情報教育概論

情報教育概論
金沢大学, 2002/8/5-7
飯島康之(愛知教育大学)
0.はじめに:担当者の特徴
• 「情報教育」 「情報」の専門家ではない。
• 数学教育の情報化,大学の情報化などに
は多くの接点を持っている。
• 2000年度,愛知教育大学,2001年度,金沢大
学での情報教育概論を担当
↓
• 「体験的」情報教育概論を進めてみたい。
0.はじめに:何を目指すか
• 「情報」および「情報教育」に関する仕事は多様。
どのような仕事を主眼とするかによって, アプ
ローチの仕方はかなり異なる。
• みなさんは何を目指そうとされているのだろうか。
• 「基本的な視点」の中のどういう項目を重視すべ
きか,考えていただきたい。
• 授業を進めながら方向性を考えたり,中身を構
成/充実させたい。
• ネット上にある各種資料を使いながら。
1.基本的な視点
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•
教科としての「情報」
教科教育の情報化
教育の情報化
生徒・教員にとっての情報リテラシー
社会の仕組みを変えるものとしての情報
(工業化社会から情報化社会へ)
• 「学習のデザイン」としての情報教育
1.1 教科としての「情報」
• 免許取得に際しては, 工学部的な, かなり
高度なことの理解までが要求される。
• 一方, 教育現場の声としては, 「情報だけが
分かっても, 普通の授業/教育が分からな
いのでは困る」
• 理想的には, 「情報 + 他教科の免許」
1.2 教科教育の情報化
• 普通教室で行う普段の授業の中で「コン
ピュータ + プロジェクタ」を日常的な道具と
してどう利用するかが, 2005年までの基本
的なスタンス
• 教科書準拠コンテンツなどの利用
• コンピュータ利用によって, 新しい教育内容
/目標の実現
1.3 教育の情報化
• 文部科学省による事業としての「教育の情
報化」(2005年を完成年度)
• 詳しいことは文部科学省のサイトで探して
みよう。
• インフラとしての情報化が整備されたら, さ
らにどんなことが可能になるはずか。
1.4 生徒・教員にとっての情報リ
テラシー
• 「情報教育の手引き」も改訂された。
• コンピュータをはじめとする情報機器や,
ネットワーク関連の充実により, 日々変化
しつつある。
• これまでの「3R」に変わる/追加されるもの
• 「これができないとまずい」と思えることは
なんだろう。
1.5社会の仕組みを変えるものとしての情報(工業
化社会から情報化社会へ)
• 最近話題になっているものの一つとしての「住基
ネット」
• より広く,より深く,我々の回りは情報化が進展して
いる。
• 身の回りを考えたとき, 「ビジネス分野」,「一般の
生活分野」などで, どのような変化を見つけること
ができるだろう。
• そこで生活する上では, 何が可能であり, どんな
リスクがあるのだろう。
1.6 「学習のデザイン」としての
情報教育
• 「先生から教えてもらう」こと以外に, 「学習
する」機会は, 爆発的に拡大している。
• 「生涯教育」は, ある意味で当たり前のもの
になってしまった。
• 学習を支援するためのノウハウを, 「学校
教育」以外のどのような分野でどう利用す
ることが可能なのだろうか。
2.1 「教育の情報化」とその周辺
• 文部科学省のサイト/まなびネットのサイトなどから, 「教
育の情報化」に関する情報を調べてみよう。
• 首相官邸の中で, 事業内容に関するまとめや評価が公
開されている。探そう。
• 「教科書準拠」のコンテンツとして, 次を調べてみよう。
• 学習資源デジタル化・ネットワーク化推進事業の成果コ
ンテンツ
• NHKの教育テレビに関するWebの中では, どういうノウハ
ウが使われているか。
• 市販化されているもの(東京書籍等)を調べよう。
2.2 ネット教材として開発されて
いる各種コンテンツ
• 政府系サイトを探してみよう
• まなびネット, CEC, 学情研で提供/紹介し
ているものにはどんなものがあるか。
• 都道府県教育センターのリンク集では, ど
んなサイトが紹介されているか。また, 独自
コンテンツとしては, どのようなものがある
か。
2.3 次のような資料は, どういうところを探した
ら見つかるだろう
• 飯島康之が関わっている書籍は何か。どこの大
学図書館にあるのか。いくらか。在庫はあるのか。
• 夏目漱石「坊ちゃん」の全文
• 今年の人口/江戸時代の人口
• SL彗星が木星の衛星に突入する映像
• 「帯」の書き順,「÷」の書き順
• 「つる」の折り方
• イギリスでの今日のニュースとその翻訳
• 三平方の定理のいろいろな証明
3.1 作図ツールについて
• 作図ツールとは, 図を数学的に動かして調
べるためのソフト
• 1990年頃から, 様々なソフトが開発されて
いる。
• DOS→Win→Java という流れ
• 様々なコンテンツが整備されつつある。
3.2 作図ツールと教科書準拠
• 作図ツールコンソーシアムにはどんなコンテンツ
があるか。
• 「使えそうなもの」/「使えそうもないもの」を探して
みよう。
• 「教師がいて使うソフト」,「生徒だけで独力で使う
ソフト」の違いについて考えよう。
• 報告書を眺めてみよう。
• 「税金を使った事業」として, どんな意味があるの
か。
3.3 作図ツールと授業
