-SWOT分析の手法と実践演習 +バランス・スコアカードとは?- 所長 税理士 岩﨑 美顯 主催:岩﨑会計事務所/株式会社岩﨑財計事務所 平成16年11月26日(金) 於:新宿マインズタワー20階 積水ハウス㈱会議室 経済産業省推進事業 1.SWOT分析とはなにか? (1)定義 経営やマーケティング環境を分析する手法の1つです。 企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会 (Opportunity)、脅威(Threat)の全体的な評価をSWOT分析とい います。 SWOT分析は外部環境分析(機会/脅威の分析)と内部環境分 析(強み/弱みの分析)に分けることができます。 外部環境分析とは、企業あるいは事業単位が自らの利益をあげ る能力に影響を与えるマクロ環境要因(経済、技術、政治、法規制、 社会、文化)とミクロ環境要因(顧客、競合他社、流通業者、供給業 者)の変化を観察し、関連する機会と脅威を見極めることをいい、 内部環境分析とは、魅力的な機会において成功するコンピタンス が自社の内部にあるかどうかを強み、弱みとして評価することをい います。 1 1.SWOT分析とはなにか? (2)方法 ①まず、企業の内部環境要因である自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)を拾い上げる。 ②次に、企業の外部環境要因である自社の周囲に存在する機会(Opportunity)、脅威(Threat) を拾い上げる。 ③それぞれ10~20項目づつ拾い上げ、類似の重複がないか、1項目としたものが 実は2つ以上の要素から成り、2項目以上に分けられないか検討し、分類整理する。 ④そして、抽出された自社の強み・弱み・機会・脅威を用いて以下の検討を加える。 A.自社の強みを用いて取り込むことのできる事業機会は何か? B.自社の強みで脅威を回避する方法はないか? 他社には脅威でも、自社の強みでその脅威を事業機会に変えることはできないか? C.自社の弱みによって事業機会を取りこぼさないためには何が必要か? D.自社の弱みと外部の脅威が合わさった、最悪の事態を回避する方法は何か? できればそれらの抽出は、複数の経営幹部ないしは従業員も取り込んで行う ブレーンストーミングを用いると効果的である。 ブレーンストーミング :自由に意見やアイ その理由は、ブレーンストーミングによって社員責任参加型の経営が可能で、 殻から抜け出たアイデアや方向性を見つけやすくなる。 デアを出し合う会議 1.SWOT分析とはなにか? (3)期待される効果 ① 経営改善の検討そのものが企業における経営戦略の再構築とその実現可能性の検証に他 ならないという点。 ② 事業の「選択と集中(必要なものを残してそれに特化すること)」を断行する際に作成される 「製品・サービス/市場マトリックス」で発見された事業領域が、企業にとってのコア事業なのかノ ンコア事業なのかを判断するのに有用な情報を提供する。 ③SWOT分析を実施することにより資料が完備され、企業の改善計画の検証が可能になる。 従来から経営改善でよく問題となるのは、企業が自ら策定した経営改善計画の実現性に疑問 が残る点である。 それは、改善計画を作る際に、どうしても過去の成長の奇跡をひきずる企業の主観に左右され やすく、事業に影響を与える外部環境の動向を軽視して、計画の前提条件の詰めが甘くなってし まいがちになるからである。 SWOT分析は企業外部環境を内部と区分けして具体的に目を向けるため、より現実的・客観的 に検討可能となる。 3 1.SWOT分析とはなにか? (4)具体的方法 ①目的設定-ブレーンストーミングによるSWOT分析 参画者が、内部環境および外部環境の状況を共有することにより、 とるべきアクションヘの思いのベースを構築する。 ②分析の成功要因 フレッシュな環境情報のインプットが必要- ブレーンストーミングの過程でいかにフレッシュな環境情報をインプットするかがこの分析の成否を決める。 2次情報(新聞、雑誌などの情報)でなく1次情報(インフォーマルな主情報)をいかに多く日頃から入手する アンテナがあるかがポイント。 全員の意見は、本音でカードで示す。 発言形式では、必ずしも全員の意見の発表の機会がないので、カードを用いて全員の意見を聞き出す。 4 1.SWOT分析とはなにか? (5)ブレーンストーミングとSWOT要素抽出のコツ ブレーン(頭脳)で問題にストーム(突撃)する (1938年米国BBDOアレックス・F・オズボーン) あるテーマをめぐって自由奔放に意見やアイデアを出しあう会議 原則 ●批判厳禁…どんな意見が出ても批判しない。 ●自由奔放…とっぴな意見でもかまわない。 ●量を求む・・・・量の中から質の良いものが生まれる(出席者全員が発言) ●便乗発展…出たアイデアを結合し、改善発展 SWOT要素抽出のコツ S(Strength:強み) あまり議論されていない W(Weakness:弱み) お酒の席で共有化が行われやすい O(Opportunity:機会) 企業外部の環境(他社・政治・経済・社会)やその変化で 当社に有利に働きそうなもの T(Threat:脅威) 企業外部から与えられる阻害要因 5 2.