PowerPoint プレゼンテーション

蔵前技術士会(第128回)科学技術セミナー
09.11.7
がんの遺伝を考える
こども教育宝仙大学
国立成育医療センタ客員研究員
順天堂大学小児科客員教授
Hemonc @kj8.so-net.ne.jp
恒松 由記子
イラスト武田直子さん
話の流れと私が関わってきたこと
成人のがんはありふれた病気だが
稀な子どもの遺伝性がんの研究ががんの
本質に迫る研究に貢献した
確かに遺伝するがん こどもの眼のがん(
網膜芽細胞腫)からがんの遺伝の仕組み
とがんの本質がわかってきた
大人のがんと子どものがんが混在するが
ん家系症候群(Li-Fraumeni )から始まった
遺伝子診断の倫理問題
今後のがん研究には臨床情報(カルテ情
報)と基礎研究の両方が大切
わたくしが学んだ
研究方法 疫学
疫学 epidemiology
病気や健康に関する事象の
頻度や分布を調べて、その要因をあきらかに
する科学研究
病気の原因研究のひとつ
成人のがんは普通の病気
がんの罹患率は年齢依存的に上昇
日本では
15歳までに500人にひとり
20歳までに300人にひとり
30歳までに100人にひとり
65歳までに 10人にひとり
75歳までに 男4人・女 6人にひとり
生涯には2~3人にひとり
Armitage P &Doll R : The age distribution of cancer and a mutistage theory of
carginogenesis. Brit. J Cancer 8:1-12, 1954
がんとは何か?
がんの特徴
細胞分裂がさかん?
体内のいろいろな臓器に転移する?
がんとは何か?
がんの特徴?
細胞分裂がさかん?胎児細胞の細胞分裂は
癌細胞よりさかんである
体内のいろいろな臓器に転移する?
体内のいろいろの臓器に巣くう病気ほか
にもある 結核など
がんの特徴 本質的なものは?
がんは生命の基本単位である細胞の病気
である
がん細胞は正常細胞と違って統一体の秩
序を無視して勝手に増殖を続ける
 正常細胞では、傷が癒えてもとにもどる
と統一体としての、分裂停止の指令が出て
これに従う
正常細胞はアポトーシス(計画的死)により
勝手に死ぬ
がんはなぜ起こるか? まだ不明の部分多い
ひとつの原因だけでひとりひとりの人ががんになる
わけではない
要因として考えられているもの
タバコ 食物, 職業に関連 ウイルス, 社会経済的要因,
生活習慣 免疫異常,
環境汚染(アスベスト・アフラトキシンなど)大気汚染
遺伝的(単一遺伝)体質的(多因子)
人のがんのうち親から受け継がれた遺伝的な原因または遺伝的
な体質に関連しておこってくるものが 5から10 %ある
がんは体細胞レベルで DNAの突然変異の
蓄積により起こるという説(体細胞突然変異
説)は家族性腫瘍研究によるところが大き
い
きょうだいや親子ががん?がんは
遺伝するのだろうか?
Bl 39
Co 36
NB 0
ALL2
ALL2
ALL 2
Ly 5
急性リンパ性白血病
G 68
B 39
AML 36
AML 5
AML 5
急性骨髄性白血病
ALL 7
B 38
ALL 9
家族性腫瘍
白血病
リンパ腫
神経芽細胞腫
網膜芽細胞腫
ウイルムス腫瘍
脳腫瘍
大腸がん
乳がん/卵巣がん
膀胱がん
胃がん
肺がん
前立腺がん
黒色腫
腎がん
Li-Fraumeni症候群
副腎がん・白血病・肉腫と成人
の普通のがん
家族性腫瘍の原因遺伝子が
次々に発見されていった
大部分が がん抑制遺伝子
 RB1(1986) 網膜芽細胞腫
 TP53(1990)
LiFraumeni 症候群
 WT1(1990)
 NF1(1990)
 APC(1991)
 NF2(1993)
 VHL(1993)
 MTS-1/P16(1993)
 RET(1993)
 MSH-2&MLH1(1993-1994)
 BRCA1(1994)
 CDK4(1995)
 BRCA2(1995)
網膜芽細胞腫
 小児の眼におこる腫瘍
 罹患率:小児の1万人5千 2万に1人
 60% 散発性
 40% 遺伝性 (80% が新性突然変異)
 10-20% が家族歴あり
 滲透率 90%
 診断 白色瞳孔
 遺伝性の例は
両側性が多く多発 発症年齢が早い
 二次がんが60%に生ずる
網膜芽細胞腫の遺伝的な特徴
 常染色体優性遺伝
浸透率>90%
両側性 RB, 1 yr
d. 78
両側性 RB,
6 mo
両側性 RB,
1 mo
 Prototype for
Knudson’s “two-hit”
hypothesis
両側性 RB, 1 yr
骨肉腫, 16
遺伝性網膜芽腫の新たな誕生
de novo
mutation
Rb, 4 mo
80% of germline RB1
mutations are de novo
80%は新たな
胚細胞突然変異
Dr. Alfred Knudson
Dr. Anna Meadowsご夫妻
同じがんで、どうして遺伝するものとしないものがあるのか?
