地熱資源開発の現状

地熱資源開発の現状
平成24年12月
資源エネルギー庁
1.地熱発電の仕組みと特徴
2.地熱発電の周辺への影響とその対応
3.規制・制度見直しと支援
4.地熱開発の地元へのメリット
1
地熱貯留層の形成について
○地下の浅いところは、温度や圧力が低いので、熱水に溶けていた成分が沈殿し、割目が
詰まり、また、岩石が熱水によって変質して粘土鉱物主体の水の通りにくい帽岩(キャップ
ロック)と呼ばれる地熱貯留層の“蓋”になる層が形成(万年単位での変成が必要)。
○このため、深いところの熱水や蒸気の出口がなくなり、高温高圧の熱水が大量にたまり、
地熱貯留層となる。
○こうして形成された地熱貯留層から高温高圧の蒸気を回収して発電するのが地熱発電。
地熱は1500~3000m程度の
深さから蒸気を回収する
温泉は数百m程度の深さから
蒸気を回収する
キャップロック
岩石の変質による帽岩の形成やも
ともとの難透水性地層
地熱貯留層
地下の割目から雤水が
地下に入り込み、マグマ
だまりの近くにたどりつき
加熱
2
地熱発電の仕組み
発電所概観
地熱発電とは
地下に掘削した坑井から噴出する天然蒸気を用いてタービンを
廻して行う発電である。(井戸の深さは1500mから3000m)
九州電力の八丁原地熱発電所
日本最大の地熱発電所で11万kW発電容量
地下から蒸気を
取り出す行程
(取り出した蒸気のうち熱水は、還元井を
とおして地中に返還)
発電設備
3
地熱開発のメリットについて
地熱開発のメリットは以下の3点
・ 発電時のCO2排出量はほぼゼロであり、環境適合性に優れている。
・ 他の再生可能エネルギーと比べて、設備利用率が格段に高い。
・ 日本は、世界有数の地熱資源を有している。
しかし、規制やコストの面から、制約も多く、現在までのところ、地熱発電による電力供給は、
日本全体の総発電量の1%にも満たない(2009年度:29億kWh(総発電量:1兆1,126億kWh))
電源別のCO2排出量
<出典>
○電力中央研究所「電源別のライフサイクルCO2排出量を評価-技術の進展と
情勢変化を考慮して再評価-、平成22年
電源別の設備利用率
太陽光
約12%
風力
約20%
地熱
約70%
世界の地熱資源量
国名
アメリカ合衆国
インドネシア
日本
フィリピン
メキシコ
アイスランド
ニュージーランド
イタリア
地熱資源量
(万kW)
3,000
2,779
2,347
600
600
580
365
327
地熱発電設備容量
(万kW)
309.3
119.7
53.6
190.4
95.8
57.5
62.8
84.3
4
期待高まる我が国の地熱資源
~小さな設備容量で、太陽光・風力と同等の発電量を確保~
地熱の設備容量は風力発電や太陽光発電と比べて著しく小さいが、発電電力
量で見れば、地熱の発電電力量は約29億kWh。太陽光発電(約28億kWh)や
風力発電(約38億kWh)と比較して遜色がない。
40
400
35
30
300
25
20
200
15
10
100
5
0
0
地熱発電
風力発電
年間発電電力量(左軸)
[億kWh]
太陽光発電
設備容量(右軸)
[万kW]
出所:「地熱発電」・・・ 設備容量・発電量ともに「電気事業便覧 平成22年版」(電気事業連合会)
「風力発電」・・・ 発電量=設備容量(218.6万kW(※1)×24時間×365日×設備利用率(20%)
「太陽光発電」・・・発電量=設備容量(262.7万kW(※2))×24時間×365日×設備利用率(12%)
(※1)2009年度末・NEDOデータ
(※2)2009年度末・太陽光発電協会等のデータに基づき資源エネルギー庁作成
5
我が国の地熱資源の賦存量
地熱資源量について
日本は、世界第3位の地熱資源量(約2,340万kW)を保有。高山などアクセス不能地
域の立地制約等を考慮した可採資源量は、約1,000万KW。一方、現在の設備容量
は約54万kWに過ぎない。
他の再生可能エネルギーに比べ、発電量に安定性があり、設備利用率は約70%と
