を 検討 • 緊急性の判断 – ①緊急保護の検討、②保護の検討もしくは集中的援助、 ③継続的、総合的援助、④事実確認を継続 • 当面の支援計画 – 当面(つまり比較的短期間)の間に、どのように支援をするのか、 これから誰が何を確認するのかを検討し決定 障害者虐待の疑いがある と判断した場合 • 市町村と障害者虐待防止センターは、どのような 見通しをもって、誰が何をするかを協議する。 – 緊急対応の必要性の予測 – 情報収集項目の検討・決定 – 事実確認の方法と役割分担 緊急性が高いと判断できる状況 (高齢者虐待・厚労省マニュアルより) 1.生命が危ぶまれるような状況が確認される、 もしくは予測される。 – 骨折、頭蓋内出血、重症のやけどなどの深刻な身体 的外傷 – 極端な栄養不良、脱水症状 – 「うめき声が聞こえる」などの深刻な状況が予測される 情報 – 器物(刃物、食器など)を使った暴力の実施もしくは 脅しがあり、エスカレートすると生命の危険性が予測 される。 2.本人や家族の人格や精神状況に歪みを生じさせて いる、もしくはそのおそれがある – 虐待を理由として、本人の人格や精神状況に著しい歪みが 生じている。 – 家族の間で虐待の連鎖が起こり始めている。 3.虐待が恒常化しており、改善の見込みが立たない – 虐待が恒常的に行われているが、虐待者の自覚や改善意欲 がみられない。 – 虐待者の人格や生活態度の偏りや社会不適応行動が強く、 介入そのものが困難であったり改善が望めそうにない。 4.高齢者(障害者)本人が保護を求めている – 高齢者(障害者)本人が明確に保護を求めている。 当面の支援計画の特徴 • 必要な支援が何か、具体的に計画 • 確認できていないこと、不明なことを明らかにし、 今後だれがどのように確認するかについて、計画 に盛り込むことが大切 • 支援を依頼する関係者や関係機関へ協力を依頼 する内容についても、支援計画に盛り込む。 初動期における 相談窓口職員の役割 • 「本人の想い」に寄り添うあまり、虐待の芽を 見逃してはいけない、権利侵害を見逃さない • 相談支援の内容(対応)が権利侵害になって いないか常に留意する • 市町村が虐待の認定を行った場合、虐待対応 支援計画に基づいて、本人及び養護者への 支援を担う まとめ 初動期対応の重要性 • 早期対応が原則 • 場当たり的な対応、後手後手の対応は虐待 対応をより難しくする • 初動期であるという認識と対応が重要 – 初動期で終わってしまう虐待対応は、虐待の再発や悪化を招く – 初動期に立てる当面の支援計画に沿った支援を見直していく ことが大切 ネットワーク連携会議 具体例 ○○市虐待防止ネットワーク会議 高齢者虐待防止 ネット 児童虐待防止 ネット DV防止ネット 障害者虐待防止 ネット 個別ケース 個別ケース 個別ケース 個別ケース 既存のネットワークを活かす ○障害のある人の 理解 ○社会参加 ○共生社会 民生委員の定例会 月1回 町内会連合会の年1回研修 ケアマネージャー連絡会 ○地域支え合い ○虐待防止啓発 ○通報義務 まちづくり連絡会 商工会議所 ◇ 関係機関等 - 主治医・医療機関 - 保健所・保健センターの関与 - 障害福祉サービス事業所 ・・・ 居宅介護、日中活動、障害者施設支援 等 - 民生委員 - 警察 - ハローワーク、障害者就業・生活支援センター ・・・ など
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