3.医師と法律 担当 柳川洋 医師法 医療法 医師法 • • • • • • 任務、免許、届出 欠格事項 臨床研修、業務・名称独占 診察関連の業務 処方箋の交付義務 保健指導、診療録、守秘義務に関する事項 任務、免許・届出 • 任務 医療・保健指導 →公衆衛生の向上・増進 →国民の健康生活の確保 • 免許・届出 国家試験合格 →医師免許(厚生労働大臣) →医籍登録 2年ごとに現状報告 届出医師数 27万人(人口10万対212) 医療施設従事者 25.7万人(95%) 欠格事由 • 絶対的欠格事由(免許取り消し) 未成年、成年被後見人(心神喪失) 成年被保佐人(心身耗弱(コウジャク)、浪費) • 相対的欠格事由(免許取り消しまたは一定期間の 医業停止) 心身の障害により医師の業務ができない – 視覚、聴覚、音声機能、言語機能、精神の機能 障害により、認知、判断、意思疎通が適切にでき ないもの – 麻薬・大麻・あへん中毒、罰金以上の刑、医事に 関する犯罪 – 厚生労働大臣の判断により、免許を与えないこ とあり(裁量行為) 欠格事由(つづき) • 言葉の説明 – 未成年者 20歳未満の者 – 成年被後見人 精神上の障害により、判断能力を欠く状態にあり、 家庭裁判所から後見開始の審判を受けたもの(財 産上の行為は後見人が法定代理人として行う) – 被保佐人 精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な者 として、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者 (一定の行為をする場合保佐人の同意が必要) 臨床研修、業務・名称独占 • 臨床研修 診療に従事しようとする医師は、2年以上の研修が必要、研修修了 後は申請により医籍に登録 →臨床研修修了登録証の交付 • 業務独占 医師でなければ医業を行ってはならない 例外: 臨床修練を目的とする外国医師、外国歯科医師 – 医業 医行為を業とすること – 医行為 医師の医学的判断、技術をもってするのでなければ人体に危害 を及ぼすと考えられる行為(人の疾病の診察、治療、予防など) • 名称独占 医師でなければ、医師または紛らわしい名称を使用してはならない 診察関連の業務 • 医師の応召義務 診療に従事する医師は、求めがあったときは、正当 な理由がなければ拒むことはできない →疲労、診療報酬不払いは正当な理由にならない • 証明文書に関する義務 診察、検案に立ち会った医師は、求めがあったとき は診断書、・検案書・出生証明書・死産証書の交付 を拒んではならない – 検案 自分で診察していなかった者の死体について、死 亡の事実を医学的に確認すること 処方箋の交付義務 • 治療上薬剤投与を必要とする場合、原則として処方箋を交 付しなければならない • 交付しなくてもよい場合 – 患者・看護者が必要ないと申し出た場合 – 暗示的効果を期待する場合 – 予後についての不安を与え、治療を困難にする場合 – 短期間の変化に即応した薬剤投与 – 診断・治療方法未確定 – 応急措置 – 患者以外に薬剤交付を受ける人がいない – 覚醒剤の投与 – 薬剤師のいない船舶での薬剤投与 保健指導・診療録・守秘義務に関する事項 • 保健指導に関する義務 療養方法、保健の向上に関する指導 • 診療録の記載に関する義務 – 住所、氏名、性、年齢 – 病名、主要症状 – 治療方法 – 診療年月日 – 診療記録の5年間保存 • 守秘義務 業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない (刑法第134条) 医療法 • • • • • • • • • • • • 経過、目的 医療提供の理念 病院、診療所の定義 医療に関する選択の支援 病院等の広告 病院の開設 診療所、助産所の開設 病院の人員配置 診療所の人員配置 医療計画 公的医療機関 医療法人 経過、目的 • 経過 – 1948年 医療施設に関する基本法として制定 以後人口の高齢化、医療の進歩、疾病構造の変化、要 介護者増加への対応などによる改正(1992年,97年,2000 年) – 2006年 医療制度改革の中核として、良質な医療体制確 率を目指した改正 • 目的 – 医療利用者の適切な選択の支援 – 医療の安全確保 – 病院、診療所、助産所の開設、管理 – 医療提供施設相互の機能分担 – 医療利用者の利益の保護、適切な医療の確保 医療提供の理念 • • • • 生命の尊重と個人の尊厳 医療の担い手と医療を受ける者の信頼関係 医療を受ける者の心身に応じた医療 良質かつ適切な治療、疾病予防、リハビリ テーション • 健康保持増進のための国民自らの努力 • 医療提供施設の機能に応じ、効率的、かつ 他のサービスとの有機的連携 病院、診療所の定義 • 病院・診療所 – 医師、歯科医師が公衆または特定多数人のために医業または歯科 医業を行う場所 病院: 20人以上の入院施設 診療所: 19人以下の入院施設または入院なし • 地域医療支援病院(都道府県知事の承認) – 200人以上の入院施設 – 紹介患者への医療提供、他の医療従事者に施設・設備の利用体制 (診療、研究、研修) – 救急医療 – 地域の医療従事者の資質向上 • 特定機能病院(厚生労働大臣の承認) – 400人以上の入院施設、10以上の診療科 – 高度医療提供能力 – 高度医療技術の開発・評価能力 – 高度医療の研修能力 – 通常の病院以上の人員確保 医療に関する選択の支援 国民に対する正確・適切な情報提供、地方公共団 体の措置、広告内容の規制 • 入院、退院時の説明(施設管理者の責任) – 入院時 治療計画などを記載した書面の交付、適切な説 明 – 退院時 退院後の保健医療・福祉サービスなどを記載し た書面の交付、適切な説明 • 業務の広告(医師、歯科医師、助産師) – 違反広告に対する立ち入り検査、中止命令(知事、保健 所設置市長) 病院等の広告 • • • • • • • • • • • • • 医師、歯科医師である旨 診療科(名称は政令で) 施設の名称、電話番号、所在地、管理者氏名 診療日、診療時間、予約診療 法令による指定の有無(保険診療、労災、母体保護法) 施設、設備、従事者(病床数、医師数など) 医師などの氏名、性、年齢、役職、略歴など 患者・家族の相談、情報保護、その他の管理・運営体制 紹介病院、保健医療福祉サービスの連携 情報提供(診療録など) 提供される医療の内容 入院日数、患者数、医療提供の結果 その他 病院の開設 • 許可(都道府県知事、保健所設置市長) • 病床の種別 – 精神病床 精神疾患を有する者 – 感染症病床 一類、二類、新感染症 – 結核病床 結核 – 療養病床 長期療養 – 一般病床 上記に該当しない者 • 病床の許可 – 医療計画による基準病床数を超える場合は許可 しないことあり 診療所・助産所の開設 • 許可(都道府県知事、保健所設置市長) 臨床研修修了医師・歯科医師、助産師以外の者が 開設する場合必要 • 届出(都道府県知事、保健所設置市長) 臨床研修修了医師・歯科医師、助産師が開設 → 10日以内に • 管理者 – 診療所 臨床研修修了医師・歯科医師 – 助産所 助産師 病院の人員配置 特定機能病院とその他の病院にわけて、病床の種別に応じた 人員配置基準 • 特定機能病院以外の病院 入院患者 – 療養病床 1/4(看護師・准看護師)、1/4(看護補助者)、適 当数の理学・作業療法士 – 一般・感染症・精神病床 1/3 (産科:適当数の助産師、歯科:適当数の歯科衛生士) 外来患者 – 1/30 • 特定機能病院 入院患者 – 上記より多い人員 1/2(看護師・准看護師) 外来患者 – 1/30以上 診療所の人員配置 療養病床を有する診療所の人員配置基準 • 医師 1人 • 看護師・准看護師 療養病床の入院患者6人 またはその端数ごとに1人 • 看護補助者 上記と同 • 事務員、その他の従業者 適当数 医療計画 • 基本方針 – 厚生労働大臣が良質、適切な医療を効率的に供給する体制確 保のための基本方針 – 都道府県は基本方針に即し、地域の実情に応じて策定 • 計画(抜粋)[二次医療圏ごとに策定(地域保健医療計画)] – 生活習慣病対策 – 救急医療等の確保 救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療等 – 医療連携体制 機能分担、連携、情報提供 – 居宅医療の確保 – 医療従事者確保 – 医療安全の確保 – 地域医療支援病院、その他の施設の整備目標 医療計画(医療圏) • 一次医療圏 市町村ごと(プライマリー・ケア) 通常の外来診療、治療、健康管理、紹介など 初期医療(一次医療)を担う施設 • 二次医療圏 日常生活圏ごと370(2005.3) 一般の医療需要(入院医療)、特殊外来医療 病院の病床整備の基本単位 広域市町村単位(保健所所轄区域を考慮) • 三次医療圏 都道府県ごと(北海道のみ6か所) 特殊な医療、先進的・高度専門医療、特殊医療機 器の整備 医療計画(基準病床数) • 二次医療圏ごとに一般病床と療養病床の基準数を 定める。精神病床、結核病床、感染症病床は都道府 県単位。