寿命の問題を考える 寿命はなぜ決まっているのか 老化、加齢の問題とは何か 細胞分裂の問題を考える その2。 分裂の限界はどのようにきまっているのか 細胞の分裂寿命と個体の寿命 加齢による機能の衰え=老化 老化:多細胞生物に固有の現象 単細胞生物 細胞分裂をしながら現在まで何億年も 生存してきた. 種に固有の平均寿命を持っている. 多細胞生物 40 30 老化の現象40㎠の傷の治癒日数 20才 20 30才 40才 10 0 0 14 この遅延化は, 28 42 56 70 ①細胞自身の持つ増殖能力にあるのか 細胞自身に原因を求める ②細胞が増殖するために必要な細胞外環境にあるのか コラーゲンの劣化,ホルモンや免疫系の衰え 血管系の障害の進行 細胞の分裂寿命 (Proliferative lifespan) 組織 トリプシンでほぐ す シャーレにまく 1 PDL 2代培養細胞 集団倍加レベル (Population doubling level=PDL) 仮に,継代のたびに4倍希釈でまき直 せば1継代毎に2PDLずつ増加 8倍希釈してまき直せば3PDLずつ増加 *初代培養でシャーレ一杯になるま での分裂回数がわからないのでこれ は無視する ヒト胎児器官から分離した細胞の分裂寿命 起源組織 平均PDL 心臓 9.85 肝臓 19.75 肺臓 46.24 いくらでも増殖を続ける細胞はない.100回を越える 分裂寿命を持つものはない 50回の分裂の最期に近づくと増殖が次第に遅くなって 細胞はG0期にはいって戻らなくなる 分裂寿命は,由来臓器によって異なる 分裂寿命は細胞固有の性質である 繊維芽細胞供与者の年齢と分裂寿命の関係 PD L Mart inら 1970 75 50 25 0 0- 10- 20- 30- 40- 50- 60- 70- 80- 10 20 30 40 50 60 70 80 90 (才) 老化を支配する遺伝子? 早く老化してしまう病気(遺伝病) 遺伝的早老症(Progeria) ワーナー症候群(Warner Syndrome) PD L 75 繊維芽細胞分裂寿命と早老症 (Goldstein,19 78) 対照群平均 50 25 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 細胞の分裂寿命は遺伝子に 支配されて いる 1.ヒト遺伝子の構造 ヒト染色体 細胞分裂中期の様相 テロメア (telom ere) セントロメア 細胞分裂に先立って複製された染 色体がセントロメア(動原体)に よって束ねられて いる 原核生物(細菌)の遺伝子構造 真核生物(菌類・高等植物・動物) の遺伝子構造 直鎖の2本鎖構造・端がある テロメア領域 テロメア領域 5'- TTAGGG TTAGGG TTAGGG -----3' 6塩基を単位とする反復配列(repeated sequence)(TTAGGG)n. ヒトでは2,000以上反復(12Kb) 染色体のDNA分子 遺伝子 5’ テロメア サブテロメア 遺伝子 遺伝子 3’ テロメア サブテロメア 9 DNA複製のたびにテロメアは短くなる 線状2本鎖DNAの複製問題 11 3' 5' 5' 3' 5' 複製のラギング鎖 複製のリーディング鎖 3' 5' 5' 5' 5' 5' 複製のリーディング鎖 3' 複製のラギング鎖 5' DNAポリメラーゼは5' 3'方向に複製していく. 複製のとっかかり ( プライ マー )が必要=RN A リーディング鎖のコピーは一気に.ラギング鎖のコ ピーは小さい 岡崎フラグ メント をつなぎ合わせるや りかたで.このRNAプライ マーは消失後すぐにDN Aリガーゼで修復される 3' 5' 5' 3' 末端RNAは分解され消失する 5' 3' 3' 5' 1930年代 B. McClintock H.J. M uller 末端を欠いた染色体が融合しやすいことを発見 Muller : テロメア(telomere)という用語の提唱 1972年 E.H. Blackburn ゾウリムシ( Tetrahymena)でテロメアDNAの 繰り返し配列を発見 1972年 J.D. Wat son 5’末端の末端複製問題の提起 1973年 A.M. Olovnikov 5’末端の末端複製問題と分裂時計、細胞老化機構の関連 について提案 1984年 C.W. Greider テトラヒメナにおいてテロメラーゼ活性の検出 早老症患者の細胞のテロメアも短い kbp 10 5 0 早老症患者 対照群 (Allsoppら1992) 種々の年齢のヒトから採取された繊維芽細胞の分裂可能 回数とテロ メアサイズの相関 PDL 60 26-51歳 0-25歳 40 20 51-76歳 5 7 9 平均テロメアサイズ(kb) 11 1988 年 C.W . Greider ヒト細胞の継代培養に伴うテロメア長の短縮の発見 1990年 N.D. Hastie ヒト組織で年齢とともにテロメア長が短縮 癌組織でテロメアが短い 1992年 C.M . C ounter テロメア短縮によって細胞の寿命がつきる こと を証明 短縮したテ ロメアの修復酵素=テロメラーゼ (telomerase) (Blackburn 1991) TAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGG-3' ATCC -5' 不完全な新生鎖 テロメラーゼによる伸長 TAGGGTTAGGGTTAGGGTTA AATCC CAAT ATCC -5' TAGGGTTAGGGTTAGGGTTA ATCC -5' TAGGGTTAGGGTTAGGGTTA ATCC GGGTTA AATCC CAAT GGGTTAGGGTTAGGGTT CC CAATCCC AATCC CAATCCC AAT-5' DNAポリメラーゼによる伸長 多細胞生物におけるテロメラーゼの発見 テロメラーゼ触媒ユニット遺伝子のクローニング Nakamuraら(1997) Meyersonら(1997) Kilianら(1997) 触媒サブユニットの遺伝子導入と発現 Weinrichら(1997) 中山ら(1998) Bordnarら(1998)の実験 テロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子を ヒト網膜上皮細胞および線維芽細胞に導入し発現させた 培養細胞のテロメア長が長くなった 培養細胞の分裂回数が20回以上増加した 網膜上皮細胞 54回から74回へ 線維芽細胞 64回から100回 テロメアとテロメラーゼの機能についての最終証明 、 クローン羊ドリーのテロメア長は? 大人の羊の体細胞からクローニングしたので 普通の子羊よりテロメアが短いはず? Shielsら(1999) Nature May 27日号399巻:(316-317) Analysis of telomere lengths in cloned sheep ドリーのテロメア長が短いことを報告 有限寿命細胞: テ ロ メ ラ ーゼの発現がな い 細胞の不死化: テ ロ メ ラ ーゼの発現が必申_ 発生初期の細胞や生殖細胞: テ ロ メ ラ ーゼ の発現の可能ォあり 生殖細胞のテ ロ メ ア は体細胞に比べ非常に 長い 体細胞へ分化: テ ロ メ ラ ーゼ発現予制 ガン 細胞と テ ロ メ ア ・ テ ロ メ ラ ーゼ
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