第6章 ネットワーク技術 6.1 ネットワーク技術の基礎 6.2 LAN 6.3 電気通信網 6.4 アクセスネットワーク技術 6.5 インターネット技術 6.6 バックボーンネットワーク技術 6.1 ネットワーク技術の基礎 6.1.1 6.1.2 6.1.3 6.1.4 ネットワークの種類 OSI参照モデル プロトコル 様々な通信サービス 6.1.1 ネットワークの種類 (1)ネットワークとは コンピュータや周辺機器を ケーブルや通信機器を使って接続する形態 ネットワークに接続された機器やデータを 複数ユーザで共有することによって, ハード・ソフトなど資源の有効活用や ユーザ間のコミュニケーションツールとして 利用することが可能である。 (1)ネットワークの分類 [接続範囲や接続方法による分類] ① 構内通信網(LAN:Local Area Network) ② 広域通信網(WAN:Wide Area Network) ③ インターネット(Internet) TCP/IPによる複数のLANをWANで接続したネットワーク (1)LAN 同じビル内や事務所等,比較的狭い範囲で コンピュータや機器を接続して, ファイルや周辺機器を共有すること。 企業や学校,組織内で構築し, 運用するネットワークであるため, プライベートネットワーク(私設網) とも呼ばれる。 ISOにおけるLANの定義 現在では,LANの規模や特徴等が多様化しているので, ISOでは次のように定義している。 ① 限定された範囲の場所で,コンピュータに関連する機器間で 情報交換が可能である。 ② 接続される装置としては,コンピュータ,周辺機器(プリンタ,端末装置, ハードディスクなど),ゲートウェイ(他のネットワークと接続するための 機器)などがある。 ③ ファイル転送,電子メール,リモートデータベースなどがある。 ④ 導入したユーザが運用する。 (2)WAN 比較的離れたコンピュータやLAN同士を接続するために 電気通信事業者の通信回線を利用して構築するネットワーク。 パブリックネットワーク(公衆網)とも呼ばれる。 ① 非常に離れた都市間のコンピュータやLANを接続するには WANを利用する。 ② 日本では,ビル間に公道がある場合,私設信号線を 公道に通すことができないので,WANを利用することになる。 ③ LANが,比較的狭い範囲で高速かつ伝送品質が良いのに対して, WANは通信速度や伝送品質は劣るが, LANに比べてある程度広い地域をカバーする。 (3)インターネット 1969年以降,米国防省高等研究計画局(DARPA)が開発した ARPANETを原型とするネットワーク。 研究機関や大学等が接続して,次第に広がりはじめた。 ① 1983年に軍事通信部門は切り離されたが,米国がインターネットの 商用利用を認めると,企業を中心にして急速に利用者が拡大し, 世界的なネットワークとして発展してきた。 ② LANやWANを相互に接続し,ネットワークを拡大することを インターネットワーキング(相互接続)と呼ぶが, 英語で「The Internet」と固有名詞で呼ぶと, この世界的なネットワークを指す。 インターネットにおける相互接続 インターネットでは,TCP/IPプロトコルを利用している。すなわち, TCP/IPプロトコルを実装したコンピュータネットワーク同士を WANで相互に接続し,統合された世界規模のネットワークとして 考えることができる。 TCP/IPによるLAN TCP/IPによるLAN WAN TCP/IPによるLAN 6.1.2 OSI参照モデル (1)OSI参照モデルとは ユーザがコンピュータにデータを入力し,コンピュータから通信機器を通じて データを伝送路に送る際,複数の層(レイヤ)を経てカプセル化される. 例えば,メールソフトを使う場合, SMTP, TCP, IP,イーサネットドライバの 過程を経て送信され,受信側では,逆順に処理される。 メール送信 SMTP POP3 TCP TCP IP IP イーサネットドライバ イーサネットドライバ 伝送路(物理媒体) [注] SMTP, TCP, IP等は通信上の約束事でプロトコルと呼ばれる。 これらについては,インターネットプロトコルの項で説明。 メール受信 6.1.2 OSI参照モデル (2)OSI参照モデルの7つの層 ネットワークの階層化の概念をISOで標準化したもの。7つの層からなる。 第7層 アプリケーション層 第6層 プレゼンテーション層 第5層 セッション層 第4層 トランスポート層 第3層 ネットワーク層 伝送経路を定め,伝送や中継などの制御を行う 第2層 データリンク層 中継装置とのデータ伝送を制御 第1層 物理層 応用ソフトに対して通信機能を提供 データ通信するための表現形式にデータを変換/逆変換 データ通信のための伝送路接続/切断を制御 正確にデータを伝送するための通信制御 ビット単位の電気信号で,実際にデータを送受信する データリンク層でのMACアドレス 製造メーカ番号 (24ビット) 製品番号 (24ビット) 第1層 物理層(Physical Layer) データリンク層と伝送路(伝送媒体)とのインタフェース ① データリンク層からのデータ伝送要求に従って伝送路にデータを送 信,受信するレベル。 ② 物理層の介在によって,伝送路の物理的な性質を 意識しないでデータ伝送ができる。 ③ RS-232CインタフェースやV.24などが この物理層の規格である。 第2層 データリンク層(Data Link Layer) 論理ネットワークの上でデータを円滑に伝送する ① データを伝送するための通信路(コネクション)をデータリンクと呼ぶ。 データリンク層の代表例にHDLC(High-level Data Link Control)手 順がある(後述)。 ② 主に,データ伝送を開始する前に,相手端末との間にデータリンク を確立し,データ伝送を行う。 ③ ビットをある単位のブロック,すなわちフレーム(Frame)単位にする のもこの層の役目である。 ④ 各フレームの前後に,区切りとなる符号や誤り検出のための チェックサム(Check Sum)等を付加する. 第3層 ネットワーク層(Network Layer) データの透過的な転送サービスを提供 ① ネットワーク層の機能によって,交換網がどのように 構成されているかを意識しないでデータ転送が可能となる。 ② ネットワーク層のプロトコルの代表例には, X.25パケット制御手順,インターネットで使われている IP(Internet Protocol)等がある。 ③ 広域ネットワークでは,ルーチング(経路の制御:Routing)を行い, 目的の到着地につくまでデータを中継する必要がある. ネットワーク層は,このルーチングに関するプロトコルを取り扱う. 第4層 トランスポート層(Transport Layer) 通信しているシステム間で,確実にデータが転送されることを保障 ① トランスポート層の代表例には,インターネットにおける TCP(Transmission Protocol)等がある。 ② トランスポート層では,上位セッション層からメッセージを受け取ると, 単一のブロック,つまりパケット(Packet)としてまとめ, それぞれに連番をつけて送信する. ③ 受信側では,先に送信したパケットよりも先に到着することもあるので, これを正しい順序に並べなおす。 ④ ネットワークに蓄積しているパケット状況と, これらを円滑に通過させるためのトラフィック管理に関する フロー制御もトランスポート層の役割である。 第5層 セッション層(Session Layer) 応用プロセス間の情報送信制御(半二重,全二重,送信権など) およびデータ授受の同期制御を行う. ① 一連のデータ交換を会話として捉え,会話単位毎のデータ転送確認, どの集団が会話しているかを記録するログ記録等など, 様々な機能を備える。 ② いわばトランスポート層の機能の枠からはみ出した部分の集合ともいえ る。 ③ ユーザは,万一クラッシュという事態が発生しても, 長時間の転送の間にチェックポイントを挿入することで, 最後のチェックポイントまで戻るだけですむ。 ④ セッション層の代表例は,ITU-T勧告T.62である。 第6層 プレゼンテーション層(Presentation Layer) 情報をどのような表現形式で相手に伝えるかという 情報を取り扱う。 ① 一般に,応用層プログラムでは,データ構造が それぞれ異なっている.そこで,送信側と受信側で 共通のデータ構造になるように変換する。 ② ファイル転送に必要なデータ構造の管理, 情報の安全性を高めるための暗号化処理, 音声・画像などの圧縮処理も プレゼンテーション層の役割である. 第7層 アプリケーション層(Application Layer) 利用者およびネットワーク運用管理のためのプロトコルを実 行し,2つの利用者プログラム間の通信を可能にする. [例] ① バンキングや座席予約など, 特定業務に共通的に使われるプロトコル ② ファイル転送プロトコル ③ 異機種端末等を見かけ上統一的に扱えるようにする 仮想端末プロトコル (3)OSI参照モデルと接続機器 LANに接続される接続機器も7つの層に対応させることができる。 層 アプリケーション層 プレゼンテーション層 セッション層 トランスポート層 接続装置 ゲートウェイ ネットワーク層 ルータ データリンク層 ブリッジ 物理層 リピータ 備 考 応用層の異なったネットワーク間の プロトコルを変換して接続. ソフトウェアで実現することが多い. 最適経路選択機能,ネットワーク層の 異なるプロトコルの変換を行い, LANやWANを接続する. アクセス方式が異なるLANを接続. 送信アドレスが異なるLANへの 中継を行う. 電気信号を増幅して中継. ケーブルやアクセスが同一の LANを接続する. (4)コネクション指向とコネクションレス コネクション指向(connection oriented) またはコネクション型 発信側端末と相手間との ルートを決定した後, データのやり取りを行う 電話に対比できる。 (接続してから通話を行い 終了したら接続をきる) コネクションレス(connection less) またはトランザクション(transaction) 宛先情報,発信元情報など 到着点に達するための情報を 含む転送 郵便に対比できる。 (転送ルートが変わってもよい) (5)階層化の概念 ① プロトコル 同じレベルの層間(同位層間)で交換される情報のフレーム形式,パケット形式。 メッセージ種別や折衝の規則(ルール)の集まり。 ② サービス サービスは,プリミティブの組(セット)で構成され,下層が上層に提供する。 上層はサービス利用者であり,下層はサービス提供者である. ③ エンティティ サービス提供のための機能モジュールである。 自層内と相手の同位エンティティは,協調して動作し, 上層にサービスを提供するものとする. 同位エンティティをピア(peer)といい, ピアツーピア通信とは対等レベルの通信という意味である. PDUとSDU PDU(プロトコルデータ単位):同位層と通信するための転送データ単位 SDU(サービスデータ単位):上層と通信するため転送データ単位 サービス 提供 (N+1) エンティティ (N+1)-PDU (N+1) エンティティ サービス 提供 (N) プロトコル (N)-PDU (N) エンティティ サービス 提供 (N-1)-PDU (N+1) プロトコル (N-1) エンティティ (N)-PDU (N-1) プロトコル (N-1)-PDU (N) エンティティ (N)-PDU サービス 提供 (N-1) エンティティ (N-1)-PDU [注] (N)-PDU,(N)-SDUは各階層の名称の頭文字をとって,例えばセッション層であれ ば,S-PDU,S-SDU,ネットワーク層であればN-PDU,N-SDUとも表記される。 サービスポイントとプリミティブ ① 要求 ② 指示 起動 サービス利用者 サービス提供者 ③ 応答 ④ 確認 サービス利用者 サービス提供者 サービスアクセス ポイント(SAP) (N)エンティティ (N)層 内容 サービスの起動を要求 サービス起動または他の利用者によって サービスが起動されたことを知らせる 指示により起動されたサービスの完了を知らせる。 要求により起動されたサービスの完了をしらせる ① (N)エンティティ ③ 応答 要求 確認 ④ (N-1)プロトコル ② 指示 (N-1)層 (N-1)エンティティ (N-1)エンティティ (N)サービス提供者は,(N)PCIヘッダを (N)ユーザデータの先頭に付けて, 下位のサービス提供者に要求する。 