陸上の降水量推定アルゴリズムのための陸面射出率変動

水圏環境G新入生ガイダンス
@検見川セミナーハウス
2006年4月9日
衛星搭載降雨レーダのアルゴリズム開発
生産技術研究所 沖・鼎研究室
瀬戸 心太
降雨の観測手法
主な手法とその長所・短所の比較
計測
精度
雨量計
15世紀? ◎
(
地上設置)
レーダ 1940年代 ○
衛星搭載放射計 1970年代 △
衛星搭載レーダ
1997年 ○
降雨の計測手法
測雨器:韓国にある世
界最古?の雨量計
利用開始
空間
カバレッジ
△点
○数十km
◎全球
◎全球
COBRA:CRL(現NICT)が開発
した沖縄偏波降雨レーダ。
時間
分解能
◎任意
○数分
△数時間
×数日
主な利用
主な実用例
可能場所
陸上
アメダス
陸上
レーダ雨量計
海上
SSM /I
陸上・
海上TR M M /P R
TRMM:熱帯降雨観測衛星。降雨レーダと
マイクロ波放射計などを搭載。
レーダによる降雨観測の原理
レーダ・・・電波を放射し、標的からの散乱波を計測
することで、標的の位置・動きなどの情報を得る装置
アンテナ
(送受信共用の場合)
降雨レーダ
放射
後方散乱
減衰
マイクロ波を利用。とくに周波数5GHz帯がよく使われる。
受信電力→レーダ反射因子Zに変換
Zは、雨滴粒径Dの6乗の和に比例する(Rayleigh散乱)
降雨強度への変換には、雨滴粒径の確率分布および落
下速度に関する情報が必要
粒径が大きいと、Rayleigh散乱ではなく、Mie散乱になる
Zの観測値は、経路上にある雨や大気で減衰される
TRMM(熱帯降雨観測衛星)
1997年打ち上げ。紆余曲折を経て現在も稼働中。
熱帯域を中心に観測(max35°)。太陽非同期軌道。
センサ名
降雨レーダ マイクロ波放射計
略称
PR
TM I
鉛直分解能 250m
なし
6-50km (周波数に
水平分解能 4.3km
より異なる)
観測幅
220km
760km
観測頻度 数日に1回 ほぼ1日1回
衛星搭載レーダの特徴
これまでの地上設置レーダとの違いは?
観測頻度が低い(数日に1回)
→雨の気候学的研究が中心
[cf. 数分に1回]
[cf. 現業利用]
雨までの距離が遠い(350-400km)
→水平分解能の低下(4.3km)
→周波数を高くして対応(13.8GHz)
[cf. 通常数十km]
[cf. 数百m]
[cf. 5GHz帯が多い]
→降雨による減衰を受けやすい
雨を上から見る
[cf. 横から、または下から]
→地表面(海面/陸面)も見える
地表面観測
地表面は降雨に比べてはるかに強い散乱を起こす
地表面後方散乱断面積s0を計測
やや斜め 直下を
をみる
みる
0
s →地表面の情報をリトリーバル
【s0を観測する衛星センサとの違い】
θ
入射角θ=0-18°での観測
入射角による違い(依存性)を調べられる
地表面観測は、20°以上が主流
周波数(13.8GHz)での観測
地表面観測は、5GHz以下が主流
雨があるときは、減衰を受ける
晴れたときのみ
やや弱い
後方散乱
強い
後方散乱
地表面観測:解析結果(その1)
海面/陸面、植生の多寡による違い
入射角12°付近では差が小さい
地表面観測:解析結果(その2)
2月
夏の方が、s0 が
高い傾向にある
8月
地表面観測:解析結果(その3)
土壌水分推定アルゴリズム
σ0
(θ, Mv)=
fσ0v(θ)+(1-f)σ0s(θ,Mv)
σ0 (θ, Mv)=(1-f)σ0s(θ,Mv)+fσ0v(θ) …①
Mv=0%の場合、
σ0 (θ, 0%)=(1-f)σ0s(θ,0%)+fσ0v (θ) …②
期間最小値
Baresoilでの代表値
期間最小値
期間中に一度乾燥した
状態になると仮定
σ0 (12o, Mv) -σ0 (12o, 0%)
=(1-f){σ0s(12o,Mv) - σ0s(12o,0%) }…③
f =植生被覆率
f
Forestでの代表値
1-f
粗度因子法でMvに変換
土壌水分Mv
降雨観測: 標準アルゴリズム
雨滴粒径分布の最適化のために、s0が使われている
降雨あり
無降雨
Zm (r)
HitschfeldBordan法
PIA(積算減衰量)
PIA
HB
雨滴粒径分布
修正
地表面状態は同じと仮定
s0no-rain
-
s0rain
不一致
表面参照法
=
PIA
ref
降雨観測:表面参照法のバイアス
PIAを過小評価している (∵弱い雨の場合PIA<0)
s0no-rain-(s0rain+Δ)=PIA
PIAtrue
空間参照法
時間参照法
降雨観測:最終推定値への影響
【時間参照法→空間参照法に変更】
表面参照法で土壌水
分の影響を適切に考慮
すれば、全体で数%降
雨強度が強くなると考
えられている。
降雨強度(mm h-1)
空間参照法を使った場合
空間参照法の方が、降
雨強度が強くなる傾向
にある
とくに強い雨の場合に
顕著(最大2倍程度)
暖色系は高い頻度を示す
時間参照法を使った場合
TRMM/PRの成果と課題
【成果】これまでにないデータが得られた
(想定内も想定外も)
降雨の3次元構造
均質な月降雨量のグローバルデータセット
地表面観測
【課題】アルゴリズムの誤差
表面参照法(陸上・海上で同じ精度ではない)
【課題】実利用するには、観測頻度が低い
数日に1回程度。熱帯域~35°
ほかの手法への教師役として…
衛星レーダ研究とその周辺
校正
教師
2周波レーダの実現と
衛星搭載
マイクロ波
雨量計
地上レーダ
レーダ
放射計
アルゴリズム開発
校正
合成
複数機の合成
発展途上国における
レーダアメダス
可視赤外放射計
合成降雨
とくに陸上における
降雨実況システムの展開
マップ
入力
気象モデル
マイクロ波放射計の
雨域移動情報
アルゴリズム開発
入力
入力
流出モデル
高解像度降雨マップ
各種の降雨情報を統合した
河川流量シミュレーション
実時間洪水予警報システム
洪水予警報システム
データ同化・予報
気象モデル
衛星観測と数値モデルの
統合による降雨予測システム
次の衛星搭載降雨レーダDPR
2周波降水レーダ
13.6GHz(TRMM/PRとほぼ同じ)+35.5GHz
•
•
中・高緯度も対象(max 70°)
35.5GHzは、弱い雨や雪にも感度がある
•
雨滴粒径分布を直接推定
おわりに
水圏環境工学で求められる降雨観測には、雨量
計・レーダ・放射計(・モデル)の統合利用が必要
衛星プロジェクトには莫大な時間と費用が必要
衛星データから、想定外の結果が得られることも
研究結果が、何年後かに、発展することも
アルゴリズムは作ったもの勝ち?アルゴリズムの
専門家がいるわけではない
実利用を視野に入れたアルゴリズム開発
よろしくお願いします