国際リニアコライダーのための 衝突 点ビームモニタの研究開発 ~

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ILC 衝突点ビーム形状モニタ“ペアモニタ”
のための読み出し回路の開発
2010/02/17 ICEPP symposium
東北大学 M2
佐藤 優太郎
目次
• イントロ
– ILC
– ペアモニタ
• ペアモニタのための読み出し回路の開発
– 要求性能
– 読み出し回路の試作
– 試験結果
• まとめ
2
3
ILC 加速器
• 電子・陽電子衝突型線形加速器
制動放射の影響を受けない
クリーンな環境で精密測定
• 重心系エネルギー : 最大 500 GeV (アップグレード ~ 1 TeV)
• 積分ルミノシティ(4 年間) : 500 fb-1
陽電子源
減衰リング 衝突点
電子源
陽電子用主線形加速器
電子用主線形加速器
測定器×2
2 つの
測定器案
ILD
SiD
ILD 測定器
日本グループはILD 測定器を開発。
要求性能
• ジェットエネルギー分解能 : σEj/Ej < 3.8% (ECM ~ 90GeV)
– W→qq, Z→qq 事象の区別
• 運動量分解能 : σ(1/pt) < 2x10-5 (GeV/c)-1
– ジェット中の荷電トラックの識別
• 崩壊点分解能 : σrφ < 5 + 10/(pβsin3/2θ) (μm)
– フレーバータグ
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ILD 測定器
Particle Flow Algorithm
• ジェット中の粒子を個別に再構成して、
要求されているジェットエネルギー分
解能を達成。
– 荷電粒子 → 飛跡検出器
– 中性粒子 → カロリーメータ
ECAL
TPC
要求性能
• ジェットエネルギー分解能 : σEj/Ej < 3.8% (ECM ~ 90GeV)
– W→qq, Z→qq 事象の区別
• 運動量分解能 : σ(1/pt) < 2x10-5 (GeV/c)-1
– ジェット中の荷電トラックの識別
• 崩壊点分解能 : σrφ < 5 + 10/(pβsin3/2θ) (μm)
– フレーバータグ
HCAL
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ILC で期待される物理
ヒッグスの精密測定
• 質量 (ee → ZH)
– レプトンペアから再構成したZ の
反跳質量によって求められる。
ee → ZH
e
ℓ,n,q
Z
Z*
e
ℓ,n,q
H
• 崩壊分岐比 (ee → ZH)
– ヒッグスの崩壊粒子を同定して解析。
– ヒッグスメカニズムの検証。
• 自己相互作用 (ee → ZHH)
– フレーバータグによって、バックグランド
(ee → tt) を抑えることで測定可能に。
新物理
• SUSY, リトルヒッグス、
余剰次元(右巻きニュートリノなど) …
次の発表(齋藤) で。
ee → ZHH
e
e
Z*
Z
H
H
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ILC 加速器
•
•
•
•
電子・陽電子衝突型線形加速器
重心系エネルギー : 最大 500 GeV (アップグレード ~ 1 TeV)
積分ルミノシティ(4 年間) : 500 fb-1
ビームサイズ: (σx, σy, σz) = (639 nm, 5.7 nm, 300 μm)
陽電子源
減衰リング 衝突点
電子用主線形加速器
電子源
陽電子用主線形加速器
→ 高ルミノシティを維持するには、
衝突点でのビームの状態を把握することが重要
衝突点ビーム形状モニタ 「ペアモニタ」
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衝突点ビーム形状モニタ 「ペアモニタ」
測定原理
• ビーム衝突時にe+e- ペアが大量に生成(ペアバックグランド)。
• バンチの作る電磁場によりe+e- ペアが散乱される。
– 対向するバンチと同電荷の粒子が大きく散乱する。
– 受ける力の大きさ : eE(1+ββb)
e-
散乱
e+
E=γE’
B = γβbE’
e+
振動
e-
e- バンチ
e+バンチ (速度βb)
(バンチ静止系での電場 E’)
対向するバンチと同電荷の粒子がビーム情報を持つ。
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衝突点ビーム形状モニタ 「ペアモニタ」
e
e- beam
e-
ペアモニタ
e+ beam
電子・陽電子の
ヒット分布
0
e+
+
Y [cm]10
測定原理 (続き)
• e+e- ペアを検出して、そのヒット分布からビームサイズ測定を行う。
e磁場
-10
ビームパイプ