網膜芽細胞腫を観察して、がん抑制遺伝子を予言した Dr
Knudson“小児がんが教えてくれた”と
小児がんが教えてくれた
The Two-Hit Hypothesis 2ヒット説
Knudson & Strong 1971
遺伝性
13番染色体
1回目のヒット
1回目
生殖細胞から遺伝的に伝わっ
ていると体全体(全網膜細胞)
の細胞で変異していて、
もう一方のアレルに2回目のヒットが出
るのは時間の問題(腫瘍部で)
2回目
小児がんが教えてくれた
The Two-Hit Hypothesis 2ヒット説
Knudson & Strong 1971
非遺伝性
13番染色体
1回目
1回目のヒットは
誰の網膜芽細胞にも
1~3個変異が生ずる
同じ網膜芽細胞のもう一方のアレルに
2回目のヒットが出る確率は低い
3万分の1
2回目
13q14欠失を伴う網膜芽細胞腫
頭頂部の側方突出
幅広い鼻根部
長い人中
精神発達遅滞(50%)
成長障害(50%)
13q14領域の欠失
形態形成遺伝子A
奇形a
形態形成遺伝子B
奇形b
RB1
形態形成遺伝子C
網膜芽細胞腫
奇形c
小児がん研究は「がんと遺伝子「がんの遺
伝」の研究に貢献してきた
がん抑制遺伝子の発がんと遺伝への関与
網膜芽腫 遺伝性がんのプロトタイプ
 Knudson AG Jr :Mutation and cancer: Stastistical study of
retinoblastoma. Proc. Natl Acad. Sci USA 68:820 1971
 Knudson AG, Jr , Meadows AT: Chromosomal deletion and
retinoblastoma NEJM 295:1120,1976
 Sparkes RS et al :gene for hereditary retinobalastoma assigned to
human chromosome 13 by linkage to esterase D Science 219:971,1983
 Cavenee WK et al : Expression of recessive alleles by chromosomal
mechanisms in retinoblastoma。Nature305:779,1983
 Friend SH et al: A human DNA segment with properties of the gene
that predisposes to retinoblastoma and osteosarcoma. Nature 232:582,
1986
The RB1 Gene
 Large gene spanning 27 exons, with more
than 100 known mutations
 Gene encodes Rb protein which is involved
in cell cycle regulation
1
2
3 4 5 6 7 8 9 10 12 14
Nonsense
Missense
Adapted from Sellers W et al. J Clin Onc 15:3301,
1997
17
18 19 20 21 22 23
Splice Site
25
がんは1つの細胞由来の細胞群の増殖
がんのクローン性
正常細胞
腫瘍Tumor
ASCOスライド教材より
The Cell Cycle 細胞回転
M
(mitosis)
G1
(cell
growth)
Oncogenes
がん遺伝子
G2
S (synthesis)
DNA repair修復
genes REPAIRS
AHEAD
G0 (resting)
Tumor suppressor genesがん抑制遺伝子
ASCO
多段階発癌 Multi-Step Carcinogenesis
(eg, 大腸がんの場合Colon Cancer)
Loss of
APC
Hyper正常上皮細胞
proliferative
Normal
epithelium
epithelium
Activation Loss of Loss of
Other
of K-ras 18q
TP53 alterations
Early
adenoma
Intermediate
adenoma
Late
adenoma
がん腫
Carcinoma
転移性
Metastasis
