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小学校英語教育の長期的効果について
The Long-term Effectiveness of English
Instruction at Elementary Schools
植松茂男
(京都産業大学)
E-mail: [email protected]
2010年JACET全国大会
Backgrounds(研究の内容)
• 特区の小学校英語活動の影響について、スキ
ル、情意両面から検証するため、卒業生が進学
する公立A中学校 で4年間継続観察。今回は
2007年度、2008年度分、2009年度分(いずれも
学年末3月に調査)の中間報告。
• A中学校があるN市は英語教育特区として2005
年から小学校5,6年で週1回英語活動を開始し
た。2006年からは開始学年を小1まで早めた。
特区英語活動時間と形態
(1) 各学年の英語活動時間
小5、小6は週1回、年間35時間
小3、小4は年間20時間
小1、小2は年間10時間
(2) 指導形態
ALT、英担、英語支援者、担任の4者の中
から組み合わせる。
N市の特区小英活動体制
• 各中学校区に2校の小学校があり、授業計画
は市の「統一シラバス」に沿って作成。
• 各小学校で英語担当教員・日本人英語支援
(14名)教員中心でレッスンプランを作成。
• 特区発表会(公開)を校区ブロックで開催。
• ALTは各中学校区に1名づつ計12名配置。
• 校区内小中担当者連絡会議で打ち合わせ、
行事の策定。
Instrumentation: JACE test
学年末(2月末~3月)に、N中学校1年生か
ら3年生の計約700名を対象に、
リスニング(100点)、
リーディング(100点)、
語彙・文法(100点)、
に関する英語力指標テスト、「JACEテスト」
(ELPA) (Level 1-3)を学年別に実施。実施時
間は約50分間。
Instrumentation: Interview test
スピーキングに関しては、各年度第2学年の
1クラスの生徒を個々に面接し、英語で挨拶
のやりとりをする conversation test とともに、
絵を提示して英語で説明をさせる storytelling test(評価を含めて一人10分程度)を実
施した。面接官は3名の教員。あとで3人の
raterがビデオを見て評価し、scoreは必要が
あればRasch(Facet)化して比較分析する。
Instrumentation: Questionnaire
情意面を調べるアンケート(23項目:約15分
程度) も実施した。質問項目は全ての学年で
同じものを利用した。データは必要があれば
Rasch統計手法で数値化して比較分析する。
本年度の研究課題
(1) 小学校英語活動の開始学年が下がると、中学校
での英語運用スキル、情意面でどのような影響があ
るかを 検証する。
(2)小学校英語教育活動の長期的効果を検証する。
A中学校入学者の小学校英語教育活動
既習時間と増減
Year ・ Grade・
• 2007
• 2008
• 2009
中1
中1
中1
Total hours
70
70
90
中2 35
中2 70
中2 70
中3 (12)
中3 35
中3 70
JACE test (Level 1)
61
60
59
58
57
2007年度生
56
2008年度生
55
2009年度生
54
53
52
51
VG
Reading
Listening
JACE test (Level 2)
53
52
51
50
49
2007年度生
48
2008年度生
47
2009年度生
46
45
44
43
VG
Reading
Listening
Interview Scores (raw/Rasch)
Year
N
M
SD
Conv. 2007
2008
2009
31
35
34
11.54 (.29)
13.55 (.49)
14.03 (.55)
2.62 (3.07)
1.65 (1.98)
1.98 (1.91)
Story. 2007
2008
31
35
7.57 (-.13)
11.39 (.01)
3.10 (2.93)
3.03 (2.73)
2009
34
13.35 (.03)
2.98 (2.69)
Interview Scores (raw)
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Conv.
Storytell
2007年
2008年
2009年
JACE test (Level 3)
72
71
70
69
68
2007年度生
67
2008年度生
66
2009年度生
65
64
63
62
61
VG
Reading
Listening
2007-2009 中間報告まとめ
(1)中1では各スキルスコアが前年度までの結
果を上回った。学年全体のレベルが高い可能
性に加えて、4年生開始、中学に入って間もな
いという要因が理由として考えられる。
(2)中学校2年生のインタビュー結果は、年々
向上している。「話す」ちからが「聞く」ちからの
養成より小学校英語教育活動の成果として
残っていることを示している。
(3)中学2年生、3年生では、たとえ小学校英語
教育活動の時間が増えたとしても(中3)、それ
が直接にはスキルスコアのアップにはつながら
ない。同時間だと学年差が出る(中2)。
(4)情意スコアは統計的有意差が年次比較で1
項目だけ出ただけである。Rasch 統計法を使っ
て比較すると、素データ比較のように簡単には
有意差は生じない。さまざまな原因が考えら
れ、測定、数値化しにくい概念である。
(5)アンケートで「英語」と聞くことによって「小
学校英語活動」と別のconstructを聞く結果に
なっている可能性がある。この2つは生徒の
中で「別物」なのかもしれない。
今後の予定
• 「量的」な結果を正しく解釈できるように、現場
の先生方に「質的」観点から意見をもらう。
• 授業観察も小中双方で行いたい。小中の連
携を中心に質的に調べたい。
• 2010年度から小3開始学年が入ってくる。研
究最終年度のまとめとともに継続して適切な
観察をつづけたい。
• ご静聴ありがとうございます。
(本研究は科学研究費研究 基盤(c) 課題番号
19520530(2007年-2010年)の中間報告です)