名大理 樋田美栄子 大澤幸治、佐藤正俊 宇佐見俊介(NIFS)、長谷川裕記(地球シミュレータ) Contents 1.Introduction 宇宙における高エネルギー粒子 フェルミ加速 2.非線形磁気音波の構造 3.非線形磁気音波による粒子加速についての 理論と粒子シミュレーション ・ イオンの加速 ・ 電子の加速 ・ 陽電子加速 4.今後の課題 太陽フレア I フレアーに伴って 高エネルギー粒子が生成 ・ 最高エネルギー – イオン109 ~ 1010 eV – 電子107 ~ 108 eV ・ ~ 1秒以下の短時間で 加速される。 S. R. Kane, E. L. Chupp, D. J. Forrest et al.: Astrophys. J. 300 (1986) L95. E. L. Chupp, H. Debrunner, E. Fluckiger et al.: Astrophys. J. 318 (1987) 913. 太陽フレア II 太陽高エネルギーイオンの組成 ・ 大規模なフレアー 背景のコロナの組成とほぼ同じ (全ての重イオン種が、同じように加速) J. P. Meyer, et. al. : Astrophys. J. Suppl. 57 (1985) 151 ・ 小規模なフレアー 3He過剰現象 (3Heの選択的加速) Anglin (1975) , Reames (1990) 等 理論モデル : 電流不安定性 Fisk (1978) 等 M. Toida and H. Okumura : Phys. Plasmas, 11 (2004) 1622 宇宙線 • 最高エネルギー ~ 1020 eV – 起源:不明 – 機構:不明 超新星残骸起源? 超新星残骸SN1006 高エネルギー電子の加速源 X線分布 高エネルギー電子のシンクロトロン放射 細いフィラメント 状に分布 ASCAによる観測 K. Koyama, et al. : Nature 378 (1995) 255. Chandraによる観測 Bamba A., et al., :ApJ 589 (2003) 827 超新星残骸 超新星残骸 G347.3-0.5において、陽子がTeVエネルギー R. Enomoto, et al.: Nature 416 (2002) 823. に加速されている? Y. Fukui, et al.: PASJ 55 (2003) 61. 蟹星雲:中性子星(パルサー)を中心に持つ超新星残骸 高エネルギー粒子の存在 ~100 TeV のガンマ線を観測 T. Tanimori, et al.: Astrophys. J. Lett. 492 (1998) L33. F. A. Aharonian, et al.: Astrophys. J. 539 (2000) 317. パルサー磁気圏は 陽電子を 含むと考えられている 陽電子の効果は? Fermi加速モデル 宇宙高エネルギー粒子の加速 標準モデル: フェルミ加速、衝撃波フェルミ加速 運動している「磁気雲」に、粒子が何度も 反射されて徐々にエネルギーを獲得 E. Fermi: Phys. Rev. 75 (1949) 1169. 衝撃波フェルミ加速 上流 波面 下流 <仮定> ・ 衝撃波の上流と下流に 磁場擾乱存在 ・ その擾乱に散乱されて粒子 が衝撃波面を何度も横切る V1 V2 Blandford et. al.: ApJ 179 (1978) 573. エネルギースペクトル N ( ) s 統計的加速 加速に長時間を要する 仮定の妥当性は? 実証は? 非統計的加速の探求 ・ 無衝突プラズマ中の大振幅プラズマ波の構造は? (非線形波動の研究が重要) ・ その中での粒子の運動は? ・ その反作用は? 粒子シミュレーションが強力な研究手段 理論・粒子シミュレーション研究により 様々な加速機構が発見、実証されてきた。 ・ 大振幅波面(その付近)の電磁場による加速 ・ 短時間で、高エネルギーに加速することが可能 磁気流体波 一様な磁化プラズマ中の磁気流体波 ・ シアーアルヴェン波 粒子加速 ・ 速い磁気音波 以降、磁気音波と記す ・ 遅い磁気音波 MHD (1流体) モデルによる磁気音波の線形分散関係 直角伝播の場合: w= vAk (vA >> cs を仮定) 非線形は? MHD ⇒ 衝撃波 無衝突プラズマ : 散逸? 