No.11 ラッピング加工が浸炭歯車 の負荷能力に及ぼす影響 タ イ ト ル 研究者 指導教官 坂本海峰 松澤努 森川浩次 日高一憲 中江道彦 1.緒言 1 産業界の要求 歯車装置の 小型化 低騒音化 それを実現するためには 高精度化 歯面を滑らか 要 求 本研究 ラッピング加工 歯面粗さの低減 負荷能力に及ぼす影響 本研究 今年度 SCM435調質歯車の運転 試験 SCM415浸炭歯車の運転 試験 SCM415浸炭歯車にラッピ ング加工 今 年 度 ラ 面ッ疲 圧ピ労 強ン寿 さグ命 を加の 工 調に判 査よ定 を る 行 効 い 果 2.試験機および試験方法 2 高荷重用歯車運転性能試験機 運転試験 機 上面 荷重負荷継手 側面 動力循環側歯車箱 試験側歯車箱 歯車諸元 歯車諸元 駆動歯車 従動歯車 モジュール m 歯数 z 歯幅 b[mm] かみ合いピッチ円直径 db[mm] かみ合い圧力角 αb[deg.] 転位係数 x 4 22 23 13 10 89.173 93.533 21.978 0.158 0.151 調質歯車 荒歯切り後 調質処理 焼き入れ 850℃ 焼き戻し 520℃ 硬さ 37HRC 仕上げホブ切り (ホブ回転数 100 min-1) 浸炭歯車 荒歯切り後 浸炭処理 歯面研削加工 硬さ 750HV 運転条件 運転条件 SCM435 調質歯車 接触応力 σH[MPa] 負荷トルク T[N・m] 745 830 915 1000 SCM415 浸炭歯車 1800 53.3 66.1 80.3 96.0 310.9 モータ駆動軸回転数 潤滑油 油量 油温 (調質歯車) 油温 (浸炭歯車) [min-1] [m3/min] [℃] [℃] 1819 タービン油 32 mm2/s 2×10‐3 40±5 70±5 3.調質歯車における 3 試験結果および考察 歯面写真の比較 SCM435調質 σH=915MPa(Test No.02‐04) ND=0 ND=1×106 Tip Root ピッチングが多数発生 激しい摩耗 2mm 面 積 率 ピッチング面積率 調質歯車 23% ピッチング面積率 % 25 20 急激な増加 15% 15 判定が困難 10 7% 5 明らかに低い 0 0 6 5×10 繰返し数 ND 7 1×10 歯形誤差(歯幅中央) 歯形誤差 歯形誤差 μm 400 最大値 平均値 最小値 300 200 100 急激な増加 745MPa 0 0 6 5×10 繰返し数 ND 1×10 変化なし 7 歯面粗さの変化(歯形方向) 粗さ 8 歯形方向 μ mRa 7 最大値 平均値 最小値 歯面粗さ 9 5 6 急激な増加 915MPa 4 3 830MPa 2 ほとんど変化なし 1 0 745MPa 0 5×10 6 繰返し数 1×10 ND 7 調質歯車S-N曲線 S-N曲線 最大ヘルツ応力 σH MPa ・疲労寿命判定は妥当 ・耐久限はσH=745MPa 1000 ・試験機の有用性,再現性 900 800 700 600 SCM435 調質 仕上げ歯切り 1×106 5×1061×107 繰返し数 ND 4.浸炭歯車における 4 試験結果および考察 試験前後の歯面写真 歯面写真 SCM415浸炭 σH=1800MPa(Test No.02‐06) ND=0 ND=1×107 Tip Root 擦過痕 2mm 歯形方向 歯面粗さ 積算摩耗量 g μmRa 浸炭歯車における試験結果 0.2 0.1g以下 0.1 0 2 歯形方向 2μmRa以下 1 0 ピッチング 歯形誤差 面積率 % μm 浸 炭 試 験 結 果 100 約50μm 50 0 10 5 σH=1800MPa (Test No.02–06) 0 0 6 5×10 繰返し数 ND 7 1×10 約 6% これらの結果から 結果 σH=1800MPaでは ND=1×107で疲労寿命に達していない 面圧強さを得るために σH=1800MPa以上で運転試験を行う 必要がある 浸炭歯車の運転試験時に生じた問題 (1) 調質歯車 設定油温 40±5℃ 歯面面圧が高い 油温の激しい上昇 浸炭歯車 70±5℃ 油温 浸炭歯車の運転試験時に生じた問題 (2) σH=1800MPaでは 荷重継手部の固定ボルト 破損 試験機の破損,作業者の危険 固定ボルトの強度向上 ボルト 5.ラッピング加工による変化 5 加工 機 ラッピング加工機 駆動用モータ 被加工歯車 微小振動用モータ ラップ歯車 偏心カム 負荷部(ブレー キ) 送り用モータ 微小振動 加 工 条 件 ラッピング加工条件 回転数 1] 砥粒 振動周波数 [Hz] 振幅 [mm] 送り速度 [mm/min] ストローク [mm] [min- 2000 WA1000 88 0.7 300 10 ラッピング加工前後での歯面写真 歯面写真 研削加工後 ラッピング加工後 Tip Root すじ状の研削目 研削目消失 2mm ラッピング加工前後での歯形方向 断面曲線 ラッピング加工後 1μm 研削加工後 小さくなっている 100μm 断面曲 線 歯形・歯すじ方向歯面粗さ 歯面粗さ 研削加工後 ラッピング加工後 歯面粗さ μmRa 0.2 0.1 歯元 歯先 ピッチ点 0 歯形方向 歯 す じ 方 向 歯形・歯すじ誤差 μm 60 6 50 歯形誤差 40 4 30 20 2 10 0 歯幅中央 歯先 ピッチ点 歯元 0 μm 研削加工後 ラッピング加工後 8 歯すじ誤差 70 誤差 これらの結果から 結果 ラッピング加工 負荷能力向上の指針が得られた 6.