格段に高く、長期固定電源として期待可能。
これまでは、自然公園外を中心に開発が進められてきたが、地熱資源の賦存量が高
く、かつ、より低コストで発電が可能な地域は、自然公園内に集中。
我が国における地熱資源の賦存量
(単位;万kW)
自然公園内の分類
特別保護地区
約2340万kW
賦存量
700
1,030
特別地域
第1種
第2種
第3種
普通地域
自然公園外
合計
資料;産業技術総合研究所 (2011)
260
250
520
110
500
2340
6
日本の地熱発電所(18カ所、合計出力約54万kW)
:第1種特別地域
:第2・3種特別地域
:普通地域
印なしは自然公園外
☆
発電所名
番号
1
森
所在地
認可出力(kW)
発 電 部 門
蒸気供給部門
運転開始
北海道森町
25,000
50,000
北海道電力(株)
1982.11
1995.3
2
澄川
秋田県鹿角市
50,000
東北電力(株)
三菱マテリアル(株)
3
大沼
秋田県鹿角市
9,500
三菱マテリアル(株)
1974.6
1994.3
1966.10
4
上の岱
秋田県湯沢市
28,800
東北電力(株)
東北水力地熱(株)
5
松川
岩手県八幡平市
23,500
東北水力地熱(株)
葛根田Ⅰ 岩手県雫石町
50,000
葛根田Ⅱ 岩手県雫石町
30,000
6
7
8
鬼首
宮城県大崎市
柳津西山 福島県柳津町
東北電力(株)
東北水力地熱(株)
東北電力(株)
東北水力地熱(株)
1978.5
1996.3
12,500
電源開発(株)
1975.3
65,000
東北電力(株)
奥会津地熱(株)
1995.5
9
八丈島
東京都八丈町
3,300
東京電力(株)
1999.8
10
大岳
大分県九重町
12,500
九州電力(株)
1967.8
11
杉乃井
大分県別府市
3,000
(株)杉の井ホテル
1981.3
12
滝上
大分県九重町
25,000
九州電力(株)
出光大分地熱(株)
1996.11
八丁原Ⅰ 大分県九重町
55,000
九州電力(株)
1977.6
八丁原Ⅱ 大分県九重町
55,000
九州電力(株)
1990.6
(合)九重観光ホテル
2000.12
13
14
九重
大分県九重町
990
15
岳の湯
熊本県小国町
200
休止
1991.10
30,000
九州電力(株)
日鉄鹿児島地熱(株)
1996.3
100
富士電機システムズ(株)
大和紡観光(株)
2006.8
30,000
九州電力(株)
1995.3
16
大霧
鹿児島県霧島市
霧島地熱
17
鹿児島県霧島市
バイナリー
18
山川
鹿児島県指宿市
※認可出力出典:地熱発電の現状と動向2008年(社団法人火力原子力発電技術協会)
※昭和47年の通知(環境省と通産省の了解事項)により、自然公園内の地熱発電の開発は、当面、大沼、松川、鬼首、八丁原、大岳及び葛根田の計6地点のみに
することとされていた。 (6地点は、通知が発出された当時、既存や開発進捗中であった案件。)
※また、平成6年の通知(環境省)により、自然公園の普通地域内の開発については個別に調整することとされていた。
7
世界の地熱開発の状況
単位:万kW
米国
2005年
2010年
256.4
2015年(見込み)
309.3
540
(注)主な地熱発電所:ガイザース(カリフォルニア州、14基、出力127.3万kW)等
インドネシア
2005年
2010年
79.7
2015年(見込み)
119.7
350
(注)主な地熱発電所:サラク(西ジャワ州、6基、出力37.5万kW)等
ニュージーランド
2005年
2010年
43.5
2015年(見込み)
62.8
124
(注)主な地熱発電所:タウポ(ニュージーランド北島、11基、出力17.5万kW)等
アイスランド
2005年
2010年
20.2
2015年(見込み)
57.5
80
(注)主な地熱発電所:ヘリシェイディ(アイスランド南西部、5基、出力30.3万kw)等
8
1.地熱発電の仕組みと特徴
2.地熱発電の周辺への影響とその対応