上位に渡すとき ヘッダを外す PCIヘッダ (Protocol Control Information) アプリケーション アプリケーション ユーザデータ プロセス プロセス A-PDU 7層 A-PCI Entity ユーザデータ Entity P-PDU 6層 P-PCI Entity P-SDU(A-PDU) Entity S-PDU 5層 Entity S-PCI S-SDU(P-PDU) Entity T-PDU 4層 Entity T-PCI T-SDU(S-PDU) Entity N-PDU 3層 Entity N-PCI N-SDU(T-PDU) Entity D-PDU 2層 Entity 1層 Entity D-PCI D-SDU(N-PDU) S-SDU(P-PDU) Entity Entity 第6章 ネットワーク技術 6.1 ネットワーク技術の基礎 6.1.1 6.1.2 6.1.3 6.1.4 ネットワークの種類 OSI参照モデル プロトコル 様々な通信サービス 6.1.3 プロトコル (1)プロトコルとは 相手との接続方法や,情報のやり取り上の約束事 [電話の例] ダイヤル ダイヤル 応答を待つ 接続待ち 接続 受話器が鳴る 受話器をとる 相手を確認する 名前を名乗る 話をする 話をする 別れのあいさつ 別れのあいさつ 電話を切る 切断 電話を切る (2)無手順(non-procedure) データリンクの確立・切断,誤り制御をデータ端末で行わず, オペレータにゆだねる方法。 当初,テレックス端末を入出力端末として利用するために 使われていた。 初期のパソコン通信でも利用されていた。 無手順の特徴 ① データの信頼性は低いが,プロトコルや端末側制御は単純である。 従って,端末側のソフトウェアは単純であり,安価なパソコン等を 利用することができる。 ② 電話回線を介して,パソコン等を入出力端末として使う際に使われている。 ③ 主に英数字,日本語等の文字データを転送。 ④ バイナリデータを転送する場合,伝送制御文字(0016~1F16)ならないよう, 6ビットずつに分離した後,先頭2ビットに01や10を付加して転送する。 ⑤ データリンクの確立・解放を行わない。 電話回線への接続は,オペレータが手動で行うか, パソコンの端末エミュレータの機能として用意されたソフトウェアで行う。 ⑥ 原則として,端末で誤り制御,転送制御を行わない。 データ再送,文字化け等に関する判断,専らオペレータの判断に委ねられる。 (3)ベーシック手順 プロトコル基本型データ伝送制御手順 (ベーシック手順:Basic Mode Transmission Control Procedure) ■ パリティやCRCチェック等の手段で誤りを検出する方式(IBM開発) ■ 米IBMが開発したBSC(Binary Synchronous Communications)を ベースに,ISOで制定したデータリンク層の古典的な手順 特徴 ① 無手順より信頼性は高いが,後述するHDLC手順より信頼性は低い。 ② HDLCより,単純なプロトコルであり,他の通信プロトコルの基本でもある。 1970年代に普及したが,現在ではあまり使われなくなっている。 用語 ■ データ端末装置( DTE:Data Terminal Equipment ) 相互に接続されたコンピュータなどの装置 ■ データリンク(Data Link) 2つのデータ端末装置間で互いに相手を識別し, 接続相手との送受信のための準備を行うこと。 伝送制御の基本手順 フェーズ 通信動作 概 要 1 回線接続 交換網を利用する場合,相手をダイヤルで接続する。 2 データリンク確立 回線やDTEを正しい相手と接続し, データ送受信可能にする。 3 情報転送 (データの送受信) 正確な伝送を行うために, 誤り制御を行いながら情報を転送する。 4 終結 (データリンク解放) 互いに終了を確認しあい,データリンクを解く。 5 回線切断 回線との接続を断つ. 基本手順 回線接続,データリンク確立,情報転送,終結,回線切断の手順で行う。 フェーズ1 回線接続 回 線 接 続 交 換 フェーズ2 フェーズ3 フェーズ4 フェーズ5 データリンク確立 情報転送 終結 回線切断 ポ ー リ ン グ 特定回線のとき 制御局をもち, 制御局から 従属局にのみ 情報転送 電話 ダイヤル での をする 対応 セ レ ク テ ィ ン グ 転 送 切 断 回 線 切 断 特定回線のとき 制御局をもち, 従属局から 制御局へのみ 情報転送 (はじめの挨拶) もしもし,〇〇さんですか? はい,そうです. 初終 期了 状状 態態 へへ のの 復復 帰帰 用件の 伝達 特定回線のとき JIS X 5002の規定範囲 公衆回線のとき (別れの挨拶) それでは さようなら. 受話器を 置く ポーリングとセレクション ■ ポーリング(polling) 制御局が従属局にデータの送信を問い合わせる方法。 ■ セレクション(selection) 制御局が従属局にデータの受信を勧誘する方法。 伝送制御符号 符号 SOH STX EXT EOT ENQ ACK NACK DLE SYN ETB 名称 start of heading start of text end of text end of transmission enquiry acknowledge negative acknowledge data link escape synchronous idle end of transmission block 定 義 ヘディング開始 情報メッセージのヘディング開始 テキスト開始 テキスト開始,ヘディング終了 テキスト終結 テキストの終り 伝送終了 全データブロックの伝送終了 問合わせ 相手からの応答を要求する 肯定応答 受信側から送信側に肯定的応答として送信 否定応答 受信側から送信側に否定的応答として送信 伝送制御拡張 後続する複数キャラクタの意味を変える。 同期信号 端末装置間の同期を維持するための信号 伝送ブロック終結 データ伝送ブロックの終り フレームの例 水平パリティ(BCC:Block Check Character) 伝送する情報 S S S Y Y O N N H S O H ヘディング ヘディング E B T C B C S T X S T X E B T C X C テキスト テキスト1 E B T C B C S T X テキスト2 E B T C X C 監視フレームと情報メッセージフレーム ① 監視フレーム データリンク確立や解放,送受信再送等の 制御を行うためのフレーム。 ② 情報メッセージフレーム 情報をやり取りするためのフレーム。 監視フレームについて データリンク確立や解放,送受信再送等の制御を行うためのフレーム。 制御局が従属局に送付する順方向監視フレームと, 従属局が制御局に送り返す逆方向監視フレームがある。 ① 制御局からの情報メッセージを正常に受け取った場合, 従属局は,肯定応答(ACK)を返す。 ② 情報メッセージに誤りが見つかったときは否定応答を返し, 制御局に再送を要求する等の制御が行われる。 監視フレームの種類 [順方向監視フレーム] ① ポーリング ② セレクティング(局選択,識別・状態問合わせ及び初期状態からの脱出) ③ 終結(正常終結,異常終結) ④ 回線切断 ⑤ 応答催促 ⑥ 放棄(ブロック放棄,局放棄) [逆方向監視フレーム] ① 肯定応答(セレクティング,情報メッセージ) ② 否定応答(ポーリング,セレクティング,情報メッセージ) ③ 回線切断 ④ 中断(ブロック中断,局中断) 番号制フレームと非番号制フレーム 監視フレームは,次のように分けることもできる。 ② 番号制フレーム(Sフレーム) ・1次局からのコマンドで受信順序番号が必要な場合 ・ 2次局からのレスポンスで受信順序番号が必要な場合 ③ 非番号性フレーム(Uフレーム) ・1次局からのコマンドで受信順序番号が不要な場合 ・ 2次局からのレスポンスで受信順序番号が不要な場合 コマンドとレスポンスは,同一の形式であるが, 1次局からの2次局に対する 送信許可,受信要求等に使用される場合はコマンド, コマンドに対する2次局からの 返信に使用される場合はレスポンスとなる。 (3)HDLC手順 ハイレベルデータリンク制御手順 (HDLC : High level Data Link Control Procedure) ■ 符号を制約しないでデータを同期伝送するための手順 ■ 米IBM社のSDLC手順を基に,国際標準化機構(ISO)が制定した規格。 ① OSI参照モデルより前に規格化されたが, 現在,OSI参照モデルにおけるデータリンク層に分類されている. ② ISDNや PHS などの制御でも HDLC における用語,定義が採用されており, 基本ともいえる伝送制御である. HDLCの特徴(その1) ① フレームの最初と最後にフラグコード011111102(7E16)を付加する フラグ同期である. ② 情報部が制御用のフィールドと独立している。 情報部の中に FAX などのための上位制御のための情報を入れることで, 階層構造を形成することができる. ③ ビットベースであり,完全な透過性を保証する. ④ データ転送の際,数フレームに対して1回の伝送確認で応答することができる. 全二重の場合,両方向同時にフレームを連続伝送することができる. ⑤ フラグシーケンスを除外した部分は32ビット以上である. 32ビット未満の場合,不正フレームとみなされる. ⑥ 誤り検出には,CRCチェックを用いる. HDLCの特徴(その2) ⑦ 伝送途中で送信を打ち切る場合,1を連続送信する. 8個以上の連続した1を受信側で検出すると, 送信側の送信打切りを知る.この処理をアボート(Abort)と呼ぶ. ⑧ HDLC のフラグは, データブロック区切りを識別するために用いられるので, フラグをテキスト中に入れることはできない. 従って,5ビットの1が連続した場合,直後に0を挿入する. これをゼロインサートという. ⑨ゼロインサートによりデータ保証可能となるが, 実時間性を重視する音声データ等の場合, ビット挿入による送信遅れが生じ,到着時間のゆらぎ(ジッタ)が生じる. さらに,ビットを挿入することで, ユーザデータのキャラクタ構造をこわしてしまい, 8 ビットで文字を示す関係がなくなってしまう. 基本動作モード データリンク確立に先立って,動作設定コマンドにより,以下のモードを選択する。 ① 正規応答モード (NRM : Normal Response Mode) 1次局が伝送制御権を完全に管理する. 1次局からの送信許可を受け取ったときだけ, 2次局は応答を送信することができる. ② 非同期応答モード (ARM : Asynchronous Response Mode) 1次局が伝送制御権を持っているが, 1 次局からの送信許可がなくても, 2次局は応答を返送できる. ③ 非同期平衡モード (ABM : Asynchronous Balanced Mode) 各局ともに対等な平衡モードである. 1次局,2次局の区別がないので,各局を複合局と呼ぶ. 複合局は,相手局の許可がなくても,応答やコマンドを送ることができる. 拡張モード 送受信番号は,基本的には3ビット (7までカウントしたら0に戻る巡回式) 衛星回線など,送達確認なしの伝送フレーム数を増やす場 合, 送受信番号を7ビットに拡張する. これを拡張モードと呼ぶ. NRM, ARM, ABMのそれぞれに 拡張モードが用意されているので, 合計6種類のモードとなる. モードのまとめ 手順クラス 非(不)平衡形 平 衡 形 平衡径 および 非(不)平衡形 動 作 モ | ド 非 動 作 モ | ド モード 正規応答モード (NRM) 内 容 2次局は,1次局からのコマンドにより すべて制御される 非同期応答モード (ARM) 2次局は,1次局からのコマンド受信がなくて もレスポンスの送信を始めることができる 非同期平衡モード (ABM) 相手複合局の許可がなくてもコマンドまたは レスポンスの送信を始めることができる. 初期モード (IM) データリンク制御機能を初期化するモード. データリンク制御プログラムは, 1次局や 複合相手局からの操作で初期化される. 切断モード データリンクから論理的に切断されたモード. 2次局または複合局がとりうるが, 1次局はとりえない. [相手からの受信応答を待ってから送信すると遅くなる] 相手のバッファに余裕があれば,前もって送信できる。 