結言 6 結言1 調質歯車 ピッチング面積率 + 歯面写真 寿命判定法 S-N曲線 試験機の有用性・再現性 結 言 ① 結言2 浸炭歯車 σH=1800MPa以上で運転試験を 行う必要がある 歯車諸元を改善する必要がある 結 言 ② 結言3 ラッピング加工 浸炭歯車 + ラッピング加工 歯形・歯すじ誤差,歯面粗さとも改善 結 言 ③ 試験機 名 試験機 高荷重用動力循環式歯車運転性能試験機 : FZG(Forschungsstelle fur Zahnrader und Getriebebau)方式 : ラッピング加工 ラッピン グ 砥粒とラップ(工具)の間にラップ剤を介在させ,相対 運動させることにより,微量の切りくずを除去し,平滑 な面を得る方法 湿式 砥粒が転がり,外周の切れ歯によって工 作物をえぐる 乾式 砥粒がラップに埋め込まれ,工作物を引っかく 歯形誤差 σH=745MPa (Test No.02-01 ) ND=0 歯すじ誤差 σH=745MPa (Test No.02-01) ND=0 誤差 歯形方向歯面粗さ σH=745MPa (Test No.02-01) ND=0 粗 さ 歯すじ方向歯面粗さ σH=745MPa (Test No.02-01) ND=0 Tip レプリカ写真 σH=915MPa (Test No.02-04 ) ND=1×106 レ プ リ カ 主要化学成分 成 分 SCM435鋼 C Si Mn P 0.33~ 0.15~ 0.60~ 0.030 0.38 0.35 0.85 以下 S Cr Mo 0.030 0.90~ 0.15~ 1.20 0.30 以下 SCM415鋼 C Si Mn P 0.13~ 0.15~ 0.60~ 0.030 0.18 0.35 0.85 以下 S Cr Mo 0.030 0.90~ 0.15~ 1.20 0.30 以下 ヘルツの式 H = 0.35 Fn (1 / 1. 1 / 2 ) b(1 / E1 1 / E 2 ) FN : 歯面垂直荷重 1 , :歯面の曲率半径 2 2 E 1 , E :縦弾性係数 b=歯幅 そ の 2 dw1 Z1 23 小歯車かみ合いピッチ円半径 2 = Z Z a= ×91.2=44.587mm 22 23 1 2 dw1 曲率半径ρ1= 2 ×sinαb=44.587×sin21.978°=16.687mm Z 22 大歯車かみ合いピッチ円半径dw2= Z 2Z a= ×91.2=46.613mm 22 23 1 2 dw2 曲率半径ρ2= ×sinαb=46.767×sin21.978°=17.445mm 2 H2 = 0.35Fn (1 /ρ1 1 /ρ2) b (1 / E1 1 / E2 ) H b2 / E 2 H b σ2 H b(1 / E1 1 / E 2 ) = 0.35(1 /ρ 1 /ρ ) = 0.35(1 / 1 / ) = 0.35E (1 / 1 / ) 1 2 1 2 1 2 2 Fn 2 E 21000kgf/mm2 b= 10mm 円周荷重 F=Fncosαb 式①を式②に代入して ・・・・② 2 (74 5 106 ) 2 10 10-3 cos21.978 2 H b cos b = = 0.35(1 / 1 1 / 2 ) 0.35 210000 106 (1 /(16.687 103 ) (1 /(17.445 103 )) 2 F その 3 =1194.4N トルク T=円周荷重×小歯車かみ合いピッチ円半径 =1194.4×44.587×10-3=53.255N・m 以上の計算結果より,負荷トルクT=53.3N・mとした. おもり 次におもり台に載せるおもりの計算法を示す. 負荷トルクT=TM+Tg より るトルク N・ m TM おもりとおもり台によ 126N・ m Tg =レバーの自重による トルク 17. TM=T-Tg=53.255-17.126=36.129N・m TM=(M+m)×g×L より TM 36 .129 M= -m= 9.8 0.55 gL -5.0=1.753 kg M : おもり㎏ m : おもり台= 5.0㎏ 2 g : 重力加速度= 9.8m/s L :レバーの長さ= 0.55m 上記の計算より,レバー先端から0.55mの位置におもり台をかけ,おもり台 に約2.0㎏のおもりをのせて54.6N・mのトルクを負荷した. また同様にして,他の接触応力における負荷トルクとおもりを計算した. 浸炭処理 浸炭 浸炭にはガス浸炭を用いた. 900℃で120分間浸炭後空冷. 850℃で15分間油焼入れ. 140℃で油冷してから170℃で90分 間焼き戻しを行った.
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