3.規制・制度見直しと支援
4.地熱開発の地元へのメリット
9
地熱貯留層と温泉帯水層との関係
○地熱貯留層と温泉帯水層は、水の通りにくい帽岩により熱水や蒸気が区分されている。
○開発事業者は、地質調査等によりこの帽岩の存在を確認し、温泉帯水層に影響の出ない地点で
の開発を行っていることから、国内において地熱開発による温泉への影響は、ほとんど報告されて
いない。
○また、温泉と地熱との関係を科学的に判断するため、開発事業者により貯留層モニタリングを実
施している。
温泉帯水層は地下
数百m程度に存在
噴気・地獄
生産井
還元井
地熱貯留層は地下
1500~3000m
程度に存在
帽岩(不透水槽)
深部熱水
地熱貯留層
火山性ガス、水蒸気
出典:「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」(環境省)をもとに経済産業省により作成
10
地熱発電所での環境保全及び地熱資源に関するモニタリング事例
(1)環境のモニタリング
測 定 項 目
温泉
湧出量、泉温、泉質(水素イオン濃度、ナ
トリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオ
ン、硫酸イオン、炭酸水素イオン 等)
硫化水素の排出量
大気質
硫化水素の濃度
(2)貯留層のモニタリング
測定頻度及び場所
年1~4回、
発電所周辺の源泉等
年4回程度、発電所区域
年1~月1回、
発電所、発電所周辺
年1~4回、
発電所境界及び周辺
適宜、発電所境界
騒音
発電所機器等からの騒音
振動
発電所機器等からの振動
水温、排水中の水素イオン濃
冷却排水
年1~月2回、冷却塔排水口
度
水質
作業排水
排水中の水素イオン濃度、油
年1~4回、油水分離槽出口
分、汚濁の度合(COD) 等
排水中の水素イオン濃度、
汚濁の度合(BOD)
地盤変動 各観測点の年間標高差を測量
気温、温度、風向、風速、降水
気象
地上気象
量
生活排水
陸水
河川
水位
地下水
水位、水温、水質
土壌
水素イオン濃度、ヒ素等
植生
植物の生育状況
陸生生物
陸生動物 生息状況
測 定 項 目
測定頻度及び場所
坑井口の圧力、蒸気流量、
熱水流量、還元流量
連続、系統毎又は各井戸毎
生産流体の化学性状
貯留層の圧力及び温度
貯留層トレーサー試験
坑井の深部における
圧力、温度、流体流量
坑井内部の口径
年2~月1回
適宜~連続、観測用坑井等
適宜
適宜
適宜
(3)その他
測 定 項 目
微小地震動
測定頻度及び場所
連続、
発電所及び周辺又は
気象庁データ
年2~4回、浄化槽出口
年1回程度、発電所周辺
連続、発電所
年4回~連続、
近隣河川取水口
年1~4回、敷地内外水井戸
適宜、敷地内、周辺
適宜、発電所周辺
適宜、発電所周辺
11
環境に配慮した地熱の開発(1)
景観への配慮
景観に配慮した建物の概観の事例
上の岱地熱発電所
(秋田県湯沢市、自然公園外)
○建物、工作物に目立たない色彩(山小屋風)や自
然に調和した色彩を使用するとともに、構内の緑
化により景観への影響を和らげることを実現。
葛根田地熱発電所
(岩手県岩手郡、第2,3種特別地域)
澄川地熱発電所
(秋田県湯沢市、自然公園外)
12
環境に配慮した地熱の開発(2)
景観への配慮
景観に配慮した建物の概観の事例
道路の高さ
○上の岱地熱発電所
・ 配管を道路の高さに合わせ、景観を
損ねないよう配慮。
○八丁原地熱発電所2号機 坑井基地
①サイレンサー(消音器)を坑井基地
より一段低い位置に設置し、景観を
損ねないよう配慮。
②蒸気配管を谷に沿って設置し、周囲
の木々により隠れるように配慮。
13
環境に配慮した地熱の開発(3)
技術の進歩
蒸気噴気試験における技術の進歩
過去の試験例
現在の試験例
写真の出典:「地上環境に配慮
した開発技術等について」
2009.1.30 第2 回地熱発電に
関する研究会 資料5
地熱技術開発(株)中田晴弥氏
影響を受けた樹木を伐採後、カラマツを植栽(大沼地熱発電所)
写真の出典:日本自然保護協会第42 号「十和田八幡平国立公園