Adapted from Fearon ER. Cell 61:759, 1990
ASCO
環境変異原が生命体へ係わる時期とがん発生機序関係
Purtilo Am J Patho 91 610 1978 環
成人期
学童・思春期
乳児 ・幼児
胎芽 ・ 胎児
接合子
配偶子(精子と卵
子)
生殖細胞レベル
体
細
胞
レ
ベ
ル
境
中
変
異
原
に
よ
る
突
然
変
異
遺伝子への傷 (ヒット数)
成人のがん
思春期のがん
小児 がん
奇形発生・胎児性がん
遺伝病・染色体異常
の発生 遺伝性がん
の素因の発生
Cancer Arises From Gene Mutations
がんは遺伝子の突然変異でおこる
Germline mutations 胚細胞変異
Parent
Mutation
in egg or
sperm



Child
Somatic mutations
体細胞変異
All cells
affected in
offspring
この変異は卵子と精子にあり
親から子どもに遺伝する
家族性腫瘍の原因となる
Somatic
mutation (eg,
breast)


この変異は非生殖細胞(体細
胞)に起こる
親から子どもに遺伝しない
Li-Fraumeni症候群
 常染色体性優性で伝えられるまれな 遺伝性腫
瘍症候群で、様々な種類のがんが子どもから大
人までの広い年齢層におこる
 骨軟部組織肉腫
 乳がん 胃がん 肺がん など
 脳腫瘍
 副腎皮質がん
Li-Frauemeni症候群
Dr. Frederic P. Liがボストンでみた家族
Li-Fraumeni 症候群
乳がん ― 子どもの肉腫症候群
日米会議 ハワイ 1988
Dr. Fraumeni
Dr. Li
Dr. Strong
Dr Miller
Li-Fraumeni 症候群 自験例
B 40
S 50
1
3
mut/wt
P 36
LG 54
G 65
G 27
B 44
S 52
Bl 20
wt/wt
CN 41 CN 40
1
4
wt/wt
6
mut/wt
mut/wt
Hp 2
Ad 4
Th 19
S 3
Os 21
wt/wt
HCC 63
NS
CO 50
G 51
B 30
LG 35
S4
64
mut/wt
G 38
mut/wt
mut/wt
HP 9
6y/o
MDS 13
wt/wt
36
mut/wt
Malkin D , Li FP, Strong LC,
Fraumeni Jr. JF et al : (1990)
Germline p53 mutation in a familial
syndrome of breast cancer,
sarcomas and other neoplasms.
Science. 250:1233-1238.
In 5 families p53 germline mutations were detected
within exon 7 codon 245-248
リー・フラウメニ症候群
わが国最初のTP53胚細胞変異を持つ 2家系の報告
Samashima Y, Tsuneamtsu Y et al: (1992)
Detection of novel germ-line mutations in divers-cancer-prone
families identified by selecting patients with adrenocortical carcinoma.
JNCI 84:703-707
Li -Fraumeni症候群
TP53胚細胞変異をもっている人の滲透率
100
発病年齢
がんのタ イ プ
乳児期
副腎皮質がん
小児期
軟部組織肉腫
小児期/若年成人
期
思春期
急性白血病、
脳腫瘍
骨肉腫
2 0 歳から
閉経前乳癌
80
P53陽性者
60
40
一般集団
20
0
10
20
30
40
Age
60
80
LFS の原因遺伝子–p53
 P53 遺伝子はヒトのがんに最も高頻度に変異
がみられる
 染色体上17番目の短腕の13の位置にある
 393 個のアミノ酸からなる 53 キロダルトンの リ
ン酸化蛋白をコードしている
 その機能は不活性化をともなう変異により変化
をうける
 胚細胞変異はLFSの80%にLFL症候群の家族
の40%に検出されている
最もよくあるTP53変異の 位置 (コドン番号)
Activ.
DNA Binding
Tet.
Regl.
