障害学生修学支援の基礎

はじめて障害学生を
受け入れるにあたって
筑波技術大学
JASSO客員研究員
石
田
久
之
障害学生在籍状況
1800
1600
1400
1200
1000
障害学生
受支援
800
600
400
200
0
視覚
聴言
肢不
病虚弱 発達
重複
その他
2006年JASSO調査
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歴史的流れ
• 1949 同志社大学点字受験対応
• 1978 筑波技術短期大学開学
• 2004 JASSO障害学生支援事業開始
• 2005 発達障害者支援法施行
– 第八条 2 大学及び高等専門学校は、発達障
害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮
をするものとする。
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きっかけ -始めは様々―
• 障害学生の入学(合格)が決まって
• 受験生からの相談を受けて
• 他の大学の動向を知って
• 授業を障害学生が受講して
• 学会、研究会などの話題で
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目標は色々
• 直ぐに具体的対応を
• ゆっくり学内のコンセンサスを得ながら
• 他大学は参考としても、目標としない
– それぞれの大学で、教育理念、大学の規模、支
援する障害学生、などにより、独自のスタイルを
確立する。
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“特別な”配慮とは
• 優位性を与えるものではない
• スタートラインを揃える
一般学生
配
慮
見えにくい
聞こえにくい
動きがゆっくり
障害学生
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教育を受ける権利を保障
• すべての学生に対して「教育を受ける権利」
を保障する
– 障害学生の教育を受ける権利を保障することは
もちろん、同時に受講しているすべての学生の教
育を受ける権利と両立することを目指す。(広島
大学『教職員のための障害学生就学支援の手引
き』より)
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支援業務
• 支援
– 障害学生、支援学生、教員
• 庶務
– 運営、管理、キャンパス改善、連絡調整
• 広報
– 学内の理解・啓発、学外への情報発信
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障害学生への支援
• 視覚障害学生
– 点訳・墨訳、座席位置の配慮、文字種の配慮。
• 聴覚障害学生
– ノートテイク、手話通訳、FM補聴器。
• 肢体不自由学生
– 施設整備、教室変更、掲示の配慮。
• 病虚弱学生
– 休憩室の確保。
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支援学生への支援
• 支援学生の養成(講座などの開催)
– ノートテイク、手話、点訳、介助などの講習。
• スキルアップ講座の開催
– 支援技術の向上、均一化。
• 支援学生の悩みへの対応
– 本当にわかって貰えているのか。
– まだまだ未熟だ。
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支援学生の成長
支援学生の学びと成長への支援
↑
大学の存在意義そのもの
では、学外からの支援をどのように考
えるのか
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教員への支援
• 授業での配慮
– 授業に障害学生、支援学生がいることの周知(配
慮依頼作成)。点訳・墨訳。
• 定期試験での配慮
– 試験方法や代替問題作成での相談対応。
• FD研修
– 障害とは何か。
– どのように授業を行うか。英語、体育、実習。
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教員等の役割(大阪大学)
• 第3条(総長の責務) 総長は、障害を有する学生が、
適切な配慮がなされないことにより、教育上及び学生
生活上不利益を被ることがないよう、必要な支援方策
を推進する責務を有する。
• 第4条(教職員の責務) 教職員は、障害を有する学生
が、教育上及び学生生活上不利益を被ることがないよ
う、適切な配慮及び支援を行うとともに、支援方策の実
施に対し積極的に協力するよう努めなければならない。
(障害を有する学生への支援に関する要項)
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庶務業務
• 支援
– 障害学生、支援学生、教員
• 庶務
– 運営、管理、キャンパス改善、連絡調整
• 広報
– 学内の理解・啓発、学外への情報発信
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支援体制
・支援委員会
・保健管理センター
・学生相談室
・地域
・支援センター
・支援担当職員
・障害学生
・教員
・支援学生
(分かりやすい授業)
(成長・学び)
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支援委員会と支援センター
• 支援委員会
– 学内の支援事業について、概要・予算を策定し、
学長・理事長などに諮問。専門委員会型、既存
の委員会内の小委員会型、学長直轄型がある。
88大学で設置。
• 支援センター
– (支援委員会のもと、)具体的な事業内容を策定・
実施。全学組織として設置。28大学で設置。
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誰がまとめるのか
• 障害学生担当職員
– 学生課・教務課などで業務を行なうと同時に、障
害学生担当窓口として支援業務も行なう。
– 自らも各種技術を身につけ、専門的な力量を有
する場合もある。
• 修学支援コーディネーター
– 支援業務を専門に行なう職員。現在、全国で40
大学のみに配置されている。
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キャンパス改善
(1)誘導ガイド
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キャンパス改善
(2)段差識別シール
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キャンパス改善
(3)衝突緩衝材・マット
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広報業務
• 支援
– 障害学生、支援学生、教員
• 庶務
– 運営、管理、キャンパス改善、連絡調整
• 広報
– 学内の理解・啓発、学外への情報発信
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学内の理解・啓発
• 教職員、健常学生への周知
– ちょっと手をかす。
– エレベータを空ける。
– 支援は、担当職員と支援学生だけが
行なうものではない。
• 支援学生の募集
– 支援学生は、慢性的な人不足。
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全障害学生への周知
• 対象は新入生だけではない
– 支援制度や支援内容を知らずに、一人でがん
ばっている障害学生にも、届くようなPR。
• 高校時代になんとかやってこれたので支援は必要な
い。
• 支援というものを知らない。
• 年度途中からの受け入れ
• 試しにやってもらう
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学外への情報発信
• 受験生へ
– HP(入試での配慮、入学後の支援内容)。
– 支援室公開(ここに、この人がいる)。
• 他大学を含めた地域へ
– 学外支援、相談対応。
– 協力依頼(下宿、通学=駅へのエレベータ設
置依頼)。
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点字の読み
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支援は、四月始まりではない
• 受験相談、オープンキャンパス
• 入試対応
– 大学入試センター試験に準じる場合が多い。
• 関連部署の連絡会議
– 誰が担当の中心となるか、支援の範囲は?