後生掛地区地熱発電所計画に伴う学術調査報告」1972 年3 月
○坑井の主弁から熱水混じりの蒸気を噴出さ
せる「直上噴気」が行われていため、流体性
状によっては騒音、周辺植生域への熱水飛
散、樹木への着氷被害などが発生。
○最近は、気水分離器(セパレータ)を通し
て乾いた蒸気のみ大気開放されるため、
騒音および熱水飛散は軽減。このため、
樹木への着氷被害もない。
(試験実施者:湯沢市)
14
1.地熱発電の仕組みと特徴
2.地熱発電の周辺への影響とその対応
3.規制・制度見直しと支援
4.地熱開発の地元へのメリット
15
地熱発電に関する規制・制度改革
エネルギー・環境会議、行政刷新会議規制・制度改革分科会で以下の規制緩和を決定。
自然公園内における規制の見直し<平成24年3月措置>
○国立・国定公園内における地熱発電施設を6箇所に限定するという通知を廃止。
○自然環境の保全等と再生可能エネルギー利用の、高いレベルでの調和を図る観点から、環境省から、
国立・国定公園の区分や地熱発電の開発段階に応じた許可方針(下記)について通知。
<自然公園法に基づく地種区分>
<優良事例の形成のための主な検証内容>
・地熱開発事業者と、地方自治体、地域住民、
自然保護団体、温泉事業者などとの地域に
おける合意の形成
・自然環境等への影響を最小限にとどめる
ための技術や手法の投入、専門家活用
・周辺の荒廃地の緑化等や、温泉事業者
への熱水供給等の地域への貢献
・長期にわたるモニタリングと、地域に対する
情報の開示・共有
16
過度の傾斜掘削は、経済性が低く、リスクが高い
自然公園外からの傾斜掘削は、図のケースCのように掘削距離が長くなるため坑井1本
あたりのコスト増につながる。
操業に必要な坑井の掘削は通常20本強。これを全て傾斜掘削で行うと総開発費が大
幅に膨らみ、事業化を見据えた経済性を確保できない。
さらに、過度の傾斜掘削は、ターゲット到達までに地中の他の断層などに遭遇する確率
が高く、リスクが高まる。
傾斜掘削による坑井1本あたりの
コスト比較
※本試算は、掘削深度に応じた
リグの使用を考慮。結果、ケース
AとケースCでは2倍程度のコス
ト差がある。
ケースA(垂直掘削)
ケースB(傾斜掘削)
∇
∇
1800m、約4億円強
ケースC(傾斜掘削) ①ケースA (垂直掘削)
水平距離 0m の場合、
掘削距離1800m、約4億円強
(2000m級掘削リグ使用)
②ケースB (傾斜掘削)
水平距離900mの場合
掘削距離2100m、約6億円弱
(2500m級掘削リグ使用)
(ターゲット)
1500m
資料:「日本地熱開発企業協議会拡大ビジネスモデルWGの活動につい
て」日本地熱開発企業協議会会長安達正畝氏(2011.11.15)より作成
③ケースC (傾斜掘削)
水平距離1,500mの場合
掘削距離2500m、約8億円強
(3000m級掘削リグ使用)
注)3000m級の同一リグを使用した場合、水平距離500mと2000mで1.3倍のコ
スト増が生じるという試算もあるが、実際の開発では同一リグを使用しない。
717
開発期間に占める環境影響評価の期間
10年以上かかる開発期間の短縮化のためには環境影響評価に係る期間の短縮が不可欠
① 事業者が調査すべき典型的事項・方法を明確化し、
1)事業者が掘削調査等と並行して早期に環境影響評価プロセスに入ることを促す
2)方法書確定前から事業者が調査を実施することで、環境影響調査の期間を実質的に短縮
② 国の審査期間、意見提出期間を実質的に短縮化
最低2~3年
地表調査
約3~4年
掘削調査
環境影響評価
約1年弱
配慮書
の作成
法
定
期
間
(・現在制度設計中)
方法書
の作成
4~5年
生産・還元井掘削
約1~2年
環境影響調査の実施
・審査期間:180日
(知事意見等を踏まえ経産
大臣が審査)
発電所建設
運
転
開
始
約1年強
準備書
の作成
評価書
の作成
・審査期間:30日
・審査期間:270日
(知事意見・環境大臣 (経産大臣が審査)
意見等を踏まえ経産
大臣が審査)
