スライド 1 - 札幌医科大学

皮膚の薬物療法
3年次 薬理学講義
皮膚科 澄川靖之
皮膚科における薬物療法
・外用薬
・内服薬
・注射薬
外用薬を使用するところが皮膚科の特徴
外用薬の種類
剤型には軟膏、クリーム、ローションがある
・ステロイド外用薬
・・・・・・・・・・ ステロイド含有軟膏
・抗真菌薬
・・・・・・・・・・ブテナフィン、ケトコナゾール含有軟膏
・抗ウイルス薬
・・・・・・・・・・アシクロビル、ビダラビン、イミキモド
・抗生物質含有外用薬・・・・・・・・ゲンタマイシン、テラマイシン、フラジオマイシン
・ビタミン含有外用薬・・・・・・・・・・VitD含有軟膏
・保湿剤・角質溶解薬・・・・・・・・・ヘパリン類似物質含有軟膏、尿素軟膏
・免疫抑制剤含有軟膏・・・・・・・・・FK506含有軟膏
・潰瘍治療薬
・・・・・・・・・・プロスタグランジン含有軟膏、bFGFスプレー
・抗腫瘍剤
・・・・・・・・・・5FU、イミキモド
内服薬
・抗生剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ペニシリン系、セフェム系、ニューキノロン系
・抗真菌剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・テルビナフィン、イトラコナゾール
・抗ウイルス薬・・・・・・・・・・・・・・・アシクロビル、バラシクロビル
・駆虫薬
・・・・・・・・・・・・・・イベルメクチン
・抗ヒスタミン・抗アレルギー薬・・クロルフェニラミン、フェキソフェナジン
・免疫抑制剤・・・・・・・・・・・・・・・・シクロスポリン、ステロイド
・抗腫瘍薬
・・・・・・・・・・・・・・ボリノスタット
注射薬
・抗生剤・・・・・・・・・・・・・セフェム系、カルバペネム系、
グリコペプチド系(バンコマイシン)
オキサゾリジノン系(リネゾリド)
・抗ウイルス薬・・・・・・・アシクロビル、ビダラビン
・生物製剤・・・・・・・・・・・抗TNF-α抗体、抗IL-12/23p40抗体
・抗腫瘍剤・・・・・・・・・・ダカルバジン、フェロン、シスプラチン
外用薬
内服薬
注射薬
・抗生剤
・ステロイド外用薬
・抗生剤
・抗真菌薬
・抗ウイルス薬
・抗ウイルス薬
・駆虫薬
・生物製剤
・抗生物質含有外用薬
・抗ヒスタミン・抗アレルギー薬
・抗腫瘍剤
・ビタミン含有外用薬
・保湿剤・角質溶解薬
・免疫抑制剤含有軟膏
・潰瘍治療薬
・抗ウイルス薬
・免疫抑制剤
・抗腫瘍剤
アトピー性皮膚炎で使用
尋常性乾癬で使用
感染症で使用
腫瘍で使用
・抗腫瘍剤
潰瘍で使用
アトピー性皮膚炎の定義
もとはギリシャ語“atopos”由来。接触皮膚炎とは異なる“奇妙な”皮膚炎
しかし現代においては疾患概念として定着している。
・増悪・寛解を繰り返す
・瘙痒のある
・湿疹を主病変とする疾患
・患者の多くはアトピー素因を持つ.
アトピー素因
①患者本人あるいは家族に気管支喘息、
アレルギー性鼻炎、アレルギー性
結膜炎あるいはアトピー性皮膚炎の
いずれかあるいはその複数の疾患を
持っている
②IgE抗体を産生しやすい体質がある
しかしアトピー素因を持たないアトピーも多数存在する。
アトピー性皮膚炎の関連図
掻破行動
皮膚のバリア機能低下
・セラミド減少
・フィラグリン遺伝子異常
・抗菌ペプチド減少
・洗浄等物理的破壊
透過性亢進
そう痒の増加
・神経終末の表皮内侵入
・神経伝達物質
(サブスタンスP)の増加
・ヒスタミン遊離の増加
炎症細胞浸潤
による表皮破壊
NGFの放出
肥満細胞の活性化
IgEへのクラススイッチ
抗原暴露量の増加
・角層を透過する抗原量の増加
・ダニ抗原の増加(気密性増加)
炎症の誘発
・IgEの増加
・Th2へのシフト
・サイトカイン・ケモカイン産生
したがって
皮膚のバリア機能低下
抗原暴露量の増加
そう痒の増加
炎症の誘発
この4要素を取り除けばアトピーは治る!!
