The Panda’s Thumb of Technology 経営情報システム工学専攻 07538991 小幡 陽輔 07539585 篠田 崇 目次 パンダの親指:進化論再考 スティーヴン・ジェイ・グールド パンダの親指 The Panda’s Thumb of Technology STEPHEN JAY GOULD キーボードの配列 何が違うのか? かわるものとかわらないもの 2/39 ジャイアントパンダ 分類 中国名 ジャイアントパンダ 食物 大熊猫 日本名 哺乳網 食肉目 クマ科 竹99%(新しい茎や葉、筍) レッドリスト EN=絶滅危惧種 3/39 人間とパンダとの手の比較 人間 4本の指 母子対向性をもつ親指 パンダ(ジャイアントパンダ) 5本の指(親指含む) 母子対向性をもつ撓側種子骨 4/39 進化に至った経緯 パンダの真の親指(Stephen Jay Gould) 他の役割を振り当てられて別の機能を持つように特殊化 しすぎていたため、物をつかめるような対向可能な指に変わ ることができない 手持ちの部品を使わねばならず、拡大した手首の骨で間に 合わせるという、少々不体裁でもひとまず役に立つ方法で満 足しなければならない 撓側種子骨を親指であるかのようにみせている 5/39 歴史を物語る不完全性 生物の体の構造は、理想的な技術者がデザインしたと は思えない不完全性が存在する 進化の証拠は、歴史を物語る不完全性にある テクノロジーの分野でも、同じようなことが起こっている 6/39 The Panda’s Thumb of Technology テクノロジーの分野における歴史の不完全性 キーボード配列 7/39 QWERTY配列 左からQWERTY 19世紀に考案 現代のキーボードの基本配列 8/39 QWERTY配列の歴史 元はタイプライター タイプバーが絡むので、打ちにくい配列 typewriterと打ちやすくするため 9/39 QWERTY配列の歴史 できるだけ打ちやすくしかも絡みにくい配列 キーとキーの間には自由度があった 正しいつづりはtype-writer なぜこんな配列にしたのかという疑問 QWERTY配列のタイプライタ発明当時の関係資料が残ってい ない 10/39 QWERTY配列ができるまで 共通 配置を決める上では、 アルファベット順に並べる ※イメージ図 11/39 QWERTY配列ができるまで ① キー配列が4段になった当初、 「M」は「L」の右 12/39 QWERTY配列ができるまで ② その配列で「B」と「S」を入れ替えると、少なくとも 最初のAからNまでは順に並べようとしていた 13/39 QWERTY配列ができるまで ③ OからUまでは、上段(2段目)を中心に集め、 VからZまでは残りの配置となる ④ Sを除くU以降の文字は、使用頻度の 高い順から打ちやすいところに配置 ⑤ QWERTY配列の完成 14/39 当時の状況 • • 1888年、タイピングコンテスト QWERTY vs ライバル機種(非QWERTY) • ライバル機種‥六列配置・シフト機構なし ※イメージ図 • マグリン(QWERTYを扱ったタイピスト)は、QWERTY配 列を暗記し、完璧に操った • • ブラインドタッチの始まり QWERTY配列の決定的優位の確立 15/39 QWERTY配列の普及 レミントン社がQWERTY配列のタイプライターを大量販 売 多くのタイピストがQWERTY配列を覚えた 他の会社もレミントン社を追随 結果、QWERTY配列のタイプライターが大量生産 16/39 タイプライターとコンピュータ 電話と電卓の配列は異なる タイプライターとコンピュータの配列も異なってもよいのでは? なぜ同じになったか? テレタイプ機能の 存在 タイプライターとコンピュータ の製造会社が同じ しかし、QWERTY配列には非合理的な部分が多い 17/39 QWERTY配列の非合理性 使用頻度の多い「E」「A」「S」が、打ちにくいポジション あくまでタイプライター用の配列で、タイプライターの機 械的特徴や制約にあわせて決定 条件の全く違うコンピューターのキーボードに適合して も、使い易いはずがない そこで、合理的に配置をしたキーボードが登場した 18/39 Dvorak配列 1932年、August Dvorakが提唱 QWERTY配列と比較し、その優位性を説いた 19/39 Dvorak配列の効果 ホームポジションに使用頻度の高い文字を配置 効率的な打鍵が可能 余分な指の動きをなくす 容易かつ少ない時間で、タイプを学べる タイプする速さの世界記録はこの配列で樹立 20/39 Dvorak配列の効果 黒い部分‥ホームポジションからの移動 白い部分‥ホームポジションからの移動なし 21/39 アルファベット使用頻度 回数 % E 1570 11.7 A 1199 8.9 T 1152 8.6 I 989 7.4 S 978 7.3 2007年5月23日 16時16分時点での CNNニュース TOP STRIESに掲 載されていた記事の 13,341文字を解析 2007年5月23日に実験 22/39 ローマ字使用頻度 回数 % A 1386 13.0 O 1210 11.3 I 1121 10.5 U 1100 10.3 N 1019 9.5 日本語については 2007年4月21号 「暮らしの通信」 より、 10,691文字を解析 2007年5月23日に実験 23/39 キー位置による関係 上中下段のキーを押す割合 キー位置 Qwerty 配列 Dvorak 配列 上段 中段 下段 英語 49% 35% 16% 日本語 54% 32% 14% 英語 21% 70% 9% 日本語 11% 75% 14% 2007年5月23日に実験 24/39 