企画段階

企画段階
マーケティング課題のリサーチ化
ナマのマーケティング課題  リサーチ可能なマーケティング課題
ナマのマーケティング課題:抽象的、問題の現実の複雑な背景が未整理のまま
例: 1.視聴率の高い番組をつくるにはどうしたらよいのだろうか。
2.今度新薬を開発したいが、どんなもの作ったらヒットするだろうか。
3.自社ブランドA、B間の共食い現象の程度を知り、どんなブランド
ポジションの修正が必要だろうか。
致命的な誤解:
リサーチというものは聞きたいことを素朴に聞けば、何でもわかるもの
という信仰。
リサーチ可能な課題にするには
抽象的な表現を具体化し、複雑な背景を整理する。
マーケティング課題のリサーチ化
具体的な作業: ナマの課題をいくつかのリサーチ可能な課題に分解
ナマの課題
リサーチ可能な課題に分解
リサーチ結果
共食い問題の例
1.カニバリゼーションの定義を明確にする。
2.競合ブランドを明確にする。
3.直前使用、現在使用、次回使用などのブランド間の流入、流出を比較分析する。
4.各ブランド間のイメージパーセプションの類似度及び自社ブランドのポジショニング
の方向性をきめる。
リサーチ目的の明確化・具体化
リサーチの目的:-
-
-
-
リサーチの背景
結果の評価基準
結果の活用
必要な情報及びその情報源
リサーチの目的が明確でないと
1.時間と経費の無駄使い
2.意思決定者に誤った情報を与えてしまう可能性
リサーチ目的とリサーチ技法
目的  技法 : 正しい
技法  目的 : 誤り
二次データの活用
二次データ:すでに誰かが収集・加工したデータ
例: - 政府の各省庁や外郭団体の刊行物
- 業界団体・協会の出版データ
- 広告出稿統計、各種オープンパネルデータなど
二次データの特徴
1.収集目的:他の問題解決のため
2.収集プロセス:手早く容易
3.収集コスト:比較的安い
4.収集時間:短い
二次データの活用
二次データの活用
1.問題やその背景についての理解を深めたり、課題を定義したりする際の情報
となる。
2.仮説を検証したりする際のデータとなる。
3.より適切なアプローチやリサーチデザインを開発・設計するための情報となる。
4.一次データを解釈する際に、より多くの洞察を与えてくれる情報となる。
二次データの活用上の留意点
1.設計の明細:データを収集・分析する方法は適当か
2.誤差:データの正確性はどの程度保障できるか
3.情報の新しさ:データが集められた時期は適当か
4.リサーチの目的:データが集められた目的から限界を考慮したか
5.データの性質:データの内容は利用できる性質か
6.信頼性:全体としての信頼性を判断する根拠がどれくらいそろっているか
一次データのリサーチタイプの決定
一次データ:リサーチ目的のために調査者が自ら集めるデータ。
一次データの特徴
1.収集目的:自分の取り組んでいる調査主体に対する問題解決のため
2.収集プロセス:リサーチプロセスのすべてに関与しており、容易ではない
3.収集コスト:高い
4.収集時間:長い
二次データが
利用できるか?
