輪講用資料6/28

輪講用資料6/28
B4 森貴之
前回まで
• 在庫管理の基礎を一か月(輪講4回)にわ
たって勉強してきました
– 経済発注量
– 新聞売り子問題
– 基在庫方策
– 動的計画
– マルコフモデル
今回の内容
• 先月まで読んでいた論文
• Mitigation and Contingency Strategies for
Managing Supply Chain Disruption Risks
– Management Science; May2006, Vol. 52 Issue 5,
p639-657
– Brian Tomlin
• §3 The Model
• §4 A Restricted Model
まずはじめに
• SC上のリスクに対し、どのような対策をとるの
が有効であるか
– リスクの緩和
– 緊急時の対策
• ある仮定を置いた状況下での最適戦略の構
造を明らかにする
§3 The Model
• 企業は未処理の需要に対して以下のような
在庫システムを持っている
– 無限期間
– 毎期再調査・検討を行う
– バックオーダーを認める
• 𝐷𝑡 : t期における需要
• ℎ : 単位当たりの在庫費用
• 𝑝 : 単位当たりの品切れ費用
サプライチェーンの構造
• 企業は2つの供給元を利用している
– Supplier U
– Supplier R
供給元U
企業
供給元R
Supplier U の定義
• Uは稼働停止する可能性がある
• 故障と復旧の過程は離散時間マルコフ過程
に従うとする(後述)
• Uは各期ごとに𝜈𝑢 の生産を行う
• 生産リードタイムは0
• 輸送リードタイムはL(>0)
– 𝑡期の発注分は𝑡 + 𝐿期に届く
Supplier R の定義
•
•
•
•
稼働停止は起こらない
生産リードタイムなし、輸送リードタイムL
𝐷𝑡 に対して毎期𝑤𝐷𝑡 をRから仕入れる
(0 ≤ 𝑤 ≤ 1)
– 𝑤は企業が決定する
• 非常時には生産容量を増加できると仮定
– 容量可変性(Volume Flexibility)を持っている
Volume flexibilityについて
• δ(𝜏)という関数を考える
– 𝜏は企業の増産要求からの時間
0 ( 𝜏 < 𝜃𝑟 )
• δ 𝜏 =
𝛿 (𝜃𝑟 < 𝜏)
δ(𝜏) の値
𝛿
• 𝛿は変化量
• 𝜃𝑟 は反応時間
0
• キーとなるパラメータは(𝜃𝑟 , 𝛿)
𝜃𝑟
生産コストについて
• 𝑐𝑢 , 𝑐𝑟 : U,Rに注文した時の生産コスト
• 𝑐𝑓 : Rの増産分にかかるコスト (𝑐𝑓 ≥ 𝑐𝑟 )
• 𝑐𝑢 ≤ 𝑐𝑟 も仮定
– 最適解が「全部Rでつくれ」にならないように
発注量・在庫について
• 𝑞𝑢𝑡 : t期におけるUへの発注量
• U故障中は𝑞𝑢𝑡 = 0
• 𝑞𝑟𝑡 : t期におけるRへの発注量 (= 𝑤𝐷𝑡 )
• 𝑞𝑓𝑡 : t期におけるR増産分への発注量
• Uが動いているときは𝑞𝑓𝑡 = 0
• 𝑥𝑡 : t期末の正味在庫レベル(𝑥𝑡 ∈ 𝐑 )
• 𝑧𝑡 : t期末での在庫ポジション
• (手持ち、発注済み、輸送中)
t期のイベントの発生順
① Uの状態を確認する
② 需要が観測される
③ 発注量が決定される
④ (t-L)期の注文済み在庫が届く
⑤ 需要が満たされ、残りの品に在庫コストがか
かる
⑥ Uの状態が変化する
t期における在庫/発注コスト
発注コスト
𝑐 𝑞𝑢𝑡 , 𝑞𝑟𝑡 , 𝑞𝑓𝑡 = 𝑐𝑢 𝑞𝑢𝑡 + 𝑐𝑟 𝑞𝑟𝑡 + 𝑐𝑓 𝑞𝑓𝑡
在庫コスト
𝐶 𝑥𝑡 = 𝑝 −𝑥𝑡
+
+ ℎ 𝑥𝑡
+
• 容量変更要求にかかるコストは無視
反応時間について
• 𝜃𝑓 : 企業がU停止時にRに対し増産命令を出すまでに
