はじめに

腹水濾過濃縮再静注法(CART)について
患者様むけ説明書
福山市民病院 内科 辰川 匡史
Fukuyama City Hospital
肝臓の働き
消化した栄養の取り込み
タンパク質の合成
代謝産物・薬剤・アルコールなど
の 分解(解毒)
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肝臓の働きが低下すると…
栄養が取り込めない×→栄養不良
タンパク質合成×→低蛋白(アルブミン)
代謝産物・薬剤・アルコールなどの 分
解(解毒)×→老廃物の蓄積・黄疸
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低蛋白>浮腫・腹水が出現する
腹水のない方(60歳 男性)
肝硬変・腹水の方(72歳 女性)
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肝性腹水の治療
結局のところ腹水が溜まるのは、肝臓の機能が
低下して、体液(水分・電解質・タンパク質などの
諸成分)バランスが崩れていることが原因。
肝臓を治す→これはなかなか難しい…
利尿剤>腎臓に働きかけて水分・電解質を体外
へ
アルブミン(血液製剤)点滴>タンパクを増やす
(リーバクト・アミノレバンなどの栄養剤)TNT
穿刺排液、再灌流(再腹注・再静注)
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それぞれの治療の 長所・短所
 利尿剤→腎臓に働きかけて水分・電解質を体外へ
腹水に直接作用しないので効果としては間接的
腎機能を悪化させる
口渇がひどい→水飲んだら無意味
 アルブミン(血液製剤)点滴→タンパクを増やす
アルブミン+ラシックスで、血液の膠質浸透圧を上昇させる→
利尿剤単独よりも効果が高い
血液製剤である
高価 保険にて数が限られている
 リーバクト・アミノレバンなどの栄養剤・TNT
必須の治療と考えたい。うまくいけば腹水が消えるが、時間が
かかるし、腹水が消える、までの劇的な効果は得にくい
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腹水穿刺 穿刺排液
○他の治療に比べると効果が早く直接的
○他の治療にて反応しない腹水にも効果がある
×お腹の中の腹水は完全には取れない(6割程
度)
×抜いた後永久に腹水が溜まらないようにするこ
とはできない(すぐたまる)
×合併症のリスク
×穿刺して排液した分、腹水に含まれているタン
パク質などは失われてしまう
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難治性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注法
(CART:Cell-free and Concentrated Ascites
Reinfusion Therapy)
 腹水穿刺では排液すると、腹水に含まれていたタンパク質
などは失われてしまう
一時的には楽になるが、肝臓には負担になる
 透析の機械を利用して、取り出した腹水の中から水分を除
去し、タンパク質を濃縮したものを体内に戻す
特殊な機械をつかいます
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CARTとは:
難治性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注法
(CART:Cell-free and Concentrated
Ascites Reinfusion Therapy)のこと
腹水を穿刺→排液(すててしまう)のではなく、
採液バッグに入れ、透析に用いるようなFilter
を用い、必要なタンパク質などを濃縮して 再
び血管の中に戻す治療
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腹水穿刺の方法
 ベッドサイドで行う
(外来の場合は処置室)
 局所麻酔
 皮膚に、穿刺針を刺入
 針は点滴用の針と
ほぼ同じだがやや太め
 穿刺に要する時間>5分程度
(難易度により手間取ること有)
 排液に要する時間>30分~2時間
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穿刺後
2〜3時間
1時間
ベッドサイド
静注→帰宅
穿刺→採液→抜針
透析室
採液したものを透析室に
て濾過・濃縮
2〜4時間
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合併症:
穿刺に関する合併症:
 出血(腹壁血管の損傷など)
 内臓損傷など(腸、肝臓などの誤穿刺)
 排液による血行動態の変化>血圧低下・ショック
 穿刺孔からの感染
 胸水の場合、ARDS(重篤な肺障害)起こすこと
あり
再灌流に関する合併症:
 発熱(ひどい場合はDIC)
 血行動態の変化
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