磁性流体濃度を計測するための 針状磁気プローブのオフセット電圧の軽減 環日本海域環境研究センター 磁気応用研究グループ B4 辰尾広平 目次 • • • • • • • 研究背景 磁性流体の濃度測定 オフセット電圧の原因についての考察 オフセット電圧の軽減方法 オフセット電圧の測定・結果 磁性流体の測定 まとめ 研究背景 磁性微粒子を用いた誘導加温形ガン治療法においてガン細胞を死 滅させるために誘導される熱量を推定 km : 係数(=2.410-3 W/Hz/(mgFe/cc)/T2/cc) f : 周波数 (known) B : 磁束密度 (known) Dw : 生体内での磁性流体の重量濃度 (unknown) 熱量の式 Q=kmfDwB2 [W/cc] 熱量 濃度 B1,B0の差分を計測 プローブ 外部磁界B0 磁性流体 磁性微粒子の濃度を推定 内部磁界B1 磁性流体の濃度測定 計測したい磁性流体の濃度は0.1%以下で 高感度の磁気センサプローブをもちいる場合 出力は10μV以下 実際にはプローブから発生するオフセット電圧が 100 μV以上あり測定が困難である より高精度な測定を行うためにオフセット電圧の軽減が必要 実際の出力値 出力値 取りだしたい信号 数μV オフセット の軽減 オフセット電 圧約200μV 理想的な出力値 取りだしたい信号 オフセット電圧 オフセット電圧の原因についての考察 • 針状磁気プローブは4つの磁気センサのブリッジ構成である • 磁気センサの抵抗値の基準値のばらつきがオフセット電圧の原因 基準になる抵抗値と磁界による 変動分を考慮して書き直すと 出力値の式 取りだしたい信号 R1 オフセットの原因 先端 R3 プローブ Vin Vout R2 根元 R4 磁気センサ オフセット電圧の軽減方法 ブリッジ回路の利点 4つの同特性の抵抗を用いることでオフセット が小さくなることである しかし 各抵抗値は完全に一致しない 先端 R01 根本 R02 R03 R04 抵抗値を変化させる R01→R01+▵R01 磁界を利用してR1の抵抗値を変化させ相殺する オフセット電圧の測定 ヘルムホルツコイルの仕様 理論値をもとに上下のコイルの距離を可変できるヘルムホルツコイルを作成した 106巻,半径120mm,コイルの距離を300mmまで変えることができる 実験条件 ヘルムホルツコイルに200mA,100Hzの交流電流を流す プローブを中心から縦,横に10mmずつ位置を変えて出力を測る ヘルムホルツコイルの距離を110mm~140mmに変える GMRプローブ 計測する範囲 縦方向-10~40mm 横方向0~50mm 110mm~140mmに変える 中心 ヘルムホルツコイル 磁界の分布 半径120mm,106 巻のヘルムホルツ コイルのコイル間 の距離を変え 200mAの電流を流 した場合の中心軸 の理論値 120mmのときが定義通りの ヘルムホルツコイルなので一 番磁界が均一。 そこからコイルの距離を変え ると磁界が不均一になる。 オフセット電圧の測定結果 ×10 μV 7 mm 40 40 20 10 7 7 35 30 ×10 μV 7 6 40 6.5 35 6.5 6 30 30 6 25 5.5 20 5 5 20 15 4.5 15 10 4 10 3.5 5 3 0 6 0 -10 -100 0 10 20 20 30 40 30 40 50 3 -5 2 50 -10 2 0 10 mm ×10 μV 5 35 20 30 40 5 50 2 約20μV 120mm 110mm 40 4 2.5 2 10 4.5 3 2.5 -5 5 3.5 3 0 5 4 4 5 5.5 25 ×10 μV 40 5.5 35 5 30 5 30 4.5 25 4 20 4 15 3 5 0 -10 2 0 10 20 30 130mm 40 50 20 4 4 3.5 3 10 3 5 0 2.5 -5 4.5 15 3.5 10 25 2 2.5 -5 2 -10 0 3 10 20 30 140mm 40 50 2 磁性流体の測定 オフセット電圧の測定結果から極低濃度の磁性流体でも濃度計測が可能であると判 断し磁性流体の濃度計測を行った 0.05 0.1 0.15 0.2%の磁性流体 をそれぞれ作成し高さ3mm 直径 5.5mmの円柱状の容器に注入し ヘルムホルツコイルに設置し 200mA 100Hzの電流を流してプ ローブを磁性流体に挿入し出力を 測った 35.5 35 34.5 Vout [µV] 34 33.5 33 32.5 32 31.5 31 30.5 0.00 0.05 0.10 0.15 volume density [%] 0.20 0.25 出力と濃度の関係に明らかな線 形性がみられ極低濃度でも磁性 流体の濃度の計測が可能である といえる まとめ (1) 磁界の不均一性でオフセット電圧を相殺 (2) 100μV以上のオフセットが20~30μVに (3) 以前より高度な磁界測定が可能に ご清聴ありがとうございました 0.0015 -0.07 -0.05 -0.03 -0.01 0.01 0.03 110mm 0.05 0.07 120mm 0.001 磁界差 0.0005 130mm 0 140mm -0.0005 -0.001 -0.0015 プローブをセットする位置[m] 理論値 ヘルムホルツコイル 理論値をもとに上下のコイルの距離を可変できるヘルムホルツコイルを作成した 