-10
特徴
0
X[cm]10
• 非破壊型ビームモニタ
• 加速器の運転への素早いフィードバックが可能
デザイン
半径 : 10 cm
• 単層のシリコンピクセル検出器 ピクセルサイズ : 400μm × 400μm
センサー厚さ : 200 μm
目次
• イントロ
– ILC
– ペアモニタ
• ペアモニタのための読み出し回路の開発
– 要求性能
– 読み出し回路の試作
– 試験結果
• まとめ、今後のプラン
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読み出し回路への要求性能
電子・陽電子ペアのヒット分布を取得するために必要となる、
センサーからの信号を処理する読み出し回路を開発。
要求性能
ILC のビーム構造
1. 時間分解能 : 3.8 MHz 以上
1 トレイン = 2625 バンチ
…………………
(信号レベルは15,000 電子)
1
2
16
~
~
2. 雑音レベル : 1000 電子以下
…
[
[
[
(バンチ間隔以上)
1 ms
200 ms
3. 放射線耐性 : 数Mrad / year 以上
4. トレイン内の場所に依存したビームサイズ測定
→ トレインを16 分割 して(~164 バンチ)、それぞれの部分で計数して、
トレイン間(~200 ms) に読み出しを行う方式を採用。
これらの要求性能を満たすように回路の設計・製作を行った。
SOI 技術を用いた読み出し回路の開発
SOI-CMOS プロセスを用いて読み出し回路を試作した。
SOI(Silicon On Insulator) pixel detector
• KEK のSOI pixel グループが開発中の、
センサーと読み出し回路を同一ウェハ上に成型する一体型検出器
 バンプボンディング不要
 高速化
 低消費電力 読み出し回路 (Si)
埋め込み酸化膜
 低物質量
(SiO2)
サブストレート層
(センサー)
• MPW(Multi Project Wafer) run に参加して、試作。
• 今回は読み出し回路部のみ試作。
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試作した読み出し回路
製造プロセス : FD-SOI CMOS 0.2 μm
チップサイズ : 2.5 x 2.5 mm2
ピクセル数 : 9 (3x3)
ピクセルサイズ : 390 x 350 μm2
回路のレイアウト
読み出しピクセル
– 試験的に、ピクセルごとに異なる検出器
容量を負荷
入力
アナログ回路部
増幅器
オフセット電圧
調整回路
デジタル回路部
コンパレータ
カウント・レジスタ 1
カウント・レジスタ 2
8ビット・カウンタ
カウント・レジスタ 16
…
•
•
•
•
出力
試作した回路の動作試験、性能評価、放射線試験を行った。
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増幅器の出力確認
増幅器の出力を確認した。
アナログ回路
整形
増幅器
オフセット電圧
調整回路
コンパレータ
200 ns
テストパルスのタイミング
テストパルスのタイミング
低増幅率 (Cf = 0.1 pF)
高増幅率 (Cf = 0.05 pF)
ポールゼロ補償 ON
20 mV
ポールゼロ補償 OFF
400 ns
正常な増幅器の出力を確認できた。
20 mV
前置
増幅器
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オフセット電圧調整回路
アナログ回路
前置
増幅器
整形
増幅器
オフセット電圧
調整回路
コンパレータ
• ピクセルごとのオフセット電圧のばらつきを打ち消すために、
オフセット電圧が調整できるようになっている。
コンパレータ
整形増幅器
オフセット電圧のばらつき
供給
5 bit DAC
引き抜き
引き抜き
60 mV のばらつき
5 bit DAC
供給
オフセット電圧 [mV]
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オフセット電圧調整回路
アナログ回路
整形
増幅器
オフセット電圧
調整回路
コンパレータ
整形増幅器
供給
5 bit DAC
引き抜き
コンパレータ
オフセット電圧調整結果
オフセット電圧 [mV]
前置
増幅器
想定している動作
引き抜き
5 bit DAC
供給
DAC への入力値
設計通りのオフセット電圧調整ができていないことが確認された。
→ 次回試作の課題
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8 ビット・カウンタの応答
カウンタの応答を確認した。
デジタル回路部
8ビット・カウンタ
カウント・レジスタ x16
テストパルスのタイミング
• グレイ・コードを使用している。