工事計画
に反映
18
地熱開発プロセスにおける支援措置について
<調査>
地
元
理
解
地表調査
掘削調査
○重力探査等
を実施し、地
下の構造を
把握。
○実際に井戸
をほり、地下
の詳細構造
を把握。
<探査>
<開発>
<生産>
探査(調査井掘削等)
生産井・還元井掘削
発電設備設置
○小口径の調査井を
掘削し、蒸気の噴出
量等を確認し、持続
的な発
電の可
能性を
評価。
事
業
化
判
断
環
境
ア
セ
ス
の
実
施
○大口径の坑井
を掘削し発電に
供する蒸気を回
収。
○環境影響評価
を踏まえ、パイプ
ライン等の設備設
置や発電所を建
設。
支援措置
地熱理解
促進事業
地域の地
熱利用に
資する事
業に対し
支援
(平成25
年度新規
予算要求)
地熱資源開発補助事業
出資
債務保証
初期投資コスト負担
の軽減措置
地下の熱源から十
分な量の蒸気を安
定的に取り出すこと
ができるかを確認す
るための井戸の掘
削調査等を行うため
の費用を出資
発電に必要な井戸を掘削
するための費用を債務保
証
技術開発
19
地熱資源の開発プロセスと平成25年度要求予算
地熱資源開発の段階
対応(平成25年度要求予算等)
課題
Ⅰ.調査
①規制により地熱開発ができない
①地熱開発に係る規制の緩和
(1)地表調査
-自然公園法 (工作物の設置、土砂の採取)
②初期投資コスト負担の軽減
地上から地下の地質構造を調査
-温泉法
(土地の掘削)
-森林法
(保安林の解除)
(2)坑井調査
井戸を掘り、地下の熱源から蒸気を
安定的に取り出せるかを調査
-国有林野の管理経営に関する法律
(国有林野の貸与)
→規制・制度見直しにより対応
平成25年度
新規要求予算
関係省庁と検討
(a)補助金
①地元共生予算
<対象>
<対象>
地表調査や噴気試験を伴わない掘削調査等を行うため
地熱発電の理解の促進
の費用
のために行う事業などに
要求額
75.0億円(90.5億円) 対する支援を行う。
内訳:
(Ⅰ)ポテンシャルを探るための地表調査 (補助率3/4) 要求額
(3)経済性評価
30.0億円
(Ⅱ)本格的な掘削調査 (補助率 1/2)
-地下の地質構造等を調査する費用
(Ⅲ)モニタリング調査など(補助率
1/1)
内訳:
坑井調査の結果から、出力を定め、 -井戸を掘削する費用(50~100億円)
・既設発電所見学会
経済的なコストで発電ができるか、
(b)出資
・地熱勉強会
-地下から熱水を取り出す試験に要する費用
事業化することが可能かどうかを
・熱水を利用したハウス
<対象>
評価
栽培事業
等
地下の熱源から十分な量の蒸気を安定的に取り出す
ことができるかを確認するための井戸(調査井)の掘削
等を行うための費用
②初期投資コストが大きい
産投要求額
10.0億円(50.0億円)
(出資比率 50%)
Ⅱ.環境アセス
Ⅲ.建設
環境アセスに時間を要する(4年間程度)
③多額の建設費用の資金調達が必要
地熱発電により電力を供給
③建設費用の資金調達を支援
(c)債務保証
出力規模に見合うように井戸を
掘削し、蒸気設備、発電設備を
設置
Ⅳ.操業
②技術開発予算
<対象>
発電に必要な井戸を掘削するための費用
産投要求額
80.0億円(10.0億円)
(債務保証比率 80%)
④発電コストが高い
<対象>
地熱資源開発の促進等に
資する技術開発を行う。
要求額
15.0億円
(JOGMEC、NEDOで実施)
④地熱発電による電気を一般電気事業者が
固定価格で買取り
( 「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達
に関する特別措置法」)
20
固定価格買取制度の調達価格・調達期間について
 通常要する費用に、適正な利潤を勘案する形で調達価格等を決定。
 なお、法は最初3年間を集中導入期間と位置づけ、「利潤に特に配慮」するよう規定。これを踏ま
え、IRRを1~2%上乗せした水準となるよう調達価格が決定されている(最初3年間の時限措置)。
電源
風力
地熱
10kW未満
20kW以上