106巻,半径120mm,コイルの距離を300mmまで変えることができる 距離を変えることが可能 オフセット電圧について プローブから発生するオフセット電圧が測定に影響を及ぼす プローブの感度は 11μ V/μT オフセット電圧は 約200μV より高精度な測定を行うためにオフセット電圧の軽減が必要 取りだしたい信号 数μV 出力値 オフセット電圧 約200μV オフセット の軽減 取りだしたい信号 オフセット電圧 45 250 40 35 200 30 150 25 20 オフセット電圧 100 15 軽減 50 オフセット電圧 10 5 0 0 0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 実験結果② 低い 40 40 35 5 5.5 35 5 30 30 4.5 25 4 20 15 25 4.5 20 4 15 3.5 10 3.5 10 3 5 0 2.5 -5 3 5 0 2.5 -5 2 -10 2 0 10 20 30 130mm 40 50 -10 0 10 20 30 140mm 40 50 誘導される熱量の推定法 3 Q f Dw B 2.4 10 2 励磁周波数 Q 熱量 f B Dw 磁性流体の 磁界の強さ 質量濃度 上の式より供給される熱量は癌細胞に注 入された磁性流体の濃度と関係する B0:外部磁界B1:内部磁界 N,hs,γf,一定値 この式より注入された磁性流体の濃度は 外部磁界と内部磁界の差で推定できる GMRプローブついて • プローブの根元と先端に かかるプローブに平行な 向きの磁界の差分が出力 される 研究目的 内部と外部の磁界の差を測定して磁性流体の重量濃度を推定する だが内部に注入される磁性流体の比誘電率は 1+10-4~1+10-3なので磁界の差が非常に小さい 外部磁界と内部磁界の差が小さいと出力電圧も小さくなる(数μV程度と予 測される)のでオフセット電圧の影響が大きくなる オフセット電圧の軽減が必要 オフセット電圧の測定 中心にGMRプローブを設置 ヘルムホルツコイル 直径220mm、高さ110mm、99巻 のヘルムホルツコイルを用いて 200mAの一定電流を流し対象物を 置かない状態でGMRプローブをコイ ルの中心に設置し周波数を ~1000Hzに変化させて測定を行った 2.20E+02 2.18E+02 210μV前後のオフセット電圧 が検出された Vout[μV] 2.16E+02 2.14E+02 2.12E+02 2.10E+02 2.08E+02 2.06E+02 2.04E+02 2.02E+02 2.00E+02 1.00E+01 1.00E+02 frequency[Hz] 1.00E+03 数μV程度まで軽減したい 新しいヘルムホルツコイル 先の実験によりGMRプローブを設置する場所を変えてもあまりオフ セット電圧に変化はなかったので発生させられる磁界を変えるために 新しいヘルムホルツコイルを作成 最長250mmまで高さを変えられる 直径250mm106巻のコイル コイル間の距離を変えてオフセット電圧を測定 オフセット電圧はかなり小さくなった。これはコイルが新しくなったた め発生する磁界の質が良くなったからだと考えている。 ここで約100hz~200hzの間にオフセットのピークが来ているのでそこ を詳しく測定した 70 60 50 50mm.ave 40 55mm.ave 60mm.ave 30 65mm.ave 20 70mm.ave 10 0 1 10 100 1000 実験してそれを張り付ける まとめおよび今後の方針 • なぜピークが来るのか考える オフセット電圧が発生する原因につい ての検討 GMRプローブのホイートストンブリッジの出力は R1 (1) Vin ここで抵抗の変動分を考慮して以下のように書き直す R1 =R01 +▵R1 R3 =R03 +▵R3 R3 R2 =R02 +▵R2 R4 =R04 +▵R4 Vout R2 書き直すと (2) R4 オフセット電圧について② (2)を変形させていくと (3) オフセット電圧 の原因① オフセット電圧 の原因② 抵抗の変化分 による出力 実験方法 直径220mm、高さ 110mm、99巻きのヘルム ホルツコイルに200mAの交 流電流を流しの中心を通る 平面上で上下に5mm動か していきオフセット電圧を測 定する GMRプローブ ヘルムホルツコイル 実験結果 青が濃いほど出力電圧が低く赤が濃いほど出力電圧が高い 一番低いところでも200μV弱のオフセット電圧が検出された 新しいヘルムホルツコイル 先の実験によりGMRプローブを設置する場所を変えてもあまりオフ セット電圧に変化はなかったので発生させられる磁界を変えるために 新しいヘルムホルツコイルを作成 最長250mmまで高さを変えられる 直径250mm106巻のコイ ル まとめおよび今後の方針 • 新しいヘルムホルツコイルを使ってコイルの 距離やGMRプローブの位置を変えてオフセッ ト電圧を測る • 磁性流体の内部と外部の磁界差と推定され る熱容量の関係を調べる ご清聴ありがとうございました オフセット電圧について② (2)の式に近似式を使って変形させると (3) ここで、理想的には となるので下線部は (4)
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