受信応答の待ち時間 block 0 送信 block 1 送信 block 2 送信 Block 0 受信 Block 1 受信 送受信時間 =ブロック数×伝送往復時間 Block 2 受信 block 3 送信 Block 3 受信 block 4 送信 Block 4 受信 N(S) = 0 送信 N(S) = 1 送信 N(S) = 2 送信 N(S) = 3 送信 N(S) = 4 送信 N(S) = 5 送信 N(S) = 6 送信 N(S) = 7 送信 N(S) = 8 送信 N(S) =9 送信 N(S) = 0 受信,N(R) = N(S) = 1 受信,N(R) = N(S) = 2 受信,N(R) = N(S) = 3 受信,N(R) = 1 送信 2 送信 3 送信 4 送信 N(S) = 4 受信,N(R) = 5 送信 N(S) = 5 受信,N(R) = N(S) = 6 受信,N(R) = N(S) = 7 受信,N(R) = N(S) = 8 受信,N(R) = 6 送信 7 送信 8 送信 9 送信 N(S) = 9 受信,N(R) = 10 送信 ここだけが伝送往復に 関わる待ち時間 送信順序番号と受信順序番号 [情報転送の際の順序番号の使い方] ① 送信側から,送信順序番号N(S)を付けて送信する。 ② 受信側では,この番号を使ってブロック抜けをチェックする。 ③ 受信側では,次に期待する受信順序番号をN(R)を付けて返信。 ④ 送信側では,受信側が期待する受信順序番号N(R)以降を送信。 このことによって,送信側では受信側の応答を待つ時間を 少なくすることができる フレームの形式 フラグ シーケンス アドレス部 制御部 情報部 誤り検査符号 CRC-16 フラグ シーケンス 01111110 8ビット 8ビット (任意長さ) 16ビット 01111110 誤り検査対象データ (生成多項式) X16 + X12 + X5 + 1 情報メッセージフレームと コマンド/レスポンスフレームの制御部の違い 制御部のビット構成 種類 b1 b2 b3 情報フレーム 0 監視 コマンド/レスポンス 1 0 X 非番号性 コマンド/レスポンス 1 1 X [注] X b4 送信順序番号 b5 b6 b7 b8 P/F 受信順序番号 X P/F 受信順序番号 X P/F X X X : コマンドの種類をあらわすビット。監視コマンド/レスポンスの場合2ビットなので4種 類。 P/F : コマンドの場合 P(poll)ビットを表し,応答を要求するとき1,そうでないとき0に設定す る。 レスポンスの場合F(final)ビットを表し,最後の応答のとき1,まだレスポンスを続けると きは0に設定する。 NRM(正規応答モード)の手順 リンクの方法 (NRMとし受信可能かどうかを問い合わせる) SNRMコマンド(アドレスは2次局) Pビット=1(応答要求) 1次局 RRレスポンス:N(R)=0 Fビット=1(レスポンス終了) 2次局 (受信可能と返信) 送信開始 受信待ち (RNRが返却されたら送信開始に移行しな い) ■ SNRM( Set Normal Response Mode ) ■ RNR( Receive Not Ready ) 機 能 : 生起応答モード設定 機 能 : 受信フレーム受信不可能 制御部 : 11001001 ( Pビット=1) 制御部 : 10001000( Fビット=1) 種 類 : Uフレーム 種 類 : Sフレーム ■ RR( 機 能 制御部 種 類 Receive Ready ) : 情報フレーム受信可能 : 10001000( Fビット=1,N(R)=000) : Sフレーム NRMでのデータの送受信 初期状態にセット V(S)=0,V(R)=0 送信側 送信要求あり Y 情報フレームの順序番号の設定 N(S) ← V(S) N(R) ← V(R) 受信側 情報フレーム送出 I(N(S),N(R)) 状態変数の更新 N(S):ウィンドウサイズ Y 状態変数の更新 V(S) ← V(S) + 1 N V(R) ← V(R) + 1 送信要求あり 情報フレーム送出 I(N(S),N(R)) N(S):ウィンドウサイズ Y 状態変数の更新 V(R) ← V(R) + 1 N 回復処理 Y 情報フレームの順序番号の設定 N(S) ← V(S) N(R) ← V(R) 状態変数の更新 V(S) ← V(S) + 1 回復処理 切断の方法 (送信を終わらせることを通知) DISCコマンド 1次局 Pビット=1(応答要求) UAレスポンス Fビット=1(レスポンス終了) 2次局 (切断を承知したことを返信) 切断 ■ DISC( Disconnect ) 機 能 : 動作モード終了,切断モード終了 制御部 : 11001010 ( Pビット=1) 種 類 : Uフレーム ■ UA( 機 能 制御部 種 類 Unnumbered Acknowledge ) : 非番号制コマンドに対する応答 : 11001110( Fビット=10) : Uフレーム 切断 監視コマンド/レスポンスの種類 ここでは,監視コマンド/レスポンス(Sフレーム)のみについて示す 非番号制コマンド/レスポンスのコードについては, 他のテキスト(例:データ通信テキスト 新Ⅱ版)を参照されたい。 コマンド RR 制御部 1000 P/F N(R) 名 称 Receive Ready RNR REJ SREJ 1010 P/F N(R) 1001 P/F N(R) 1011 P/F N(R) Receive Not Ready Reject Selective Reject 機 能 情報フレーム受信可能 情報フレームの受信通知 情報フレームの受信不可能通知 指定した情報フレーム以降の再送通知 指定した情報フレームの再送通知 第6章 ネットワーク技術 6.1 ネットワーク技術の基礎 6.1.1 6.1.2 6.1.3 6.1.4 ネットワークの種類 OSI参照モデル プロトコル 様々な通信サービス 6.1.4 様々な通信サービス (1)DDX DDX(Digital Data Exchange) データ通信用として最初にサービスされたディジタル回線による交換 網。 DDXには,以下の種類があった。 ① 回線交換網(DDX-C) 電話網のデータ通信をデジタル化したもの。 端末間に通信チャネルを設定し,通信が終わるまでチャネルを占有する。 物理的には中継部分で多重化されるが,論理的な伝送路は占有される。 ② パケット交換網(DDX-P) 送信データを一定の長さに区切り,ヘッダに宛先や順番等の情報を付加して, パケットとして送る。 