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タッチタイピングに
ついて考える
the 34th Nandemo-Seminar
2005/11/28
中山 裕貴 (今井研究室)
今回の内容

タッチタイピングについて
 キーボード配列
・ 入力法
QWERTY vs. Dvorak
 ローマ字入力 vs. カナ入力
 その他の配列 ・ 入力法

 タイピング練習ソフト&ゲームの考察
打鍵ミスをどう扱うか
 一人用の「練習ソフト」から対戦「ゲーム」へ

キーボード配列の歴史(英語)
タイプライターの原型の誕生 [1867]
当時の配列は ABC順に2列
QWERTY配列に近いタイプライター[Sholes, 1873]
さらに改良し、現在のQWERTY配列に
1890年代にはデファクトスタンダードに
・・・が、QWERTY配列への不満が存在
Dvorak配列の提案 [Dvorak, 1936]
母音を左手、子音を主に右手に割り当てることにより、
・ 負担が左手に集中することを防止
・ 左右の交互打鍵による高速打鍵
QWERTY配列に対する優位性を示す様々な根拠にも関わらず、
QWERTYに取って代わることはなかった(QWEはANSI第一標準、Dvoは第二標準)
キーボード配列の歴史(日本語)
(ローマ字入力については英語キー配列の自然な応用)
カナ配列(旧JIS配列) [JIS C 6233, 1972]
・ [山下, 1923]による配列が元に
・ 打鍵の効率性よりも、同一行の文字を近くにまとめることによる
覚えやすさを優先
打鍵効率を考えた新JIS配列[JIS C 6236, 1986]も制定されたが、後に廃止
新JIS配列(最上段はカナ文字には使用しない):
左上の文字はシフト使用、□囲み文字は促音(小さい文字)
配列の比較:
QWERTY vs. Dvorak
QWERTY:
- ^ ¥
Q W E R T Y U I O P @ 「
A S D F G H J K L ; : 」
Z X C V B N M , . / ¥
Dvorak:
「
」 ¥
: , . P Y F G C R L / @
A O E U I D H T N S ー ^
; Q J K X B M W V Z ¥
(赤字が母音)
QWERTYに対する
Dvorakの優位性の(従来の)根拠

優位性の理論的根拠:
英文中の文字の出現頻度:
E>T>A>O>N>…
>K>X>J>Q>Z
 母音は左手の中段、良く使う子音は右手、
あまり使わない子音を左手の上下段に配置
左手への負担の集中を回避
 交互打鍵による高速化


ex. word: effect, degree
ギネス記録(37500strokes / 50min = 150wpm) は
1 word = 5 stroke
Dvorakによる達成
( http://sominfo.syr.edu/facstaff/dvorak/blackburn.html )
QWERTYとDvorakの
例文を用いた比較

サンプル: 日本国憲法の英語版
 文字の配置が上中下段のどこか
 任意の隣り合った文字の並びについて、
担当する手が同一か
 手が同一の場合、同じ指による連続打鍵か
 同じ指による連続打鍵の場合、同一キーの連打か
そうでないか

の回数をQWERTY, Dvorakそれぞれ集計する
実験結果
最上段
上段
QWERTY 52(0.2%) 12141(51%)
Dvorak
QWERTY
Dvorak
39(0.2%)
中段
下段
7543(32%) 4090(17%)
5764(24%) 16304(68%)
1719(7%)
異なる手
異なる指
異なるキー 同一キー連打
(ex. ke)
(ex. re)
(ex. de)
5946(31%) 11367(60%)
10332(54%)
7692(40%)
(ex. ee)
1211(6%)
579(3%)
500(3%)
579(3%)
Dvorakの優位性を示唆する結果となっている
入力法の比較:
ローマ字入力 vs. カナ入力
ローマ字入力(QWERTY):
Q W E R T Y U I O P @ 「
A S D F G H J K L ; : 」
Z
カナ入力:
X
C
V
B
N
M
,
.
/
¥
赤字はシフトにより促音(小さな文字)に
ぬ ふ あ う え お や ゆ よ わを ほ へ ー
た て い す か ん な に ら せ ゛
゜
ち と し は き く ま の り れ け む
つ さ そ ひ こ み も ね る め ろ
ローマ字入力とカナ入力の利害得失

