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予報研究部コロキウム 2006.1.24
3.メソモデルによる全球アンサンブル予報のダウンスケー
ル実験
2005年気象学会秋季大会(神戸大学)
斉藤和雄(気象研究所予報研究部)
経田正幸・山口宗彦(気象庁数値予報課)
•メソ現象はその時間スケールの短さから決定論的な予測には限界、実
用的なリスクマネジメントのためには、予測に信頼度情報が付加されるこ
とが望ましい。
•メソアンサンブル手法は、まだ確立されておらず、早急に基盤研究に取り
組み、様々な手法を比較・評価して行く必要がある
本研究 週間アンサンブル予報の摂動をメソモデルに与えて以下を調査
・メソモデル予報における境界条件の影響
・短期降水予測の観点からの週間アンサンブル摂動の特徴
・メソアンサンブル予報に向けた初期摂動の扱い
平成16年7月新潟・福島豪雨、2004年10月台風22号のケースを対象
3.1 平成16年新潟・福島豪雨の全球EPSダウンスケー
ル実験
(序報:春季学会ポスター発表)
実験ケース: 2004年7月13日を対象に実験。1図に示すよ
うに新潟県(佐渡の南)から福島県にかけてライン状降水
域が停滞、新潟県で大きな被害。
2004年7月13日レーダーアメダス3時間雨量
左)00 UTC, 中)03 UTC, 右)06 UTC
現業メソモデル10kmNHM(上)とRSM(下)の予報
2004年7月12日12UTC初期値10kmNHM前3時間雨量 左)FT=12, 中)FT=15, 右)FT=18
7月12日00UTC初期値RSM 左)FT=24, 中)FT=27, 右)FT=30
主要な雨域は北にずれ 強雨の集中の持続は予測されず
メソモデルの予報は境界値を提供したRSMの予報に類似
メソモデル(MSM程度を想定)の降水予測は親モデルの
予測の影響をどの程度受けるのか?
初期値の違いで予報はどの程度変わるか?
境界条件の影響は内部に伝播
気圧場(運動場):音波、重力波で伝播
温度場:重力波、風速で伝播
水蒸気場:風速で伝播
・メソモデルを全球アンサンブル予報にネスティングし、初
期値と境界値を変えてそれらの影響を調べる
・メソアンサンブルにとっての全球BVの特徴
気象庁現業週間アンサンブル予報システム
(経田、2000)
2001年3月~ 12UTC初期値、25メンバー、T106(1.125度) 40層
BGM法(12モード、12時間サイクル)
摂動作成方法:
①12時間の摂動ラン
②予報誤差を北半球で求め、500hPa高度場振幅が気候値
変動の10%になるように係数を決め、誤差成長を規格化*
③上記を00,12UTCに行ってBreeding
12UTCに摂動の直交化(直交化係数0.75)
④アンサンブル予報用摂動は、直交化を行わず、
500hPa高度場振幅が気候値変動の15%になるように規格化*、
海陸での解析誤差の違いを考慮し、低波数パターンンの
0.7~1.0の重み分布をかける
*QVについては、Breeding、予報用摂動ともに5割増にインフレーション
(熱帯域の成長率を高めるため)
気象庁週間アンサンブル予報
7月12日12UTCを初期値とする週間アンサンブル予報前6時間降水量
コントロールM00
雨域を北にずれ
て予報
FT=12-18では雨
を弱めている
左) FT=00-06
右) FT=12-18
コントロール
(色分けは
1,5,10 mm)
メンバーM03p
降水域をやや
南に予測
FT=12-18に新
潟付近の降水
を増大
メンバーM03p
東北地方400×250kmの領域
全球EPS降水量(mm)
20
80
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
ENSmean
18
16
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
mean
70
60
14
FT=
-
12
18
50
12
10
8
40
M03p
RA
30
6
20
4
M0 3 p
コントロール
10
2
M01p,10p
0
0
M03m
10
20
30
M1 0 p
M10m
M01m
40
平均降水量(左)
50
60
70
FT=00-06
摂動を加えたメンバーは殆どが立ち上
がりの降水過少
M0
0 1p
0
コントロール
M1 0 m
M0 1 m
M0 3 m
20
40
60
80
極値(右)
降水の集中は表現されない
豪雨予測には解像度が不足
100
メソモデルによるダウンスケール実験
気象庁現業非静力学メソモデル(JMANHM; Saito et al., MWR in press)
10km 40層、3600×2880km、 H=22km
物理過程、力学過程等の設定は現業モデルと同じ
KFスキーム、側面境界緩和24格子、
32層(14km)より上にレーリーダンピング