データ選択
Yes
二次データの
利用
No
一次データの
利用
一次データのリサーチタイプの決定
一次データの機能別分類
1.探索型リサーチ (exploratory research)
2.実態記述型リサーチ (descriptive research)
3.因果型リサーチ (causal research)
4.成果モニター型リサーチ (performance-monitoring research)
一次データのリサーチタイプの決定
1.探索型リサーチ (exploratory research)
目的: ①問題点と機会を認識し、洞察する。
②仮説を構築する。
③意思決定の代替案を創出する。
④アイデアや洞察の発見
⑤実態記述型リサーチの実施に必要な情報を収集する。
特徴: 問題を構造化できないため、柔軟性のあるアプローチをとる。
できるだけ調査する対象領域を広くとる。
調査方法: グループインタビュ、デプスインタビュ
一次データのリサーチタイプの決定
2.実態記述型リサーチ (descriptive research)
目的: ①市場の機能と特性を記述する。
②マーケティングミックスの4Pの特性を記述する。
③仮説の検証
特徴: 探索型リサーチよりもアプローチが構造化されている。
より的確な調査目的、詳細な調査票、正式なサンプリング。
調査方法: サーベイリサーチ、パネル調査
一次データのリサーチタイプの決定
3.因果型リサーチ (causal research)
目的: ある結果(従属変数 Y)をもたらしているいくつの原因(独立変数 Xi)
のなかで、何が主たる原因で、その大きさはどれくらいのものか
を知ること。
例: Y: 売り上げ
X: 価格、広告費、販売促進費など
調査方法: サーベイリサーチ、実験法
一次データのリサーチタイプの決定
4.成果モニター型リサーチ (performance-monitoring research)
目的: いくつかの代替案のなかから特定のマーケティングミックスが決まり
それに沿ったマーケティング計画が実行されたあと、市場において
その効果を追跡調査すること。
特徴: 他の3タイプのリサーチの後にくるリサーチ。
その調査結果が次回の探索型リサーチの設計のフィードバックと
なる。
調査方法: タウンウォッチング、ホームウォッチング
企画書の作成
調査企画書:マーケティングリサーチのプロジェクトに関する計画の全容
の文書。
調査企画書の構成:
1.調査目的
2.調査提示物
3.調査方法
4.調査項目
5.分析視点
6.調査日程
7.調査経費
企画書の作成
1.調査目的
2.調査提示物: 調査の際に対象者に対して用いる提示物
コンセプトテストのコンセプトシート、製品テストの製品自体、広告テストの
コマーシャル。
企画書の作成
3.調査方法  具体的に設計する
(1)手法…個人面接法、電話法、郵送法、留め置き法など
(2)地域…首都30km圏、京阪神圏など
(3)対象者…対象者の条件ないしは資格の定義。
例: 「15~24歳の2人以上普通世帯の女性個人で、最近一ヶ月間
にインスタントコーヒーを飲んだことがある人」
注意: 対象条件の厳しさとサンプル確保の容易さのトレードオフ
(4)サンプル数…サンプルとする対象者の数
(5)母集団とサンプリング
母集団…住民登録台帳、電話帳、学生名簿
サンプリング:母集団からサンプルを抽出する方法
企画書の作成
3.調査方法
(6)テストデザイン
製品テストの場合…テストすべき製品の種類数、一人の対象者がテスト
する製品数など
(7)アプローチの方法…インタビュアまたは調査会社の対象者に対しての
具体的なアプローチ
-事業所調査の場合、事前に会社の総務部あるいは人事部に挨拶状
や調査の趣旨をするのがよい。
企画書の作成
4.調査項目
-調査目的を具体的に分解し、どんな情報が必要かを検討して、それら
を調査項目とする。
-仮説を検証したいときは、複数の項目を設定して、いろいろな角度から
総合的に検討する。
例:
調査目的: 新製品アロンの市場浸透度を調べる。
調査項目:
①銘柄について:銘柄の知名、使用している銘柄、アロンの知名と
使用
②アロン広告について:アロンの広告知名、想起内容、訴求点の
理解
③対象者の特性:年齢、職業、ライフステージなど
企画書の作成
5.分析視点
 多変量解析を行う場合やその他の特殊な集計・分析を実施するとき
必要に応じて設定する。
6.調査日程




企画・準備作業
実査作業(フィールドワーク)
集計作業
分析・報告書作成作業
企画書の作成
7.調査経費
 複数の調査会社の経費見積もりを比較する場合、事前に内訳の費目
をきめておくと、見積もり額を公平に評価できる。
 企画・準備費(パイロット調査を含む)
 実査費
 分析・報告書作成費
 印刷費
調査票の設計
1.設計手順
