監査・税務調査への対応

内部統制の充実と会計情報システム
監査・税務調査への対応
内部統制
下記を目的として、経営者や従業員により遂行される組織
的なプロセス
業務の有効性・効率性の確保
財務諸表の信頼性の確保
関連法規の遵守
会計情報システムも内部統制の充実に重要な役割を担う
企業外部からのチェックが制度化されている
会計監査(公認会計士の主要な仕事)
税務調査(国税局や税務署の仕事)
情報システムの視点からは会計監査や税務調査に対応す
る機能と重なる
会計監査と税務調査の目的
会計監査
財務諸表など開示される財務情報の信頼性
の確保
企業と利害関係がない公認会計士(監査法
人)が実施する
税務調査
申告書が真実であることを確認し、課税の公
平を担保する
会計監査の役割
開示
財務諸表
公開企業
投資家
会計監査実施 監査証明の添付
監査受入態勢の確立
公認会計士
(監査法人)
会計監査実施
大会社
監査証明の添付
計算書類
開示
債権者
株主
税務調査の役割
税務調査
納税企業
申告書類
税務当局
情報システムの進展に関連して考慮すべき点
帳簿の電子化への対応
証憑類の電子化への対応
情報生成過程の非可視化への対応
承認手続の電子化への対応
エンドユーザー・コンピューティングへの対
応
帳簿の電子化
紙の帳簿などを保存する必要がなくなる
税務
税務当局の承認を前提としてみとめられる
承認の条件
• 真実性、可視性が確保される
• 即時見読可
• 「一貫して電子計算機を使用して作成する」こと
– 結果だけを電子化したものは承認しない
企業情報のディスクロージャー
実質的に電子化された帳簿が受け入れられる
会社法も電子化されたファイルを帳簿として容認
手作業による会計処理と帳簿の関係
期中取引
証憑類
期末処理
総勘定
元帳
仕訳
記入
仕訳帳
転記
総勘定
元帳
集計
試算表
編集
財務諸表
情報システムと帳簿の関係
仕訳帳
取引
データ
会計情報
システム
並
列
的
関
係
総勘定
元帳
試算表
財務諸表
帳簿
ファイル
実質的な帳簿
管理会計
レポート
ア
ウ
ト
プ
ッ
ト
資
料
帳簿の電子化の要件
迅速に帳簿のプリントができる体制の確保
認められる処理
電子化さ
れた帳簿
不
要
と
な
る
処
理
事前一括
プリント
帳簿書類
依頼された
都度
プリント
書類
帳簿書類
税務調査については
過去にさかのぼり
同様の機能が必要
帳簿の電子化の要件
痕跡の残らない帳簿メンテナンスの禁止
アクセスコントロールの充実は内部統制からの要請
会計情報
システム
利用者
赤黒方式に
よる訂正
電子帳簿の
アクセス
ログ管理
月次確定後
の訂正禁止
情報システ
ム担当者
直接メンテ
ナンスの
禁止
電子化
された帳簿
会計情報
システム
ユーティリ
ティー使用
管理厳格化
プログラム単位,ユーザー単位に
帳簿の参照を許諾
赤黒方式による修正
赤黒方式
伝票の訂正や削除が必要な場合
• 直接書き換えや削除をせず,誤った伝票すべてを取り消す
伝票を作成し(赤伝)、改めて正しい伝票(黒伝)を加えること
– 担当者が書き損じた場合などに,上司の承認前であれば直接
の書き換えや削除が認められる
– 税務上は1週間以内
• 目的は訂正の履歴を後から追跡可能にすること
– 電子データは修正や削除の跡が残らないことへの対応
– 同じ取引について訂正の履歴をリンクして一覧できる場合など
は、赤黒方式でなくとも認められる
月次決算
多くの企業は月ごとに帳簿を締め切り,損益計算書
などの決算書を作成している
法律的な義務はない
帳簿を電子化すると,締切後にも簡単に修正がで
き,しかもその痕跡が残らない
月次決算の結果が信用できなくなる
締切後には修正をしないことを原則とする