かかる時間
– 𝜃𝑓 ≥ 1とする
t期
• 期末にU停止
t+1期
• 𝜃𝑓 = 1なら期首に反応
t+2期
• 𝜃𝑓 = 2なら期首に反応
• 故障から𝑖期目に利用できる増産量は
0 , 𝑖𝑓 𝑖 < 𝜃𝑓 + 𝜃𝑟
𝛿 , 𝑖𝑓 𝑖 ≥ 𝜃𝑓 + 𝜃𝑟 ≔ 𝜃𝑆𝐶
SC全体での反応時間
配分戦略(𝑤)について
• 𝑤 = 0の場合でも増産要求は出せる
• 𝑤を決定してから発注量は決定される
• 𝑤が与えられると発注量は長期の平均コスト
を最小化するように決定される
• 配分戦略に起因するリスクも考慮したモデル
については後述
Uの離散時間マルコフ過程について
• 𝑖 : Uがダウンしてから現在までの期数
• 1 − 𝜆(0) : Uの停止確率
– 稼動期間には独立
• 𝜆(𝑖) : 𝑖期後にUが復旧する確率
– (hazard rate)
– 𝑖の増加関数
• 𝑖+ : 𝑖の次の期の状態
– 𝑖+ = 0 ならば𝜆(𝑖)を用いる
– 𝑖+ = 𝑖 + 1ならば1 − 𝜆(𝑖) を用いる
Uのマルコフ過程について(2/2)
• 𝑟(𝑖) : 𝑖期たった時点での復旧までの残り時間
• 𝑟(𝑖) : 平均残余期間
– 減少関数
– 𝑟(𝑖) ≤ 1/𝜆(𝑖)
• 𝜋(𝑖) : 定常確率
– 例 : 𝜋(0) はUが稼働し続ける確率
• 𝐹𝑖 =
𝑖
𝜏=0 𝜋(𝜏)
: 累積定常確率
補題1 (1/3)
• 状態に依存する基在庫方策は最適
• 最適基在庫レベル𝑦 ∗ 𝑖 は以下を満たす
• 𝑦∗ 𝑖 ≤ 𝑦𝑀
𝑖≥1
– 𝑦 𝑀 = argmin𝐸 𝐶 𝑦 − 𝐷
– 𝐷 𝐿 : DのL重たたみこみ
– 𝑦 ∗ 𝑖 は𝑖の減少関数
𝐿
補題1 (2/3)
• 𝐷𝑡 = 𝑑 (𝐶𝑜𝑛𝑠𝑡. )を仮定すると…
• 𝑦 ∗ 0 ≥ 𝐿𝑑
𝐿𝑑 (0 < 𝑖 ≤ 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 )
• 𝑦 𝑖 =
−∞ (𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 < 𝑖)
∗
• 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 は
– 𝑟 1 > (𝑐𝑓 − 𝑐𝑢 )/𝑝 のとき、𝑟 𝑖 > (𝑐𝑓 − 𝑐𝑢 )/𝑝 を満たす最大の𝑖
– その他の場合 0
– Rへの増産要求とバックオーダーを認めることのトレードオフを表す
補題1 (3/3)
• 需要が𝐷𝑡′ = 𝑘𝐷𝑡 (𝑘 ≥ 0) の時
• 最適基在庫レベルは𝑘𝑦 ∗ 𝑖
• そのときのコストは𝑘𝑉 ∗
– 𝑉 ∗ は𝑘 = 1のときの𝑦 ∗ 𝑖 に対するコスト
• 需要が定数倍されると最適基在庫レベル・コ
ストも定数倍される
§4 A Restricted Model
1. 最適発注方策
2. 最適基在庫レベル(U稼働時)
3. 最適配分戦略
4. 最適事業継続戦略
• 以下の3つの仮定を置く
– 企業はリスク中立的
– 需要は確定している ∀𝑡, 𝐷𝑡 = 1
– Uは無限の生産容量を持っている
全て§5で
緩和される
最適発注方策
• 𝑤が与えられると、
– U稼働時は𝑞𝑢 0 を決めなければならない
– U停止時は𝑞𝑓 𝑖 を決めなければならない
• 二つの極端な例を考える
–
–
–
–
Rが容量可変性を持っていない場合
Zero-flexibility case
∀𝜏, 𝛿 𝜏 = 0
Rが反応時間0で無限の可変性を持っている場合
Ⅱ-flexibility case
∀𝜏, 𝛿 𝜏 = ∞, 𝜃𝑓 = 1
定理1
