東京大学公共政策大学院教材 - Institute of Social

事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 III)
- 規制産業と料金・価格制度 (第10回 – 事例(4) 再生可能エネルギー問題)
2011年 7月 7日
戒能一成
0. 本講の目的
(手法面)
- 再生可能エネルギー、特に再生可能電力の
地域別需給と電源構成の問題を理解する
→ 再生可能エネルギーの供給問題への
空間経済学の応用
(内容面)
- 再生可能エネルギーの地域別供給推移と
供給拡大上の問題を理解する
2
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-1. 国内再生可能エネルギー導入量 (2009FY)
一次エネルギー総供給
20893 PJ
うち 再生可能エネルギー
1006 PJ (4.8%)
一 次 エ ネ ルギ ー 総 供 給 エ ネ ルギ ー 源 別 推 移
Primary Energy Supply by source
一 次 エ ネ ルギ ー 総 供 給 構 成 比 推 移
Primary Energy Supply Share by source
PES: PJ
%
25000
100
90
22500
原子 力
Nuclear
水力
Hydro
未活 用
RCE
自然 地熱
RNE
天然 ガス
N.Gas
石油 製品
Oil Prd.
石油 Oil
石炭 Coa l
20000
17500
15000
12500
10000
7500
5000
2500
0
原子 力
Nuclear
水力
Hydro
未活 用
RCE
自然 地熱
RNE
天然 ガス
N.Gas
石油 製品
Oil Prd.
石油 Oil
石炭 Coa l
80
70
60
50
40
30
20
10
1990FY
1991FY
1992FY
1993FY
1994FY
1995FY
1996FY
1997FY
1998FY
1999FY
2000FY
2001FY
2002FY
2003FY
2004FY
2005FY
2006FY
2007FY
2008FY
2009FY
1990FY
1991FY
1992FY
1993FY
1994FY
1995FY
1996FY
1997FY
1998FY
1999FY
2000FY
2001FY
2002FY
2003FY
2004FY
2005FY
2006FY
2007FY
2008FY
2009FY
0
3
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-2. 国内再生可能エネルギー導入量と内訳
- 再生可能エネルギーの半分以上は水力発電
- RPS法施行(’03)以降風力・バイオマスが急増
国 内再 生 可 能エ ネル ギ ー 供 給量 推 移
PJ
( 総合エネルギー統計よ り作成 )
2250
2000
1750
太陽光発電
風力発電
バイ オマス (廃棄物)
バイ オマス (木材・薪)
バイ オマス (黒液・廃材)
製紙廃棄物
太陽熱利用
地熱(発電・熱利用)
水力発電
国 内再 生 可 能エ ネル ギ ー 供 給量 構 成 比推 移
%
( 総合エネルギー 統計よ り作成 )
100
風力発電
90
80
バイオマス
70
1500
60
1250
50
1000
40
750
水力発電
30
500
20
250
10
0
太陽光発電
風力発電
バイ オマス (廃棄物)
バイ オマス (木材・薪)
バイ オマス (黒液・廃材)
太陽熱利用
地熱(発電・熱利用)
水力発電
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
0
4
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-3. RPS法(電気事業者新エネ電力特別措置法)
- 成立: 2002年制定、2003年施行
- 新エネ電力対象: 太陽光、風力、地熱、水力
(1MW以下水路式のみ)、バイオマス
* 2009年から太陽光は一部別枠買取義務化
- 義務内容: 電気事業者は前年度販売電力量
に応じた基準目標量*相当分を新エネ
電力で供給すること
* 現在約 1%相当、今後供給状況に応じ引上げ
- 遵守判定: 3年毎に判定
- 弾力措置: バンキング(過剰達成量持越し)可
5
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-4. RPS法の効果と限界
- 風力・バイオマスなど特定のエネルギー源は増加
- RPS法は電力のみが対象でかつ制約が多く
再生可能エネルギー全体への寄与は小さい
R P S法 買取 量 と 再 生可 能 エネル ギ ー供 給量
R P S法 によ る 買 取 電力 量 ・内 訳 推移
( 資源エネ ルギー庁公表値 )
PJ
80.00
70.00
( 資源エネルギー庁公表値・総合エネルギー統計 )
PJ
( 1kWh = 9.0MJ換算 )
1400
中小水力
バイ オマス
風力発電
太陽光
1200
60.00
バイオマス発電