万一修正した場合にはその事実がすべて明らかになる
ような機能を会計情報システムが備えていることが必要
法定保存年限
紙による帳簿や書類と変わらない
会社法が求める帳簿(元帳、仕訳帳)
決算期後10年
税法が求める帳簿書類
申告書提出期限後7年
この期間内は要求があればプリントできる体制が必要
日常はオフラインのメディアに待避しておく
情報システムを更新した場合には、旧システムを保存しなけ
ればならない場合もある
COM(Computer Output Microfilm)でも可
総勘定元帳と補助元帳の実質的な一致確認
帳簿間の整合性の保証
支払相手先情報
帳簿
ファイル
電子化された総勘定元帳
得意先情報
総勘定元帳と
補助元帳の
一致確認
調整表
両者の差異報告
および実質的な一致確認
直接アクセス
買掛金/未払金管理
記憶
売掛金管理
ファイル
電子化された補助元帳
差異検索
証憑類の電子化への対応
電子機器内部の処理
入金報告
請求書
検収報告
納品書
仕入先、銀行などから受信
支払依頼
請求書控
納品書控
EDI(電子データ交換)の普及は、
必然的に証憑類の電子化を招く
得意先、銀行などへ発信
電子データ保存の
義務化(税法)
電子化された証憑の管理
取引の痕跡は受送信したデータ
プリントしたものは、取引の痕跡の写し(いくらでも複写可能)
• 税法では,紙による保存も可
取引データの改ざんを防止し、紙による証憑と同等の
信頼性を獲得するための方策が必要
電子データを厳格に管理する規定を作り、規定通りに
運用する(内部統制の強化)
保存期間:大法人(資本金1億円以上) 7年
棚卸資産に係る取引のデータは5年
中小法人:5年
電子化された証憑類の管理
入金報告
請求書
任意
範囲指定
納品書
・受発信後訂正、書込、削除の禁止
・受発信データの網羅性の確保
・アクセスログの管理
支払依頼
請求書控
納品書控
証憑類
プリント
取引先
取引日付
取引金額
証憑類
リスト
情報処理過程の可視化
第三者による確認
処理内容を把握し、妥当性を評価できる態勢
• システムドキュメントの整備
• 適切なドキュメントの更新
情報システム内部で定められた処理が行われ、財務
諸表など開示資料に結びついていることを確認する
手段の準備
• 中間処理過程の可視化
• 処理過程の一貫性を確認できる報告書の体系
• 適切な中間ファイルの保存
情報処理過程の可視化
システムドキュメントの整備
運用マニュアル
仕様書
ネットワーク関連図 システムドキュメントの整備
概要書
処理内容
の説明
証憑類
会計情報
システム
財務諸表など
開示書類
情報処理過程の可視化
明細書
要約表
情報処理過程の一貫性確保
要約表
明細行
要請に基づき速やかに
レポートを作成する態勢
明細行
合計行
明細行
合計行
明細表
合計行
指定された部分:
明細表を作成し
要約表に反映する
その他の部分:
明細表の作成は省略し、
要約表に反映させる
中間ファイルの保存
現実的にはプリントイメージ
マスタ
ファイル
税務調査などに備えた
限られたシステム資源の年度別管理
中間
ファイル
編集
プログラム
(編集プログラムのアウトプットファイル)で
保存する企業が多い
処理過程の
計算書
要求があった時にプリント
ワークフロー
仕事の流れに沿って機能が設計されているアプ
リケーションシステム
業務とデータ入力の一体化をシステム全体で進める
ための道具
情報システムと働く人との双方向の情報のやり取りの
連続
仕事をしやすい機能
• 承認ルートの電子化
• ドリルダウンによる明細情報までの段階的な追跡
• 多機能への柔軟なリンク
セキュリティーと使いやすさのバランスが大切
支払申請書の電子承認
承認
登録