キー位置による関係 段別使用頻度(英語) 80 70 60 50 40 30 20 10 0 QWERT DVORAK 上段 中段 下段 2007年5月23日に実験 25/39 キー位置による関係 段別使用頻度(日本語) 80 70 60 50 QWERT DVORAK 40 30 20 10 0 上段 中段 下段 2007年5月23日に実験 26/39 QWERTYは揺るがない QWERTY配列に比べ、優れた点は多い Dvorak配列の普及率は高くない 通常のキーボード練習システムがQWERTY QWERTYに慣れてしまうと、なかなか別の体系に乗り換える のが大変 経済学のロックインや経路依存の複雑系経済学の題材 27/39 QWERTYの経済学 ロックイン 単純な技術性能や価格メカニズムだけではなく、ごくささい な「歴史的な偶然性(初期設定条件)」によって、技術の普 及経路(Path)が後世まで決定される(依存性=別の道を 選べられなくなる) 経路依存 「同じ規格や技術を使っている人が多いほどその効用が 増す」というポジティブ・フィードバックが働き、さらに、いく ら他の技術が効率的に優れていても現在の方式を捨てて 適応するためのスイッチングコストがかかるため、デファク トスタンダートの地位を揺るがすことが難しい 28/39 考察 今日ではほとんどのキーボードがこの配列であるため、 QWERTY配列が使えることが前提で、ユーザの判断で 配列を変更できる入力装置が登場しない限り、別の配 列に置き換わる可能性はきわめて低い 特に業務用ではその傾向が強く、業務として入力できれ ばいいのであって、目に見えて効率的であることが証明 されても、それを使うという流行が起こらない限りは現 状のまま どのような変化をとげてきたかという歴史が重要 29/39 では、デファクト・スタンダードの 地位は揺るがないのか? 30/39 デファクト・スタンダード デファクト・スタンダード 事実上市場の大勢を占めるようになった規格 揺るがないもの (例)キーボード QWERTY配列 → かわらない 入力できればいい かえられるもの (例)OS 何が違ったのか? Mac → Windows OSならなんでもいいわけではない 31/39 何が違うのか? キーボード OS Humanーmachine machineーmachine 人が直接操作するか否かによる かわらないと考えられるもの リモコン配置、マウス操作 かわっていくと考えられるもの メモリの容量、画質 32/39 何が違うのか? 人 操作 かわると 非効率的 インタフェース 機能、性能 かわっていく モノ 33/39 何が違うのか? 人の感性が伴う 既存のインタフェースに慣れている キーボード配列が代表 非効率な配置とわかっているが、新たな配列を導入して、覚えなおす のは、より非効率 コンピュータ内部(人の感性に依らない) 機能・性能の向上 OSが代表 使いやすく、効率化している 時代のニーズに合わせて日々進歩 34/39 まとめ 人間の感性は重要で、一度慣れたものから、次の体系 に乗りかえるのは容易でない パンダは生き抜くために自分の体を変化させた Dvorak配列が普及しない点からもわかる 歴史の非合理性を自分たちで変革 キーボード配列は、あればよい程度のものであるから、 そこまで配置にこだわる必要もない 35/39 まとめ 今後、次々と新しい機能・性能をもったモノが出てくるで あろうが、人間が操作するインタフェースをかえることは 難しい パンダの周りにエサがあり、本来の肉食のままの姿で あったら、笹を食べることも、撓側種子骨を親指代わり として使うこともなかった 生物は歴史の中で、自分たちが使いやすいようにモノを かえていくが、できたモノを見てみると、様々な非合理 性が含まれる その時の状況や条件が関係するとはいえ、歴史の重み がわかる 36/39 参考文献 パンダの親指〈上〉‐進化論再考 がんばれカミナリ竜〈上・下〉‐進化生物学と去りゆく生 きものたち‐ スティーヴン・ジェイ・グールド,桜町翠軒訳:『パンダの親指(上)‐進 化論再考』,早川書房,(1986) スティーヴン・ジェイ グールド,広野 喜幸,松本 文雄,石橋 百枝 訳:『がんばれカミナリ竜〈上・下〉‐進化生物学と去りゆく生きものた ち‐』,早川書房,(1995) 日本パンダ保護協会 http://www.pandachina.jp/aboutpanda.html 37/39 参考文献 キー配列の規格制定史 日本編 ‐JISキー配列の制 定に至るまで キー配列の規格制定史 アメリカ編 ‐ANSIキー配列 の制定に至るまで 安岡孝一: システム制御情報学会誌,Vol.48, No.2, pp.39- 44 2004 QWERTY配列再考 安岡孝一: システム制御情報学会誌,Vol.47, No.12, pp.559564 2003 安岡孝一: 『QWERTY配列再考』,情報管理学会誌,Vol.48, No.2, pp.115- 118 2005 デファクト・スタンダード 山田英夫: 『デファクト・スタンダード』,日本経済新聞社,(1997) 38/39 参考文献 The Dvorak Simplified Keyboard -Forty years of Frustration Robert Parkinson: The Dvorak Simplified Keyboard: Forty years of Frustration; Computers and Automation, vol21, No.11, pp.18-25 (1972-11). 39/39
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