対策 その1
皮膚のバリア機能低下
・保湿剤の使用
・洗浄力の弱い石鹸を使用、
または石鹸類の使用を中止
・ナイロンタワシの禁止
とにかく洗わないようにして保湿剤を塗る!!
保湿剤の種類について
大きく分けて2系統ある。
・水分蒸散を防ぐもの・・・・・・・ワセリン、アズノールなどの油脂系保湿剤
油でカバーすることで水分蒸散を防ぐ
・蒸散水分を吸収するもの・・・ヘパリン類似物質、尿素軟膏等クリーム系保湿剤
親水基と蒸散水分が結合し軟膏内に水分を吸収する
対策 その3
そう痒の増加
・抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服
かゆみを軽減させて掻破を減少させる
・掻破を予防する
嗜癖的掻破行動の予防・・・蚊に刺されたところをかくと気持ちいい!!
・かゆみ日誌などで自覚を促す。
・精神安定剤・抗うつ剤やカウンセリングによる
心身医学的アプローチによる治療
掻破予防グッズの使用・・・乳児期のミトン手袋
主な抗アレルギー薬/抗ヒスタミン薬
世代
薬剤
眠気
第一世代
ポララミン
ホモクロミン
アタラックス
タベジール
第二世代
ザジテン
アゼプチン
セルテクト
ダレン・レミカット
第三世代
アレジオン
エバステル
ジルテック
アレグラ
アレロック
タリオン
クラリチン
併用禁忌(慎重)
++
+
三環系抗うつ薬
抗コリン薬
MAO阻害薬
カテコールアミン
てんかん
肝腎障害
肝腎障害
±
対策 その4
炎症の誘発
抗炎症薬の使用!!
・ステロイド外用薬外用
・タクロリムス(FK506)軟膏外用
・シクロスポリン内服
(・ステロイド内服)
ステロイド外用薬
クラス
主な製品
Ⅰ
Ⅱ
ストロンゲスト
ベリーストロング
デルモベート,ダイアコート
フルメタ,アンテベート
マイザー,トプシム
Ⅲ
ストロング
Ⅳ
マイルド
Ⅴ
ウイーク
リンデロン,プロパデルム
メサデルム,エクラー
ロコイド,アルメタ
リドメックス,キンダベート
コルテス
脱ステロイド療法
ステロイドの使用によりアトピー性皮膚炎が悪くなっているという考え方
・ステロイドは悪の薬でやめれば治る!?
・ステロイド依存症になってやめられなくなっている
→麻薬と同じだ!!
背景:ステロイドの不適切使用(多量に使用、感染症等)により
悪化した患者も少なからずいる現実がある。
近年アトピー性皮膚炎のガイドラインが出されることでステロイド外用薬使用の
適正化が図られ、免疫抑制剤が使用できるようになることで下火に
副作用がでれば中止・減量は当たり前!!治療法ではない!!
ステロイド外用薬は劇薬である。
使用に対しては、患者に
どこに、どれだけ、いつまで
外用するかはっきり指導する必要がある
どこに
どれだけ
いつまで
炎症のある部位=かゆみのある部位
外用量の目安:1 finger tip unit(1FTU)で手のひら2枚分
炎症がなくなるまで=かゆみがなくなるまで
ステロイド外用薬を保湿剤代わりに使用するのはやめるべきである。
ステロイド外用剤の全身的副作用
ストロンゲスト
10g/日
ベタメタゾン (0.5mg) 1~2錠
健常人の副腎が1日に分泌
するグルココルチコイド
適切に使用すれば問題を生じない!!
