配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究 河田研究室 吉田 卓司 目次 1. 導入 • • 配偶者選択の進化 本研究のアプローチ 2. 方法と結果 3. 考察 • • 結果の解釈 結果からの示唆(Implication) 導入 配偶者選択による性選択 ♂ ♂ ♀ ♀ メスの選好性の進化モデル • 適応的配偶者選択モデル – メスは配偶者選択をすることにより、交配相手 から利益を得ている • 非適応的配偶者選択モデル – 配偶者選択をすることに意味はない – 別の要因によって進化した感覚器官の特性の 副産物 メスの選好性の進化 生存に不利な形質に対するメスの選好性 が進化したメカニズムは不明 理由: 個体レベルでのメスの選好性はあまり調べら れていない 個体レベルでのメスの選好性の変異が 報告されている メスの選好性と交配相手の関係 メスの選好性 実際の交配相手 一致 適応的配偶者選択 非適応的配偶者選択 ○ ○ 不一致 × ○ 本研究の目的 グッピーのメスの選好性と実際に交配したオスの 形質の関係を調べる メスの選好性の進化パターンに関する 知見を得ることを目的とする 方法と結果 調べた内容 1. 個体レベルで、メスの選好性と実際の 交配相手はどういう関係か? 2. 個体レベル・形質ごとで、メスの選好性 と実際の交配相手はどういう関係か? 材料 沖縄県名護市我部祖河の 野外集団グッピーを用いた • 野外集団のオス(成熟個体を野外で採集) • 野外で妊娠したメス(成熟個体を野外で採集) • 野外で妊娠したメスから産まれたオス (実験室で産まれ、成熟) 調べた内容 1. 個体レベルで、メスの選好性と実際の 交配相手はどういう関係か? 2. 個体レベル・形質ごとで、メスの選好性 と実際の交配相手はどういう関係か? 2. 個体レベルでのメスの選好性 と交配相手の関係 • 実際のメスの交配相手の形質 • 個体レベルでのメスの選好性 2. 個体レベルでのメスの選好性 と交配相手の関係 • 実際のメスの交配相手の形質 • 個体レベルでのメスの選好性 実際のメスの交配相手の形質 • グッピーにおいて、交配相手を調べるのは 非常に困難 • グッピーの性選択形質の遺伝率は非常に 高く、父- 息子の形質はよく似ている (Houde 1992; Karino and Haijima 2001; Brooks and Endler 2001) メスが産んだ子供(オス)の形質 を、交配相手の指標とする 方法:オスの形質の測定 2-フェノキシエタノールで麻酔したオスを デジタルカメラで撮影 オレンジ面積比率 オレンジスポットの明度 黒面積比率 2. 個体レベルでのメスの選好性 と交配相手の関係 • 実際のメスの交配相手の形質 • 個体レベルでのメスの選好性 方法:配偶者選択実験 方法:配偶者選択実験 方法:配偶者選択実験 各オスに対する メスの選好性 オス 滞在時間 1 ① ② ③ ④ 3 4 5 ⑧ ⑦ 2 6 ⑥ ⑤ 7 8 個体レベルでのメスの選好性 あるメスの選好性 滞 在 時 間 オス メス1匹ずつについて 滞在時間にオスの形質を重回帰 1. 個体レベルでのメスの選好性 と交配相手の関係 • 実際のメスの交配相手の形質 • 個体レベルでのメスの選好性 メスの選好性と交配相手の関係 メスが産んだ子供の魅力:PAs 魅力(Predicted Attractiveness): 頻 度 -0.1 -0 0.02 0.08 0.14 野外集団のオスの魅力: PAw 0.2 個々のメスの重回帰式に オスの形質を代入して求 める メスが好みのオスと交配した指標:選好性の実現度 [PAs]-[PAwの平均値] [PAwの標準偏差] 結果: メスの選好性と交配相手の比較 14 12 10 頻 度 8 6 4 2 0 -5 0 5 選好性の実現度 1標本t検定の結果: 有意にゼロより大きい(P=0.0012) 結論1: 個体レベルで見た場合、メスは 好みのオスと交配している 調べた内容 1. 個体レベルで、メスの選好性と実際の 交配相手はどういう関係か? 2. 個体レベル・形質ごとで、メスの選好性 と実際の交配相手はどういう関係か? 2. 個体レベル・形質ごとのメス の選好性と交配相手の関係 • 実際のメスの交配相手の形質 メスが産んだ子供の形質値 • 個体レベル・形質ごとのメスの選好性 メスの選好性の重回帰式の偏回帰係数 結果: 個体レベル・形質ごとのメスの 選好性と交配相手の関係 子 供 の 形 質 値 オレンジ面積比率 オレンジスポット の明度 黒面積比率 0.08 0.16 20 0.04 0.12 10 0 0.08 0 -0.04 0.04 -10 -0.08 -0.3 -0.1 0.1 0.3 0 -0.2 -0.1 0 0.1 -20 -0.2 0.2 -0.1 0 メスの選好性(重回帰式の偏回帰係数) メスの選好性と交配相手の関係は非常に弱い 0.1 結論2: 個体レベル・形質ごとで、 メスの選好性と交配相手の形質 の関係は非常に弱い 結果のまとめ 1. 個体レベルでメスは好みのオスと有意に 交配している 2. 個体レベル・形質ごとではメスの選好性 と交配相手の関係は非常に弱い 考察 なぜそうなったか メスは複数の形質で 交配相手を決め、 交配する オスの性選択形質間の 相関は小さい 複数あるオスの形質が魅力を相殺しあう 形質ごとの選好性と交配相手の関係が弱くなる メスの選好性の進化 適応的メカニズムが重要であると 今まで考えられてきた ・グッピーのメスの選好性の進化において 適応的メカニズムはあまり重要でない ・非適応的メカニズムによる進化が より重要であると予測できる
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