全国いきいき公衆衛生の会 自由集会 in 富山 公衆衛生よ 何処へ ~大いなる過ちの検証~ 櫃本真聿 愛媛大学病院医療福祉支援センター 中央主導で美しい日本は作れるのか 山積する課題を前に、「少子高齢の状況に今後どう対応して 行くのか」と問われたとき、財政再建・経済最優先の国策の 中で、中央主導での保健・医療・福祉施策に期待しても、明 るい未来(美しい日本)は見えてくるだろうか?! 「前を向いて」はわかるが、ただ現状の課題を並べて「どうす るか」のアイデア勝負では、埒は明かない。行き詰ると、人材 育成・研修教育が取り上げられ、現場のスタッフを叱咤激励 するのが常套手段だが、サービス提供スキルの向上が最優 先課題とは思えないし、それで解決できるほど問題は簡単で はない。 今こそ 公衆衛生の原点に返るときだ 公衆衛生マインドをブレさすな 過ちの検証 「温故知新」 過ちは後になって過ちとわかることが多い。 その場しのぎの対応に 過ちが次の過ちを産み、その繰り返 しでますます悪循環に落ちっているように思えて仕方がない。 公衆衛生マインドは何処へ ・・・・公衆衛生が泣いている これまでを否定するのではなく、これまでを基盤に今後へ活 かすため 原点に返るためには 公衆衛生の目的に返ると同時に、こ れまでの流れを検証する必要がある。 過去とは「去った過ち」であり、これまでの過ちを検証し 先 達の「温故知新」の名言の真意を受け止め、今後過ちを次の 一歩を活かすことが重要である。 これまでの過ちを検証することは、 公衆衛生の原点・目的に返り 見直すことにつながる 大いなる過ちの検証 これまでの過ちを 今 検証する 国・厚生労働省の過ち 保健所・都道府県の過ち 市町村の過ち 公衆衛生関係者の過ち けんかを売っているのではない 過去を批判するのではなく、 過ちをこれからの糧にする観点で、 過ちか否か それはどうしてか考えてみよう! *保健所長有志にたずねた「過ち度ランク」の順に紹介 国・厚生労働省の過ち① 国施策担当者が、公衆衛生の意義を重視せず ヘルスプロ モーションの理念さえあまり理解していない 聖域なき改革・民営化 医療・福祉の分野にも資本主義の考 え方を持ち込む 勝ち組・負け組の医療福祉を受け入れる 医療費削減を最大焦点にすえる 保健所の機能強化を市町村への責任転嫁により見送った 公的責任を公務員が担おうと進めてきた 公助 自助 共助 のバランスの崩壊 自助への責任転嫁 保健・医療・福祉も「外からの力」で対処しようとしてきた 住民にとって最も身近な健康づくり施策を中央主導で進めた 補助金政策の弊害 公衆衛生を地域保健に安易におきかえてしまった ハイリスクアプローチへの予算化を進めてきた(理屈がつき やすい) 国・厚生労働省の過ち② 健康になることを義務化しようとする 経済的理由からのアウトソーシングを推進する 行政のアウトプット(役割・業務)を「サービス」と称した 保健所サバイバルのために健康危機管理を 市町村はヘル スプロモーションと並列で区分 新地域保健法では「検死」 今度は医療費削減のために? 保健所機能の乱用?! 保健師や栄養士など直接的技術サービスを提供することを 大義名分に技術職員の増を図った 地域保健法を制定・施行してしまった 保健所・都道府県の過ち① 保健所長を自ら育ててこなかった 公衆衛生を理解しない中途半端な役人医師も保健所長にな れる 現場のプロたちが、本庁の素人事務官に判断を仰ぐ慣習や現 場を知らない事務職主導の補助金行政に甘んじてきた 保健所は保健福祉センター等に名前をマスクされ、医師(所 長)はライン外に置かれ、本庁の事務的出先機関として改変さ れる この流れに逆らえないであきらめている 技術屋集団として技術サービスの提供を主な業務とし、所内 はもとより地域資源との連携に十分な力を注がなかった。 地域住民もパートナーにしてこなかった 保健所・都道府県の過ち② 保健所と市町村(保健センター)は互いに最大のパートナー であること軽視していた 公衆衛生施策の企画を地方から中央に委ねた 公衆衛生の第一線機関の位置づけを、 サービスが担える からといって その専門性に乏しい市町村に譲った。 