・現業版NHM
初期値:メソ4次元変分法解析(MA)
境界値:6-12時間前の領域モデル予報値(RF) 更新1時間おき
・ダウンスケール実験NHM
初期値:全球アンサンブル初期値(M**)
境界値:全球アンサンブル予報値(M**) 更新6時間おき
・インクリメンタル実験NHM
初期値:メソ4次元変分法解析(MA)+全球BVによる摂動(M**)
境界値:12時間前の領域モデル予報値(RF) 更新3時間おき
メソモデル (10kmNHM)によるダウンスケール実験
コントロールランではルーチン予報と同様弱い降水しか表現されなかったが、
メンバー'M03p'では、持続するライン状雨の集中が表現された。
10kmNHM前6時間雨量。コントロールラン 左)FT=06 右)FT=18
上図と同じ。メンバー'M03p'
拡大図 M00
FT=15-18 3時間雨量
拡大図 M03p
FT=15-18
週間アンサンブル予報のダウンスケール実験
7月12日12UTCを初期値とするT106EPSモデル面ファイル(1.125度、40層、6時
間おき)を初期値・境界値に用いて10kmNHMによる24時間予報。東北地方降水量。
20
200
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
MARF
ENSmean
18
16
FT=
-
12
18
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
系列6
mean
RA
180
160
14
140
12
120
10
100
M03p
8
RA
80
M03p
M03pM00
MARF
6
M03pM00
60
4
40
MARF
M00pM03p
M00pM03p
2
M01m
コントロール
M01p
M10p
M10m
M01p,10p
0
0
M03m
10
20
30
コントロール
20
40
平均降水量(左)
50
60
70
FT=00-06
ほとんどのメンバーは実況(RA)やメソ
解析初期値(MARF)より少ない
M10m
M01m
M03m
0
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
極値(右)
M03pでは降水の集中を表現、
実測よりはまだ弱い
200
誤差の成長と境界条件の影響
コントロールランに対するメンバー‘M03p’における各予報変数の誤差(RMSE)と
エネルギー(型)ノルム
1
E K   {(U M 03 p  U M 00 ) 2  (V M 03 p  V M 00 ) 2  (W M 03 p  W M 00 ) 2 }dV
2
1 C
E I   { v ( M 03 p   M 00 ) 2 }dV ,
ET  E K  E I
2 
初期値における水平風のRMSEは1m/s程度で、24時間予報で約2倍に成長している。
これに対して、温位や水蒸気、海面気圧の誤差成長は緩慢である。
エネルギーノルムは4倍弱になっているが、主に運動エネルギーノルムの増大によっている。
3.5
6.00E+00
U
V
W
PT
QV
QC
PSEA
3.0
2.5
Energy Norm (Wind)
Energy Norm (CvT)
Energy Norm (Total)
5.00E+00
4.00E+00
2.0
3.00E+00
1.5
2.00E+00
1.0
1.00E+00
0.5
0.00E+00
0.0
0
3
6
9
12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48
0
3
6
9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48
7図 左)メンバー‘M03p’における各予報変数の誤差(RMSE)
U,V (m/s*Kg/m3), W (cm/s*Kg/m3), PT (K), QV(g/Kg), QC(0.01g/Kg), PSEA (hPa)
右)エネルギー型ノルム
境界条件の影響
1) 初期摂動なしで境界条件だけを'M03p'にかえたもの: 'M00M03p'
2) 初期条件のみ'M03p'で与え、境界条件はコントロールのままのもの:
'M03pM00'
7月12日12UTC初期値全球アン
サンブル予報の10kmNHMによ
るダウンスケーリング。
FT=18の前3時間降水量。
左)コントロールラン
('M00') 右)’M03p’
気圧場は比較的早く境界
条件の影響を受けるが、
FT=18でも降水は初期場
の摂動の影響を強く受け
ている。
‘M00M03p’ (境界条件のみ変更)
気圧場は‘M03p’に近いが、降水パ
ターンはコントロールランと類似
‘M03pM00‘ (境界条件変更せず)
気圧場はコントロールランに近い
が、降水パターンは‘M03p’と類似
誤差成長の特徴
