第11回 簡単な系の量子論 ・時間に依存しないシュレーディンガー方程式 ・無限に高い井戸型ポテンシャル ・1次元のシュレーディンガー方程式 ・不合理な解と意味のある解 今日の目標 1.時間に依存しないシュレーディンガー方程式を書ける 2.無限に高い井戸型ポテンシャルを示せる 3.1次元のシュレーディンガー方程式を示せる 4.無限に高いポテンシャル障壁内の粒子に対する シュレーディンガー方程式が解ける 2011 シュレーディンガー方程式 ∂Ψ(r,t) i h ∂t = HΨ(r,t) 2 h H=∇2 + V(r) 2m ∇2 = ∂2 ∂x2 ;系のエネルギーを表す演算子 ∂2 + ∂y2 ∂ ∇= i ∂x ∂2 + ∂z2 ∂ +j ∂y ∂ +k ∂z :ラプラシアン(Laplacian) :ナブラ(Nabla) V(r) :ポテンシャル>>>粒子の状態を決める Ψ(r,t) = φ(r)e iE t h :波動関数 状態の情報を含んでいる 時間に依存しないシュレーディンガー方程式 波動関数 iE t h Ψ(r,t) = φ(r)e 例: 平面波; Ψ(r,t) = Ae i(k・r-ωt) 定常状態:エネルギーが時間に依存しない ∂Ψ(r,t) i h ∂t HΨ = = Eφ(r) e h2 2 2m ∇ + V(r) h2 2 φ(r) ∇ + V(r) 2m Hφ(r) = Eφ(r) 演算子 固有値 iE t h φ(r) e iE t h = Eφ(r) 固有関数 固有方程式 無限に高い井戸型ポテンシャル内の1次元粒子 V(x) V(x) = 0 ;0≦ x ≦ a V(x) = ∞ ;x<0, x>a m 0 x a 2 h H=2m 2 h H=2m ∂2 ∂x2 ∂2 ∂x2 2 ∂ + ∂y2 + V(x) 2 ∂ + ∂z2 + V(r) 解 i) x<0, x>a の時 V(x) = ∞ φ(x) = 0 ii) 0≦ x ≦ a の時 V(x) = 0 h 2 d2 φ(x) 2m dx2 2 h H=2m 粒子が存在できない ∂2 ∂x2 = E φ(x) 1) E <0 の時 d2 φ(x) dx2 = 2mE φ(x) 2 h 2mE = κ2 >0 h2 d2 φ(x) dx2 = κ2 φ(x) を解く 一般解 φ(x) = Aeκx + Be -κx 境界条件 φ(0) = A + B =0 φ(a) = Aeκa + Be -κa eκa = 0 ∴ φ(x) = 0 =0 e -κa = 0 A=B=0 ;粒子が存在しないことになる 不合理 2) E = 0 の時 d2 φ(x) dx2 =0 を解く φ(x) = Ax + B 境界条件 φ(0) = B =0 φ(a) = A a + B =0 a=0 ∴ φ(x) = 0 A=0 ;粒子が存在しないことになる 不合理 1) E > 0 の時 d2 φ(x) dx2 d2 φ(x) dx2 一般解 = 2mE φ(x) 2 h = -α2 φ(x) 2mE = α2 >0 h2 を解く φ(x) = A sinαx + B cosαx 境界条件 φ(0) = 0 + B =0 φ(a) = A sinαa + B cosαa B=0 =0 A sinαa = 0 A sinαa = 0 αa = nπ (n = 1, 2, 3, …) √2mEn nπ n:量子数 α= = a h 2 π2 h ;固有エネルギー En = n2 2ma2 φ(x) = A sin nπ x a ;固有関数 nπ A sin a φn(x) = x 規格化 a ∫0 φn* φndx = 1 ∫ a a * φ dx φ 0 n n A= = A2 ∫0 sin2 nπx a dx = a A2 2 =1 √ 2a φn (x) = √ 2 a En = sin nπ x a h 2π2 n2 2ma2 ; n = 1,2,3,… 基底エネルギー n=1 E1 = 位置の不確定さ; π2 h 2 2ma2 ≠0 零点エネルギー Δx ≒ a h Δx 運動量の不確定さ; Δp = h = a n=3 2h 2 π 2 E3 = 3 2ma2 0 φ3 (x) = √ 2 a 3π sin a x n=2 2h 2 π 2 E2 = 2 2ma2 2h 2 π 2 E1 = 1 2ma2 0 φ2 (x) = √ 2 a 0 φ1 (x) = √ 2 a n=1 0 a 2π sin a x π sin a x 粒子の存在確率 無限に高い井戸型ポテンシャル内に束縛された粒子 2π2 h En = n2 ;固有エネルギー 2 2ma φn (x) = A sin nπ x ;固有関数 a En 確率密度 n=3 π2 h 2 32 2ma2 0 2ma2 π2 h 2 2ma2 2 a sin2 |φ2 (x)| 2= 2 a sin2 2π x |φ1 (x)| 2 a sin2 π |φ3 (x)| φ3 (x) n=2 π2 h 2 3π a x 2= 22 n=1 0 φ2 (x) 12 0 0 a 2= a a x 形式Ⅰ:波動関数 a)波動関数;粒子系の状態を表す 1粒子の場合; Ψ(x,y,z,t) N粒子の場合; Ψ(q1,q2,q3, q4,q5,q6,・,・,・, q3N-2, q3N-1, q3N,t) 物理的制約 ①連続 ②一価 ③2乗積分可能 b)体積dq1dq2dq3・・・ dq3N(=dτ)の中に粒子を見いだす確率 p(q1,q2,q3, ・,・,・, q3N,t)は p(q1,q2,q3, ・,・,・, q3N,t) ∝ Ψ*Ψdτ= |Ψ|2 dτ p(q1,q2,q3, ・,・,・, q3N,t) = |Ψ|2 dτ ∬∫全空間 |Ψ|2 dτ ∬∫ |Ψ|2 dτ=1 ;規格化 c)直交性 時間に依存しないシュレーディンガー方程式 Hφ=Eφ 解: Hφn=Enφn 例:無限に高い井戸型ポテンシャル内に束縛された粒子 2 π2 h En = n2 ;固有エネルギー 2 2ma φn (x) = A sin nπ x ;固有関数 a ∫ ∬φn*φmdτ=δnm 内積 =0 n≠m(状態が違う) =1 n=m 直交 演習 1.ヘキサトリエンCH2=CH-CH=CH-CH=CH2が1次元の量子系として 1電子の運動を議論しなさい。但し、C-C結合は1.54Å、C=C結合 は1.35Åとする。 (1)基底エネルギーはいくらか。 (2)基底状態から第1励起状態に遷移するためにはどんな波長の 電磁波を吸収させるか。 (3)第3励起状態まで吸収していると、どんなスペクトルになるか、 ピークの位置だけ議論しなさい。 2.ニュートンの運動方程式とシュレーディンガー方程式の違いに ついて、あなたが気付いたことを述べなさい。 レポート提出(手書き) 12月26日まで、数理科学研究室(5461、和田) 今日の用語 定常状態、時間に依存しないシュレーディンガー方程式、波動関数、 固有方程式、固有関数、固有値、量子数、固有エネルギー、 零点エネルギー、直交性 戻り • メール[email protected] • 講義のページへ戻る • 和田のホームへ戻る • 明薬のホームへ戻る
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