社会的虐待にさらされた 子ども達 中部学院大学人間福祉学部 准教授 宮 嶋 淳 博士(ソーシャルワーク) Q.私が幸せだと感じる瞬間! 子どもの権利条約 • 世界中のすべての子どもたちがもっている“権 利”について定めた条約。 • 戦争に巻きこまれてしまったり、防げる病気で命 をうしなってしまったり、つらい仕事で1日が終 わってしまったり…世界には厳しいくらしをしてい る子どもたちがいる。 • 「子どもの権利条約」は、世界中の子どもたちの 強い味方。 第1条 子どもの定義 18歳になっていない人を子どもとします。 第3条 子どもにとって もっともよいことを 子どもに関係のあることを行うときには、 子どもにもっともよいことは何かを第一に考えなけ ればなりません。 第6条 生きる権利・育つ権利 すべての子どもは、生きる権利をもっていま す。 国はその権利を守るために、できるかぎりのこ とをしなければなりません。 第7条 名前・国籍をもつ権利 子どもは、生まれたらすぐに登録(出生届など)さ れなければなりません。 子どもは、名前や国籍をもち、親を知り、親に育て てもらう権利をもっています。 どうやって生まれてきたの? • ヒトはいつからヒトなのか? • 祖先は物質的連鎖の連続によって子孫を残す • 男性の細胞(精子)によって女性の細胞(卵子) が受精すること • 新しい生命が誕生する。 • 各々の生命は「受精の瞬間」から始まっている。 (米国:ルジューヌ・ジェローム博士(発生学)) 生殖技術 第三者の関わる 生殖技術 代理出産 人工授精 ⇒配偶者間人工授精 (AIH) 非配偶者間人工授精 (AID) 人工授精型 代理出産 体外受精(IVF) ⇒配偶者間体外受精 非配偶者間体外受精 体外受精型 代理出産 第三者の関わる生殖技術とは AID 提供精子 体外受精 卵子提供 胚提供 代理母 精子 第三者 第三者 本人 第三者 本人 本人 本人 卵子 本人 本人 第三者 第三者 第三者 本人 第三者 出産 本人 本人 本人 本人 第三者 第三者 第三者 代理懐胎 AIDとは • 非配偶者間人工授精 (Artificial Insemination by Donor : AID) DI :Donor Insemination と言われることもある • 男性側に不妊の原因がある場合に用いる人工授精 • 匿名の第三者の精子を利用 人 工 授 精 図① 配偶者間人工授精 (AIH) = 図② 非配偶者間人工授精 (AID) = これまでの技術提供の問題点 • 事実が積み重ねられ、後から追認される。 ←法律がない • 技術実施後の追跡調査が行われていない。 ←子の福祉 • 技術で生まれた人の意見が反映される システムになっていない。 ←社会制度 • 多くの人が生まれ、今も選択しようとしている ←不妊を隠す 人たちがいるなか、この技術について 議論することが難しい。 読売新聞 2012年 5月 18日 AIDで生まれた子が感じている問題 • 告知の時期が遅い、親の積極的告知でない – 親子の間の信頼関係が崩れる – 家庭内の危機的状況の末の告知であり二重のショックを受ける • 親自身がこの技術を肯定できていない – 親に認められていないと感じる – 悩む自分が親をさらに悩ませてしまう • 不妊を隠すための技術として使われている – 「夫婦がいて血のつながった子どもがいる」という家族をつくるため • 今まで信じていたものが突然崩れてしまう その空白を埋めるための情報、環境が整えられていない 第三者が関わる生殖技術は、 子どもへの社会的虐待ではないか? • 生殖技術は、医療者と不妊カップルのための隠され た医療処置である。 • 子どもに「真実を告知しないこと」を原則とする。 • 生殖技術は、提供者が減るという理由で、子どもの 出自を知る権利を封じている。 • 「私の情報は私のもの」という個人情報の保護の観 点から、社会的に問題があり、責任は大きい。 • 成人し、事実を知り、混乱状態にある者がいる。 • 彼らは、なぜ真実を話してくれなかったのかと怒り、 声を聴いて欲しいと訴えている。 「社会的虐待」の構造 • • • 虐待の起こっている場 ・・・医療現場や関係者を取り巻く社会 加害者 ・・・医師や医療者、提供者、AID希望者、親戚・縁者、一般市民、 被害者 ・・・DI者、DI者が形成した家族 社会的ネグレクト 社会的排除 社会的虐待(加害者) 孤立(被害者) 「社会的虐待」の定義 • 生殖技術で生まれた子どもは、医療者等から「社会的孤立」の状態に 追い込まれる。 • 虐待者である医療者等の社会的地位の高低は、被虐待者である子ども の「社会的虐待」の強化に関わる。 • 「社会的虐待」が強まると、子どもは「社会的孤立」を強め、自ら 「社会的孤立」の道をたどっているかのようにみえる。 • 結果、市民による良心的な「社会的排除」が生じる。 • 子どもが「社会参加」する権利を奪う、良心的な「社会的排除」は社 会的なネグレクトな状態である。 第三者の関わる生殖技術について考える会 会の目的 第三者の関わる生殖技術について、さまざまな立場から 現状と問題を明らかにする。 社会に対し問題提起を行い、第三者の関わる生殖技術に ついて社会的議論が起こることを求める。 これまでをふり返り、そして社会的な議論なしに、現状の まま、これら技術が進み続けることには反対する。 第三者の関わる生殖技術の是非を、今一度問い直す。 子どもたちをサポートする取り組み例 ライフストーリーブック (精子・卵子の提供により生まれた子ども用)の中味 1.わたしについて知っていること 2.わたしの健康 3.わたしの生まれた家族 4.「告知」を受けた時のこと 5.提供者、そして同じ提供者から生まれたきょうだい 6.わたしの考えと気持ち 7.今のわたしと家族 8.わたしの学校 9.わたしの職場 10.ある一週間を振り返る 11.第三者の関わる生殖技術について思うこと 12.未来
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