1000
50.00
800
40.00
600
30.00
風力発電
20.00
10.00
400
200
0.00
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
再生可能エネル
ギー国内供給量
RP S法買取量
再生可能供給量
RPS法買取量
(1kWh = 9.0MJ)
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
6
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-5. 再生可能エネルギー比率の国際比較
- 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギー
の比率は日米欧で大差なし
一 次エ ネ ルキ ゙ー供 給構 成 比 較
( 2005年, IEA )
%
再生可能エネルギー比率
2005年度実績値
日 本 0.056
EU27 0.068
USA 0.063
(IEA統計)
100
90
太陽 他
地 熱
風 力
水 力
バイ オマス
原子 力
天然 ガス
石 油
石 炭
80
天然ガス
70
60
50
40
石 油
30
20
石 炭
10
0
U SA
E U 27
J APAN
7
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-6. 再生可能エネルギー内訳構成の国際比較
- 再生可能エネルギーの内訳構成比率は日米欧
で異なり、欧州は特異的に水力小・風力大
再 生可 能 エ ネ ルキ ゙ー内 訳構 成 比 較
( 2005年, IEA )
%
100
90
80
水力発電
70
太陽 他 60
風 力
地 熱 50
水 力
バイ オマス 40
(2005)
バイオマス
水力
地熱
(小計)
日
米
欧 .
44.5 48.6 68.1
50.4 42.2 21.3
2.1
5.4
4.4
97.1 96.2 93.7
30
バイオマス
20
10
0
U SA
E U 27
J APAN
風力
1.2
太陽光・熱 1.8
2.8
1.0
5.0
1.3
8
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-7. 再生可能エネルギーの国際比較指標(1)
- 単純な数値の比較だけではなく、社会的条件
や地理条件などを考慮した多面的比較が必要
- 再生可能エネルギー/最終エネルギー消費比率
(RNE/FEC)
→ エネルギー自給可能性の一指標
- 可住地人口密度
(PDHL)
→ 再生可能エネルギーによる土地利用可能性
と費用に関する一指標
9
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-8. 再生可能エネルギーの国際比較指標(2)
- 可住地人口密度を揃えて比較した場合の例:
日本の再生可能エネルギー比率は欧州より低?
↑ RNE/FEC
再 生 可能 エ ネル ギー 比 率 と 人 口 密度
( 2005年 )
再生可能エネ ルギー/最終エネ ルギー消費 (%)
45.0
EU 27
日 本
USA
スウ ェ ーデン
40.0
ラ ト ビア
35.0
30.0
フィン ラン ド
25.0
オー ストリア
ポルトガル
20.0
エ ス トニア
リト ワニア
15.0
10.0
USA
5.0
デン マーク
フラ ン ス
スペ イン
(EU)
日 本
ドイ ツ
アイ ルラ ンド
イ ギ リス
オラ ンダ
0.0
10
RNE/FEC =
-0.095 * PDHL
(0.001)***
+6.1x10-4 *PDHL2
(0.004)***
+22.32
(0.013)**
R2= 0.422
100
可住地人口密度 (人/km2, 2005)
1000
PDHL →
EU27 日 本
RNE/FEC 8.5 % 8.4%
PDHL
112
343
1. 再生可能エネルギー導入量・比率と国際比較
1-9. 再生可能エネルギー比率の比較と考察
- 可住地人口密度を揃えて比較した場合、日本
の再生可能エネルギー比率は欧米に遜色ない
- 日本では相対的に降水量が多く、地形が急
峻で水力発電に有利 (= バイオマス・風力不利)
- 一方、平地の土地利用・宅地化が進み農林
業生産が減退気味であるため バイオマス開発
利用の拡大に限界あり、緯度・風況や土地利
用制限(国立公園)条件から風力にも問題多
→ 独自路線による再生可能エネルギー戦略が必要 11
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-1. 大規模集中型/小規模分散型の相違(電力)
大規模(通常)電源
大規模集中型再生可能電源
石炭・石油・LNG火力発電
原子力発電
揚水式水力発電
貯水式水力発電
地熱発電
風力発電
メガソーラー式太陽光発電
バイオマス発電(混焼分)
需給調整
高圧変電所
高圧送変電系統
供給変電所
配電網
小規模分散再生可能電源は
配電網以下を経由する
大規模集中型再生可能電源
は高圧送変電系統と配電網
を両方経由する
.