初期摂動なしでも気圧場、水平風の誤差は比較的速やかに増大するが、上昇流や水蒸気,雲
水の誤差の成長は緩慢。一方、境界条件が同じでも上昇流や雲水の誤差成長は速やか。エネ
ルギーノルム(下図)は、約30時間で境界の影響と初期値摂動の影響が同程度となる。
3.5
3.5
U
V
W
PT
QV
QC
PSEA
3.0
2.5
2.5
2.0
2.0
1.5
1.5
1.0
U
V
W
PT
QV
QC
PSEA
3.0
1.0
海面気圧
水蒸気
0.5
0.5
水蒸気
0
3
6
9
0
12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48
6
3
6
9
12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48
左上) ‘M00M03p’ 右上)'M03pM00‘
気圧場は境界条件の影響をすぐに受ける
‥6時間で誤差の大きさが逆転
水蒸気場への境界条件の影響は緩慢に伝播
‥初期値の影響が長く残る
TotalNorm (M03p)
Total Norm (M00M03p)
TotaNorm (M03pM00)
5
海面気圧
0.0
0.0
4
3
2
1
10図 各実験の全エネルギーノルム
0
0
3
6
9
12
15 18
21 24 27
30 33
36 39
42 45
48
RA
MARF
ENSmean
16
全球EPSコントロールランは、平均雨量が観測より
かなり少ない。メソ解析を初期値とした場合の方が
雨量は多い。
14
12
10
M0 3 p
8
RA
M03pM00
?
MARF
6
4
M00pM03p
2
M0 1 m
コントロール
M0 1 p,1 0 p
0
0
M1 0
M0 3 m
10
20
30
40
10kmNHM前6時間雨量。全球EPSコントロールランからのダウンスケール 左)FT=06 右)FT=18
→メソ解析を初期値と
して、全球EPSの摂動
をインクリメントとし
て与える
10kmNHM前6時間雨量。メソ解析を初期値としてRSM予報を境界値 左)FT=06 右)FT=18
新潟豪雨M03pの摂動の特徴
500hPa付近の風
上層の谷を東日本南部まで深める
700hPa付近の水蒸気
本州付近をやや乾燥化する一方、
日本海西部以西を湿らせる
インクリメント実験
7月12日12UTCのメソ解析を初期値として、全球EPSによる摂動をイン
クリメントとして与えた場合。東北地方降水量。
200
20
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
Ensmean
系列8
18
16
160
140
14
FT=
-
12
18
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
mean
RA
180
12
120
M03p
M04p
10
8
100
M03p
コントロール
6
M12m
M04p
80
RA
60
M01m
40
4
コントロール
M01m
M01p
M03m
20
2
M01p
M10m
M10p
M03m
M10p
M10m
0
0
0
10
20
30
40
50
平均降水量(左)
降水量をかなり改善
60
70
FT=00-06
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
極値(右)
降水の集中を表現、100mm近い極値
極端なメンバー残る
新潟豪雨M01pとM01mの摂動
(700hPa付近のQv)
M01p 日本付近下層を著しく乾燥化
M01m 日本付近を下層著しく湿潤化
現在の週間EPS初期摂動は、メソモデルには大きすぎ
・5日予報の誤差が気候値誤差になるように摂動の大きさを調整
・物理過程の不確定さ未考慮、初期摂動のみで予報スプレッド
・熱帯のスプレッドを得るためにQvをインフレーション
→解析誤差を見積って規格化する必要
メソ4DVAR解析で使っている背景誤差:
PS: 0.7 hPa
U,V: 対流圏中下層で約2 m/s、ジェット付近で約
3.5 m/s
T: 対流圏中下層で約 0.8K、対流圏上部で約 1K
RH: 対流圏下層で約10 %、対流圏中層で約15 %
‥解析誤差の大まかな見積もりとして、背景誤差の
80-85 %程度を見込む
NMC法によって求めたメソモデル
のQvの鉛直誤差共分散行列
規格化の目安として
3.5
PS: 0.6 hPa
rU,rV: 1.8 m/s*(Kg/m3)
: 0.7 K
Qv: 対流圏中層でRHの12%,
850hPaでRHの8%
今回:
摂動RMSが解析誤差の目安値を
超える場合に層ごとに規格化
NMC分散
NMC誤差
QV層平均10%
QV層平均15%
RH*10%
RH*15%
M03p
M01p
採用
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35
