サンセット 一般的ルール: 協定第11.3条により、AD税はその賦課から5年以内に撤廃される。 例外: 仮に、AD税の終了により、ダンピング及び損害の存続又は再発をもたらす可能性があ ると当局が決定した場合 AD税の存続 ある当局のプラクティス: ダンピング及び損害の存続又は再発の可能性についての簡単な仮定 単なる形式としてのサンセットレビュー 事実上、国内産業への恒久的な保護としての役目。 AD税はその賦課から5年以内に撤廃するという明確なルールが必要。 例: A国が発動したAD措置の期間: 約10年(平均)、約33年 (最長) (1999年12月) A国によるサンセットレビュー: (1998年7月~2005年5月) サンセットレビュー実施件数 継続 ダンピングの評価による取消 損害の評価による取消 255 (100%) 194 (76%) 0 ( 0%) 61 (24%) レッサー・デューティー・ルールの義務化 国内産業に対する損害を除去するために、常にダンピングマージン(ダンピングの価格差)の限 度にAD税のレベルを決定することが必要か? 否 仮に、国内産業が損害を受けずに競争可能な価格レベルでAD税を課した場合 もはや国 内産業に対する損害なし。 そのような価格レベルを超えれば、 単なる国内産業に対する不必要な過度の保護でしかない。 不必要に高い輸入価格は、消費者や産業ユーザーとって有害。 両国の市場における経済的繁栄や競争力に悪影響を与える。 多くの国がすでに「レッサー・デューティー・ルール」を適用している。 レッサー・デューティー・ルールの義務化( 現行協定第9.1条: 単なる任意) 例: ダンピング マージン 100 % 国内販売 価格 100 輸出価格 50 輸出国 (レッサー・デューティー・ルール) 損害 マージン 50 % 輸入価格 非損害 価格 50 75 輸入国 (AD調査実施) (簡略化のため、上記の図は、輸出価格と輸入価格間の異なる商取引の段階の調整については省略している。) 国内産業が 損害を受けず に競争可能な 価格レベル ゼロイングの禁止 原則: 一部の取引価格のみを選択する場合、輸出者が決定した価格の全体像が分からない。 ダンピングの決定は、産品全体の全ての輸入取引に関する全体比較に基づいて行われるべ き。 マイナスのマージンをゼロとみなすこと、すなわちマイナス分のマージンを無視(ゼロイング)する ことは、輸入取引の全体像を無視することに他ならない。 結果として、AD税率は人工的に つり上げられる。 ゼロイング手法は、ビジネスの実体を反映していない不公正なマージン計算方法であり、すべて のAD手続において、明確に禁止されなければならない。 正常価額 例: 輸出価格 (国内市場価格等) 取引 1 120 20% (マージン) 100 取引 2 120 - 20% (マージン) 150 取引 3 120 - 25% (マージン) 160 ダンピングマージン: ゼロイングを用いない場合 ゼロイングを用いた場合 (簡略化のため、上記の例は、1~3の取引量は同じであると仮定。) (20% -20% -25%) / 3 = -8.3%(ダンピングなし!!) (20% +0% +0%) / 3 = 6.7% 損害及び因果関係 原則: AD税を必要とするのは、以下の場合のみ。 (1) 国内産業に対する損害の存在 (2) 損害がダンピング輸入によって引き起こされていること(因果関係) 問題: • 当局は、損害及び因果関係の決定について異なる基準を適用。 • 中には、他の要因(例えば、全体的な需要の減少、過剰設備による国内産業の高コスト等) が実際には損害の主たる要因である場合でも、当局がAD税を課すことがある。 そのため、以下についての明確化が必要。 (1)「損害」の概念、及び損害と因果関係の決定について分離、区別すること。 (2)ダンピング輸入による影響とそれ以外の要因による影響とを「分離、区別して」すること。 例: ダンピング輸入 実際の要因はどちらか ?? その他の要因 例 - 全体的な需要の減少, - 過剰設備による国内産業の高コスト 因果関係の分析 国内産業に対する損害 例 - 利益の減少 - 市場シェアの喪失 無視できる輸入量 原則: ある国からのダンピング輸入量が「無視できる」程度の場合 輸入国に対して重大な悪 影響を与えるには少なすぎ。 その国に対するAD調査を終了することを義務化 問題点: • 現行AD協定での「無視できる量(negligible)」 = 全輸入量の3%未満 • 仮に、輸入国の国内市場規模と比べて輸入量がわずかな場合でも、全輸入量に占める割合 は大きくなることもあるかもしれないが、国内市場に対する影響は「無視できる」もの。 輸入国における影響が非常に少ないにもかかわらず、AD税による影響を特に受けやすい途上 国の輸出者が調査対象となってしまう。 無視できる輸入量に対するルールは、全輸入量ではなく、輸入国の国内市場規模(同種の産品 の国内消費量)に占める割合をベースとすべき。 例: 輸入量: 2 A国 輸入量: 3 全輸入量に対する割合: 20% 輸入国国内市場規模: 1,000 2 輸入国の国内市場規模に対する割合: 0.2% 3 B国 輸入量: 5 国内市場 : 990 5 C国 全輸入量: 10 関連者 調査当局は、輸出者に対してその「関連者」に係るデータ提出を要求する場合がある。 問題点: • 輸出者の5%以上の株式を保有する企業(又は輸出者が5%以上の株式を保有 する企業)を「関連がある」と見なす当局がある。 • しかしながら、5%程度の株式保有では、当該輸出企業は、その関連者と支配 関にあるとは言えない。 企業秘密に係るデータ(コスト、再販価格等)につい ては、必ずしも関連者からのデータ提出の協力が得られるとは限らない。 輸 出企業がそのようなデータを提出することは大きな負担であり、提出が不可能な 場合がある。 データを提出しなかった場合、罰則として非常に高いダンピン グ・マージンが課される場合もある。 「関連者」の定義を明確化することが必要。 例: 企業秘密に係るデータを提出するか?? (コスト、再販価格等) 輸出者 5%株式保有だが、支配関係はない 企業A (関連者) 調査対象産品 問題点: 調査当局は、物理的特性や最終用途、競争状態などが全く異なる産品を同 一の調査対象産品として扱う場合がある。 中には、輸入国の国内産業では生産していないような製品が調査対象産品に含まれ る場合もある。 「調査対象産品」の定義についてのルールが必要。 例: 輸出国 高品質の鉄鋼製品 (例:自動車用) 輸入国 どちらも「鉄鋼」である が、物理的特性や用 途が全く異なる。 輸入 国内産品 低品質の鉄鋼製品 (その他用途) 適正手続の強化及び透明性確保 問題点: • 輸出者(特に中小企業、途上国)は調査に対応し、データを提出するための情報が 少なく、自らの利益を擁護できない場合がある。 • 調査の決定に至る理由や、調査及び評価が客観的で公正なものかどうか外部か らは分からない。 以下の点が重要 • 利害関係者は調査過程において、当局に対し意見を提出する機会を十分に与えら れるべきであること。 • 調査当局は、すべての決定に対し合理的かつ十分な説明をすべきであること。 そうでなければ、ダンピング及び損害調査に係るルールを改善しても、実際の調査 において改善がなされることを確保するのは困難。 例: 利害関係者 十分かつ時宜を得た コメント機会の付与 データ提出 調査当局 十分かつ詳細な説明
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