地域保健法を素直に受け入れ、市町村との役割分担を自ら 推進した 保健所サバイバル狙いとわかっていて健康危機管理を保健 所のコア業務として受け入れた。 医療資源の活用を十分考えてこなかった 紳士・淑女集団(上品)であることに甘んじてきた 「やめてやる!!」 保健所長は怒りを押さえ込んだ 市町村の過ち① 評価指標を明確にせず、事業の実施自体を目的化してきた 現場を知らない事務職主導の補助金行政に甘んじてきた現 場のプロたちが、本庁の素人事務官に判断を仰ぐ 中央行政主導の補助金政策に甘んじた地方自治体 自身の事業を重視し、地域資源のマネージメントに十分力を 入れてこなかった 健診(チェック)を保健活動の中心においた 地域の最大の危機がお金のないことではなく判断力を持た ないことである認識に乏しい 健康づくり・まちづくりを行うのは住民自身であることを忘れ ていた 健康づくりはまちづくりであることの認識が弱かった 技術サービスの提供を保健サービスの主においてきた ポピュレーションアプローチを普及・啓発に限定 市町村の過ち② 医師会等地域資源に対して事業をお願いするスタイル 公衆衛生施策の企画を地方から中央に委ねた 行政のアウトプット(機能・業務)をサービスと称した 事件は現場でおきているのに会議室に委ねた NPOやボランティアの育成・支援に最大勢力を注ぎこまな かった 社会貢献が行政の存在意義であることが薄らいできた 経済的理由からのアウトソーシングを推進する 市町村合併をチャンスではなくピンチと捕らえて対応した 保健所と市町村(保健センター)は互いに最大のパートナー であるはずがライバル意識を持った 公衆衛生関係者の過ち① 評価指標を明確にせず、事業の実施自体を目的化し てきた 健診を保健活動の中心においた 住民や地域資源のエンパワメントを目的にしてこな かった 指導に偏り、「支援や共に」の観点に乏しい 技術サービスの提供を保健活動の主においてきた 地域住民の力を信用してこなかった EBM(科学的根拠)は研究者の成果と解釈した 医師会等に事業を依頼するスタイル 公衆衛生関係者の過ち② 住民を健康にさせようとし さらに義務化しようとする メタボリック 水際作戦 保健指導の徹底??! 健診を二次予防の手段に特化してしまった 健康づくりはまちづくりであること認識していなかった 住民を導くのではなく住民の指示のもと活動することを忘れて いた 忙しいからを理由に 「話し合い」を重視してこなかった ハイリスクアプローチこそ効果的手法と位置づけた 健康づくりまちづくりは住民自身の役割あることを忘れていた 医療費削減を目的にすることに迎合した 行政マンをタレントとして位置づけ、専門技術の向上とその提 供を役割とした タレントとマネージャー 公衆衛生を予防医学に位置づけた 時の流れに 公衆衛生マインドが ブレてしまった 重視すべき認識 周囲の流れに公衆衛生マインドをブレさせないこと 最大の危機は地域が判断力を持たないこと 情報の共有の前に目的の共有が重要であること QOLを重視することは、本人自身が判断できるようにすること 住民ニーズを踏まえ地域特性に合致していることこそ公衆衛 生のEBM 公衆衛生を「疾病予防」に限定せず 健康なまちづくりを目指 す コミュニティーアプローチの推進と受け止める そのために地域・住民のエンパワメントを図るマネジメントが 重要であることの認識が重要 住民主役の真意は住民と目的を共有すること そのアプロー チこそが互いのパートナーシップを築く重要なプロセス 現場において目的を共有し判断力を養うこと ケースメソッド的検討の成果に期待 公衆衛生マインドとは 「熱いこと」ではないが・・・「こだわり」は必要か これまでの過ちを共に検証することにより、公衆衛生 マインドとは何かを自ら考え、それを互いに共有する 今後 医療制度改変など、どの様な動きがあろうと、 公衆衛生マインドに立ち返って判断し行動できる力を 養うことが大切。 メタボリックも 方法論に振り回されなければ 活用できる ブレさすな!! 公衆衛生マインド メ タ ボ リ 振 ッ り ク 回 に さ れ る な !
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