1か月で50g程度のステロイド外用でも
全身に影響をおよぼすことはほぼない。
ステロイド外用剤の局所的副作用
 皮膚萎縮
 多毛
 毛細血管拡張
 痤瘡
 ステロイド紫斑
 酒さ様皮膚炎
 ステロイド潮紅
 口囲皮膚炎
 皮膚萎縮線条
 乾皮症
 感染症
タクロリムス軟膏
 免疫抑制剤の外用薬
 strongクラスのステロイドと同等の
抗炎症作用
副作用:皮膚刺激感・皮膚感染症
ステロイド外用薬の副作用である
皮膚萎縮、毛細血管拡張がない!!
この薬の出現によりいわゆる“赤ら顔”が大幅に減少した
シクロスポリン内服薬
 免疫抑制剤の内服薬
 外用では効きにくい痒疹結節やそう痒
に著明な効果
副作用:皮膚感染症、腎障害、血圧上昇
最大の欠点は費用が高いこと!!(月1万数千円の自己負担)
この薬の出現により重症アトピーが大幅に減少した
尋常性乾癬
疫学:白人に多い(2-3%)
登録患者 約2万人
国内推定患者 数万人(0.05~0.1%)
男女比 2:1
家系内発症 5〜10%
(9つの乾癬関連遺伝子領域同定)
頭部,四肢伸側に好発
症状:鱗屑性紅斑局面(境界明瞭)
Köbner現象
Auspitz現象
爪の変形 点状陥凹
乾癬の病態シェーマ2
つまり
TIP-DCからIL-23
↓
Th17を誘導
↓
IL-22を産生
↓
IL-22Rを介して
転写因子である
STAT3を活性化
↓
表皮細胞の増殖
と考えられている
乾癬の治療
○外用療法 活性型ビタミンD3,副腎皮質ステロイド
コールタール(ゲッケルマン療法)
○内服療法
ビタミンA誘導体(レチノイド)
免疫抑制剤(シクロスポリン,
メトトレキサート)
○光線療法 PUVA:Psoralen-UVA
Narrow-band UVB
○抗体療法 抗TNFα抗体、抗IL-12/23p40抗体
外用療法
長所:副作用が少ない、使いやすい、安い
短所:(範囲が広いと)塗るのが面倒、
重症には効果が弱い
シーケンシャルテラピー
平日はVitD3、週末は最強のステロイド外用剤を外用する方法
ゲッケルマン療法
タールを外用。においが強い、服が汚れる、発がん性があるなどで廃れる
乾癬の治療
幻のゲッケルマン療法
抗体療法
長所:簡便(2週間毎の自己注射又は2か月毎の点滴)
効果が強力→これまで難治なケースでも効果あり
短所:費用が高い!!(高額療養でも月4~8万)
感染症(特に結核)罹患リスクが高い
抗TNFα抗体:炎症性サイトカインであるTNFαやそのレセプターをブロック。
関節リウマチで画期的な治療効果をもたらしている。
抗IL-12/23p40抗体:TNF-αの下流分子を抑えるため副作用が少ないと考えられている。
表皮の増殖抑制には効くが、関節症状には効果乏しい。
乾癬の治療計画
生物学
的製剤
シクロスポリン (MTX)
レチノイド(エトレチナート)
光線療法
Narrow-band UVB, PUVA (bath-PUVA)
(Sequential therapy)
活性型ビタミンD3外用薬,副腎皮質ステロイド外用薬
ピラミッド計画 2006年 飯塚一教授
皮膚感染症
1細菌性皮膚疾患
2ウイルス性皮膚疾患
3皮膚真菌症
4抗酸菌症
1細菌性皮膚疾患
水疱(やぶれやすい)のできる細菌性皮膚疾患
1)伝染性膿痂疹(とびひ)
表皮が病変,水疱が”飛び火”する。夏に多い。
黄色ブドウ球菌,exfoliative toxin(表皮剥脱性毒素),
ファージⅡ群71型,膿半月,治療:抗生物質
水疱に菌(+)
連鎖球菌の場合水疱が小さく,痂皮化しやすい(痂皮性膿痂疹)
2)ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
staphylococcal scaled skin syndrome (SSSS)
exfoliative toxinが血液中に入る
高熱 ニコルスキー現象陽性
