低消費電力で安全なシステムLSIを実現するための オンチップ・メモリ・システム 岩佐崇史 田中秀和 井上弘士 モシニャガ・ワシリー 福岡大学 1 システムLSIへの要求 21世紀の社会基盤を確立するためのシステムLSI Performance (性能) Energy Security Consumption (安全) (消費エネルギ) 個人情報といった重要 バッテリ駆動時間の 延長、信頼性向上、 など な情報の保持、など 2 研究目的 高性能、低消費電力、かつ、安全なシステムLSIを 実現するためのオンチップ・メモリ・システムを実現 現在進行中のプロジェクト紹介 1. 適応型低消費電力キャッシュ・アーキテクチャ メモリ・アクセス・パタンに基づきキャッシュ動作モードを 動的(または静的)に選択 メモリ・システムへの要求性能に基づきキャッシュ動作 モードを動的(または静的)に選択 2. 悪質プログラム検出のためのメモリ・システム メモリ・アクセス・パタンを鍵情報とし、プログラム実行中 に鍵照合を行うことでプログラム認証を実現 3 研究紹介1 適応型低消費電力キャッシュ アーキテクチャ プログラム実行の振る舞いやメモリ・システム要求性能 に応じて動的(プログラム実行中)に動作モードを変更し、 性能低下を招く事無くキャッシュ・メモリの低消費エネル ギー化を実現する! 4 これまでに提案された低消費エネルギー 化手法 ウェイ予測型(WP) 従来型(N) 段階型(P) Nモード Pモード WPモード ヒット ミス 予測ヒット 予測ミス 読み出されるタグ数 M M M 1 M 読み出されるライン数 M 1 0 1 M 所要クロック数 1 2 1 1 2 M:連想度 5 消費エネルギー削減効果 Normalized Ecache Normalized Tcache Data Cache 段階型 ウェイ予測型 2 1.5 1 0.5 0 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 099.go 126.gcc 130.li 134.perl 101.tomcatv 103.su2cor 124.m88ksim 129.compress 132.ijpeg 102.swim 102.swim 104.hydro2d 6 問題点(PとWPの利点と欠点) P方式の利点 常に低消費エネルギー化 を達成できる(メモリ・アク セス・パタンに非依存) P方式の欠点 常に性能低下が生じる WP方式の利点 予測が正しい場合、性能 低下を伴う事無く消費エネ ルギーを削減できる WP方式の欠点 ウェイ予測の正確さはメモ リ・アクセス・パタンに依存 する 予測が誤りの場合、性能 低下を伴い、かつ、消費エ ネルギーは削減できない 7 解決策:適応型ウェイ予測キャッシュ 従来型(N) 段階型(P) 高速/高消費電力 低速/低消費電力 ウェイ予測型(WP) 高速/低消費電力 低速/高消費電力 直接モード選択方式:外部入出力ピンより、N,P,または, WP何れかを選択 自己モード選択方式:プログラム実行の振る舞いに応じて 動的に動作モードを変更 8 応用例1:分岐予測技術を活用した適応型 ウェイ予測キャッシュ 誰がモードを決定する?:専用ハードウェア(2ビット飽和カウンタ) どうやって?:過去のウェイ予測結果に基づき、ウェイ予測の信頼 性を判定 具体的には?:分岐予測技術を活用 つまり?:過去のウェイ予測結果に基づき、現アクセスにおける ウェイ予測の信頼度を決定。もし、信頼度が高い場合にはWPモー ド、低い場合にはN(またはP)モードでアクセスする。 正しい予測 3 2 間違った予測 0 1 正しい予測 ウェイ予測が正しい場合には飽和カウ ンタをインクリメント ウェイ予測が間違いの場合には飽和 カウンタをデクリメント 正しい予測 現在のカウンタ値が2か3の場合には 予測モード動作 現在のカウンタ値が0か1の場合には 段階モード動作 2ビット飽和カウンタ 9 応用例2:OSによるMPEGソフトウェア向け適応型 ウェイ予測キャッシュの制御 誰がモードを決定する?:オペレーティング・システム どうやって?:何フレーム処理を終了したかを判定 具体的には?:オペレーティング・システムが割り込みを発生 つまり?:リアルタイム性を保障するために、動画像デコーダは3 0フレーム/秒処理しなければならない。画像の特徴によっては、 30フレームを0.5秒で終わる場合もある(性能制約が緩和され る)。このような状況を検出し、リアルタイム性を十分保障できる 場合にはPモード、できそうにない場合にはNモードを選択する。 30枚のフレーム 30枚のフレーム 0 1 29 30 高い性能を要求 1秒 0 30 低い性能を要求 1秒 10 応用例3:ロード/ストア・クリティカリティに基 づく適応型ウェイ予測キャッシュの制御 キャッシュ・アクセス時間 (Instruction Per Clock cycle) 高い性能を要求 IPC (性能) (Instruction Per Clock cycle) IPC (性能) 誰がモードを決定する?:コンパイラ、または、専用ハードウェア どうやって?:①IPCに影響を与えるロード/ストア命令を検出 ②クリティカル・パス上のロード/ストア命令を検出 具体的には?:メモリ・アクセス命令の緊急度を検出 つまり?:高速で実行しなければならないロード/ストア命令と、低 速で実行しても性能に大きな影響を与えないロード/ストア命令に 分類し、前者はNモード、後者はPモードでアクセスする。 低い性能でもOK キャッシュ・アクセス時間 11 適応型WPキャッシュの内部構成 現在、0.18μmCMOSプロセス(VDEC)を用いて設計中! 12 研究紹介2 悪質プログラム検出のための メモリ・システム プログラム・コード中に特別なロード命令を埋め込み、当該命令列 の振る舞いを鍵とみなすことで、正当なプログラムか否かをプロ グラム実行中に判断する 。プログラム実行というハードウェア・レ ベル(CPUレベル)にまで鍵情報を適用することでより安全なシス テムを実現する! 13 システムLSIとセキュリティ スマート・カードなど、今後、極めて重要な情報が LSIに格納 システムLSIにおけるセキュリティ機能の向上が必 須! 考えられる問題点 情報の盗み見や改ざん 暗号化技術 ユーザの成りすまし 指紋情報の活用などの認証技術 ウィルスなどの悪質プログラムの暴走 認証鍵 14 新しい悪質プログラム検出方法 プログラム・コード中にも鍵 アプリケーション発行元 情報を埋め込もう! プログラム実行の振る舞い (例えばメモリアクセス・パ Application タン)を鍵情報とする Program コンパイラは、「プログラム ダウンロード 本来の機能に影響を与え る事無く」、鍵(つまり、実行 実行 振る舞い)を実現する命令 列をコード中に挿入 OS 可能な限り、性能と消費電 力オーバヘッドを削減 CPU 15 セキュア・プロセッサとそのコンパイラ どうやって鍵を実現するのか?:専用ロード命令を定義し、コン パイラがプログラム・コード中に専用ロード命令を挿入 どうやって鍵を検出するのか?:プロセッサは、鍵検出のための 専用ハードウェアを搭載し、専用ロード命令が実行されたときの メモリアクセス・パタンを記録 どうやって登録済み(悪質でない)プログラムか否かを判断する のか?:事前に登録しておいたメモリアクセス・パタンと、検出し たパタンが同じか否か調べる。異なっていれば悪質プログラムと 判断し、即座に実行を中止する。 鍵情報 (実行の振る舞い) プログラム ソースコード コンパイラ セキュア CPU 鍵情報入り オブジェクト コード 16
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