• GC Forum の「使い方の基本」を見る。
• どの使い方が適切と思うか。
• 今まで, これからの学校のコンピュータ事
情を考えると, どんなことが推察できるか。
3.4 作図ツール独自の数学的活
動
• GC World 2 を中心に, 「作図ツールらしい」
事例を分析してみよう。
• 「紙と鉛筆」で, そのような活動はできるか。
また, 既存のカリキュラムとの整合性はあ
るか。
3.5 ソフトとしてのGCの特徴
• 第一に, 「授業の道具」としてのソフト
• 第二に, 「数学的探究の道具」としてのソフ
ト
• 第三に, 「コンテンツの整備」や「ネットワー
ク利用」を念頭においているソフト
• 上記は, どんな具体的なことと関連してい
るかを予想せよ。
3.6 比較
• 実際に, どういうことが特徴としてあるのかを, 「比
較」することによって明らかにしたい。
• Java の例として, 次のいくつかを探し,どういう特
徴があるか検討せよ。また, 機会があれば, Win
アプリについても比較せよ。
• CabriJava : Cabri2
• JavaSketchPad : Geometer’s SketchPad
• 個々の図形のそれぞれについて単独のJavaアプ
レットとして開発されているもの
3.7 GC/Javaの作図機能と書き込
み機能
• GC/Javaで作図をしてみよう。
• オンライン保存をしてみよう。
• GC/Winを個々にインストールして使うこととの利
点/欠点を比較せよ。
• 多くの教育用ソフトをこのような形態で開発でき
る可能性はあるが, それは今のままでは進展し
ないと考えられる。なぜか。
• また, ビジネス用ソフトや, 家庭用ソフトに関して
はどうだろうか。
3.8 しきつめに関するいくつかの
ソフト
• Escher Web Sketch
• 可能ならば「なんり君」
• その他, Web上にあるソフトを探してみよう。
3.9 作図ツール/しきつめ関連ソフト/算数ゲームセ
ンターとの比較
• リンク希望は, 算数ゲームセンターの方が
多い。なぜだろう。
• 「算数ゲームセンター」の意図はなんだろう。
• その可能性と限界は。
• 作図ツール関連のサイトはどういう資料が
整備されているか/整備するべきか
• いくつかのサイトを実際に調べ,分析・比
較してみよう。(GC/cabri/GSP等)
4.1 コンピュータとの接点
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買う
使う
環境を整える/拡張する
壊れて,復旧する
処分する
4.2 コンピュータの仕組み
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CPU(Pentium4 2G, Celeron, Athlon,…)
内部記憶(メモリ 128M)
外部記憶(HD 30G?, CD-ROM,DVD,FD)
入力機器(キーボード,マウス,ペン入力,)
出力機器(プリンタ,ディスプレィ,音源,)
各種接続(USB, iLink, SCSI,PCIバス,PCカード)
電源
OS(WindowsXP,…)
4.3 コンピュータを使う
• 「計算機」であるが, 「計算機」ではない。
• ほとんどあらゆる目的のための道具。
• 「自分にとって何をしてくれるのか」をきち
んと考えることがまず大切。
• 「誰もが使う使い方」や, 「どういうときにも
共通する作法」などはある。
4.4 当たり前すぎるけど
• 電源ボタンから始まり,スタートボタンで終
わる
• IMEのon/off とキーボード入力
• マウス : クリック, ダブルクリック, ドラッグ
• 右クリックが使いこなせるようになると便利
• 「Ctrl + V」, 「Ctrl + Alt + Delete」って,…
4.5 誰もが使う使い方
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Web (すべてを統合したプラットホーム化)
Mail (ケータイ等にも拡散)
(mailing list, 掲示板等)
ワープロ,テキストエディタ
表計算,プレゼンテーション
4.6 こんな使い方もある
• 一緒に考えよう
4.7 拡張など:この程度はできる
ようにしておきたい
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A.データのバックアップ
A.ソフトのインストール
B.メモリの増強
C.HDの換装,追加
C.OSの再インストール
C.LAN接続とその設定
C.USB接続機器/PCカード/
D:ボードの追加
4.8 ソフトのインストール
• Windowsのソフトは「単体」ではない
• 実行ファイル(exe)は, 部品(dll, ocx等)への命令
の集合体であり, 必要な部品がなければ, 部品も
一緒に組み込む。
• この部品化は, 全体を縮小したり, 修正のために
重要な技術であるけれども, dll hell と呼ばれる
問題もある。
• レジストリへの登録なども必要
• アンインストールはファイルを消すだけでないた
め, きちんと「アプリケーションの追加と削除」や
「Uninstall」を行うこと
4.9 コンピュータを使う意味
• ワープロの目的は「美しき死体作り」ではない
• (上記の意味を解説しよう。また, 元々誰が
述べている言葉か?)
