情報経済システム論:第13回 担当教員 黒田敏史 2015/10/1 情報経済システム論 1 BLPアプローチ • BLPアプローチ – 離散選択モデルにおける価格の内生性 2015/10/1 • 離散選択モデルでは、個々人の観察されない多様性か ら生じる誤差項にIIDの極値分布を仮定する • 消費者が完全競争市場における価格受容者であれば、 個々人の観察されない多様性による財の選択は財価 格に影響を与えないため、価格の内生性を考慮する必 要は無い • 他方で、一物一価が成立しておらず、購入者毎に価格 が変化する場合や、集合的な需要ショックが生じた場合 に価格の内生性が生じうる。 • 誤差項と価格が相関している場合、Logit型式の選択確 率が導出されなくなるため、何らかの方法出ない生成を コントロールする必要がある 2 情報経済システム論 BLPアプローチ • BLPアプローチ – Berry (1994): 入れ子ロジットモデルを線形回帰モ デルに変形し、内生性のある場合の様々な推定量 を利用可能に – Berry, Levinsohn and Pakes (1995): 多数の財が存 在する市場において、ランダム係数ロジットモデル を線形回帰モデルに変形し、内生性を考慮して推 定 – BLPアプローチは誤差項に厳しい制約が課されて いる事などに問題はあるが、現状の需要関数を推 定する最良の手法として広く応用されている。 2015/10/1 情報経済システム論 3 BLPアプローチ • BLPアプローチ – Berry (1994)による線形回帰への変形 – 消費者行動の効用 uij X j ' j ij – j は分析者には観察されない財の属性等、市場 に共通した需要ショック。正規分布を仮定。 – ij は分析者には観察されない消費者の好み。極 値分布を仮定 – 平均効用 j X j ' j を用いて市場における財jの シェアを表す K Pj exp j 2015/10/1 exp k 1 k 情報経済システム論 4 BLPアプローチ • BLPアプローチ – どの財も購入しない場合を s0 、効用を0に基準化 Pj exp j 1 exp k K K k 1 P0 1 1 exp k k 1 Pj P0 exp j ln Pj ln P0 j – 従って、財jと未購入のシェアの対数差は、平均効 用によって表される – 回帰式 ln Pj Ln P0 X j ' j より、価格が内生 的な場合に2SLS、IV推定、LIML、GMM等任意の 方法を用いてロジットモデルを推定する事ができる 2015/10/1 情報経済システム論 5 BLPアプローチ • BLPアプローチ – 入れ子ロジットの場合 – 財グループ g 0,1,..., G グループ0は未購入のみ – 消費者の効用が以下のように記されるとする uij X j ' j (1 ) ij – グループgに属する財の中でのjのシェア Pj|g ( , ) exp k 1 Dg Dg exp k 1 – グループgを選択する確率 Pg ( , ) Dg 2015/10/1 (1 ) kg (1 ) Dg g 情報経済システム論 6 BLPアプローチ • BLPアプローチ – 市場シェア Pj ( , ) Pg ( , ) Pj| g ( , ) exp k 1 Dg (1 ) Dg g – 財0の選択確率は (1 ) Pj ( , ) 1* Pj|g ( , ) 1 Dg g – 財jと財0のシェア比から、 ln Pj ln P0 j / (1 ) ln Dg – グループ0の選択確率との比から、 ln Dg ln Pg ln( P0 ) (1 ) 2015/10/1 情報経済システム論 7 BLPアプローチ • BLPアプローチ – 従って、 ln Pj ln P0 j ln s j| g – 回帰式 ln Pj Ln P0 X j ' ln( Pj| g ) j – を任意の方法で推定する事で、価格の内生性が ある場合の入れ子ロジットモデルの推定が可能と なる – このとき、右辺の ln(Pj|g ) も内生変数であるため、対 応した操作変数を一つ追加する必要がある 2015/10/1 情報経済システム論 8 BLPアプローチ • BLPアプローチ – ランダム係数ロジットモデルの場合 L uij X ij ' j l x jl vil ij , vi ~ N(0,1) l 1 – このとき、 j X j ' j に内生変数が含まれて居る 場合、ロジット選択確率を得る事ができなくなる – そこで、ひとまず j を定数として取り扱う事で、シ ミュレーション積分から選択確率を得る 1 R exp j ( X j , , r ) Pj K R r 1 exp k ( X k , , r ) k 1 2015/10/1 情報経済システム論 9 BLPアプローチ • BLPアプローチ – シミュレーション最尤法により、 j と効用のばらつ きを推定する – 推定によってえられた j を、価格等に回帰する – 回帰式 j X j ' j – ランダム係数ロジットによって得られた平均効用を 価格やその他の財の属性に対して2SLSやGMM を用いて推定する事で、価格の内生性に対処する ことができる 2015/10/1 情報経済システム論 10 BLPアプローチ • BLPアプローチ – 多くの場合、平均効用は製品固有の定数項と、そ の他財の属性の関数として表される – 製品数が非常に多い場合、推定されるパラメータ の数が多くなり、ランダム係数ロジットモデルの計 算には極めて時間がかかるようになる – BLPではこの問題を回避する、”The contraction”と 呼ばれる手法を提案している 2015/10/1 情報経済システム論 11 BLPアプローチ • BLPアプローチ – The contraction – 任意の平均効用の値 tjm から、データを良く表すで t 1 t あろう他の平均効用の値 jm jm に以下のアルゴ リズムでアップデートを行う t 1 j Pj ln t Pˆj t j – すなわち、実際のシェアよりも予測シェアが大きけ t t れば jm を減らし、予測シェアの方が大きければ jm を増やす 2015/10/1 情報経済システム論 12 BLPアプローチ • BLPアプローチ – 線形に変形された離散選択モデルでは、操作変数 は製品毎の価格についてよく説明し、かつ平均効 用に影響を持たない事が必要である – 自然実験など偶然が各製品毎に都合良く存在す ることは希である 2015/10/1 情報経済システム論 13 BLPアプローチ • BLPアプローチ – BLPの操作変数 • 寡占市場における企業の価格付け行動に着目 • 製品差別化されたベルトラン競争では、企業は限界費 用と限界収入が一致するように価格付けを行う • 限界収入は他の製品との差別化の程度によって変化す るため、自社の他製品の属性、他者の製品の属性の影 響を受ける • 一方、これらは当該製品の平均効用には影響を与えな いため、操作変数として用いる事ができる – その他の操作変数の例 2015/10/1 • 自社製品と他社製品の属性の差の二乗 • 同一企業の他地域での同一財価格(限界費用を反映) 情報経済システム論 14
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