①実査の手法にもとづいて、適切な調査フォームを決める。
②企画書の調査項目を細分化したり、項目自体を追加・削除する。
③決定した調査細項目の回答式を決める。
④質問順序を決めてフローチャートを決める。
⑤質問のワーディングを決める。
⑥プリコード(pre-code)の回答カテゴリを具体的に決める。
⑦必要に応じてプリテストを実施し、内容を修正する。
⑧調査票のレイアウト、体裁を決める。
調査票の設計
2.実査手法別に見た設計上の特性
 面接法…対象者と直接会って、しばらくの間インタビュするため、礼を
失さないように注意しながら、普通の話し言葉をワーディングする。
 電話法…できるだけ簡単な回答選択肢を読み上げて、対象者に選ん
でもらう。
 郵送法/留置き法…自記式調査票をつかうため、回答の仕方がよく
わかるように工夫する。
調査票の設計
3.質問順序の原則
① 質問は大分類から小分類へ、一般的な質問から具体的な質問へ
② 簡単な質問を最初に
③ 興味のありそうな質問を先に、難しい質問は後回し
④ 親和関係を早く築くために、興味のある質問を設ける
⑤ 対象者属性・特性(フェースシート)は調査票の最後に聞く
⑥ 質問の論理的な順序は厳守する
⑦ 質問のテーマがかわるとき、説明を加え、相手の頭を切り替えて
もらう。
調査票の設計
4.よい調査票の条件
① 質問は、意味ある回答を正しく収集するようなワーディングに
なっていること。
② 質問の仕方、回答の取り方について、的確な指示があること。
③ 仮説を検証できるような質問設計になっていること。
④ 調査票のフォーマットが、採用する集計作業の内容にマッチして
いること。
⑤ 調査票のレイアウトがインタビュアの質問意欲を高めるように工夫
されていること。
⑥(自記式調査票の場合は)調査票自体が対象者に調査協力を促し
ていること。
調査票の設計
5.質問ワーディングのポイント
① 言葉や文章は簡潔であること
② 質問に業界用語や難しい語句を使わないこと
③ 一つの質問文が二つの意味を聞いていないこと
④ 誘導質問をしないこと
⑤ 偏りのある質問をしないこと
⑥ 質問が曖昧な意味を含んでいないこと
⑦ 対象者にとって何を答えるかが理解できない長い説明分や質問分、
複雑な回答条件を設定しないこと
⑧ どの対象者にも該当する質問をすること
⑨ 質問文は、対象者に身近に、できれば好感をもって迎えられること
調査票の設計
6.質問領域ごとの注意点
① 「行動」に関する質問
② 「場所」に関する質問
③ 「時」に関する質問
④ 「量」に関する質問
⑤ ブランドを聞く質問
⑥ 「助成」を聞く質問
⑦ デリケートな内容を聞く質問
調査票の設計
7.自由回答形式の質問の長所・短所
長所
① バラエティに富んだ回答、リサーチャーが予期しなかった回答が
得られることがある。
② 自由回答は、プリコード回答に比べ、結果をより深く分析できる。
③ 新鮮な「消費者のことば」を発見することができる
④ 特別な意見・見解を聴取したいときには、まとまった回答がえられる。
⑤ 情報が十分でなく、プリコード解答欄が用意できないときに代替できる。
調査票の設計
7.自由回答形式の質問の長所・短所
短所
① 発言量は、対象者間で大きな開きがあるので、調査結果は発言量
の多い人の内容に引っ張られる。
② インタビュアのプロービングの仕方によって、回答の出方と発言量
が変わる。
② 電話法では、会話が速く、発言内容を正しく記録できないときがある。
③ 集計上、統計的な処理を行うが、判断ミスが生じやすい。
④ プリコード回答に比べ、回答時間が長くなる。
調査票の設計
8.調査票の構成要素
① 調査管理データ
② あいさつ
③ 適格対象者のスクリーニング
④ 本質問
⑤ 対象者属性・特性(フェースシート)
⑥ 終わりのあいさつ
尺度と態度評定法
尺度の概念
対象者の
特性
態度
行動
反応
…
尺度
数値
尺度:測定すべき対象物(観察結果)、または対象者の態度や
行動、対象者特性などの結果(刺激に対する反応)に数
値を与えるための用具。
尺度と態度評定法
尺度の一般的分類
定義
例
名義尺度
対象の識別を目的とし
た尺度
順序尺度
順序や対象関係を表す 成績順位、売り上げランキング、
尺度
好感度ランキング
間隔尺度
間隔、程度の違いを表
す尺度
気温
比率尺度
絶対原点を持つ尺度
年齢、所得、商品の使用回数、
広告の接触頻度
解答欄の性別や職業、学籍番
号、背番号、郵便番号
尺度と態度評定法
態度の測定
態度…環境をどう知覚するかを体系づけ、それにどう反応するかの方向性
を定める個人の心的状態 (Aaker 1980)。
態度を測定する主な理由:
1.人の行動を観察し解釈するより、態度の方が把握しやすい。
2.態度は行動の先行指標となる。
尺度と態度評定法
態度を構成する成分
<態度成分>
認知的成分…………………..
