法数学における ベイジアンネットワーク(2) ~成書で学ぶ~ 京大(医)統計遺伝学分野 山田 亮 2013/12/14 法数学における ベイジアンネットワーク(1) • 前回の話 アリバイ 動機 DNA鑑定 遺留品 の残し方 わがままな内容だったので ゼロから確認してみます • • • • ハードカバー: 372ページ 出版社: Wiley ISBN-13: 978-0470091739 発売日: 2006/4/7 この本の「動機」(1) • 原因の集合と科学的証拠の集合との関係はいかなるものか。 ただし、通常、原因は観察することができず、科学的証拠は観 察できるものである。 • 1つまたは複数の判断すべき命題があったときに、それに関し て推定をしたい。その推定を、異なる種類の証拠に基づいて行 うと、それらの示す推定結果に違いが生じる。この違いにはど のような関係があるのか、その構造はどのようなものか. • 科学的証拠の証拠としての価値の大小を定めたいとする。その 大小を決める合理的な方法として、わかりやすく、信頼できて、 反論されても崩れないようなものはどのように作ったらよいか。 • すでに得られている証拠から十分な確信を持って判断ができな いとき、追加で必要な証拠は何なのかはどうやったらわかるか。 この本の「動機」(2) • このような追加情報について、その価値をどのように測るの か。 • 刑事裁判において法科学者とその他の参加者が法医学的 証拠に関して決定を下すという作業があるが、それを指南す るような専門的システム(expert system)は作れるか。 • そのような専門的システムは、新規に得られる関連情報に 基づいて更新することが必要になると考えられる。その様な 情報とは、新たな情報ソースの出現だったり、新たな判断方 法や判断指針だったりする。そのようなメンテナンス・更新は 可能か。 ベイジアンネットワークと 動機との関係 • 推論の過程を論理とその順序だてた手続きとし て構造化できる • すべての言葉で語られた情報(narratives)を組み 込める • 証拠や情報が得られると、ネットワーク上のその 他の事象や証拠にどのような影響が及ぶかを計 算することができる • 仮説や仮定をすると、どういう風に推定に影響 が及ぶかを簡潔に表すことができる • 議論を仮説・仮定と確率で進めることを可能にす る 本書の構成・章立て • 総論・基礎 – Chapter 1: 論理と科学的推論の基礎を確認する – Chapter 2: 論理と推論をグラフ・ベイジアンネットワーク(BN)に表すことを導入し、その おかげで複雑になっても怖くないことを理解する – Chapters 3 and 4: 不確かさのある論理と推論に話を進め、BNにおける証拠の意味・位 置を知る • 各論 – Chapter 5: DNAという証拠 – Chapter 6: Transfer evidenceという証拠(現場から犯人へのtransfer,犯人から現場への transfer) – Chapter 7: 証拠の組合せ – Chapter 8: Pre-assessment 証拠が得られたとしたら、判断にどのような価値を持つかを 定量する – Chapter 9: 質的評価(BNは確率計算を正確に行うが、曖昧さが混じるときに決断しよう とするとその正確な計算で表せないことが出てくる。それに対する対処) – Chapter 10: BNで扱ってきた対象はカテゴリカルな変数であったが、連続変数にする – Chapter 11: BNとベイズ流の決断とは同じではないので、BNを用いて決断をするとはど ういうことか、どのようにBN(とその結果)を使って決定をするか (前回勉強会の)今日の目標 • 自力でベイジアン・ ネットワークを作れる ようになること • (仮の)最終形は → • 最後まで、行ければ よし、行けなくても • 基礎だけはしっかり やりましょう (前回勉強会の)今日の目標 • 自力でベイジアン・ ネットワークを作れる ようになること • (仮の)最終形は → • 最後まで、行ければ よし、行けなくても • 基礎だけはしっかり やりましょう 真のジェノタイプ と 実験結果 との関係 アリバイ 動機 DNA鑑定 遺留品 の残し方 真のジェノタイプ と 実験結果 との関係 アリバイ 動機 DNA鑑定 遺留品 の残し方 遺留品(にDNAがある)が現場に あるかどうかは、 「犯行現場に居た」かどうかによ る また、「いかにも犯行の実行に 伴ってしか残らない」ような遺留 品であれば、それは犯行の実行E によって決まる