20kW未
満
1.5万kW
以上
1.5万k
W未満
1,000kW以上
30,000kW未
満
200kW 以上
1,000kW未満
200kW未
満
建設費
32.5万円/kW
46.6万円/kW
30万円/kW
125万円
/kW
79万円/kW
123万円
/kW
85万円/kW
80万円/kW
100万円/kW
運転維持費
10千円/kW
4.7千円/kW
6.0千円/kW
-
33千円/kW
48千円
/kW
9.5千円/kW
69千円/kW
75千円/kW
税前6%
税前3.2%
(*1)
税前8%
税前1.8%
23.10円
57.75
円
27.30円
42.00
円
25.20円
30.45円
35.70
円
24円
29円
34円
(1年当たり)
IRR
買取
価格
1kWh
当たり
中小水力
10kW以上
買取区分
費
用
太陽光
税込
(*3)
税抜
買取期間
42.00円
42円
(*1)
税前13%(*2)
40円
42円
22円
55円
26円
40円
20年
10年
20年
20年
15年
15年
税前7%
税前7%
20年
(*1)住宅用太陽光発電について
10kW未満の太陽光発電については、一見、10kW以上の価格と同一のように見えるが、家庭用については
kW当たり3.5万円(平成24年度)の補助金を加えると、実質、48円に相当する。
なお、一般消費者には消費税の納税義務がないことから、税抜き価格と税込み価格が同じとなっている。
(*2)地熱発電のIRRについて
地表調査、調査井の掘削など地点開発に一件当たり46億円程度かかること、事業化に結びつく成功率が低いこ
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と(7%程度)等に鑑み、IRRは13%と他の電源より高い設定を行っている。
1.地熱発電の仕組みと特徴
2.地熱発電の周辺への影響とその対応
3.規制・制度見直しと支援
4.地熱開発の地元へのメリット
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地熱発電の立地に伴う地元貢献について
○地熱開発に伴う地元への貢献として、自治体への税収などに加えて、雇用効果、地元振
興に繋がることが想定されている。
○日本地熱開発協議会のとりまとめでは、過去の開発において、以下の貢献を実施。
1.電源三法交付金
4.地元での消費効果
地熱発電の建設開始に伴い地域振興に使用
することができる資金として交付。
(参考)柳津西山発電所
6.5万kWの発電所建設で2.1億円を交付
建設期間中には、多数の作業者が集まり、定期点検
中の修繕工事や補充井掘削工事などで工事が実施
され、宿泊や地元企業への工事発注などが実施。
5.温泉事業者との共存共栄
還元熱水を利用したトマトハウス栽培用ハウスへの熱
供給や温水の供給、温泉モニタリングの実施と情報
提供などを実施。
電源立地促進対策交付金を利用
して建設した高千穂地区公民館
6.観光資源としての利用
PR館を併設して、発電所を観光スポットとすることで、
1年あたり4.3万人の集客を得る発電所もある。
2.固定資産税の税収増加
約3万kWの発電所であれば、200億円以上の
建設コストがかかるため、税率1.4%で2.8
億円以上が納付
3.雇用効果
運転管理やPR館のスタッフなどとして5~30
名程度が雇用。
柳津西山地熱発電所PR館
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国内の地熱資源の活用事例(発電と併せて活用)
①森発電所(北海道電力(株)、北海道森町)
◆従来から温泉熱を利用したハウス栽培が実施されていたが、発電後の熱水を
地下に還元する際に水道水を温め、近隣のビニールハウスに無償供給。
◆トマトやキュウリの通年栽培を実施。
(トマトは森町の基幹作物の一つとなっている。)
平成21年 この地域のトマト生産量957トン(2億9千万円)、きゅうり生産量123トン(2千800万円)