ローマ字入力
 ○手を動かす範囲が小さい
 ●同じ文章を打つ場合、カナ入力より打鍵数が多
い

カナ入力
 ○打鍵数はローマ字入力より少ない
 ●文章に外来語が多く含まれる場合、半濁点や
伸ばす音(長音)が打ちづらい
 ●促音(小さな文字)の度にシフトが必要
その他の配列
50音カナ配列(MSXパソコンに採用):
赤字はシフトにより促音に
あ い う え お な に ぬ ね の ら り る
か き く け こ は ひ ふ へ ほ れ ろ
さ し す せ そ ま み む め も ゛
゜
た ち つ て と や ゆ よ わ を ん
doragu配列 [吉田, 2003]:
Z D H C G J , U . / ;
「
R S N T K Y
I
A O E :
」
M P B W L F V X Q ー ¥
日本語をローマ字で入力する際、良く出現する文字を人差し指・中指に割り振る
拡張ローマ字入力法

アイデア:ローマ字には無い文字の並び
(連続する子音)に何か文字を割り当てる
ことで、トータルの打鍵数を減らせるのでは?

例:AZIK
http://hp.vector.co.jp/authors/VA002116/azik/azikinfo.htm
後述の拡張により、AZIKでは
「にゅうじょうけん」 を 「NYHJPKD」 で入力できる
AZIKの特徴
(1) 拡張後の整合性を維持するため、まずいくつかの入力方式を変更
っ ;
ん Q
しゃ XA しゅ XU しょ XO
ちゃ CA ちゅ CU ちょ CO
(2) 2文字目に「ん」が来る場合、
子音に続いて以下のキーを入力
-ai Q
-aん Z
-uu H
-iん K
-ei W
-uん J
-eん D
-oん L
(3) 二重母音へのキーの割当
例:
かん → KZ
-ou P
例:
そう → SP
その他、細かい拡張(「KT→こと」など)あり
タッチタイピング練習ソフト

練習ソフトの機能:
 親切なガイド機能付
etc…
 文章を打たせるものから、単語を打たせるもの、
一文字ごとのランダムタイプまで様々な種類の
ものが存在
 スコア評価によるモチベーションアップ
実用面から見た
正確性と速度のトレードオフ

文書の清書のような場面:
最終的な文章に誤りが無ければいい
(途中の打鍵ミスは無いに越したことは無く、
速度はある程度あればよい)

チャットのような場面:
正確性より速度が往々にして優先される

各ソフトは様々なミスペナルティを設けている
様々なタイピング練習ソフトにおける
打鍵ミスの扱いの例
速度重視
(1) 即座にミスした箇所から打ち直し、ペナルティ無し
(課題の文字数/かかった時間 = スコア)
例: 美佳のタイプトレーナ http://www.asahi-net.or.jp/~BG8J-IMMR/
TypeWell http://www.twfan.com/
(2) 即座にミスした箇所から打ち直し、ペナルティ有り
(課題の文字数/かかった時間 - ミスペナルティ = スコア)
例: e-typing http://www.e-typing.ne.jp/
trr http://ayapin.film.s.dendai.ac.jp/~matuda/Plamo30/trr.html
(3) ミスした箇所をBackspaceで修正する
(課題の文字数/修正も含めてかかった時間 = スコア)
例: 美佳テキスト http://www.asahi-net.or.jp/~BG8J-IMMR/mikatext.lzh
正確性重視
(4) ミスした単語を最初から打ち直し
例: xletters csesの/usr/local/games/xletters
タイピング「練習ソフト」から
タイピング「対戦ゲーム」へ

タイピング「練習ソフト」 のここでの定義:
得られたスコアをランキングに登録し、
そこで他者のスコアと競う

タイピング「対戦ゲーム」のここでの定義:
 複数人の同時プレイ
 自分の打鍵の結果が、他のプレイヤーに
interactiveに影響を及ぼす
THE TYPING OF THE DEAD: http://sega.jp/pc/soft/tod/
Weather Typing: http://www.eva.hi-ho.ne.jp/minoru-f/software/weathertyping.html など
各ゲームの特色

THE TYPING OF THE DEAD (2P対戦)
 出現する文(一度に複数)を奪い合い、速く打ち
切った方だけに得点が入る

相手の打っている途中の文を横取りする?
相手の打っていない文に照準を合わせる?
Weather Typing (最大4P対戦)
 出現する文(一度に1個だけ)を一番速く打ち切った
方だけに(速度に応じた)得点が入る
 ローマ字 vs. カナなどの混合戦もサポート
混合戦の場合、スコアの算出方法を適切に定める必要がある
⇒ カナの場合、打鍵速度に定数1.5を掛けている
まとめ

異なるキー配列の比較
 QWERTYに対するDvorakの打ちやすさの立証
 ローマ字入力とカナ入力の利害得失
AZIK等の拡張入力法による打鍵数の減少
 タイピング練習ソフト・ゲームの紹介・分類