247, 248
272
174, 175
281
337, 341, 344
1
50
100
150
200
250
Amino acid number
300
350
393
変異p53による細胞周期の停止と
アポトーシス誘導の異常とがん化
正常p53
変異p53
DNAダメ-ジ
正常p53
蓄積
DNAダメ-ジ
G1停止、
p53機能
欠損
DNA損傷
修復
修復不
可能
アポト-シスの
誘導
修復可能
正常な細胞増殖の
進行
G1停止せず、
S期へ進行
遺伝子異常
の蓄積に伴
う異常増殖
TP53胚細胞変異の発症前診断の
倫理的・法的社会的諸問題の検討会に参集した学際的専門家たち
ワシントン1991(JNCI 184:1156, 1992)
ハンチントン病のガイドラインを参照して作成
家族性腫瘍研究会もガイドラインを策定
患者代表・分子生物学・疫学・医療政策・教育・法律・倫理
Li-Fraumeni 症候群家系での遺伝子診断のRecommendation JNCI
184:1156,1992から
 家族歴に照らし合わせて、最新の研究まで説明する。
 陽性の場合は早期予防につながる利益、陰性の場合は変異遺伝子
を持たないことで安心を得られる利益、陽性の場合、心理的衝撃の
ほかに予防医療コストがかかる
 質のよい情報の提供は同時によいカウンセリングとなる。
 自発的自己決定と情報の守秘義務
 小児では(小児がんの治癒率が高いので)検査を成人に持ち越して
行うよりも早く行った方が個人の利益になる。7歳以上では親に許可
を得ると同時に本人にも承諾をとること
 Huntington 病では結果がわかっても治療法がないが、LFSでは早
期発見が治癒につながりやすいことを銘記すべき
 被験者はテストを中断することもできる。結果を知る権利はもちろん
知らされない権利もある
 検査プロトコ-ルとインフォ-ム・ドコンセントはIRBで討議されるべ
き
 National Advisory Groupの設立が必要
家族性腫瘍研究会とガイドライン策定まで
ガイドライン策定に参集した
学際的専門家の方々
相田 浩
猪間 進
武部 啓
国友一史
権藤延久
白井泰子
田村智英子
野水 整
広井良典
山口直人
青野由利
岩間毅夫
掛江直子
黒木良一
斎藤有紀子
高井新一郎
恒松由記子*
長谷川知子
星野一正
湯浅保仁
明智龍男
内富庸介
数間恵子
小泉 恵
佐藤恵子*
玉井真理子*
橳島次郎
浜島信之
丸山英二
横田 淳
石川秀樹
宇都宮譲二
北川知行
小山靖夫
執印太郎
武田 祐子
野上耕二郎
馬場正三
三木義男
米本昌平
伊藤道哉
大牟田透
木村利人
後藤弘子
菅野康吉
田村和朗
野口眞三郎
樋野興夫
山口 建
(五十音順) * 起草委員
LFS の発症前診断について
TP53遺伝子変異をもつ家系での予知的遺
伝子検査はなお賛否両論がある
検査前と検査後に十分な遺伝カウンセリン
グ が必要で心理的カウンセリング項目など
提唱されている
カナダ・米国で小児期の臨床的なサーベイラ
ンスの実用的なガイドラインが試みられてい
る
インフォームドコンセント
 リスクと利益の比較考量
一般的な原則がん易罹患性遺伝子の遺伝子診断
小児期
 最終決断は本人ではなく両親や代理人によりなされるこ
とに注意
 多くの大人たちはこどもの遺伝子検査をしてもらいたい
と願う傾向がある
 子どものうちに検査するということは後になって(本人
が)検査に 反対することができないことを意味する
 将来的に検査結果について子どもにどのように話しをす
るかということをよく考えておくことが大切
こんなとき遺伝性腫瘍が疑われる
 若くてがんが発病しているとき
 小児がんの家族に他のがんがいるとき
 両側にがんができているとき
 ひとりの人に別のがんが出来たとき
 常染色体優性遺伝で伝わっているとき
 網膜芽細胞腫 副腎がん(Li-Fraumeni)
大腸ポリポーシスなど遺伝性のがん
家族歴をとることが大切
Li-Frauneni 症候群
小児がん疫学者の役割
Dr Louise C Strong の研究室
NHKから取材をうけて
ストロング先生の患者がNHK
からの取材に応じた
ポストゲノム時代ますます重要になった診療情報
Medical Profile
Lab tests
Gene expression
Medical history
SNPs
Personal
profile
ポストゲノム時代ますます重要になった診療情報
個人と家族のMedical Profile
Personal
profile
Family
profile
Personal
profile
Lab tests
Gene expression
Personal
profile
SNPs
Personal
profile
Medical history
Personal
profile
田村智英子 先生
遺伝カウンセラー
Dr. David Malkin
Toronto 小児病院 にて
2004年3月
Dr. Knudson
FoxChaseがんセンターで
08年5月に国際神経芽細胞腫会議で来日
本日はありがとうございました。