<測定項目>
知名
知識
情緒的成分…………………..
選好
行動的成分………………….
意向
行動
尺度と態度評定法
態度を測定する尺度
1.カテゴリ尺度/SD尺度…企業イメージ、ブランドイメージなどの態度を
測定するときによく使われる
<例> このホテルについて、1~5のうち最も当てはまるものに○をつけて
ください。
サービスが丁重である 1
2
3
4
5 悪い
カテゴリ尺度の測定する次元
 評価次元:
(例)良いー悪い
 程度を表す次元
(例) 強いー弱い
 活動にかかわる次元
(例) 速いー遅い
尺度と態度評定法
態度を測定する尺度
2.リカート尺度…態度の対象の何らかの要因・側面にかかわるいくつの文
を回答者に提示する尺度。
<例> あなたご自身について、それぞれの項目の当てはまるところをチェック
してください。
全く
当てはまる
どちらとも
いえない
全く
当てはまらない
1.私はどんなに忙しくても
ゴミの分別を行う
□
□
□
□
□
2.コピー用紙は両面用いる
□
□
□
□
□
3.移動にはできるだけ公共機関か、
自転車をつかう
□
□
□
□
□
尺度と態度評定法
態度を測定する尺度
3.ステーペル尺度…中立点がなく、ポジティブ・ネガティブを数段階にわけ、
各段階に+、-の数字だけを付けた尺度。
<例> ある自動車の属性に関する評価
<安全性>
+3
+2
+1
-1
-2
-3
<スピード>
+3
+2
+1
-1
-2
-3
<燃費>
+3
+2
+1
-1
-2
-3
尺度と態度評定法
態度を測定する尺度
4.順序尺度…順序付けをしてもらう尺度。
<例> 次の自動車メーカーについて好きな順に番号をつけてください。
トヨタ___
ホンダ___
日産___
三菱___
5.一対尺度…一度に2つの対象について提示し、どちらが好きかなど
比較して回答をさせる方法。
きわめて
似ている
どちらとも
いえない
1.カローラ
スカイライン
□
□
□
□
□
2.カローラ
アコード
□
□
□
□
□
尺度と態度評定法
態度を測定する尺度
6.定和尺度…100点を重要性や選好に応じて配分する方法。
<例> 自動車の購入に際して、あなたは次のそれぞれの属性をどのくらい重視
しますか。
1.価格
______
2.燃費
______
3.スタイル
______
4.安全性
______
尺度と態度評定法
測定を行なう際の留意点
1.妥当性…真に測定したいことをどの程度測定できるか。
2.信頼性…測定する場面や時点が変わっても同様の結果が得られるか。
3.感度…小さな差異をどの程度識別できるか。
信頼性と妥当性
信頼性(高)
妥当性(高)
信頼性(高)
妥当性(低)
信頼性(低)
妥当性(高)