形式言語とオートマトン2008 ー有限オートマトンー Tokyo University of Technology School of Computer Science 今日のポイント • • • • 有限オートマトン(復習・確認) 正規表現 正規表現とオートマトンの関係 最簡型オートマトンの作り方 (DFA -> min-DFA) まずは、復習から 言語(文法)とオートマトン ---------------------------------------------------------------言 語 処理装置 ---------------------------------------------------------------• 句構造言語(PSL) ⇔ Turing 機械 • 文脈依存言語(CSL) ⇔ 線形有界オートマトン • 文脈自由言語(CFL) ⇔ プッシュダウンオートマトン • 正規言語(RL) ⇔ 有限オートマトン ---------------------------------------------------------------まずはここから かじってみよう かな 計算モデルやプログラミング言語設計に 深くかかわっています。 さて、… 有限オートマトンとは(復習) • (英) Finite Automaton (FA) finite automata (pl.) いろいろなFA • Finite Automaton – Deterministic Finite Automaton (DFA) or Deterministic Finite State Machine – Nondeterministic Finite Automaton (NFA) or Nondeterministic Finite State Machine – NFA-ε or NFA with ε moves or NFA-lambda 英語も覚えましょう 決定性有限オートマトンの定義 DFA M = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋(qi , a ) → qj ∈ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K ) 例:決定性有限オートマトンM1 DFA M1 = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { i, f, 1, 2, 3} Σ : { a, b } δ : 状態遷移関数 (次の頁参照) q0 : i F : {f} 状態遷移関数δ 状態 入力 a 入力 b i 1 ー 1 2 3 2 3 f 2 2 2 3 f f M1の状態遷移図 a i a a 1 b b a 2 f a b b 3 非決定性有限オートマトンの定義 NFA M = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : 状態の集合( Kは有限集合) Σ : 入力アルファベット(Σは有限集合) δ : 状態遷移関数 δ: K×Σ∋(qi, a ) → Q ⊂ K q0 : 初期状態 F : 最終状態の集合 ( F ⊆ K ) 例:非決定性有限オートマトンM2 NFA M2 = ( K, Σ, δ, q0, F ) ただし、 K : { i, f1, f2, 1, 2 } Σ : { a, b } δ : 状態遷移関数 (次の頁参照) q0 : i F : { f1, f2 } 状態遷移関数δ 状態 入力a 入力b i i, 2 i, 1 1 ー f1 2 f1 f2 f2 f1 f2 - f1 f2 非決定性 M2の状態遷移図 a, b a, b a i a 2 b 1 a, b b f1 f2 NFA M3の状態遷移図 a, b b a i ε a 2 f2 ε遷移(非決定性の要因) 1 a, b b f1 ここまでは定義の復習 もう少し具体例を • 教科書の – 図2.8 (p.37) – 問2.3 (p.39) – 図2.9 (p.41) – 問2.4 (p.43) – 図2.11 (p.45) などを見なれること。図の意味(FAの動作)が 分かるようになりましょう。 練習問題 • 次ページのFA(状態遷移図で記述されている)を、 文章の形で記述してみてください。 つまり、FAを – 状態の集合 K – 入力アルファベット Σ – 状態遷移関数 δ:K×Σ → K (表形式でもOK) – 初期状態 – 最終状態の集合F の5つ組として記述しなさい。 練習問題(続き) • 教科書の ① ② ③ ④ ⑤ 図2.8 (p.37) 問2.3 (p.39) 図2.9 (p.41) 問2.4 (p.43) 図2.11 (p.45) それぞれ。 新しい話に入りましょう! • 正規表現 (regular expressions) 正規表現は文字列の集合を現すのに便利! CSにとっては常識です。 例えば、… • 設定: – とあるディレクトリに以下のファイルがある file1 file2 file3 outfile1 outfile2 • infile1 infile12 tmpfile102 README123 問題:ファイルを名前で探したい 1. 2. 3. 4. ファイル名が file で始まるもの ファイル名に file が含まれているもの ファイル名が 2 で終わっているもの ファイル名末尾に3桁の数字が付いているもの こんなとき、正規表現が活躍する (自由課題)調べてみよう • Linuxでの ls コマンド • Linuxでの grep コマンド or egrep コマンド などでの正規表現(メタ文字)はどうなっているか? (注)これらは、本授業で取り扱う正規表現とは少し 異なっています。いわば拡張正規表現となっていま す。本授業の正規表現が、本来の正規表現です。 参考文献 ・詳説 正規表現, Jeffrey E. F. Friedl, O’Reilly Japan(2003). これからの話の流れ これからの話の流れ 正規表現 ー> NFA NFA ー> DFA DFA ー> 状態数最小DFA (例で詳しく練習しますので、しっかり付いて 来てください。) それでは正規表現の定義から • 正規表現は、文字列の集合を表現・記述する。 • 正規表現は言語を記述する。 • 例えば、正規表現 a|b は 文字列 a と b の2 つを意味する。 