• 再利用可能/共有可能
• その凝縮としてのWeb
• 「一度作ったデータはとことん使い回す」つ
もりになる。「使い回せるようにするにはど
うしておくといいかを考える」
4.10 「クリップボード」の利用
• 「テキスト」と「画像」が基本
• 「対象選択」(Cut/Copy)→「位置指定」→「貼り付
け」(Paste)が基本
• 「編集メニュー」/マウスの右クリック/キー操作
• 同一ソフトの中での処理/複数ソフトでの連携
• パソコン画面を取り込むためには, 「PrintScreen」
あるいは「Alt + PrintScreen」
4.11 データの種類と拡張子
• データはすべてデジタル(0,1)
• それには意味があり, 適切な処理をするこ
とが重要(→データ構造)
• 「どんなデータ」かを表すのが「拡張子」
• Txt, doc, gif, jpg, bmp, avi, mpg, wav, xls,
ppt, zip, lhz
• データとアプリケーションの関連づけ
4.12 OSの種類
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•
•
Personal : Windows95,98,Me,(XP)
Public/Business : WindowsNT,2000,XP
ユーザー管理等の概念
学校や企業のPCでWin98/Me等を使うの
はなぜ不適切か。どのような方法がとられ
ているか。
• Linux, unix
• Mac OS X
4.13 ネット利用の基礎知識
• 情報コンセント, IPアドレス, DHCP,(グローバル/
プライベート, IPマスカレード)
• ハブ,ルータ,ファイアウォール
• Ping, ipconfig(winipcfg)
• プロトコル(http, ftp, telnet)
• ウィルス, ワームとセキュリティホール, そしてウィ
ルス対策の基本
• Microsoft製品が狙われるのはなぜか
• サーバ管理者の心がけ
4.14 復習を兼ねて(1)
• FMV-655NU8C/Lという機種にメモリをなるべく多く増設し
たい。どんなメーカーのどんな部品があるのか。
• 古いPCにとっては, 「HDの壁」というものがあって, どんな
に大きな容量でも使えるというわけではないらしい。どう
いうことか。
• 今使っているパソコンのIPアドレスを調べてみよう。
(ipconfig/winipcfg) それは, グローバルIPか, ローカルIP
か。
• IPマスカレードという技術の優れているのはどういう点か。
• Web上で動くそろばんを探そう。
• 「ピンポン」は金沢市内ではもう上映されているのか。ま
だだとしたら,いつからか。
4.15 復習を兼ねて(2)
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最近のウィルスに関する情報を調べよう。
ウィルス,ワームはどう違うか。
Nimdaは混合型と言われる。どういう意味か。
ウィルスに関する被害や対策の経験談を探せ。
個人として, また組織(大学/企業など)として,
サーバ管理者として, どのような対策をすべきか。
5.1 情報化の目的
• 最も基本的な目的は, 「人材を活かす」こと
• 「人を結びつく」上での障害にはどのようなものが
あるか。
• 「人を結びつけるもの」は何か
• 「人の結びつき方」は多様。「こい」ものもあれば,
「うすい」ものもある。「こい方がいい」とは限らな
い。
• (ネット上/それ以外で)人を結びつけるしかけとし
て, どのようなものがあるか。
5.2 「その気」と労力と少しの資
本があれば
• 今までは, 「資本」がなければできないことはかな
り多かった。
• ネットワークを使って何かをするということは,投
資はかなり少なくても,グローバルに展開できる。
• 「共感」できる人々を集め,「ボランタリー」な気持
ちを基礎として, いろいろなことを実行することが
できる。
• 逆に, どんなに多くの投資を行っても,共感を得
ないものは, 結果として何も生まない。
• Microsoft と Linux の対比
• Free だから意味があるというわけではない。
5.3 情報共有/情報公開等の価
値と可能性
• 「一人だけ」では,大したことはできない。
• 「新米」でも「ベテラン」に近い仕事ができるように
するための情報共有によるバックアップ
• 「何かに守られていた時代」から, 「自己選択」,
「自己責任」の時代