(洞爺湖町経済常任委員会報告書より)
森発電所
地熱水利用園芸ハウス団地
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国内の地熱資源の活用事例(発電と併せて活用)
②松川地熱発電所(東北水力地熱(株)、岩手県八幡平市)
◆発電後の凝縮水に蒸気を加えて加温し、第3セクターの八幡平市産業振興(株)
に販売。給湯契約をしているホテルや別荘などで使用されたり、ビニールハウス
で使用されている。(平成22年時点で、70℃、最大260t/h)
供給先
ホテル等
38軒、 保養所
25軒、
商店
15軒、 貸別荘施設
1軒、
老人ホーム 1軒、 日帰り温泉施設
1軒、
農業用ハウス 95棟(冬季のみ)
別荘 613軒、
病院
1軒、
松川地熱
発電所
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国内の地熱資源の活用事例(発電と併せて活用)
③八丈島地熱発電所(東京電力(株)、東京都八丈町)
◆冬期に、発電後の熱水の熱で農業用水を温め、近隣の温室団地
(観葉植物や熱帯のフルーツ等を生産)へ供給。直売を実施。
◆冬期の加温費用を大幅に抑えることに成功。
(この他、東京電力(株)グループでは八丈町の委託を受け、温泉開発への技術協力を実施。
同町では、年間17~18万人が温泉利用しており、島の観光資源となっている。)
パパイヤ
八丈島地熱
発電所
地熱利用農産物直売所
観葉植物
(アンスリューム)
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国内の地熱資源の活用事例(地熱水の直接利用)
④温泉熱水等を利用した暖房設備及び土壌等の消毒等
(大分県農林水産研究センター花き研究所、大分県別府市)
◆源泉から配管で導いた蒸気を
利用し暖房、土壌等の消毒等
に活用
◆熱水は全量、温泉組合に
無償配湯
大分県別府市
土壌の消毒
⑤温泉熱水を利用した陸上養殖事業
(栃木県那珂川町の企業)
◆塩分濃度の濃い温泉水を活用し、
海水魚(トラフグ)の陸上養殖事業
を実施。
栃木県
那珂川町
養殖施設
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海外の地熱資源の活用事例(発電と併せて活用)
①アイスランドの事例 温泉施設(ブルーラグーン)
スヴァルツェンギ地熱発電所、
ブルーラグーン
◆スヴァルツェンギ地熱発電所
(出力7.65万kW)に隣接。
◆発電所の排熱水を利用した
世界最大級の広さを誇る屋外温泉施設。
◆アイスランド随一の観光資源。
年間入場者数:約40万人(アイスランドの人口約32万人)
◆温水中の、ケイ素を含む泥を活用した化粧品も販売。
化粧品販売
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海外の地熱資源の活用事例(発電と併せて活用)
②ニュージーランドの事例 養殖施設(エビ養殖)等
養殖池とレストラン
ワイラケイ地熱発電所、
エビ養殖施設等
◆ワイラケイ地熱発電所(出力
15.7万kW)に隣接して、エビの
養殖施設、レストラン、フィッシング
施設等が立地。
◆熱帯性のエビの養殖に必要な温水の
熱源として、発電所の排熱水を利用。
◆年間約30トンのエビを生産し、施設内
のレストランでも提供。
養殖エビ
足湯
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海外の地熱資源の活用事例(地熱水の直接利用)
③トルコの事例 温室栽培の熱源(直接利用)
地熱水直接利用による広大な温室栽培
ディキリ
◆ディキリ地熱地帯では、
地熱水を温室栽培の
熱源として直接利用。
◆深度400mの井戸4本から供給される95℃の
熱水10 t/sを利用。
◆総面積約400haに及ぶ温室で、トマトや
パプリカ等を栽培。
パプリカ
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