インクリメント規格化
7月12日12UTCのメソ解析を初期値として、全球EPSによる摂動を規格
化してインクリメントとして与えた場合。東北地方降水量。
20
200
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
18
16
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
mean
RA
180
160
ENSmean
14
FT=
-
12
18
140
12
120
M04p
M03p
M03p
100
10
M01p
8
M0 4 p
80
RA
M0 2 m
6
M05p
M0 5 p
60
コントロール
M02m
M02p
M0 1 p
M05m
4
M03m
コントロール
M01m
M04m
2
M04m
M0 2 p
40
M0 3 m
M0 1 m
M0 5 m
20
0
0
0
10
20
30
40
平均降水量(左)
50
60
70
FT=00-06
極端なメンバー減る
正摂動は実況の周りに分布
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
極値(右)
極端なメンバー減る
多くのメンバーで後半の強雨を予測
インクリメント実験(規格化前)
7月12日12UTCのメソ解析を初期値として、全球EPSによる摂動をイン
クリメントとして与えた場合。東北地方降水量。
20
200
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
Ensmean
系列8
18
16
160
140
14
FT=
-
12
18
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
mean
RA
180
12
120
M03p
M04p
10
8
100
M03p
コントロール
6
M12m
M04p
80
RA
60
M01m
4
40
M01m
M01p
コントロール
M03m
2
20
M01p
M10m
M10p
M03m
M10p
0
M10m
0
0
10
20
30
40
平均降水量(左)
50
60
70
0
20
FT=00-06
極端なメンバー残る
40
60
80
100
120
140
160
極値(右)
180
200
200
インクリメント規格化
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
mean
RA
180
160
多くのメンバーで後半の強雨を予測
70mm以上の雨を予報しているメンバーが5つ
60mm以上では8、40mm以上では19
140
120
M03p
100
M06p M08p
80
M12m
M04p
60
M10p M01p
M01m
M03m
40
コントロール
M10m
20
0
0
M03p FT=12-15
M08p FT=15-18
20
40
M04p FT=12-15
M06p FT=12-15
M12m FT=12-15
60
80
100
120
140
160
180
200
最初の10メンバーでは
20
200
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
ENSmean
18
16
160
14
FT=
-
12
18
01p-12p
01m-12m
コントロール
RA
mean
RA
180
140
M04p
12
120
M03p
10
M03p
100
M01p
8
80
RA
M0 4 p
コントロール
6
M05p
4
60
M02m
M02p
M05m
M0 5 p
M0 1 p
M0 2 p
M0 3 m
M0 1 m
40
コントロール
M03m
M01m
2
M0 2 m
M0 4 m
M0 5 m
20
M04m
0
0
0
10
20
30
40
平均降水量(左)
50
60
70
0
20
40
FT=00-06
10メンバーでもそれなりの散らばり
摂動を直交化すると?
60
80
100
120
140
160
極値(右)
180
200
新潟・福島豪雨のケース、とりあえずのまとめ
1)メソモデルによるダウンスケールでは、高分解能化のメリットを生かしながら。全球
EPSの各メンバーの特徴が引き継がれる。豪雨発生時の雨量を増やしたメンバーでは
実況に良く似たライン状の降水の集中が表現された。
2)全球EPSの正摂動は降水域で殆どが初期値を乾かす側に入っていた。負摂動で
は、初期場を過剰に湿らせて、初期場の大気を非現実的に不安定にしてしまうメンバー
が見られた。
5)気圧場は比較的早く境界条件の影響を受けるが、降水予報の違いは1日予報まで
は小さかった。境界条件の影響が降水予報に及ぶ時間については、事例や領域の大
きさにより異なることが予想される。
→台風のケースでは?