水疱に菌(-),重症,治療:強力な抗生物質
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3)丹毒
真皮が病変,浮腫性紅斑
St.pypgenisが多い。習慣性丹毒,
顔面に多い。境界明瞭
4)蜂窩織炎
真皮深層〜皮下脂肪織,
境界不明瞭,ブドウ球菌が多い
四肢に多い。
丹毒
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正常皮膚の構造
皮膚付属器
伝染性膿痂疹
表皮
真皮
丹毒
皮下組織
蜂窩織炎
せつ
細菌感染症に対する薬物療法
・抗生剤外用・・・・・膿痂疹、毛のう炎など
ゲンタマイシン、ニューキノロン、クリンダマイシンの外用薬
膿痂疹の場合はステロイドを併用することも
・抗生剤内服・・・・膿痂疹、毛のう炎(重度)、丹毒・蜂窩織炎(軽度)
セフェム系、ニューキノロン系、マクロライド系、テトラサイクリン系
・抗生剤点滴・・・丹毒・蜂窩織炎(重度)
まずはセフェム系。丹毒であればペニシリン系。効きが悪い、
耐性菌である可能性があればカルバペネム系、抗MRSA薬に
変更していく。
PK/PD理論
薬物動態学と薬力学を合わせた理論
最高血中濃度が高いほうが効果のある薬・・・・1日1回投与
アミノグリコシド系、ニューキノロン系
最小発育阻止濃度を超える時間が長いほうが効果のある薬
・・・・・1日3-4回投与
ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、グリコペプチド系
セフェム系を1日2回、1回1バイアルからの倍量投与は?
ニューキノロン系1日1回1バイアルからの倍量投与は?
2ウイルス性皮膚疾患
1)単純ヘルペス
ヘルペスとは?
Tzanck試験ーウイルス性巨細胞
口唇ヘルペスーⅠ型,陰部ヘルペスーⅡ型,
ピリピリ感を伴う。知覚神経末端から神経節に
運ばれ潜伏する
初感染は悪化しやすい。
ヘルペス歯肉口内炎,
カポジ水痘様発疹症ーアトピー性皮膚炎に合併しやすい
単純疱疹・カポジ水痘様発疹症の薬物療法
抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑えるだけなので、増殖期に
投与しないと意味がない!!
軽症
重症
アシクロビル、ビダラビン外用
アシクロビル内服または点滴(低用量)
特にカポジ水痘様発疹症では二次感染を併発するため、
抗生剤の投与も必須
再発を繰り返す(月1回くらい)単純疱疹(特に陰部ヘルペス)の場合、
低用量を持続的に内服することで予防できる。
2)水痘
VZVウイルスの初感染
全身に水疱を生じる。感染性強い。
3)帯状疱疹
神経分布領域に片側発症,疼痛
VZVウイルス,水痘ウイルスの復活(脊髄神経節後根に潜伏)
ウイルス性巨細胞,風邪やストレスがきっかけ
治療:アシクロビル(多め),ビダラビン,バラシクロビル
再発無し,悪性腫瘍に注意
帯状疱疹後神経痛,汎発性,
Hunt症候群(顔面神経麻痺,内耳障害,味覚障害)
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水痘・帯状疱疹の薬物療法
・抗ウイルス薬の内服・・・・・アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル
・抗ウイルス薬の点滴・・・・・アシクロビル(高用量)
○単純ヘルペス時の投与量の3倍になるため、
・腎不全
・アシクロビル脳症
に注意する。
○通常1週間の投与だが、担癌状態、血液腫瘍がある場合は延長投与を
要することがある。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって生じる。
陰部から肛囲にかけて花キャベツ様の皮疹を呈する。
STDの一つである。
尖圭コンジローマの治療