実践演習SWOT分析 (1)自社のS W O T の要素の抽出 今回は、短時間の演習なのでSWOT要素を用意しました。 . 外的 外的 外的 外的 外的 外的 外的 . 出典:㈱TKC出版 Q&A よみがえれ中小企業!黒字決算を実現する経営改善計画の作り方 6 2.実践演習SWOT分析 (2)演習の S W O T の要素_御社に合うものを選んで下さいⅰ 以下は「経営者」のジャンルからいくつか考えられる要素を挙げてみました。 それぞれ、YESならS(Strength:強み) NOならW(Weakness:弱み)です。 ①経営理念、 ビジョンは明確か ②事業への意欲、 責任感を備えているか ③従業員、 取引先からの信頼があるか ④公職・ 政治・ 趣味などの事業外活動に、 のめり込み過ぎていないか ⑤経営者として勉強熱心であるか ⑥外部・ 内部の環境を把握し、 自社の経営実態がよく見えているか ⑦経営補完者や後継者が育っているか ⑧資産、 負債、 他者の借入保証人などの事項について不安はないか ⑨家族関係に問題がなく平穏であるか ⑩健康と体力を維持しているか 上記要素の内、貴社に適合するのは、どの番号で S ですか W ですか? 公表は致しませんので以下に、ご記入ください。 7 2.実践演習SWOT分析 (2)演習の S W O T の要素_御社に合うものを選んで下さいⅱ 以下は「技術力・商品力」のジャンルからいくつか考えられる要素を挙げてみました。 それぞれ、YESならS(Strength:強み) NOならW(Weakness:弱み)です。 ①独自の市場を確保しているか ③低コスト体質を実現しているか ④ブランド力があるか ⑤顧客重視の姿勢が十分にあるか ⑦独自の技術を有し、品質向上に熱心であるか ⑧事業に有利な特許、商標があるか なお、空欄番号は、企業 の外部環境要素として、 後程扱います。 ⑩クレームを減らす工夫ができているか 上記要素の内、貴社に適合するのは、どの番号で S ですか W ですか? 公表は致しませんので以下に、ご記入ください。 8 2.実践演習SWOT分析 (2)演習の S W O T の要素_御社に合うものを選んで下さいⅲ 以下は「営業力」のジャンルからいくつか考えられる要素を挙げてみました。 それぞれ、YESならS(Strength:強み) NOならW(Weakness:弱み)です。 ①適度な販促活動ができているか ②取引先の与信管理が適切であるか ③順調に受注を確保しているか ④取引先との関係の強化、拡大を図っているか ⑤ライバルに負けない競争力があるか ⑦営業スタイルが商圏に合っているか なお、空欄番号は、企業 の外部環境要素として、 後程扱います。 ⑩特定顧客への依存はないか 上記要素の内、貴社に適合するのは、どの番号で S ですか W ですか? 公表は致しませんので以下に、ご記入ください。 9 2.実践演習SWOT分析 (2)演習の S W O T の要素_御社に合うものを選んで下さいⅳ 以下は「財務・経理」のジャンルからいくつか考えられる要素を挙げてみました。 それぞれ、YESならS(Strength:強み) NOならW(Weakness:弱み)です。 ①財務データを経営管理に活用しているか ②次期利益計画(予算)をたて、実績と対比しているか ③不採算事業への対策を講じているか ④資金繰り表・試算表を速やかに作る体制が整っているか ⑤逐次、回収・支払条件を見直しているか ⑥取引先の信用状況を把握しているか ⑦資金調達力に問題はないか ⑧社内の情報伝達は迅速であるか ⑨積極的で無駄のないIT化投資をしているか ⑩中期経営計画(3~5年)を作り、実行しているか 上記要素の内、貴社に適合するのは、どの番号で S ですか W ですか? 公表は致しませんので以下に、ご記入ください。 10 2.実践演習SWOT分析 (2)演習の S W O T の要素_御社に合うものを選んで下さいⅴ 以下は「人事・総務」のジャンルからいくつか考えられる要素を挙げてみました。 それぞれ、YESならS(Strength:強み) NOならW(Weakness:弱み)です。 ①権限委譲が適切に行われていて、管理体制が充実しているか ②社員の意識(モラール)が高いか ③職場はいつも整理整頓されているか ④社員に活気があり、雰囲気は明るいか なお、空欄番号は、企業 の外部環境要素として、 ⑤社員の定着力がよいか 後程扱います。 ⑥社員は賃金システムに納得しているか ⑦人材を十分活用し、高い生産性を上げているか ⑧社員の年齢・性別・正社員率などのバランスは安定しているか ⑨社員の能力開発に力をいれているか 上記要素の内、貴社に適合するのは、どの番号で S ですか W ですか? 公表は致しませんので以下に、ご記入ください。 11 2.実践演習SWOT分析 (2)演習の S W O T の要素_御社に合うものを選んで下さいⅵ 以下は外部環境関連のジャンルからいくつか考えられる要素を挙げてみました。 それぞれ、YESならO(Opportunity:機会) NOならT(Threat:脅威)です。 (1 )強い商品力を持つ他社製品がないか なお、○番号でここにな ②自社で価格決定権をもっているか (3 )仕入先からの要求は強くないか いものは、企業の内部 (4 )流通面で障害となる要素はないか 環境要素として、 (5 )流行の移り変わりが激しいか( これはOにもTにもなる) 先に扱いました。 ⑥主力事業に将来性があるか (7 )資源の入手は将来的にも問題ないか (8 )営業展開に有利な立地条件があるか ⑨取引先との契約条件が適正であるか ⑩地域の雇用バランスは安定しているか ◎法的な消費者保護がより厳しくなってきていないか 上記要素の内、貴社に適合するのは、どの番号で O ですか T ですか? 公表は致しませんので以下に、ご記入ください。 12 2.実践演習SWOT分析 (3)選ばれたS,W,O,Tの要素で以下のマトリックスを作ってください。 強 み (Strength) 弱 み (Weakness) 自 社 ( 内 部 環 境 ) 正 し い 分 析 と な る 機 会 (Opportunity) 市 場 ( 外 部 環 境 ) 脅 威 (Threat) 誤 っ た 分 析 と な り や す い 13 2.実践演習SWOT分析 (4)SWOT分析:自社の将来方針を決定する ひとつの例-方法論 SWOT分析は、 現状分析にとどまらず、 将来の進路決定にも 役立ちます! Strength 強 み ( ①独自の市場を確保しているか ②事業への意欲、責任感を備えているか ③不採算事業への対策を講じているか ④ブランド力があるか ⑤ライバルに負けない競争力があるか ) Weakness 弱 み ( ) ⑦経営補完者や後継者が育っているか ③順調に受注を確保しているか ⑩クレームを減らす工夫ができているか ⑥取引先の信用状況を把握しているか ①権限委譲が適切に行われていて、 管理体制が充実しているか ③職場はいつも整理整頓されているか ⑦人材を十分活用し、高い生産性を上げているか 機 会 (Opportunity) ⑥主力事業に将来性があるか ②自社で価格決定権をもっているか ⑨取引先との契約条件が適正であるか ◎流通面で障害となる要素はないか 積極的攻勢に出る ・迅速に行動し、緒戦に勝つ ・余剰資源をすべて注ぎ込む ・将来の「金のなる木」へ 弱みを改善する ・弱みの克服策を立てる ・社内で努力を継続する ・チャンスが来るまで持つ 脅 威 (Threat) ◎取引先からの要求は強くないか ◎流行の移り変わりが激しいか ⑨営業展開に有利な立地条件があるか 差別化戦略をとる ・顧客価値を掘り下げる ・独自の品質を作り出す ・大義名分を掲げる 撤退(放棄)する ・大騒ぎをしない ・期限を設け、徐々に手を引く ・他社の侵食を黙認する 14 2.実践演習SWOT分析 (4)SWOT分析:自社の将来方針を決定する ひとつの例-方法論 SWOT分析は、 現状分析にとどまらず、 将来の進路決定にも 役立ちます! Strength 強 み ( ①独自の市場を確保しているか ②事業への意欲、責任感を備えているか ③不採算事業への対策を講じているか ④ブランド力があるか ⑤ライバルに負けない競争力があるか ) Weakness 弱 み ( ) ⑦経営補完者や後継者が育っているか ③順調に受注を確保しているか ⑩クレームを減らす工夫ができているか ⑥取引先の信用状況を把握しているか ①権限委譲が適切に行われていて、 管理体制が充実しているか ③職場はいつも整理整頓されているか ⑦人材を十分活用し、高い生産性を上げているか 機 会 (Opportunity) ⑥主力事業に将来性があるか ②自社で価格決定権をもっているか ⑨取引先との契約条件が適正であるか ◎流通面で障害となる要素はないか 特にブランド力があるものを中 心に強い競争力を生かして、果 敢に攻める。 そのための商品開発・人材育 成・営業力アップ・財務管理を強 化する。 右腕を育ててクレーム対策を徹 底し、常に信用状況の把握に努 め、整理整頓を励行し、十分な管 理体制を構築できるような人材確 保と人材教育及び経営理念経営 計画の落とし込みを行う。 脅 威 (Threat) ◎取引先からの要求は強くないか ◎流行の移り変わりが激しいか ⑨営業展開に有利な立地条件があるか 差別化戦略でニーズは強いが 薄利な相手先を差別化し、 また、流行があまり影響しない 自社ブランドを開発する クレーム対策は徹底するが強い要求 の取引先で不合理なものはしっかりと 選別できるような管理体制を敷き、 流行に左右されやすい商品からは撤 退し、 立地上の問題で左右されにくいものを 重視する。 15 2.実践演習SWOT分析 (5)SWOT分析:自社の将来方針を決定する わが社の場合 SWOT分析は、 機 会 (Opportunity) 脅 威 (Threat) 現状分析にとどまらず、 将来の進路決定にも 役立ちます! Strength 強 み ( ) Weakness 弱 み ( ) 16 当事務所は、 「社長の仕事」をご支援します。 制作:株式会社岩﨑財計事務所/TKC全国会創業・経営革新支援委員会 17
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