パケット交換の特徴 ① パケットは,空いている伝送路を利用して送信されるので, 宛先が異なるパケットでも回線を共有することができ, 回線使用率を向上させることができる。 ② 伝送エラー等をチェックし,再送制御を行っているので 品質の高い伝送サービスを行うことが可能である。 ③ データ信号速度が遅いのでLAN間接続には向いていない。 ④ パケットの到着順序が乱れることがあり,受信側でバッファリングして 順番を復元するので,遅延時間が問題となる電話やテレビ会議等には 向かない。 ⑤ 伝送パケット量による従量制で課金されるため,接続時間が長く, データ量が少ないオンライントランザクション処理の通信に向いている。 DDX-TP(第二種パケット交換サービス) 過去には,こんなサービスもあった。 加入電話網からパケット交換サービスを利用できるようにしたサービス。 ただし, それまでのアナログ回線を使用していたので, DDX-CやDDX-Pとは区別する必要がある。 (2)ISDN ISDN(Integrated Services Digital Network) 様々なサービスをひとつにまとめ,伝送・交換の全てをデジタル通信として 統合したネットワーク。サービス総合デジタル網とも呼ぶ。 ① 1回線で様々な端末を接続でき,同時に2台の端末を利用することができる。 ② ISDN用の端末の場合,DSUに直接接続する。 ③ ISDN用でない端末の場合,DSUと端末の間に ターミナルアダプタ(TA:Terminal Adapter)を介して接続する。 端末と網とのインターフェース 以下の2種類がある ① 基本インターフェース ② 1次群速度インターフェース 基本インターフェース 現状の電話線をそのまま使い, 情報チャネル(Bチャネル)と呼ばれる通信路を同時に2本使用し, 独立した1本の信号チャネル(Dチャネル)を用いるインターフェース。 トラフィックが比較的少ない事務所や家庭用に向いている。 1次群速度インターフェース 光ファイバケーブルに切り替え,企業の業務用通信路として用いる。 日本では基準伝送速度の0次群から5次群までの 6階層で多重化されている。 [0次群速度] [1次群速度] 電話音声をPCMでデジタル符号化したときの 64 kbps 北米と日本 : 1.544 Mbps 欧州 : 2.048 Mbps [2次群速度] 北米と日本 : 6.312 Mbps 欧州 : 8.448 Mbps 高速データ転送を行うときは,3本の高速チャネル(384 kbps)を 使うことができる。 Frame Relay (3)フレームリレー 高速デジタル回線における品質が高くなったことを利用して, 通信エラー等が起きても再送制御等を行わないことによって, データ送信を高速化する方法 ① TU-Tで制定されたFMBS(Frame Mode Bearer Service)における 固定接続サービス。 ② フレームヘッダには,宛先識別のための識別子が付加される。 ③ フレームリレーで,コンピュータや通信機器に接続する場合, FRAD(Frame Assembly Disassembly)装置で変換して通信を行う。 ④ 交換接続サービスはフレームスイッチと呼ばれる。 Frame Relay フレームリレーの特徴 ① 通信処理はシンプルであり,最高1.5~2 Mbps の伝送速度が 提供される。 ② フレームリレー回線では,従来のデジタル専用線と異なり, トラフィック量の変化によって, データ伝送速度(スループット)が変化する。 ③ 最低速度を保証する認定情報速度(CIR:Committed Information Rate)を通信事業者と契約することができる。 ④ 高速であること,情報量に応じて課金される等のメリットから LAN間接続に向いている。 xDSL(x Digital Subscriber Line) (3)xDSL 音声通話に使用されない4kHz以上の高周波帯を使用してデータを転送し, 音声通話とデータ通信を共存させる高速ディジタル伝送方式の総称 [xDSL の種類] ① ② ③ ④ ⑤ ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line) HDSL(High bit rate Digital Subscriber Line) SDSL(Symmetric Digital Subscriber Line) SHDSL(Single pair High speed Digital Subscriber Line) VDSL(Very high rate Digital Subscriber Line) xDSL の中で,現在最も普及しているのは,上下非対称型のADSLである。 ADSLのバラエティ ① G.lite 局舎と加入者側にスプリッタ設置を必要としない。 ② RADSL(Rate Adaptive DSL) 変調方式として非標準のCAP(Carrierless Amplitude/Pulse Modulation) 方式を用いている。 RADSLは,各トーンの減衰度合いをリアルタイムに測定するときに使用される。 ADSLによる広帯域ディジタル信号伝送 (a) 広帯域ディジタル信号伝送サービス網としてのADSL利用 交換機 ビデオ信号 (~1.544 Mbps) 制御信号(16 kbps) 電話/N-ISDN kbps) ADSL 多重装置 メタリック加入者ケーブル 映像 映像情報 ADSL 多重装置 選択制御 カスタマ・ コントロール (b) インターネットアクセス用としてのADSL利用 パソコン POTS スプリッタ メタリック加入者ケーブル POTS スプリッタ DSLAM 交換機 電話機 DSLAM:Digital Subscriber Line Access Multiplexer 通常の電話サービス(POTS : Plain Old Telephone Service) 電話網 インターネット ATM(Asynchronous Transfer Mode) (4)ATM ATM方式の交換機を利用して高速通信を行うサービス。 ① ATM交換機では,53バイトの固定長セルをハードウェア的にスイッチングして, 100Mbps以上の高速伝送が可能である。 ② ATMでは,フレームリレーと同じように,エラーセルの再送制御を行わず, ふくそう状態のときセルを破棄する。 ③ セル破棄の際,優先順位をつけることができる。 (5)光アクセスシステム 通信事業者の交換機と利用者宅を光ファイバを用いて結ぶアクセス回線の総称 ① FTTH(Fiber to the Home) 利用者宅まで光ファイバを引き込む形態。 ② FTTC(Fiber to the Curb) 利用者宅の近くの道路の縁石(カーブ)付近まで光ファイバを設置し, ユーザ宅まではメタリックケーブルを使用する形態。 xDSLのひとつ,VDSLを利用するにはFTTCが実現されている必要がある。 ③ HFC(Hybrid Fiber Coax) CATV網で一般に用いられる方法。 利用者宅の近くまで光ファイバで配信し, 光電気変換装置で電気信号に変換した後,複数の同軸ケーブルに分岐させ, 利用者宅に同軸ケーブルを引き込む方式。 同軸ケーブルだけを使用したときの帯域は450MHz程度であるが, HFC化により750MHz程度まで拡大することができる. 光信号の分配方法 [PDS(PON)のバラエティ] ① イーポン(EPON:Ethernet Passive Optical Network) NTT東日本の「Bフレッツニューファミリタイプ」で使用されている。 ② ビーポン(BPON:Broadband Passive Optical Network) NTT西日本の「Bフレッツ・ファミリ100」で使用されている。 イーポン(EPON:Ethernet Passive Optical Network) NTT東日本の「Bフレッツニューファミリタイプ」で使用。 ① 局外スプリッタで最大4ユーザに分配されて利用者宅に分配。 ② 局側では8本ずつが局内スプリッタで束ねられ, 光信号伝送装置(OLT:Optical Line Terminal)内の OSU(Optical Subscriber Unit)に接続される. EPON ビーポン(BPON:Broadband Passive Optical Network) 動的帯域配分(DBA:Dynamic Bandwidth Assignment) BPON NTT西日本の「Bフレッツ・ファミリ100」で使用されている。 ① BPONでは,局外スプリッタで最大8ユーザに分配, 局側では4本ずつが束ねられる。 ② BPONでは,それぞれのクライアントからの帯域要求を ミリ秒単位で動的に割り当てる動的帯域配分方式を採用し, 空き帯域の有効利用,最低保証帯域の維持を実現している。 FTTHサービスのEPONによる接続例 [PDS(PON)のバラエティ] 加入者線収容局 光信号 伝送装置 (OLT) OSU 局内 スプリッタ 8 分 岐 CTF 光ファイバ回線 収容配線装置 加入者 光ファイバ 局外 スプリッタ 4 分 岐 最大 ・ ・ ・ 100Mbps ・ ・ ・ OSU:光加入者ユニット PIO 宅内 装置 PIO:相互接続点 (6)CATV CATV(Cable Television / Community Antenna Television) 同軸ケーブルや光ファイバーを用いてテレビ放送を配信するもの。 ① 本来,地上波のテレビ電波を受信しにくい区域で 放送サービスを提供するもの。 ② 最近の都市型CATVは,地上波放送だけでなく 衛星放送を含む様々な放送を見ることができる多チャンネル構成である. ③ 視聴者からの信号を放送局に送信できるため, 双方向テレビ,視聴者宅の安全監視, テレビ放送で利用されていない帯域を利用した電話サービス, インターネット接続など色々なサービスが提供されている. 一般的な構成 ヘッドエンド(Head End)と呼ばれるセンター設備を頂点にして, 加入者宅に向け多段ツリー上に広がる幹線,分配線,引込み線を使って, 番組をそれぞれのチャネル周波数に並べて分配する。 分配 増幅器 CATV会社 自主放送設備 セキュリティ 関連設備 CATV局 ヘ ッ ド エ ン ド 設 備 分配線または 引き込み線 幹線 分配 増幅器 分配線 加入者宅 分配 増幅器 加入者宅 分配 増幅器 インターネット接続 ケーブルモデム(Cable Modem) CATV回線をインターネット接続用の通信路として利用するためには, ケーブルモデムが必要である。ケーブルモデムでは, ケーブルテレビ用のデータとTCP/IP用のデータ用のデータを分離し, 10BASE-Tイーサネットケーブルでパソコンに接続する。 インターネット テレビ放送 システム 放送用 ヘッドエンド DHCP サーバ ルータ 通信用 ヘッドエンド TV パソコン TV ホーム ターミナル ケーブル モデム ミキサー 分配器 CATV局 O/E コンバータ 光信号を電気信号に変換 加入者宅 分配 増幅器 ケーブルモデムの規格 規格名 概 要 IEEE802.14 1997年 IEEE標準規格.変調方式は,上り方向QPSK/16QAM, 下り方向 64 / 256 QAM。媒体アクセス制御はATMを使用。 J.112 1998年 ITU-T勧告.変調方式は,上り方向QPSK,下り方向64QAM。 通信速度は,下り方向 30 Mbps,上り方向 5 Mbps。 DOCSIS 1.0 1997年 MCNSが作成した統一仕様.IEEE802.14,J.112 Annex B として採用されている。さらに MAC 層の衝突制御,接続機器や TCP / IP アプリケーションとのインターフェースを規定。 DOCSIS 1.1 1999年 MCNS の作業を引き継いだケーブルラブズが作成。 フレームをフラグメント化(分断)することで通信品質を保証。 上り方向の通信速度を10 Mbps に向上。 DOCSIS 2.0 2001年 物理層変調方式に A-TDMA と S-CDMA を採用して, 上り方向を 30 Mbps に増速。 J.112改定案 2002年 ITU-T 勧告.上り方向 16 QAM,下り方向 256 QAM を使用 する 仕様を追加。これにより最大通信速度,下り方向 42 Mbps, 上り方向 10 Mbps を可能とした。 (7)固定無線アクセスFWA FWA(Fixed Wireless Access) 利用者宅と通信事業者の間を無線で通信する方式。 WLL(Wireless Local Loop)という用語も併用されていたが, 1997年,ITU-R総会でFWAに用語統一された。 