高温超伝導バルク磁石を用いた

ビーム物理研究会 2010、理化学研究所 和光キャンパス 仁科ホール、2010 年 11 月 11 日
高温超伝導バルク磁石を用いた
スタガードアレイアンジュレータ
金城良太、紀井俊輝、M. A. Bakr、
Y. W. Choi、吉田恭平、上田智史、
高崎将人、木村尚樹、石田啓一、
園部太郎、増田開、長崎百伸、大垣英明
京都大学エネルギー理工学研究所
本研究は以下の助成を受けたものである。
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)
日本学術振興会 科学研究費補助金 特別研究員奨励費
1. 背景
 強磁場・短周期アンジュレータの必要性
2. 高温超伝導バルク磁石を用いた
スタガードアレイアンジュレータ
(Bulk HTSC SAU: Bulk High-Temperature
Superconductor Staggered Array Undulator)
 原理
 原理実証実験 @ 77 K
 利点
3. Bulk HTSC SAU のモデルに基づく性能予測
 期待される性能 @ 4.2 – 20 K
4. まとめ
1. 背景
放射光の短波長化
アンジュレータ放射光の波長 lR
lU  K
lR  2 1 
2 
2
2
K  93.36B0 lU

,

lU : アンジュレータの周期
 : ローレンツ係数
K : 偏向係数
短波長化したい
中型のシンクロトロンで大型と同じ波長域の放射光を得たい
短周期アンジュレータ
K 値を保つために
強磁場が必要
K~1
lU = 20 mm, B0 = 0.5 T 永久磁石
lU = 10 mm, B0 = 1 T 未実現
lU = 5 mm, B0 = 2 T 未実現
1. 背景
強磁場の Damping Wiggler
Damping Ring
放射ダンピングによりエミッタンスを低減
Damping Wiggler
ダンピングスピードは
 B ds に比例
2
1. 背景
アンジュレータの強磁場・短周期化の試み
• IVU: In-Vacuum Undulator
– 真空封止
• CPMU: Cryogenic Permanent Magnet Undulator *1
IVU を CPMU に改造中
– IVU +低温永久磁石
• SCU: Superconducting Undulator *2
– 超伝導(低温・巻き線型)
周期 lU = 14 mm, ギャップ g = 5 mm
Type
B0 [T]
IVU
0.67
CPMU
1.10
SCU
1.30
*1 T. Tanaka, et al., New Journal of Physics, Vol. 8, p. 287, 2006
*2 S. Kubsky, et al., AIP Conf. Proc., Vol. 705, pp. 223-226, 2004
永久磁石
小型冷凍機
1. 背景
高温超伝導バルク磁石
Bulk HTSC: Bulk High-Temperature Superconductor
• 高い超伝導転移温度(100 K 付近)
– 20 – 30 K で運用できれば、SCU (4 K) より
• 小型の冷凍機でビームからの熱負荷を取り除ける。
• ギャップを小さくできる。
• 永久磁石より強い磁場を着磁可能
– 半径 13 mm のBulk HTSC で 17 T 以上 @ 29 K *1
– 着磁磁場=臨界電流密度 Jc ×Bulk HTSC のサイズ
• Jc は温度の関数。冷やすほど大きくなる。
• 3 年間で 2 倍のペースで Jc が向上すると期待されている。
*2
アンジュレータ構造中で、どのように着磁を行うか?
どのように正弦関数的な周期磁場を生成するか?
*1 M. Tomita and M. Murakami, Nature Vol. 421, 2003
*2 NEDO 技術戦略マップ 2009 超電導技術分野の技術ロードマップ(共通基盤技術-バルク)
1. 背景
 強磁場・短周期アンジュレータの必要性
2. 高温超伝導バルク磁石を用いた
スタガードアレイアンジュレータ
(Bulk HTSC SAU: Bulk High-Temperature
Superconductor Staggered Array Undulator)
 原理
 原理実証実験 @ 77 K
 利点
3. Bulk HTSC SAU のモデルに基づく性能予測
 期待される性能 @ 4.2 – 20 K
4. まとめ
2. Bulk HTSC SAU
Bulk HTSC への着磁原理
B
B
Bs
Bean モデル
start
J
B s
J  J c or J  0,
B send
0 J c d y  Bs .
J
冷却&
磁場変化
-J c
+J c
磁場侵入度 d
dy
d 
Dy
dy
Dy / 2
8
2. Bulk HTSC SAU
Bulk HTSC SAU の原理
ソレノイド
Solenoid
y
x
電子ビーム
z
Bulk
HTSC
Bulk HTSC
Bulk HTSC の磁化ベクトル
Magnetization
Vector
アンジュレータ磁場
Undulator
Field
ソレノイド磁場変化 BS start⇒ BS endにより、Bulk HTSC 内部に
超伝導ループ電流を誘起(着磁)し、アンジュレータ磁場を生成。
2. Bulk HTSC SAU