→ 輸送問題が重要
.
小規模分散型再生可能電源
屋内線
需要家
太陽光発電
水路式水力発電
12
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-2. 大規模集中型/小規模分散型の事例(電力)
大規模集中型 → 可住地人口密度と負相関
小規模分散型 → 可住地人口密度と正相関
太陽光発電
正相関
→ 小規模分散型
風力発電
負相関
→ 大規模集中型
PDHL →
13
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-3. 大規模集中型 : 風力発電
- 国内の風力発電設備容量分布は、可住地人
口密度と負相関を保ちながら拡大
( → 風力発電設備容量
が極端に低い都道
府県は、外洋に面し
ていない「内陸」都
道府県が多い :
(海陸風が利用でき
ず高地は国立公
園が多い))
PDHL →
14
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-4. 大規模集中型 : 風力発電
- ln WCi = β0 + β1 * ln PDHLi + β2 * ln SNOWi +β3 * ln RAINi
+ β4 * ln WINDi + β5 * INLDi + ei
(Cross Section,’97,’02,’07)
WCi:
PDHLi:
SNOWi:
RAINi:
WINDi:
INLDi:
都道府県別風力発電設備設置容量 (kW) NEDO
都道府県別可住地人口密度 (人/km2) 総務省
30年平均 10cm以上積雪日数 (days) 東京天文台理科年表
30年平均 降水量 (mm) 同
30年平均 10m/s以上風速日数 (days) 同
内陸都道府県(外洋に面していない都道府県)ダミー
(p)
β1 PDHL β2 SNOW
1997 -0.687
-0.019
(0.061)* (0.747)-2002 -0.839
-0.001
(0.046)** (0.989)-2007 -0.964
+0.050
(0.028)** (0.408)--
β3 RAIN β4 WIND β5 INLD
β0
.
-0.806
-0.020
-2.503
+15.60
(0.464)-- (0.912)-- (0.000)*** (0.073)*
+0.030
+0.071
-3.707
+12.71
(0.985)-- (0.733)-- (0.000)*** (0.286)—
+1.621
+0.203
-4.459
+4.749
(0.342)-- (0.300)-- (0.000)*** (0.705)—
15
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-5. 大規模集中型 : バイオマス (木質: 林業生産)
- 国内の林業による木質系バイオマス生産額
は、可住地人口密度と負相関
(→ 国内生産は停滞:
RPS法施行以降の
増加は輸入に依存
( 間伐材などを国内
集荷することは費用
が嵩むため ))
PDHL →
16
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-6. 大規模集中型 : 水力発電 (公営水力)
- 国内の公営水力発電量は、可住地人口密度
と負相関
( → 国内発電電力量は
停滞 :
(RPS法上1000kW
以下の流下式水力
のみが対象))
PDHL →
17
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-7. 小規模分散型 : 太陽光発電 (住宅用)
- 国内の住宅用太陽光発電設備設置容量は
可住地人口密度と正相関を保ちながら拡大
(→ 可住地人口密度と
設備容量の関係は
わずかに飽和傾向
あり: 人口密度が
過度に高いと一戸
建住宅の比率が低
下するためと推察
される )
PDHL →
18
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-8. 小規模分散型 : 太陽光発電 (住宅用)
- ln SCi = β0 + β1 * ln PDHLi + β2 * ln HHDIi +β3 * ln SUNSi
+ β4 * ln RAINi + β5 * ln SNOWi + ei (Cross Section,‘97,’02,’07)
SCi:
PDHLi:
HHDIi:
SUNSi:
RAINi:
SNOWi:
都道府県別住宅用太陽光発電設備設置容量 (kW) NEF
都道府県別可住地人口密度 (人/km2) 総務省
都道府県別県民所得 (百万円 /年) 県民経済計算
30年平均年間日照時間 (時間) 東京天文台理科年表
30年平均年間降水量 (mm) 同
30年平均10cm以上積雪日数 (日) 同
(p)
β1 PDHL β2 HHDI β3 SUNS β4 RAIN β5 SNOW
β0
.