厳格なパスワード管理
承認可能な端末機器の制限
申請書
承認
支払
申請
申請書
作成
申請書
ファイル
支払手続
申請書
プリント
支払
依頼
支払申請書
(モニター票)
電子承認
わが国でも税務当局の承認を得て実施可能
ERPなどではワークフローに組み込まれている
多くの企業では支払申請書をプリントし、上司が
承認して押印する手続を継承しているとみられ
る
支払申請書が証憑(領収書等)の貼付用紙を兼ねる
証憑貼付台紙として利用される申請書
承認印
支払申請書
(モニター票)
オペレータ
入力場所
依頼者:
管理部門:
勘定科目:
支払先:
支払日:
予算科目:
金額:
摘要:
証憑貼付
申請番号
入力日
エンドユーザー・コンピューティング
開示情報の正確性の確認に不可欠な場合、
会計監査/税務調査の対象となりうる
利用者が開発したシステムといえども、組織的に管理
する必要がある
情報処理過程の可視化が必要
最低限のドキュメントの確保
• プログラムの概要
• 変更の目的
• 表計算ソフトは、計算表そのものが情報生成過程をかなり説
明している
システム監査に関わる確認事項
税務当局との確認事項
監査法人との確認事項
会計情報システムの処
理および内部統制機能
が会計監査を行う立場
から見て妥当か
会計情報システムの処
理に税務上問題はない
か
会計情報
システムの
設計
汎用監査プログラムを
適用する可能性を考慮
して、ファイルなどの
構成は対応可能である
か
電子化される帳簿など
について事前に了解を
取り付けられるか
内部統制報告書
内部統制(再掲)
下記を目的として、経営者や従業員により遂行される組織的なプロセス
• 業務の有効性・効率性の確保
• 財務諸表の信頼性の確保
• 関連法規の遵守
企業は有価証券報告書と併せて内部統制報告書を開示しな
ければならない
概要
• 企業グループ(連結ベース)の財務情報を適正性を確保する体制を
経営者が評価し、報告書を作成する
• 監査法人が監査を行い、証明を添付する
内部統制と会計情報システム
会計情報が企業の実態を忠実に表現しているか
会計情報を作り上げる過程が適切か
• 人の誤りを抑制し,もし発生した場合に影響を最小限度にとどめる工夫
ができているか
• 不正が介在する余地がないか
– 内部牽制制度が組み込まれ,適切に機能しているか
– 会計監査人が粉飾を見抜くことができる仕組みができているか
信頼を獲得するための企業の姿勢と行動
• 内部統制報告書の開示で利用者に内部統制の仕組みと運用状況を伝
える
会計情報システム・セキュリティー機能の質
• アクセスコントロールの充実
• 証憑類の電子化対応
• 情報処理過程の可視化 など
帳簿の電子化の要件(再掲)
痕跡の残らない帳簿メンテナンスの禁止
アクセスコントロールの充実は内部統制からの要請
会計情報
システム
利用者
赤黒方式に
よる訂正
電子帳簿の
アクセス
ログ管理
月次確定後
の訂正禁止
情報システ
ム担当者
直接メンテ
ナンスの
禁止
電子化
された帳簿
会計情報
システム
ユーティリ
ティー使用
管理厳格化
プログラム単位,ユーザー単位に
帳簿の参照を許諾
電子化された証憑類の管理(再掲)
入金報告
請求書
任意
範囲指定
納品書
・受発信後訂正、書込、削除の禁止
・受発信データの網羅性の確保
・アクセスログの管理
支払依頼
請求書控
納品書控
証憑類
プリント
取引先
取引日付
取引金額
証憑類
リスト
情報処理過程の可視化(再掲)
システムドキュメントの整備
運用マニュアル
仕様書
ネットワーク関連図 システムドキュメントの整備
概要書
処理内容
の説明
証憑類
会計情報
システム
財務諸表など
開示書類
情報処理過程の可視化
明細書
要約表