スペクトル拡散とCDMA 作: 小幡 常啓 所属: 群馬工業高等専門学校電気工学科 目次 1. スペクトル拡散通信の概念と利用分 野 2. 狭帯域変調 3. 最大伝送速度 4. スペクトル拡散通信方式 5. 拡散符号系列 6. CDMA方式 1. スペクトル拡散通信の概念と 利用分野 スペクトル拡散通信の概念 J. P. Costas, “Poisson, Shannon and Radio Amateur’’, Proc. IRE, vol. 47, pp.2058-2068 (1959). スペクトル拡散通信の利用分野 (1) レーダー (2) GPS(Global Positioning System) (3) 携帯電話(cdmaOne) (4) 次世代携帯電話(IMT2000) (5) 無線LAN (6) Bluetooth ..…. レーダー 送信パルス 受信機 パルス継続時間 送信パルス:チャープ信号 受信機 パルス継続時間 チャープ フィルター 時間 時間 周波数が高いほ ど遅延時間が大 きいフ ィ ルタ ー 時間的に圧縮 さ れたパルス チャープ フィルター 時間 時間 周波数が高いほ ど 遅延時間が大 き いフ ィ ルタ ー 時間的に圧縮 さ れたパルス GPS 衛星数 24個 軌道数 60゜毎に6軌道面 (各軌道面に4衛星) 高度 20183km 送信周波数 L1キャリア 575.42MHz L2キャリア 1227.6MHz C/A-code 使用信号 L1キャリア 送信信号速度 1.023 Mbps 拡散符号 Gold符号(周期1023tip) データ伝送速度 50 bps 測距精度 ~100m C/A-codeの他に軍事目的のP-codeがあり。 IS-95(cdmaOne)携帯電話方式 1994年 Qualcomm社、スペトル拡散変調方式を用いた新しい携帯電話シ ステム(通称CDMA方式)を提案。 1995年 商用サービスの開始。 周波数帯 800MHz 帯域幅 1.25MHz 1次変調 QPSK変調 スペクトル拡散 直接拡散(DS)方式 拡散率(128=1.2288Mcps/9.6kbps) IMT-2000次世代携帯電話方式 (International Mobile Telecommunication System) 世界共通の携帯電話方式 周波数帯 2000MHz 帯域幅 5MHz 開発目標年度 2000年 1次変調方式 QPSK変調 スペクトル拡散 広帯域CDMA(チップレート 4.096Mcps) 無線LAN ロジックIC アンテナ RFフロントエンド シンセサイザー IFトランシーバ MAC ベースバンド コントローラ 3.3V 3端子コントローラ VCO 水晶発振器 1.22MHz s水晶発振器 VCO 1Mbit フラッシュメモ リー SRAM スペクトル拡散はノイズに強い 拡散符号を 使っ て 信号を 拡散 信 号 電 力 ベースバンド プロセッサー 1MHz 周波数 周波数を 上げて 電波にし て送信 周波数変換 回路 電波が空中を伝わる間に 加わる2.4GHz帯のノイズ 11 MHz 送信側 無線LANカード 受信輪 無線LANカード 拡散符号を 使っ て 元の信号を 復元 信 号 電 力 ベースバンド プロセッサー 1MHz 周波数 2. 4 GHz 電波を 受信し た後、 周波数を 下げる 周波数変換 回路 11 MHz 22 MHz Bluetooth Harald Bluetooth was a fierce Viking king in 10th century Denmark. http://www.bluetooth.com/ 携帯電話などの通信とPCの世界の統一融合を目指す規格。電話どうし、 TVのみといったメディアの種類にあわせたこれまでの通信方式から、あ らゆる機器をつなぐことを目指してた通信規格。 周波数帯 ISM帯(2400MHz帯) 1次変調 GFSK変調方式(転送レート 1Mbps ) スペクトル拡散 周波数ホッピング方式 2. 狭帯域変調 情報信号 s(t) キャリア { アナログ信号 デジタル信号 x(t)= A cos(ωt +φ) A: 振幅, ω: (角)周波数, φ: 位相 アナログ変調 デジタル変調 Amplitude Modulation Amplitude Shift Keying Frequency Modulation Frequency Shift Keying Phase Modulation Phase Shift Keying デジタル変調 ASK: Amplitude Shift Keying x(t)=a(t)cosωt キ ャリア 発振器 cosωt デジタル情報信号 a(t)=0,1 FSK: Frequency Shift Keying キ ャリア 発振器1 cos(ω-ωa)t キ ャリア 発振器2 x(t)=cos(ω±ωa)t a(t)=0 a(t)=1 cos(ω+ωa)t PSK: Phase Shift Keying x(t)=cos(ωt+a(t)π) =b(t)cos(ωt) キ ャリア 発振器 cosωt b(t)=±1 ASK信号,PSK信号のスペクトル sinc2(πTf) fc-2/T fc-1/T fc fc+1/T fc+2/T 周波数 fc 3. 最大伝送速度 Shannon の通信容量定理 (1948年) C=B log2(1+S/N) C : 通信容量(bps) B : 占有帯域幅(Hz) S :信号電力(W) N : 雑音電力(W) 例 S/N=30 dB= 103 , B=3KHz C=30 kbps 4. スペクトル拡散通信方式 スペクトル拡散通信方式 定義: 情報の伝達に必要な最低限必要な帯域よりも非常 に広い周波数帯域に拡散された通信方式で、その 周波数帯域幅は伝送情報伝達以外の関数に依存 する。 (1) 直接拡散(DS: Direct Spread)方式 (2) 周波数ホッピング(FH: Frequency Hopping)方式 (3) チャープ変調方式 スペトル拡散通信系の基本モデル 送信機 情報信号 狭帯域変調 拡散変調 1次変調 2次変調 受信機 情報信号 復調 逆拡散 直接拡散方式の送受信機の構成 DATA DATA PN系列発生器 PN系列発生器 キャリア DATA ビット区間 T PN系列 チップ区間 Tc キャリア PN符号による拡散 送信データ EX-OR PN符号 送信符号 PN系列のスペクトル分布 T 時間 t 1 1 0 1 0 1 1 1 1 0 1 0 周期(7bit) 周期7のPN系列の時間波形 と離散ペクトル分布 エ ネ ル ギ ー 密 度 エ ネ ル ギ ー 密 度 s in c ( π T f) 2 1/T 1/7T 周期∞のPN系列 の連続スペクトル分布 周波数 f s in c 2 (π T f) 1/T 周波数 f 理想乱数系のスペクトル分布 増幅器 Vn + - フリップ フロップ 理想乱数列 時間 t クロック 雑音電圧( 熱雑音, Johnson雑音) ( 1928年) Vn 時間 t 1 1 0 1 0 1 1 1 1 0 1 0 エ ネ ル ギ ー 密 度 単位周波数区間中の2 乗平均雑音電圧 Vn2=4kTR ( Nyqui st の式( 1928年) ) Vn2 4kTR 1/T 周波数 f 周波数 f 逆拡散過程 受信符号系列 EX-OR PN符号 復調データ 逆拡散のからくり データ s(t) PN系列 p(t) 拡散されたデータ s(t) + p(t) { s(t) + p(t) } + p(t) = s(t) + { p(t) + p(t) } = s(t) + 0 = s(t) + は EX-OR; 0+0=0, 0+1=1, 1+0=1, 1+1 =1 5. 拡散符号系列 拡散符号系列に最低限要求される性質 (1) 1周期中に含まれる「1」と「0」の数の差は1以下。 (2) 系列中の「0の連なりの数」と「1の連なりの数」の統計分布が同じ で、出現回数も同じである。 (3) 拡散符号の自己相関関数は原点で1、原点以外では -1/(符号長) あるいは0である。 拡散符号系列の例 m系列(最長符号系列) Gold符号系列 ….. m系列発生器と非m系列発生器 ( 1) m系列符号発生器 R1 R2 R3 .....00101110 7 bit ( 2) m系列符号発生器 R1 R2 R3 .....01001110 7 bit シフト回数 0 1 2 3 4 5 6 7 R1 1 1 0 1 0 0 1 1 R2 1 1 1 0 1 0 0 1 R3 0 1 1 1 0 1 0 0 シフト回数 0 1 2 3 4 5 6 7 R1 1 1 0 0 1 0 1 1 R2 1 1 1 0 0 1 0 1 R3 0 1 1 1 0 0 1 0 シフト回数 0 1 2 3 4 5 6 7 R1 1 0 1 1 0 1 1 0 R2 1 1 0 1 1 0 1 1 R3 0 1 1 0 1 1 0 1 ( 3) 非m系列符号発生器 R1 R2 R3 ....10110110 3 bit M系列発生器の帰還法 段数 2 3 4 5 6 符号長 3 7 15 31 63 7 127 8 255 帰還法 [2,1] [3,1] [4,1] [5,2] [5,4,3,2] [5,4,2,1] [6,1] [6,5,2,1] [6,5,3,2] [7,1] [7,3] [7,3,2,1] [7,4,3,2] [7,6,4,2] [7,6,3,1] [7,6,5,2] [7,6,5,4,2,1] [7,5,4,3,2,1] [8,4,3,2] [8,6,5,3] [8,6,5,2] [8,5,3,1] [8,6,5,1] [[8,7,6,1] [8,7,6,5,2] [8,6,4,3,2] 帰還法と符号系列の関係 R1 帰還法 [5,3] [5,2] [5,4,3,2] [5,3,2,1] [5,4,3,1] [5,4,2,1] [5,4] [5,1] R2 R3 R4 R5 系列 …1111100011011101010000100101100… …1111100110100100001010111011000… …1111100100110000101101010001110… …1111101110001010110100001100100… …1111101000100101011000011100110… …1111101100111000011010100100010… …111110000100011001010… …111110101001100010000… 長さ 31 31 31 31 31 31 21 21 Gold符号発生器 Gol d符号発生器 [ 5, 3] m系列発生器 R1 R2 R3 R4 R5 [ 5, 3] R1 [ 5, 4, 3, 2] m系列発生器 R2 R3 R4 R5 [ 5, 4, 3, 2] 6. CDMA方式 送信機 情報変調 符号変調 Σ データ 1 符号系列 1 情報変調 符号変調 データ 2 符号系列 2 受信機 情報変調 符号変調 符号相関 データ n 情報復調 データ k 符号系列 n 符号系列 k CDMA信号 Data 1 PN符号1 {0111001} 0゜位相 キャリア t 180゜位相 Data 1 PN符号1 {1011100} キャリア t Data 0 PN符号1 {0101110} t キャリア t Data 1 PN符号1 {0010111} キャリア t つづく?
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