• ミスがあったらおしまいではなく, ミスは「ありうる」
という前提。
• 現実には,「ミスが発生したら, 取り返しはつかな
い」,「過去を変えることはできない」
• ミスがあったら, 外部から指摘可能にしておくとい
うこと。
5.4 情報共有のために, プラット
ホームの共通化
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•
•
同じソフトを使ったデータを共有化する。
Acrobat (pdf形式)の可能性と限界
ブラウザ上への統合
様々な「コスト」の顕在化とそれを減らすた
めの努力
• Windowsアプリ開発のための指針
5.5 ソフトの新しい形とTCO削減
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端末の機器管理には多くのコストがかかる
「ソフトはサーバから」の利点
Java によるソフトの供給の利点
Microsoftによる「.net」
その他の Web アプリケーション
ASP(Application Service Provider)とは
既存の技術でもこんな工夫
PCに添付の「ふりだしに戻る」ためのCDとは
「セルフメインテナンスシステム」など
便利な点/不便な点は何か
5.6 Web アプリケーション
• Java Script/VBScript などのSript言語によ
る開発(ソースが見える)
• Java applet による開発
• CGI による掲示板など
• Flashによるページ
6.1 GCで実現する「新しいこと」
を共有してもらうために
• 「分かる人」は, ソフトさえあれば, 勝手にいろいろ
なことを開拓してくれる。
• Microworld としてのソフト
• しかし, 大多数の人には「何もなければ伝わらな
い。」
• 資料が多くなるほど, 読まれなくなる。資料がな
ければ, 分からない。
• 「自力で学習可能でありたい, 学習をしなくても,
類推だけで前に進める方がいい。」
6.2 ソフト開発上での工夫
• 最低限のことは, 初めての人でもそれなり
にできるようにする。
• 機能の割り付けをなるべく, 「標準的なも
の」にする。
• 数学的な思考を妨げないように工夫する。
• 基本的な考え方が分かれば,様々な場合
に適用しやすいようにする。
6.3 コンテンツ開発上の工夫と困
難点
• できるだけ「組織的」にコンテンツ開発をす
る。
• 幅広い資料を作る。
• 「資料がないと分からない」, 「資料が多過
ぎると読まれない」, 「解答を提示しておくと,
それを見てしまう」
X.1 検索
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「検索」はPC利用「らしさ」の入り口
Webでの検索→ www.google.comなど
PC内の検索→エクスプローラ
全文検索など→
ソフト内での検索
一発で一つに絞り込めるようにするのでなく, 「広
く検索」→「徐々にしぼる」
• 「関連するいい素材が見つかる」こともあるから。
X.2 授業用のレポートボックス
• 去年は掲示板を使った
• 今年は独自に作った「レポートボックス」を
使っている。
• 違いはどういうところにあるだろう。
• どんなことが便利/不便だろう。
X.3 去年の内容など
• 2001年度の本授業の内容をはじめ, 基礎
資料となるものは,下記にある。
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www.auemath.aichi-edu.ac.jp/teacher/iijima/iijima.htm
授業→2001年度へのリンク
今年度の内容の追加等は次にする「かも」
auemath.aichi-edu.ac.jp/~yiijima/
X.4 目的に応じた理解の深さ
• すべてを基礎から理解することなどできな
いし, 必要もない。
• 「ユーザーとしての理解」
• 「管理者としての理解」
• 「開発者としての理解」
• どのレベルにも, さらに「(それを使って何か
をする)上位構造」と「(それを実現するため
の仕組みとしての)下位構造」がある。
X.5 最終レポート
• 14:30までは, この部屋が使えます。
• レポートボックスに, 次の課題で書き込み
をしてください。
• 今回の授業の中で, インパクトが強かった
こと。
• さらに, より深く調べてみたいと思うこと。
• それをするには, 何をしたらいいか(プラン)
• 授業について改良すべきこと