遷移領域の幅? 構造? MHDでは取り扱えない! 2流体モデルでみた磁気音波 直角伝播の磁気音波の線形分散関係 w k ω = vA 2 1/ 2 (1 c 2 k 2 / w pe ) 非線形効果 0 (|We| Wi)1/2 k (2流体方程式 ⇒ KdV方程式) 孤立波解が現れる 幅 ~ c/wpe ⇒ 電子の運動が本質的 分散効果 非線形効果 運動論的効果 一部の粒子が波の電磁場で加速される ⇒ エネルギー散逸 ⇒ 左右対称性が壊れて、衝撃波型に c/wpe 遷移領域の幅~ c/wpi (イオン加速が起こる場合) 非線形波の伝播速度 Vsh=MvA (M>1) 非線形磁気音波中の電磁場 直角伝播の場合(θ=90°) z B0 q y イオンと電子の電荷分離 k x 斜め伝播の場合は By ,-Ez が Exと似たプロファイル E|| が存在 波の静止系では 全空間で一定な電場が-y方向に現れる Ey0 = -vshB0 /c 非線形磁気音波によるイオン加速 Vo : 衝撃波上流での速さ(実験室系) 熱的イオン Vo << MvA ・ 水素イオン Exによる反射 R. Z. Sagdeev (1973), R. L. Tokar, et. al. (1985), Y. Ohsawa (1985) ・ 重イオン Eyによる加速 M. Toida and Y. Ohsawa: Sol. Phys. 171 (1997) 161. Vo ~ MvAのイオン ・ 波乗り加速 Ex とローレンツ力による捕捉 + Ey0 (=vshB/c)により加速 Sagdeev (1973), Katsoules and Dawson (1985), Shapiro (2003) Vo >> MvAの高速イオン ・ 斜め磁気音波の Ey による多段加速 S. Usami and Y. Ohsawa: Phys. Plasmas 9 (2002) 1069. イオン加速:縦電場 Ex による反射 波の系での粒子軌道 EX>0 透過粒子 f(vx) 透過粒子 -MvA 反射粒子 (実験室系: 0) 反射粒子 Vx Vref 0 反射条件 (2MvA) ◉ -MvA 1 mi vx2 qiM 2 vx vref = 2qiM / mi B Y Ey0 x イオン加速の粒子シミュレーション 電子とイオンの Full dynamicsを計算 イオン加速の反作用 tos=0.3*2p/Wi T. Kawashima, et. al.: J. Phys. Soc. Jpn. 72 (2003) 1664. 反射イオン ⇒ 非定常性、振幅振動、不安定性 ⇒ 電子加速 (反射イオンのフィードバックに ついては、現在多くの研究が進行中) 重イオン加速のシミュレーション 主成分 H 一部の粒子が 縦電場 Ex により加速 副成分 He, O, Fe 全ての重イオン (全種類、全粒子) ほぼ同じ速度に加速 ← 横電場 Ey 太陽高エネルギー粒子の組成 大振幅波の領域 Toida and Ohsawa: Sol. Phys. 171 (1997) 161. 重イオンの加速機構 vHx vex Ey E y v jx Bz / c 0 ( j = e or H) Ex vix 0 (i = He, C, O, Fe , ) qi vix Bz = Ey 0 dt mi c dviy x 横電場 Ey ⇒ 重イオンの vy が増加 Dt=2p/<Wi> vym MvA イオンのエネルギー Vo : 衝撃波上流での速さ(実験室系) 熱的イオン の加速 水素イオン, 重イオン Vo ⇒ ~MVA We / w pe 1 のプラズマ(例:太陽の磁力管 n=108cm-3, B=100G) E ≥ MeVのイオンを短時間 (1s以下)に生成可能 さらに高エネルギーのイオンを作り出すためには? Vo ~ MVA の粒子の波乗り加速 vym (mi / me )1/ 2 vA (M 1)3/ 2 Vo >> MvA の高速イオンの多段加速 g 100 の超相対論的イオンの生成 高速イオンの加速 Ey Ex 高速イオン: 上流での速さ Vo MvA Vo >> MvA x 遷移領域の幅~ c/wpi 旋回半径 >> 遷移領域の幅 c/wpi qigv0 B / c qi Ex ⇒ Exの効果は無視 Eyによる加速は可能 高速イオンの加速 :直角伝播の場合 Y Ey ◉ Bz x out X in Eyによる加速 波に追い越されて 加速は1回で終了 K. Maruyama, N. Bessho, and Y. Ohsawa: Phys. Plasmas 5 (1998) 3257. 高速イオンの加速 : 斜め伝播の場合 z V|| 旋回中心 B 磁場: XZ 面内 波の伝播: X方向 θ V||cosθ= <Vx> =Vsh(大振幅波の 伝播速度) x B 1回目とほぼ同じ旋回 位相で突入&脱出 Ey 複数回の加速が可能! Z Y X Eyによる加速 多段加速 T. Masaki, H. Hasegawa, and Y. Ohsawa: Phys. Plasmas 7 (2000) 529. 斜め磁気音波による加速 Eyによる加速で p⊥が増大 • tin 、 tout 磁場の変化のため p^→p// の成分変換。 p0// (tout) > p0//(tin) (0//: B0に平行な成分) • v0// cosθ ~ vsh B1 B0 波の内外で磁場 の傾きが異なる • 多段加速を受ける。 • p// (v//) の増大。 v0// cosθ > vsh ・ 粒子は波の前方に抜け出 てしまい、加速は終了! vsh ~ c cosq0 • 運動量に上限はないが、速度は光速cを超え られない。 • 衝撃波の出入りによって p||=m0gv0|| は増大し 続けるが、 v0// cosq0は vsh程度で抑えられる。 V0||cosq0 > vsh にはならない ⇒ 粒子は衝撃波と共に非常に長い時間動く。 その結果、加速時間が劇的に増大する。 長時間多段加速 S. Usami, H. Hasegawa, and Y. Ohsawa: Phys. Plasmas 8 (2001) 2666. gの劇的増大 • 衝撃波に42回加速 されて、Lorentz因 子がg~4から160以 上まで増大した。 S. Usami and Y. Ohsawa: Phys. Plasmas 9 (2002) 1069. 電子加速 Ey Ex MvA 静電場(Ex)は、 電子を引き込む方向 電子の旋回半径 << 遷移領域の幅 x 遷移領域の幅~ c/wpi ⇒ イオンとは異なる 加速機構が必要 電子加速機構 ・ 反射イオンによる不安定性 ・ 斜め衝撃波の電磁場 +非定常性による後部の揺らぎ ・ 衝撃波中の小振幅パルス 不安定性による電子の加速 反射イオンによる不安定性を介した電子の加速 ・ Lower hybrid 不安定性 McClements, et. al. (1990), Bingham, et. al. (2000) ・ 2流体不安定性 Shimada and Hoshino (2002) 反射イオンと衝撃波に向かう電子との間で 2流体不安定性が励起、衝撃波上流に 局在化した静電場が形成 ⇒ その静電場による電子捕捉 衝 撃 波 ⇒ 定電場(Ey0)による加速 不安定性が十分成長するためには、Ωe/ωpe<<1 超相対論的電子の生成 ・ 斜め衝撃波による超相対論的 電子の加速 Bessho and Ohsawa: Phys. Plasmas 6 (1999) 3076. g>100の電子の生成には wce wpe 1 and vsh c cosq. ・ 衝撃波中の小振幅パルスによる 加速 Sato, Miyahara, and Ohsawa: Phys. Plasmas 12 (2005) 052308. 