つまり。正規表現 a|b = { a, b } といった具合。 正規表現の例 • 文字 a だけからなる言語 { a } は正規表現で a と書く。 • 文字列 abc だけからなる言語 { abc } は正 規表現で abc と書く。 • 言語 { aaa } は正規表現で aaa または a3 と 書く。 • 言語 { a, b } は正規表現で a|b または a+b と書く。 正規表現の例(2) • 言語 { a, aa, aaa, aaaa, aaaaa, …. } は 正規表現で a† と書く。(“a ダガー”と読む) • 空文字列は正規表現の1つで、εと書く。 (“エプシロン”と読む) • 言語 { ε, b, bb, bbb, bbbb, …} は正規表現 で b* と書く。 (“b アスタリスク”とか“b スター”とか”b星印” などと読む) (参考) asterisk , epsilon 正規表現の定義 1. 空文字列記号εは空文字列を意味する正規表現。 2. 文字 x がアルファベットAの要素ならば、x は { x } を意味する正規表現。 3. RとSが正規表現ならば、正規表現 R | S あるい は R+S は正規表現Rの表す文字列の集合Aと正 規表現Sが表す文字列の集合Bとの和集合。 4. 正規表現 R・S あるいは RS は、Rの表す文字と Sの表す文字とを連結した(その順に並べた)した ものすべてからなる集合。 5. Rが正規表現ならば、 R*は、Rの表す文字をゼロ 個以上連接した(並べた)ものすべてからなる集合。 正規表現の定義(再) アルファベットA上の正規表現とは、以下の規 則によって作られるもの(表現)のことである。 1. 空文字列εは正規表現である。 2. Aの要素 x ( x∈A ) は正規表現である。 3. RとSがともに正規表現ならば、 R|S RS R* はいずれも正規表現である。 練習:対応する言語は? • • • • • • abcd a* ab* (ab)* bc(2|4)* a†bcd* 例:A = { a, b, c } 上の正規表現 • • • • • • • ε a c acb ab|b c(cb|a) a(a|b)*cba 練習:正規表現で書いてみよう • { automaton } • { file0, file1, file2, file3, …, filen, … } • { ε, ab, aabb, aaabbb, aaaabbbb, … } 正規表現をFAで表現してみよう • (注)このようなことができることは、証明され ています。 1. R=ε ε 1 f1 2.R=a a 1 f1 3.R|S R f1 1 S 4.RS 1 R S f1 5.R* ε ε ε 1 R ε f1 練習 • 次の正規表現αをFAで表現しなさい。 α= a(a|b)*bb 教科書pp.143-147 参照のこと。 練習はまた次回の復習でやりましょう 次のそして今日最後の話し • 状態数が少ないFAの存在とその求め方 M1の状態遷移図 a i a a 1 b b a 2 f a b b 3 M1が受理する文字列は? a i a a 1 b b a 2 f a b b 3 M1が受理する文字列は? • 例えば、 (考えてみてください。) M1と等価なFAの状態遷移図(No.2) a i a b a 1,2 f a b b 3 FA と L(G) との関係 • 正規文法G • 正規言語L(G) • 有限オートマトンM L(G) M1 M2 M3 • 1つのL(G)に対して、複数のFAがあり得る。 • 能力的に等価なFAがある。 用語定義と問題提起 • 能力的に等価なFA群のうち、状態数が最も 少ないものを、「最少化FA」あるいは「最簡形 FA」と呼ぶことにしよう。 • 「最簡形FA」は、どうやって求めたらいいのだ ろうか? 一般的な手続きはどうなっているのか? (注)このようなFAの存在はOKですよね。 Why?(考えてみてください。) Myhill-Nerodeの定理 • いま、受理・生成能力が同じFAの中で、状態 数が最も少ないFA(最簡型FA)を求めたい。 その理論的根拠を与えてくれるのが標記の 定理である。 理論的にはとても 重要な定理 ちょっとだけ覗いてみよう! Myhill-Nerode関係 • 定義: 到達不可能 ⇔ 初期状態から到達することのできないこと。 そのような状態を到達不可能状態と呼ぶ。 • 定理: 到達不可能状態は、O( |K| |Σ| )で見 出される。 • 定義: FAの2つの状態pとqが等価 ⇔[δ(p, w) ∈F ⇔δ(q,w)∈F for any w∈Σ*] Myhill-Nerodeの定理 次の3つの命題は等価である。 1. アルファベットS上の言語LがDFAで認識さ れる。 2. 言語L は、ある右不変でかつ有限指標でも ある同値関係における同値類の和集合で ある。 3. 言語L に対し、関係RL は有限指標である。 この定理で得られる同値類に着目する • [p]: pと等価な状態からなる集合(同値類) • DFAに対する同値類オートマトン: Q’={[q]| q∈Q} Σ’=Σ q0’=[q0] F’={[q]| q∈F} δ’([q], a) = [δ(q,a)] 得られる知見 • 定理: 同値類オートマトンA’はもとのFA A’ と同じ言語を受理する。 • Myhill-Nerodeの定理を証明する際に、この 同値類の作り方も得られる。その作り方が、 最簡型DFA作成手順そのものとなっている。 こんな理屈もあるが、… • 後日詳しくやりましょう。 いまは気にしないでおきましょう。 最簡化FAの求め方 • いろいろ知られている。 • わかりやすいものは以下のものです。 最簡型DFAを求める手順 重要 1. P0 = { F, K-F } 状態の集合Kを2つに分 割する。 n=0とおく。 2. 任意のnについて、Pnの細分化を行い、そ の結果を、Pn+1とする。 3. Pn = Pn+1 となりまで手順2を繰り返す。 具体例で練習しましょう • 図2.18 (p.53) 今日はここまで。お疲れ様。 • URL: http://kameken.clique.jp/ の右下を見てください。 • 次回は、今回までの復習と第3章です。 余力があったら予習してみてください。
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