1997 +0.538
+0.931
+2.796
-0.750
-0.008
-15.13
(0.000)*** (0.177)-- (0.028)** (0.047)** (0.727)-- (0.130)-2002 +0.360
+0.650
+4.515
-0.368
-0.022
-26.36
(0.001)*** (0.374)-- (0.001)*** (0.437)-- (0.423)-- (0.060)*
2007 +0.387
+0.831
+3.669
-0.266
-0.029
-20.15
(0.000)*** (0.223)-- (0.010)** (0.535)-- (0.211)-- (0.083)* 19
2. 再生可能エネルギーの導入状況と空間分布
2-9. 大規模集中型/小規模分散型と空間問題
- 現状日米欧とも再生可能エネルギーの大半は大
規模集中型の水力・バイオマスであり、国・地域別
に比較すると可住地人口密度と負相関になる
水力発電
バイオマス
20
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-1. 大規模集中型再生可能エネルギーと空間的問題
- 大規模集中型においては、用地取得・周辺環
境対策などの費用と、送電線などの輸送ネット
ワーク費用の関係から、最適立地距離が存在
⇒ 輸送ネットワーク整備の問題が存在
Z*
0
大都市からの距離 Z ( km )
Z*
※ 風況は一様と仮定
大都市からの距離 Z ( km )
21
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-2. 再生可能エネルギー導入と時間的問題
- 電力などの需給においては、季節別・時間帯
別に変化する需要に対し供給側で追従するこ
とが必要(大規模集中型・小規模分散型共通)
⇒ 季節追従・時間帯追従の問題が存在
住宅用太陽光発電と
時間帯追従性問題
(例)
太陽光発電供給
(前日分)
+
-
家庭電灯需要
00
06
12
18
24 ( 時 )
22
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-3. 再生可能エネルギー導入と需給上の問題点
問題点
空間的問題
輸送ネットワーク
時間的問題
季節追従
時間帯追従
種類
(大規模集中型)
バイオマス
○(貯蔵・輸送容易)
○
○
地熱発電
×ネットワーク要
○
○
水力発電(貯水式) ×ネットワーク要 ×追従不可
○
水力発電(流下式) ×ネットワーク要 ×追従不可 ×追従不可
風力発電
×ネットワーク要 ×追従不可 ×追従不可
太陽光発電(メガ) ×ネットワーク要 ×追従不可 ×追従不可
(小規模分散型)
太陽光発電
○(需要地設置) ×追従不可 ×追従不可23
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-4. 大規模集中型と費用最小化距離問題(1)
- 再生可能電源の多くは海岸・山林などに立地
- 戒能モデルを用い費用最小化距離等を試算
電 源別 平 均 発電 ・送 変電 費 用
( 稼働率40%帯・2008年運転開始基準 )
電 源別 平 均 発電 ・送 変電 費 用
( 稼働率80%帯・2008年運転開始基準 )
再生 可能電源 は山林 立地を仮定
平均発電・送変電費用 \/kWh@2005実質
50.0
稼動率 40%帯
45.0
風力蓄電
25.0
17.5
熱
LNG
力
原子力
陽
20
60
100
140
180
220
260
300
340
380
420
460
500
540
580
620
660
700
740
780
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
220
240
260
280
300
320
340
360
380
400
力
水
G
10.0
光
LN
12.5
石 油
石 炭
太
15.0
貯水水力
LNG
風
光
力
20.0
原子力
10.0
風力蓄電
地 熱
22.5
石 油
石 炭
20.0
15.0
太陽光蓄電
地
貯水水力
力
陽
太
風
25.0
27.5
地 熱
水
30.0
太陽光蓄電
稼動率 80%帯
油
油
石
35.0
30.0
石
熱
地
40.0
再生 可能電源 は山林 立地を仮定
平均発電・送変電費用 \/kWh@2005実質
東京都心部からの距離 km
東京都心部からの距離 km
24
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-5. 大規模集中型と費用最小化距離問題(2)
- 山林立地を前提として費用最小化距離・最小
費用を求めると、貯水式水力・風力が最廉価
費用最小化
最小費用(\/kWh)
距離(km)
低稼働率(40%) 高稼働率(80%)
貯水式水力
地 熱
風力発電
太陽光(メガ)
140
120
360
440
24.6
39.5