DNA鑑定 アリバイ 動機 遺留品 の残し方 遺留品(にDNAがある)が現場に あるかどうかは、 「犯行現場に居た」かどうかによ る また、「いかにも犯行の実行に 伴ってしか残らない」ような遺留 品であれば、それは犯行の実行E によって決まる DNA鑑定 アリバイ 動機 遺留品 の残し方 被疑者由来のDNA実験結果 と 遺留品由来のDNA実験結果 とを比較して (それが一致していたときに) 『遺留品を残したのが被疑者である』 という Aの事後確率が上がる DNA鑑定 「被疑者由来のDNAの型」が確定した アリバイ 動機 遺留品 の残し方 「遺留品由来のDNAの型」が確定した 被疑者由来のDNA実験結果 と 遺留品由来のDNA実験結果 とを比較して (それが一致していたときに) 『遺留品を残したのが被疑者である』 という Aの事後確率が上がる DNA鑑定 「被疑者由来のDNAの型」が確定した アリバイ 動機 遺留品 の残し方 「遺留品由来のDNAの型」が確定した 曖昧な情報の活用 曖昧な情報の活用 最後の決断は 個人に任せて 個人によって決断が割れてもよい 事後●●を何にするか? 「AとBとのそれぞれの『期待値』」 「AとBとを比べて『Aがより良い』確率? 事後●●の値はいくつが十分か? 最後の決断は 個人に任せて 個人によって決断が割れてもよい 事後●●を何にするか? 「AとBとのそれぞれの『期待値』」 「AとBとを比べて『Aがより良い』確率? 事後●●の値はいくつが十分か? 本書の構成・章立て • 総論・基礎 – Chapter 1: 論理と科学的推論の基礎を確認する – Chapter 2: 論理と推論をグラフ・ベイジアンネットワーク(BN)に表すことを導入し、その おかげで複雑になっても怖くないことを理解する – Chapters 3 and 4: 不確かさのある論理と推論に話を進め、BNにおける証拠の意味・位 置を知る • 各論 – Chapter 5: DNAという証拠 – Chapter 6: Transfer evidenceという証拠(現場から犯人へのtransfer,犯人から現場への transfer) – Chapter 7: 証拠の組合せ – Chapter 8: Pre-assessment 証拠が得られたとしたら、判断にどのような価値を持つかを 定量する – Chapter 9: 質的評価(BNは確率計算を正確に行うが、曖昧さが混じるときに決断しよう とするとその正確な計算で表せないことが出てくる。それに対する対処) – Chapter 10: BNで扱ってきた対象はカテゴリカルな変数であったが、連続変数にする – Chapter 11: BNとベイズ流の決断とは同じではないので、BNを用いて決断をするとはど ういうことか、どのようにBN(とその結果)を使って決定をするか Chapter 5 DNA evidence • • • • • • • • • • • • 5.1 DNA尤度比 5.2 DNA尤度比のためのネットワークアプローチ 5.3 Suspectが行方不明・捕まっていないとき 5.4 Suspectの同胞が残した証拠かもしれないとき 5.5 5.6 複数の仮説があるとき 5.7 部分的一致 5.8 混合試料 5.9 血縁鑑定 5.10 データベースサーチ 5.11 エラー率 5.12 集団の構造化 5.13 その先へ 5.10 データベースサーチ • N人のDNA型を登録したデータベース • 現場試料のDNA型との照合 • 1人がマッチ、N-1人がマッチせず 1人がマッチ、N-1人がマッチせず • 仮説は何か – Hp : 容疑者Xが試料の主である – Hd : 容疑者以外の誰かが試料の主である • これは確率変数なので、BNでノードになる H 1人がマッチ、N-1人がマッチせず • 何を観察したか • データベースに登録された、ある人 z1 のDNA 型が容疑者XのDNA型と一致した • 「一致する」かもしれないし「一致しないかもし れない」事象なので、これも確率変数→BNで ノードになる E 1人がマッチ、N-1人がマッチせず • 何を観察したか • データベースに登録された、ある人 z1 以外の (N-1)人のDNA型が容疑者XのDNA型と一致し なかった • 「一致する」かもしれないし「一致しないかもし れない」事象なので、これも確率変数→BNで ノードになる D 1人がマッチ、N-1人がマッチせず • 3つの確率変数があった H D E
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