・液体窒素療法
・イミキモド
Toll-Like Receptor 7のリガンドで、TLR7を介して細胞性免疫を
賦活化する。近年は腫瘍免疫賦活化目的で日光角化症にも
用いられる。
3皮膚真菌症
1)白癬
表在性-頭部白癬,体部白癬,手白癬
股部白癬,足白癬,爪白癬
深在性-ケルスス禿瘡
2)カンジダ症
乳児寄生菌性紅斑,指趾間びらん症,爪囲炎
3)癜風
Malassezia furfur,青壮年の胸,背中,
黒色,白色,マラセッチア毛包炎
真菌症の治療
・抗真菌剤外用・・・足白癬、癜風など
菌種によって得意・不得意がある。
白癬菌・・・・・・テルビナフィン>ケトコナゾール
カンジダ菌・・・テルビナフィン<ケトコナゾール
・抗真菌剤内服・・・爪白癬、ケルズス禿瘡など
テルビナフィン、イトラコナゾール
肝障害が多いので特に高齢者は定期的に検査を
4抗酸菌症
5寄生虫
・皮膚結核
尋常性狼瘡
皮膚疣状結核
皮膚腺病
・非結核性抗酸菌症
・寄生虫
疥癬
ヒゼンダニ,家族感染
安息香酸ベンジル
オイラックス
(ステロイド禁)
毛ジラミ症
フェノトリンパウダー
抗酸菌症における治療薬
・リファンピシン
・イソニアジド
・ピラジナミド
・エタンブトール
・ストレプトマイシン
このうちから3剤以上選択
上記で薬疹等で使用できない場合
・ニューキノロン系
・マクロライド系
を選択する。
疥癬の治療
外用薬
・クロタミトン(オイラックス)
・安息香酸ベンジルローション
・γBHC軟膏
クロタミトン以外は院内調剤
(もちろん保険適応なし)
全身くまなく外用しなければならないため
非常に手間がかかる
内服薬
・イベルメクチン
無脊椎動物の筋細胞・神経細胞に
存在するグルタミン酸作動性クロライド
チャンネルをブロックする。肝機能障害
をきたすことがある。
皮膚リンパ腫
1.皮膚原発リンパ腫は非ホジキンリンパ腫のひとつで,消化管や鼻咽頭で
原発する悪性リンパ腫の次に頻度の高い節外性リンパ腫.
2.日本では皮膚リンパ腫の90%以上がT細胞由来である.
3.皮膚リンパ腫は,皮膚原発で診断時から6ヶ月間に皮膚以外の臓器で腫
瘍細胞を認めないものと定義されている.
4.臨床像,病理組織像,治療に対する反応で分類したうえに悪性度に基づ
いてindolent, intermediate, aggressiveに分類される.
5.モノクローナル抗体による表面マーカーやT細胞受容体(TCR),免疫グロブ
リン(Ig)の検出,TCRおよびIg遺伝子再構成を検索することで腫瘍細胞の
起源や単クローン性を調べる.
皮膚悪性リンパ腫のEORTC分類
菌状息肉症 mycosis fungoides;MF
症状
①紅班期:初期には皮膚炎や乾癬に類似し
た皮疹が出現し,これが数年~10年以上続く
②扁平浸潤期:扁平に隆起し,浸潤を触知.数
年かけて腫瘍期に移行する.
③腫瘍期:暗赤色のドーム状に隆起した腫
瘤が出現.リンパ節転移や内臓臓器浸潤を
みる
病理所見
①紅班期:真皮浅層にリンパ球浸潤
②扁平浸潤期:Mycosis cellと呼ばれる核の
形状が深くくびれた大型の異型細胞が出現.
表皮内浸潤が著明となり,ポートリエ微小膿
瘍と呼ばれる.
③腫瘍期:皮下組織までmycosis cellが浸潤
鑑別疾患
皮膚炎群,ジベルばら色粃糖疹,乾癬,類乾癬
治療
①扁平浸潤期まで:PUVA,ステロイド外用
②腫瘍期:電子線照射,CHOP
皮膚リンパ腫の薬物療法
・外用ステロイド薬・・・・・・リンパ球のアポトーシスを誘導。副作用が
少ないため最初から最後まで使用される。
・ボリノスタット・・・・・・・・・・HDAC阻害剤。ヒストン脱アセチル化酵素
を阻害することで腫瘍細胞の分裂を抑制
する。
悪性黒色腫の病因・疫学
病因:正常皮膚部のメラノサイトが悪性化して発症する以外に巨大母斑細胞母 斑,
青色母斑,色素性乾皮症などから生じる.