18.7
20.4
12.3
19.7
-- (実現困難)
-- (実現不能)
LNG複合
石炭火力
160
240
18.2
18.2
13.0
11.4
25
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-6. 大規模集中型とRPS法の影響(1)
- 現実のRPS法では場所・時間帯に関し制約な
し、風力発電では最小費用等は実現せず
500~600
人/km2
360km
500~600
人/km2
26
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-7. 大規模集中型とRPS法の影響(2)
- 送電線など輸送ネットワーク費用を考慮しない、
部分最適な立地点は本来の最適点より遠方
建設費用 C
(本来の) 総費用 C
500~600
人/km2
送電費用 Ct
C*
発電費用 Cg
z*
zg
27
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-8. 大規模集中型とRPS法の影響(3)
- 風力発電の設備容量は増加したが発電電力
量は非需要期に偏在、季節追従は改善せず
水力発電
風力発電
28
3. 大規模集中型再生可能エネルギー拡大上の問題
3-9. 大規模集中型と支援政策の問題点
- 大規模集中型再生可能エネルギーの費用最小
化距離・最小費用などの問題は、通常の火力
発電の空間配置問題と同じ
- 従って、送電線など輸送ネットワーク費用の問題
や、季節・時間帯追従の問題を考慮しない形
で供給拡大の支援政策を行うことは不合理で
あり、また過度な条件制約は量的拡大を阻害
- 大規模集中型再生可能エネルギーの導入支援
は、輸送ネットワーク費用や季節・時間帯別の価
値を反映した簡明な支援政策に改めるべき 29
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題
4-1. 小規模分散型と時間帯問題
- 小規模分散型再生可能エネルギーでは、主に時
間帯別の需要に供給側で追従することが必要
⇒ 特に電力においては蓄電設備の役割が
重要、以下太陽光発電について議論
住宅用太陽光発電と
時間帯追従性問題
(例)
太陽光発電供給
(前日分)
+
-
家庭電灯需要
00
06
12
18
24 ( 時 )
30
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題
4-2. 太陽光発電設備の価格推移
- 太陽光発電設備の価格は量産効果(累積生産
効果)による価格低減の影響が非常に大
システム価格
システム価格 (対数)
補助中断
(2007-08)
補助開始
(1994)
累積導入容量(対数)
31
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題
4-3. 蓄電池設備の価格推移
- 蓄電池設備の価格もまた量産効果による価格
低減の影響が非常に大
Liイオン電池
Liイオン電池
鉛蓄電池
鉛蓄電池
32
4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題
4-4. 住宅用太陽光発電の時間帯追従の2方式
- 系統側調整型 (スマートグリッド)
配電網
系統(電力会社)
太陽光発電設備
需給調整
(配電網強化)
需要家
(系統側蓄電池)
- 需要家側調整型 (ゼロエミッションハウス)
配電網
太陽光発電設備
需給調整
系統(電力会社)
(不足分・緊急時)
(需要家側蓄電池)
需要家
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4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題
4-5. 時間帯追従方式別の費用比較・予測 (’08)
- 需要家側調整より系統側調整の方が費用低
- 2020年前後に「系統等価(Grid Parity)」実現
需要側系統等価
Demand Side G.P.
電灯料金
供給側系統等価
Supply Side G.P.
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4. 小規模分散型再生可能エネルギー拡大上の問題
4-6. 小規模分散型と支援政策の問題点
- 住宅用太陽光発電と時間帯追従に必要な蓄
電池の費用については、量産効果の影響が
非常に大きく、今後価格の逐次低減が期待可
- 現時点での支援費用が多少嵩むとしても、量
産効果による将来の費用低減と大量普及に
寄与するならば現状の支援の正当化は可能
- 逆に量産効果の発現により費用が低減しても
なお高額買取などの助成を行うといった「過剰
助成(利権化)」の問題に注意すべき
(ex. 旧食糧管理政策下の政府購入米価)
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