第13週 第4章残り 前回の講義内容§2-§3(p.72~80) ◆ 直接金融と間接金融の違い ◆ 間接金融の存在理由 ◆ 情報の非対称性 ・ 逆選択の発生 ・ モラル・ハザードの発生 ◆ 社債発行の条件 1 (確認) 逆選択はなぜ起きるか ◆ 貸し手が、優良な借り手と劣悪な借り手を識別できない ◆ 貸し手がいずれの借り手にも平均的な条件(利子)で貸すこ とにより、優良な借り手が融資を申請しなくなり、劣悪な借り 手だけが残る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 金融仲介機関が借り手を審査し、優良な借り手を識別する ことで問題を克服できる ◆ また、優良な借り手が自ら進んで財務情報などを公開する ことも有効である 2 (確認) モラル・ハザードはなぜ起きるか ◆ 金融取引の契約を結んだのち、貸し手が借り手の事業態度 を観察できない場合、借り手の事業態度が悪化し、債務不履 行の可能性が高まるかもしれない ◆ 株主の有限責任制の下では、ハイリスクでもハイリターンな 事業を実施させる株主のインセンティブが高まる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆ 金融仲介機関が融資契約後も借手企業の事業態度を監視 することでモラル・ハザードを防止できる ◆ ただし、金融仲介機関自身にもモラル・ハザードの危険性が あるので、それを防止する工夫が必要 3 §3①② 債券市場についての確認 ◆ 社債発行の条件 ▶ 発行額が一定規模を超えている必要 ▶ 十分な情報開示 ◆ 1970年代まで ・ 国債の発行が制限され、債券市場は未発達 ・ 大蔵省が社債の発行基準を厳格に規制 ・ メインバンク制 → デフォルトのリスクを低減 ◆ 1990年代以降 ・ 起債規制が緩和 → 情報開示・リスク管理の必要性 4 §3③ 株式の発行(店頭公開・株式の上場)(p.81~83) ◆ 発行の条件 ▶ 直近2~3年程度の実績と発行株式数に制限が設けられて おり、条件をクリアしないと公開できない ※ ただしマザーズ,ヘラクレス(現JASDAQ)など新興企業向け市場も存在 ▶ 財務諸表による情報公開(ディスクロージャー) ・ 損益計算書(当該期間の事業成績を開示) ・ 貸借対照表(期末の負債・資本の構成を開示) ▶ 会計監査制度 5 補足:証券取引所 ■ 現在、東京証券取引所に上場している企業数は ・ 第一部 1681社(外国企業9社) ・ 第二部 428社(外国企業ゼロ) ・ マザーズ 178社(外国企業2社) ■ 現在、大阪証券取引所に上場している企業数は ・ 第一部 511社 ・ 第二部 207社 ・ JASDAQ(スタンダード)912社 (← ヘラクレスは2010年10月から統合されジャスダックへ) 6 §3④ 証券会社の業務 ■ キーワードの確認:流通市場/発行市場 ■ 発行市場における業務(「発行業務」) ・ 発行体への助言、発行価格や発行額の設定 ・ 売り捌き(セリング)、引受(アンダーライティング) ■ 流通市場における業務 ・ 売買の対象やその時期について投資家に助言 ・ 委託売買(ブローキング)、自己売買(ディーリング) → 流通の円滑化、価格形成の公正化 7 補足:証券会社の業務 ■ 顧客の証券取引を円滑化することが目的であり、自らに対 する請求権を発行する訳ではない ■ 自己売買(ディーリング)を除けば、証券のリスクを自らが 負うことはなく、委託売買手数料が主な収入 ■ 1999年10月に委託手数料が完全自由化 → 自己売買や投資信託の販売、資産管理業務など、証券会 社は収入の多様化を迫られている 8 §3⑤ 債券の格付けと格付け機関の役割 ◆ 社債取引において、一般の投資家が、複雑な財務諸表や 目論見書をもとに企業の債務不履行リスクを正しく評価する ことは容易でない ◆ 格付け機関は、企業からの依頼等にもとづき、企業の発行 する社債の格付けを行い、シンプルな表現形式(AAA,AA など) ・ ムーディーズ,S&P ・ 格付投資情報センター(R&I) ・ 日本格付研究所(JCR) 9 補足:主な日本企業の格付け R&I 会社名 ムーディーズ S&P 2004年7月 2007年5月 2004年7月 2007年5月 2004年7月 2007年5月 新日本製鐵 A+ AA- B aa2 A a2 BB+ BBB 日立製作所 AA- AA- A2 A1 A- A- 東芝 A A B aa1 A3 BBB- BBB 三菱電機 A A+ B aa1 A2 BBB A- 松下電器産業 AA+ AA+ A a3 A a2 A + AA- シャープ AA AA A1 A2 A+ A- ソニー AA AA- A1 A2 A+ A- 日産自動車 A- A Baa1 Baa1 BBB BBB+ トヨタ自動車 AAA AAA Aaa Aaa AAA AAA 本田技研工業 AA AAA A1 ・ ・ ・ A+ A+ 出所:家森信善『はじめて学ぶ金融のしくみ』第2版、第12章からの引用 10 投資適格 投資不適格 (ジャンク債) 出所:毎日新聞 2012年1月15日 東京朝刊 11 練習問題 §1 正解なし §2 (エ) §3 (1) 大蔵省が社債発行の基準を厳しく規制していたから。また大企業には メイン・バンクが存在し、企業が倒産しても元本の償還をメイン・バンクが 保証していたから。 (2) 利益が低い、また小規模の株式しか発行できない企業の株式はリス クが大きく、流動性が小さいため。しかし、公開や上場基準が厳しすぎる と、将来性のある若い企業の資金調達が困難になるという問題がある。 (3) 省略 12
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