(5年ごとに見直し) • 地域の病床整備目標、過剰病床の抑制の性格 • 基準病床数は二次医療圏内の人口、入院率、圏域 内外の患者の流出・流入を考慮して算定 • 病床過剰圏では、病院の開設、病床の増設を制限 • 都道府県知事は開設、増床、病床種別の変更につい て勧告 – 療養病床+一般病床: 10万4千床の過剰 – 精神病床: 2万1千床の過剰 – 結核病床: 1千床の過剰 医療機関における連携 • 医師との連携 独自の判断で行う業務: 保健指導(P)、正常の助産・妊婦・褥婦・新 生児に対する療養上の世話(M)、傷病者・褥婦に対する療養上の世話 (N) 医師・歯科医師の指示で行う業務: 診療機器の使用、医薬品の投与、 医薬品についての指示、衛生上危害を生ずるおそれのある行為 (ただし、臨時応急の手当てをすることは差し支えない) 医師・歯科医師の指示があっても行えない業務: 絶対的医行為(診断、 外科手術) 医師と看護師の位置づけ: 医師の指示による「診療補助」を行う場合、 チームメンバーとしての対等に意見を言い、協力すること → 適正な医療の提供、医療事故防止 • 看護師間の連携 担当領域間、専門領域間のコミュニケーション、教育・研修体制 • 多職種間の連携 検査、治療、リハビリテーション、看護、介護など、コメディカル専門職間 の情報共有、役割と意義の共通認識 地域医療における連携 • 病診連携 病院の高度医療機器などの資源を診療所と共用 機能の活性化、地域医療の充実 – 診療情報提供料: 診療所から病院に患者紹介→診療報酬の優遇 – 開放型病院: 診療所から病院に紹介、入院 →診療所・病院の医師が主治医 (開放型病院共用指導料として診療所にも医療報酬) • 病病連携 専門に応じた病院間の患者紹介による適切・効率的な医療 – 特定機能病院 – 地域医療支援病院 地域医療における連携(つづき) • 保健・医療・福祉・介護の連携 保健所、市町村保健センター: 地域保健活動の拠点(予防、 健康つくり、保健・医療・福祉施設の連携) 介護保険: 医療サービス(訪問看護)、福祉サービス(訪問 介護)の両方の連携が必要(医師、保健師、看護師、 ケアマ ネージャ、家族、本人の連携) 救急医療 • 救急医療体制の整備 第二次医療圏単位で、初期、二次、三次救急医療体制、 役割分担 – 初期救急医療機関 (休日夜間急患センター) 外来診療ですむ軽症患者 – 二次救急医療機関 (中規模救急病院、輪番制当番病院、共同 利用病院) 入院治療を必要とする重症患者 – 三次救急医療機関 (救命救急センター、高度救急救命セン ター) 二次救急で対応できない複数診療科領域の重症患者 へき地医療 • へき地保健医療対策 へき地住民の治療、健康増進、疾病予防、リハビリテーション などを一体化した医療の確保のために、医療水準の向上、 医師確保、無医地区解消を目的とした対策 医療計画 → へき地医療の確保 • 無医地区 中心的な場所(例:役場)から平均4キロの区域内に50人以 上の人が居住し、容易に医療機関を利用することができない 地域(年々減少1966年:2920か所、2005年:786か所) • へき地医療拠点病院 無医地区を対象に巡回診療、医師派遣、代診医派遣などの へき地医療活動を継続的に実施する病院 (都道府県知事が指定) 公的医療機関 • 定義 – 都道府県、市町村、厚生労働大臣の定める者が開設する病院また は診療所 (厚生大臣の定める者:国保団体連合会、健保組合、日赤、済生会、 厚生農協連合会、北海道社協) • 費用の補助 – 国は医療の普及上必要なときに設置を命じ、費用を一部負担 • 運営(厚生労働大臣、都道府県知事が開設者、管理者に対 して) – 建物、設備、機械器具を部外の医師、歯科医師に利用させる – 医師、歯科医師の実地修練、臨床研修に必要な条件整備 • 病床数の適正化(厚生労働大臣、都道府県知事が開設者、 管理者に対して) – 病床過剰地域における病床数削減 医療法人 • 医療法人とは – 医療機関を設置するための法人(財団法人、社団法人) – 法人とは、一定の財産をもった人の集団で、法律の規定により、独立 して権利、義務をもつ – 病院、診療所、介護老人保健施設を開設しようとする社団法人また は財団法人は都道府県知事の認可を受けて医療法人になることが できる • 医療法人の役割 – 医療関係者の養成、再教育 – 医学、歯学に関する研究所の設置 – 疾病予防のための施設設置 有酸素運動施設、温泉利用施設 – 有料老人ホームの設置 – 社会福祉事業などの業務 – 社会医療法人 医療法人のうち救急医療確保に関わる法人(都道府県知事の認定)
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