• 障害学生との個別対応、高校訪問、情報収集
• 教材の作成
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まずは、四月を乗り切る
• 入学式、オリエンテーション
• 具体的支援内容の検討
– 何を点訳するか、テイカーを何コマつけるか、等。
• 支援スタッフ(学生)の募集
• 支援スタッフの配置(シフト表作成)
• 教員への周知、“特別な”配慮の依頼
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修学支援における“二つの難題”(1)
• ノートテイカーの人手不足
– 予算がなかったり、希望者がいなかった
りで、学内で養成しきれない。
• 対応策
– 近隣の数大学が共同で養成。
– 地域のテイカーに依頼。
– 大学間でテイカーの派遣。
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ノートテイカー
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テイカー不足
•
•
•
•
聴覚障害学生:1名
情報保障希望授業数:10コマ/週
テイカー配置数:2名/コマ
テイカーの可能授業数:2コマ/週
10コマ×2名÷2コマ=10名
• 登録テイカーの実働率:2~5割
必要テイカー数:20~50名
30
謝金
14
12
• 10コマ(毎週)×
30週×2名×
1,000円=
600,000円
10
8
6
4
2
0
~400
~1200
~2000
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修学支援における“二つの難題”(2)
• 発達障害学生や精神障害学生などへ
の対応
– 情報が不足している。
– 準備ができない。
– 他部署との連携が取れない。
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学生の様子と支援
大 教員の関心 小
学生の様子
小 日常の支援 大
小 就活の支援 大
暴力的
時々パニックになる
急に大きな声を出す
ストーカ的なところがある
一途
場を読めない
ノリがいい
ちょっと変わっている
おとなしい
友達はいないようだ
時々保健室で話していく
居場所は保健室だけ
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支援の壁
学生部
支援窓口(学生課)
身体障害学生支援
情報交換
支
援
保健室
学生相談室
発達障害・精神障害学生
日常相談・カウンセリング
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様々な問題
• 点訳(視覚障害学生)
音符などの特殊な点訳
• ノートテイク(聴覚障害学生
ノートテイカーの人手不足
• 施設整備(肢体不自由学生)
古い建物の整備
• 問題は何(そのほかの学生)
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大学間のネットワーク相談事業
• 大学と大学との関係
– 相談する方もされる方も大学。
• 六つの拠点校
– 宮城教育大、筑波大、日本福祉大、同志社大、
広島大、福岡教育大。
• 拠点校間の連携
– 難しい質問は、拠点校間で連絡、意見交換。
• セカンドオピニオン
– 色々なやり方がある。
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JASSOお役立ち情報
• 「はじめて障害学生を受け入れるにあ
たって」
学年歴にそって、支援内容を解説
• 「障害学生修学支援のためのFAQ」
支援業務のQ&A
• 「障害学生修学支援メニュー」
障害種別、対応場面別に、メニュー形式
で、各種情報を提供
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修学支援の四つの原則
• 相談
– 何をして欲しいのか。要望の正確な把握。
• 個別
– 同じ障害でも個別の支援方策。
• 申請
– 周囲が勝手に考えない。
• 連携
– 学内の様々な組織を有機的に結合。
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障害学生の修学支援に何をみるのか
障害学生に分かりやすい授業
(資料配布、丁寧で明確な説明)
↓
全ての学生に分かりやすい授業
障害学生に安全なキャンパス
(明るいキャンパス、危険個所の明示)
↓
全ての学生、教職員に安全なキャンパス
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居心地のよい大学
40