誘因:日光,紫外線,外傷,切除,靴擦れ,鶏眼切除,瘙破,熱傷瘢痕
発生頻度
①紫外線防御能の低い(メラニン色素が少ない)白人に高頻度に発症
②白人では露光部に生じやすい
③居住地によって発症頻度が異なる
④紫外線防御能の高い黒人では発症はまれで,生じたとしても四肢末端部
⑤日本人では両者の中間で,末端黒子型が多い
⑥近年,人口の高齢化,衣服に変化,オゾン層破壊などにより,悪性黒色腫が世界的に
増加している
悪性黒色腫の診断・治療
診断
1.ダーモスコピー:parallel ridge pattern, atypical pigment network, etc.
2.生検:生検は腫瘍の播種を招くおそれがあるため禁忌という意見があるが,2週間以内
に拡大切除するならば問題ないという意見が最近有力
3.免疫組織学的検査:抗s-100抗体,抗HMB-45抗体
治療
1.腫瘍進達度が1mm未満であれば,1cm程度離して切除
2.1mm以上であれば2~5cm離して全摘し,植皮術などで再建
3.臨床的所属リンパ節転移を認めない時はSentinel node biopsy
a. sentinel node 転移陰性→経過観察→所属リンパ節再発時に郭清,拡大郭清
b. sentinel node 転移陽性→所属リンパ節郭清
4.臨床的所属リンパ節転移陽性であれば郭清,拡大郭清
5.進行癌・遠隔移転陽性:化学療法(DAV-feron, DAC-tam)→奏効率30%
予後
厚さ4mmを超えると5年生存率は50%以下
悪性黒色腫における化学療法
DAV-feron
抗腫瘍剤である
・ダカルバジン
・ニムスチン
・ビンクリスチン
に加え、
腫瘍免疫を賦活化する
・インターフェロンβ
を組み合わせた標準レジメン
DACTam
抗腫瘍剤である
・ダカルバジン
・ニムスチン
・シスプラチン
・タモキシフェン
を組み合わせた強力レジメン
遠隔転移がある場合に使用。
潰瘍治療薬
ステージにあった治療薬を選択
黄色期・・・・・ゲーベンクリーム、ブロメライン軟膏
赤色期・・・・・プロスタンディン軟膏、フィブラストスプレー
褥創のステージ分類
色による一般的分類
黒色期
黄色期
赤色期
これまで大きさ、深さでステージングを行っていたが、
治療にはあまり反映されない。色による分類の方が、
褥創の状態をよく反映し治療法と結びつけやすい。
白色期
ブロメライン軟膏
パイナップル由来の蛋白分解酵素製剤で壊死組織を
化学的に分解する。
利点
欠点
使用時期
壊死組織を溶かし除去できる
イソジンと併用不可
組織障害性が非常に強い
黄色期
2,3日で使用・中止を行うため運用が難しい。
ゲーベンクリーム
スルファジアジン銀含有製剤。サルファ剤と銀イオンの効果で
殺菌作用がある。
利点
抗菌作用と組織融解作用があるため感染創や
壊死組織の多い創に使用する
欠点
正常の肉芽を傷つけ上皮化を阻害する。
使用時期
黒色期~黄色期
プロスタンディン軟膏
血管拡張作用のあるプロスタグランディン製剤。血流を
増やすことにより肉芽形成、増殖を促進させる。
利点
欠点
使用時期
肉芽形成・上皮化を促進させる。
血流改善作用がある。
イソジンと併用できる。
特になし。
紅斑期、赤色期~白色期
褥創のごく初期と、赤色期以降で非常に有用である。
フィブラストスプレー
bFGF(Fibroblast Growth Factor)製剤。線維芽細胞に
直接働き、増殖を促進させる。
利点
肉芽形成能は現在最強である。
欠点
感染創では効果なく、イソジンの併用も不可である。
肉芽が過形成になりやすい。
悪性腫瘍患者には禁忌である。
非常に高価である
使用時期
赤色期のみ
陥凹のある褥創に対して非常に威力を発揮する。