FWAの特徴 FWA(Fixed Wireless Access) ① FWAは,ユーザが移動しないため ユーザ移動のための制御が不要であり, 移動体通信に比べ通信品質が良い. ② 有線によるインターネットサービスに比べ, 加入者線ケーブル布設が不要であり, 短時間で加入者線を設置することができる。 ③ 長距離加入者線を実現できるので, 過疎地等におけるインフラとして期待される。 FWAの通信方式 FWA(Fixed Wireless Access) ① P-P(Point to Point)方式 無線基地局と利用者宅間で1対1の通信。 大容量データ転送を行う企業ユーザ向け。 ② P-MP(Point to Multi-point)方式 無線局と複数利用者で1対多の通信。 P-MP方式は個人ユーザ向け。 一般的な設備構成(PーP) P-Pアクセス方式における設備構成 ビルA Ethernet 無線伝送 指向性アンテナ 無線機 ビルB Ethernet 一般的な設備構成(PーMP) P-MPアクセス方式における設備構成 屋外ユニット(ODU:Out Door Unit),屋内ユニット(IDU:In Door Unit)が必要 無線基地局 無線インターフェース 専用アンテナ 無線リンク 市 内 交 換 機 制 御 装 置 無 線 ア ク セ ス 屋内 ユニット 屋外ユニット ケーブルリンク 屋内 ユニット FWAで使用される周波数帯と伝送距離 周波数帯 1.9 GHz 方式 P-MP 通信速度 32 kbps 伝送距離 約 2 km その他 PHS 技術利用 ( 64/128/384 kbpsが可能) 2.4 GHz 5.3 GHz 22 GHz 26 GHz 60 GHz P P P P P P P - P M M P M P M P P P P 10 ~ 54 Mbps 1 ~ 54 Mbps 10 ~ 54 Mbps 6/45/156 Mbps 6 ~ 10 Mbps 156 M~数 Gbps 156Mbps 約 2 ~ 5 km 100 m ~ 2 km 約 1 ~ 2 km 約4km AWA WIPAS 400m~1km 300m程度 通信速度,伝送距離はあくまで一般的な目安であり,高速化や伝送距離を伸ばす動きが活発である Bフレッツ「FWAタイプ」の構成 FWA用アンテナ,宅内装置が必要となる 電柱等 ビル,マンションなど 加入者収容局 光 信 号 伝 送 装 置 局 内 ス プ リ ッ タ 100Base-TX/ 10Base T FWA アンテナ 加入者 光ファイバ 宅内 装置 基地局 設備 100Base-TX/ 10Base T 宅内 装置 利用者宅における接続例 IDUとODUは同軸ケーブルでつなぐ Ethernet ケーブル 同軸ケーブル 直流電源 IDU ODU (屋内ユニット) (屋外ユニット) ア ン テ ナ (8)衛星通信 Satellite Communication 人工衛星には,通信に使う通信衛星(CS:Communication Satellite), 放送に使う放送衛星(BS:Broadcasting Satellite)があるが, このうちCSを利用して通信することを「衛星通信」と呼ぶ。 ① 地球の自転速度と同じ周期24時間で飛んでいる静止衛星では, 地上のアンテナを衛星に向けて固定できるので,良好な通信が可能である。 ② 緯度が高い北極圏や南極圏では静止衛星に電波が届かない。 ③ 送信信号が衛星を経由して相手に届くまで約 0.24 秒,往復約 0.5 秒の 遅延時間が発生するので,遅延時間が問題となる電話よりも, それほど遅延時間が問題とならないデータ通信や放送目的に向いている。 衛星通信サービス ① 衛星インターネットサービス CSを使って,インターネットで扱う動画データや大容量ファイルを 利用者ファイルにダウンロードする。 ② 衛星データ放送 BSやCSを使って新聞等の文字データやゲームソフト等を配信する。 ③ 衛星電話 通信ケーブル設置が困難で,地上電波が届きにくい海上,離島,山岳部などで 利用されている。 静止衛星以外の利用 電波の遅延時間や減衰が人工衛星の高度に依存することから… ① 高度780kmの低軌道(LEO:Low Earth Orbit)衛星を利用 ② 小型の携帯端末で広いサービスエリアをカバーできるが, 多数の衛星(米イリジウム・サテライトの場合66個)を用意する必要がある。 ③ 米連邦通信委員会(FCC)では, ・ Big LEO : 音声情報伝送用として1 GHz 以上の周波数帯域を用いる。 ・ Little LEO : データ伝送用として1 GHz 以下の周波数帯域を用いる。 に分類している。 (9)携帯電話 Cellular Phone 持ち運び可能な電話機またはこれを使うサービスの総称。 広い意味では移動体通信(Mobile Communication)でもある。 日本では携帯電話サービスとPHS(Personal Handy Phone)サービスが 定着している。 基地局のカバー 範囲(半径) 移動中の利用 ビル内での利用 音質 データ通信速度 携帯電話サービス 数km以内 PHSサービス 数100メートル以内 可能 窓がある部屋では, ほぼ利用可能 普通 Cdma One 方式で14.4kpbs PDC方式で9.6kbps 歩行速度程度 窓際しか利用できない ことが多い 携帯電話より良い 32kpbs, 64kbps 世代別携帯電話の特徴 世代 通信方式 第1世代 アナログ 端末の特徴 大型,重量 第2世代 デジタル PDC, GSMなど 第3世代 ディジタル CDMA中心 小型,軽量 モノクロ液晶 カラー液晶 カラー液晶 画面 第4世代 W-CDMA カラー液晶 (今後) Evolution 画面 (20 Mbps) サービス形態 音声通話主体 備考 電力消費量が大きく, 長時間利用が不可能。 データ端末化 インターネットとの親和性を 音声・テキストによる 高めた i モードや 情報提供,電子メールなど EZWev などが提供された。 マルチメディア端末化 通信の高速化 映像ベースの情報提供 国際ローミング可能 テレビ電話サービス 映像・音楽配信 スムーズな動画伝送 高品質画像 テレビ電話 高速データ伝送 IP v6 導入 動画転送用として 新たな帯域割り当て 携帯電話の通信仕様統一 6.1 ネットワーク技術の基礎 完
© Copyright 2024 ExpyDoc