(特徴 : 常に1ビットしか変化しない)
Q1
Q2
Q3
正常なカウンタの動作を確認した。
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ヒット数の読み出し
カウントレジスタを切り換えながら、テストパルスを入力して、
ヒット数を読み出した 。
読み出しピクセル
(他のカウント・レジスタも同様の結果)
TP入力
読みだされたヒット数
1つのカウント・レジスタの出力
アナログ回路
カウンタ
カウント・レジスタ 1
カウント・レジスタ 2
…
カウント・レジスタ 16
@4 MHz
入力テストパルス数
要求されている計数率(~3.8 MHz) で、
正しいヒット数を読み出せることが確認できた。
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雑音評価
Vth [mV]
計数効率
等価雑音電子数を見積もり、雑音を評価する。
しきい値スキャン
• コンパレータのしきい値を変えながら、
計数効率を測定し、誤差関数でフィットした。
誤差関数
傾き→増幅率
正電荷
(2.64 μV/e)
σ = 0.756 mV
Vth=-126 mV
雑音σ
Vth
負電荷
(3.14 μV/e)
しきい値電圧 [mV]
→ 等価雑音電子数 ( = 雑音σ / 増幅率) を求めた。
入力電荷 [103 e]
等価雑音電子数
等価雑音電子数
すべてのピクセルの雑音レベルを測定して、
雑音の検出器容量依存性を調べた。
正電荷
負電荷
TSPICE Simulation
検出器容量 [pF]
雑音レベルの要求性能(1,000 電子以下) を
満たしていることが確認できた。
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ノイズの安定性
増幅器の時定数を変化させた時の
雑音の変化を調べた。
( VGGS = 80[mV] )
整形増幅器の時定数
(VGGS)
雑音 [e]
雑音 [e]
前置増幅器の時定数
(VGGP)
( VGGP = -200[mV] )
設計値
設計値
VGGP [mV]
VGGS [mV]
雑音は急激には増えていない(安定している)。
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放射線耐性試験
試作回路にX線を照射して、放射線耐性を調べた。
• X線発生装置 : FR-D (リガク社) @KEK PF
• 標的 : Cu (~8 keVの光子)
• 照射量 : 最大2 Mrad
放射線効果
+++++ +
+++++ +
+ + + + ++
+ + + + ++
~260 μm
• シングルイベント
~40 nm
– 入射粒子によって生じる
200nm
一時的な電流による不具合。
→ SOI は高耐性。
• トータルドーズ
– 絶縁層に蓄積する電荷による影響
– 照射量に比例
VSUB
サブストレート層の電位Vsub によるトータルドーズ補償効果を観測
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前置増幅器の信号波形
照射前後及びVsub 補償時で、前置増幅器の信号波形を観測した。
• 照射するにつれて、波高及び時定数が小さくなった。
照射前
300 krad 照射後
1 μs
照射
(Vsub = -1.65 V)
Vsub 補償
(Vsub = -1.65 V)
前置増幅器
出力
(Vsub = -4.72 V)
サブストレート層の電位Vsub の補償により、
照射前の信号波形に近い形に戻っている。
10 mV
テストパルス
のタイミング
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しきい値スキャン
入力電荷 [103 e]
等価雑音電子数 [e]
Vsub 補償
Vsub 補償
誤差関数の中央値 Vth [mV]
照射前後及びVsub 補償時で、しきい値スキャンを行い、
増幅率、等価雑音電子数の変化を調べた。
検出器容量 [pF]
サブストレート層の電位Vsub の補償により、
照射前の増幅率、等価雑音電子数に回復している。
2 Mrad までの放射線耐性があることを確認できた。
まとめ
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ILC 衝突点ビーム形状モニタ 「ペアモニタ」 のための読み出し回路の
開発を行っている。
• SOI-CMOS プロセスで読み出し回路を試作した。
• 動作試験、雑音評価、放射線試験を行って、
要求性能(計数率、雑音レベル、放射線耐性) を満たしていることを確認し
た。
• ただし、オフセット電圧調整回路は修正が必要。
今後のプラン
• 放射線試験(ガンマ線)
• センサー + 読み出し回路の試作。