3)摂動をインクリメントとしてメソ解析に加えた場合では、より多くのメンバーで豪雨期
の降水集中が表現された。
4)摂動を解析誤差程度に規格化することにより極端なメンバーをなくすことが出来る。
多くのメンバーで豪雨期の降水集中が表現された。
推測:
メソモデル(MSM程度を想定)の降水予測は親モデルの
予測の影響を強く受ける
‥新潟福島豪雨のケースでは ×
降水は初期場の水蒸気分布が重要!
ただし気圧場は境界条件の影響を強く受ける
推測2
台風進路予報は親モデルの予測の影響を強く受ける
これによって、台風のケースではメソモデルの降水予測は
親モデルの予測の影響を強く受ける
3.2 2004年台風22号のケース
2004年10月8日12UTC初期値。日本の南海上にあった台風が関東に上陸。
全球EPSの24時間予報は四国から房総沖までばらつき、コントロールラン
では中部地方に台風を予想
コント
ロール
M07p
台風0422号のアンサンブル予報
M07m
全球EPSの予報、FT=24
M07p
コントロール
M07p
M07m
NHMの予報、FT=24
コントロール(M00)
M07p
M07m
メソモデルの台風進路予報・降水予報は、全球EPS予報の傾向をよく反映
新潟・福島豪雨のケースでは気圧場は境界条件の影響を強く受けた
→境界条件を変えると台風進路はどの程度変わるか?
NHMの予報、境界条件の影響
コントロール(M00)
M07pM00
M07mM00
上段:境界条件をM00に
下段:境界条件だけを変化
台風進路予報に対する境界
条件の影響は思いの他小さ
い
→進路は初期値摂動の影響
が大
何が進路を決めている?
M00M07p
M00M07m
M07pの摂動の特徴
台風付近の指向流に北西向きの偏差
台風北東側の下層大気を乾燥化
M07mの摂動の特徴
台風付近の指向流に南東向きの偏差
台風北東側の下層大気を湿潤化
推測2
台風進路予報は親モデルの予測の影響を強く受ける
これによって、台風のケースではメソモデルの降水予測は親
モデルの予測の影響を強く受ける
‥台風0422号のケースでは ×
‥では何が進路を決めているのか?
推測3
台風進路予報は熱の出方で決まり、水蒸気の初期場の違い
の影響を強く受ける
NHMの予報、初期条件の影響
コントロール(M00)
M07p_uvptM00
M07m_uvptM00
上段:比湿の摂動ゼロ
雨域はコントロールに近づ
くM07pの台風進路は余り
違わない
下段:比湿・温位の摂動ゼ
ロ、M07mでは台風位置が
かなり変わっている
M07p_uvM00
M07m_uvM00
NHMの予報、初期条件の影響
コントロール(M00)
M07p_qvptM00
上段:比湿・温位の摂動のみ
降水域が西に
台風位置は少し西に
降水予報は変わる。
M07pでは台風位置はそれほ
ど変わっていない。M07pでは
風速場・地表気圧の摂動がな
くても、台風進路は変わる。
M07m_qvptM00
降水域が東に
台風位置は東に
台風22号のケース、とりあえずのまとめ
1)台風22号のケースでは、台風進路への境界条件の影
響は、1日予報では大きくなかった*。ただし局地的な雨量
については進路の僅かな違いが結果を大きく変える場合
がある。
2)初期値摂動のうち、進路予報に与える影響は運動場
の影響の方が水蒸気摂動や温位摂動よりも大きかった。
転向後の動きの早い台風だったことがあるかも知れない。
ただし水蒸気と温位摂動のみでも降水予報は変わり、進
路予報はその影響を受ける。
*解析予報サイクルを通じた親モデルの重要性は別
3.3 今後
・境界条件の影響内部伝播の位相速度を調べる
・境界条件影響が及ぶ時間と領域の大きさの関係
・トータルノルムの再定義による摂動規格化方法の見直し
・摂動直交化と直交化手法の検討
→・NHMによるBGMのテスト
・アンサンブル平均、スプレッドの評価
・同化システムによる解析誤差の場所依存性
・4DVAR同化システムのLT,ADJによるSV(大関・國井)との
比較
・SV法による全球EPS(台風)のダウンスケーリング
(THORPEX)
・2008年北京オリンピックFDP/RDPへの適用