実験装置
Period
lu = 5 mm
Period Number N = 11
Gap
g = 4 mm
DyBaCuO
Tc ~ 91 K
Jc ~ 100 A/mm2 @ 77 K
3.5 kA/mm2 @ 20 K
55 mm
10
2. Bulk HTSC SAU
実験結果 @ 77 K
アンジュレータ磁場の生成、ソレノイド磁場による振幅の制御
2. Bulk HTSC SAU
振幅の飽和とばらつき
10
100
Undulator field B0 [mT]
9
飽和
ばらつきは大きい
8
0
80
7
6
60
0 / B0
5
4
40
3
ソレノイド磁場変化に比例
ばらつきは小さい
2
20
1
0
0
0
50
100
150
200
Solenoid current -Is [A]
現状の Bulk HTSC では臨界電流密度の個体差が大きいため、
磁場侵入度が低い領域で使う必要がある。
2. Bulk HTSC SAU
Bulk HTSC SAU の利点
1. 全ての Bulk HTSC が単一のソレノイドにより着磁可能
2. 臨界電流密度のBulk HTSC 毎の個体差がアンジュ
レータ磁場のエラーに直結しない
(ある程度のばらつきが吸収される)
3. アンジュレータ磁場の振幅をソレノイド磁場の変化に
よって振ることができる 一般的なスタガードアレイアンジュレータの利点
4. アンジュレータ磁場と運転時のソレノイド磁場を独立
一般的なスタガードアレイアンジュレータと異なる
に制御可能である
(By と Bz を独立に制御可能)
1. 背景
 強磁場・短周期アンジュレータの必要性
2. 高温超伝導バルク磁石を用いた
スタガードアレイアンジュレータ
(Bulk HTSC SAU: Bulk High-Temperature
Superconductor Staggered Array Undulator)
 原理
 原理実証実験 @ 77 K
 利点
3. Bulk HTSC SAU のモデルに基づく性能予測
 期待される性能 @ 4.2 – 20 K
4. まとめ
3. 性能予測
4
実験 @ 77 K との比較
start
Bs
end
= 13.7 mT, Bs = 0 mT
2
Calc. (Jc = 100 A/mm )
3
Exp.
By [mT]
2
1
0
-1
-2
-40
-20
0
20
40
z [mm]
超伝導の Bean モデルに基づく Bulk HTSC SAU のモデルは、
77 K での実験結果をよく再現。
3. 性能予測
期待される性能①
Bulk HTSC SAU の計算条件
Bulk HTSC (カマボコ形)の直径 Dy = 130 mm
磁場侵入度 d = 10 %
周期 lu = 14 mm, ギャップ g = 5 mm で達成しうる B0 [T]
永久磁石
低温超伝導線材
高温超伝導バルク磁石
Type
B0 [T]
IVU
0.67
CPMU
1.10
SCU
1.30
Bulk HTSC SAU
0.58 × Jc [kA/mm2]
臨界電流密度 Jc > 3 kA/mm2 であれば他方式より強いアンジュレータ磁場が可能。
Jc > 3 kA/mm2 は、現在の Bulk HTSC を 20 – 30 K まで冷却すれば得ることができる。
期待される性能②
(Jc = 3.5 kA/mm2 (~ 20 K))
3. 性能予測
2
Jc = 3.5 kA/mm
Undulator Field B0 [T]
2
Bulk HTSC
r = 65 mm
Gap g [mm]
4
6
K=2
1
K=1
0
0
2
4
6
8
10
Period lu [mm]
12
K=1@
l = 10 mm, g = 4 mm
14u
lu = 12 mm, g = 6 mm
期待される性能③
2 (~ 4.2 K))
(Jc = J10
kA/mm
= 10 kA/mm
3. 性能予測
2
c
Undulator Field B0 [T]
3
Bulk HTSC
r = 65 mm
Gap g [mm]
4
6
2
K=2
1
K=1
0
0
2
4
6
8
10
Period lu [mm]
12
K=1@
l = 7 mm, g = 4 mm
14u
lu = 9 mm, g = 6 mm
18
1. 背景
 強磁場・短周期アンジュレータの必要性
2. 高温超伝導バルク磁石を用いた
スタガードアレイアンジュレータ
(Bulk HTSC SAU: Bulk High-Temperature
Superconductor Staggered Array Undulator)
 原理
 原理実証実験 @ 77 K
 利点
3. Bulk HTSC SAU のモデルに基づく性能予測
 期待される性能 @ 4.2 – 20 K
4. まとめ
4. まとめ
まとめ
強磁場・短周期アンジュレータが必要である。
シンクロトロン放射光源
ダンピングリング
Bulk HTSC を用いることが有望な解決策である。
しかし、アンジュレータ構造中での着磁方法が必要である。
Bulk HTSC SAU
試作機を用いて 77 K での実験で着磁、アンジュレータ磁場生成、
その振幅の制御を実証した。
Bulk HTSC SAU のモデルに基づき、低温での性能予測を行い、
短周期でも十分な磁場強度を確認した。
Bulk HTSC SAU は強磁場・短周期アンジュレータとして有望