• zero-flexibility caseにおいて基在庫方策は最適
– 𝑦𝑧∗ 0, 𝑤 ≥ 𝐿
, 𝑦𝑧∗ 0, 𝑤 : 最適基在庫レベル
• II-flexibility caseにおいて基在庫方策は最適
– U停止時の迂回発注の状態依存基在庫レベルは最
適
– 𝑦𝐼𝐼∗ 0, 𝑤 ≥ 𝐿 𝑓𝑜𝑟 𝑖 = 0
–
𝑦𝐼𝐼∗
𝐿 , 0 < 𝑖 ≤ 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡
𝑖, 𝑤 =
−∞, 𝑖 > 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡
– 𝑦𝐼𝐼∗ 𝑖, 𝑤 : 状態𝑖での最適基在庫レベル
定理1の補足
• II-flexibility caseでは
𝑞𝑓 𝑖 = 𝑦𝐼𝐼∗ 𝑖, 𝑤 − 𝑧 𝑖− − 1 − 𝑤
+
• 𝑖− : 𝑖の1期前の状態
• 𝑧 𝑖− : 𝑖− 期末の在庫ポジション
• 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 は迂回発注とバックオーダーの間のト
レードオフを示している
– 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 が増えると品切れ費用に対する迂回発注コ
ストが下がる
最適迂回発注方策について
• 停止期間が𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 以上なら迂回発注をするより
もUの復旧を待つべき
• 停止期間が𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 以下だが、L期後までバック
オーダーが起こらない位在庫が十分あるとき
もUの復旧を待つべき
• 停止期間が𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 以下で、バックオーダーが起
こりそうなとき、在庫ポジションが𝐿になるまで
迂回発注すべき
定理2
有限な容量可変性を持つ場合
𝛿 𝑖 − 𝜃𝑆𝐶
0, 𝑖 < 𝜃𝑆𝐶
=
𝛿, 𝑖 ≥ 𝜃𝑆𝐶
• U稼働中なら、Uへの基在庫方策は最適
• U故障中なら、状態に依存する(増産分の)基在庫方
策は最適
∗
– 𝑦𝑃𝐹
𝑖, 𝑤 : 最適基在庫レベル
– 𝑞𝑓 𝑖 = min
∗
𝑦𝑃𝐹
𝑖, 𝑤 − 𝑧 𝑖 − 1 − 1 − 𝑤
+
, 𝛿 (𝑖 −
定理2
∗
𝑦𝑃𝐹
𝑖, 𝑤
𝐿 + 𝑛 𝑖 1 − 𝑤 − 𝛿 + , 0 < 𝑖 ≤ 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡
=
−∞
,
𝑖 > 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡
• 𝑛 𝑖 は0 < 𝑖 ≤ 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 の時のみ定義可能で、
𝑛 ≥ 0の時の𝑐𝑓 − 𝑐𝑢 < 𝑀(𝑖, 𝑛)を満たす最大
の正の整数𝑛
𝑀 𝑖, 𝑛 ≔ 𝑝 + ℎ 𝑃 𝑟 𝑖 ≥ 𝑛 𝑟 𝑖 + 𝑛 − ℎ𝑟(𝑖)
定理2の補足
• 𝛿 ≥ 1 − 𝑤ならばII-flexibility caseと同様
– ポジションがL以下の時発注
• 𝛿 < 1 − 𝑤の時はU稼働時に生産していた量
を確保できない
– 事前に在庫を増加させる必要があるかもしれな
い
– 在庫を増やす方策とバックオーダーを認める方
策のトレードオフを𝑀 𝑖, 𝑛 に反映
• 𝑖𝑐𝑟𝑖𝑡 = 0の場合について