上記の条件はなし 広いパラメータ領域で g>100 の粒子を生成可能 斜め衝撃波による電子の加速 斜め衝撃波 パルス後部のE||の揺動による反射 一部の電子が主パルス領域に捕捉 主パルス領域の電場 Ex, Ey0 電子が超相対論的エネルギーに We/wpe=3 q = 45 M =2.3 電子加速の機構 波の系での電子軌道 高エネルギーに eFM eEy0Dy >0 (>0) (>0) 反射されると -eFM eEy0Dy ≈ 0 (<0) (>0) Ey0 Ey0 Ex Ex Ey0 Ey0 y ◉ Bz x eFM eEy0Dy ≈ 0 (>0) (<0) 主パルス後部における反射 • 旋回半径 << 遷移領域の幅 • ドリフト近似: B EB v = v|| c 2 B B B0 = (B0 cosq ,0, B0 sinq ) Vd x 1 2 mv||0 e E|| ds 2 の粒子は反射される 厳密な反射の条件は 直角伝播 E||=0 斜め伝播 E||≠0 x F ( x) E|| ds 1 2 1 2 1 2 1 2 mv|| mv d = mv||0 mv d 0 e( F F0 ) 2 2 2 2 <0 (添字 0 は上流での値) Fの非定常性と電子捕捉 Fのプロファイル -eF x F ( x) E|| ds 反射 透過 パルス後面で -Fが正になった時に、電子は反射 Fの時間変化 ⇒ 反射電子は捕捉される! Zindo and Ohsawa: Phys. Plasmas 12 (2005) 052321 捕捉電子の数の変化 単調増加 容易に離脱できな い 衝撃波に深く捕捉 弱磁場中の電子加速 大振幅衝撃波中の小振幅パルスによる加速 We/wpe=0.4 q = 60° γ Mms =17.9 M ms vsh vms vms vA2 cS2 Sato and Ohsawa; Phys. Plasmas 12 (2005)052308 主パルスと小パルスの伝播 vsh = 17.9vms , vsh2 = 14.6vms 主パルス 小パルス 小パルスの後方で 高エネルギー電子 が生成 γ>100の加速 小パルス後部における電子加速 dBZ Ey 詳しい議論は ポスター発表で 0 ◉ ◉ ◉ -Y behind ◉ ◉ ◉ in x vdx vsh2 Ey Ey(behind)で加速 > Ey(in)で減速 ⇒ 小パルス後部での加速 陽電子を含むプラズマ パルサー磁気圏などに存在すると考えられている。 ・ 電子・陽電子プラズマ 電荷分離なし ⇒ 縦電場は形成されない 強い加速を示したものはない Alsop and Arons (1988), Langdon, et. al. (1988), Hoshino, et. al. (1992, 2001) ・ 電子・陽電子・イオン プラズマ 電荷分離あり ⇒ 縦電場の形成 ⇒ 強い陽電子加速 (g ≈ 2000) 大部分の陽電子が加速 Hasegawa, Usami, and Ohsawa: Phys. Plasmas 10 (2003) 3455. 電子・陽電子・イオンプラズマ中の陽電子加速 np0 /ne0 = 1/50 q = 42° W e0 /w pe = 3 v sh ~ c cos q 衝撃波面で ほとんどの粒子が反射 衝撃波に捕捉され 強く加速 位相空間( x,g ) g ~ 700 に達する 長時間シミュレーション 電磁場が乱れて、加速は一時停滞するが、その後 電磁場が回復、さらに加速が続く。 g~2000 に達する Hasegawa, Kato, Ohsawa: Phys. Plasmas in press 今後の課題 ・ 極めて大きな振幅では? 従来の粒子シミュレーション研究: 空間1次元 (波の伝播方向をX方向とすると、YZ方向には無限一様を仮定) ・ 波面に沿った方向の構造 ・ 衝撃波面の曲率 ・ 不安定性 衝撃波の構造形成 や粒子加速に及ぼ す影響は? 3次元粒子コードを用いた非線形磁気流体波と 粒子加速のシミュレーション研究が必要 まとめにかえて 3次元相対論的電磁粒子コードの開発がほぼ 完了し、衝撃波のシミュレーション研究を開始 しました。 ご期待下さい!
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