金融革新と市場危機 ~米国発の金融危機と規制の見直し ~ 07bc080c Hiroshi Koga ○金融危機の特色 ▽今回の危機の特徴 ①多くの変化のスピードがきわめて早かった点 ②広がりがグローバルに進んだ点 ③多くの業態に及んだ点 主要国のみならず、世界全 体で2009年の成長率はマイ ナスの見通し 金融センターの中心である米国から始まったグローバルな金 融危機は、景気対策とともに、今後の世界的な金融規制の在 り方を国際会議での主要テーマに押し上げた。 1 ○金融危機の背景 世界的な経常収支不均衡が バブルの生成をサポート 中国や中東の大幅な経常収支黒字が住宅価格バブル をファイナンス。アイスランドや東欧の金融危機の火種 にもなった リスク管理に対する過信から リスクの過小評価が続いた 高い利回りを求める投資家の強欲やCDSなどの新し いリスク移転手段に対する過信から過剰なリスクテイク がなされた。 中国の経常収支推移 債務の蓄積により破綻、市場の混乱へ! CDS想定元本の推移 2 ◆原因 ①質の低い商品に対する不十分なモニタリング ②格付け機関の影響力の増加 ③SECの投資銀行に対するレバレッジ規制の緩和 ④CDS市場の急拡大と新たなカウンターパーティ・リスクの増加 ここにある問題は規制強化により対応可能かもしれない。 しかし、リスク管理や金融技術への過信、 投資評価における甘い見通しなどの問題は規制での対応は難しい 3 ○金融危機への対応 ・金融機関による資本不足への対応 →積極的な資本増強、資産の圧縮と デレバレッジ ・中央銀行、政府による対応 →①流動性供給、②公的部門から の資本増強、③不良資産の買い取り、 ④資金調達の際の保証付与 実例 ①・・・FRBによる資金供給、政策金利引き下げ ②・・・GSEやAIGなどへの公的資金注入 ③・・・TARPなどの不良債権買い取りプログラム ④・・・欧州インターバンク市場での政府保証 金融市場に対する公的部門の関与の規模や対象範囲は、 従来にない大掛かりなものとなった 4 ○金融監督と規制、金融システム監視 ▽ 銀行監督の課題 自己資本比率のプロシクリカリティ →自己資本比率は景気拡大期には 積極的な信用供与を促し、景気後退 期には逆の効果をもたらす 内部管理と市場からの規律付けの 有効性 →当局の直接的な規制は金融機関 の自立的な判断と市場からの監視 によって補完されることが望ましい。 内部によるリスク管理はLTCM危機時のメリルリンチの例を見ても難しい。 当局による監視とのバランスが重要 ○論点 今後のIMFの役割について
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