レプリカ法における解析接続と 誤り指数評価 東京工業大学大学院 知能システム科学専攻 樺島祥介 (共同研究者:中村一尊,J. van Mourik) 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 1 背景と目的 背景 統計力学の計算技法を情報科学に応用した 研究が一定の成果を挙げている ただし,「厳密でない」ために信用されないこと も多い 目的 怪しそうな問題点を整理する 情報科学と関係付ける→誤り指数評価 4/12/2002 @ SMAPIP2002 #伊庭(1989) Tokyo Institute of Technology 2 概要 低密度パリティ検査符号 典型集合復号の誤り指数 レプリカ法による評価と解析接続 まとめと展望 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 3 誤り訂正符号 ノイズによる送信誤り 1 p 0 p p 1 誤り訂正符号 1 p 0 1 情報表現を冗長にすることで誤りを訂正でき る仕組みを与える 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 4 低密度パリティ検査符号(I) Gallager (1962) ランダムな疎パリティ行列に基づく符号 k N K 0 1 0 0 1 0 1 0 0 1 0 0 H 0 0 1 0 1 0 j N 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 5 低密度パリティ検査符号(II) 生成行列GT :K N N K H ビット→N ビット K G T K 0 符号化率 K R N N K N 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 6 低密度パリティ検査符号(III) 符号化 x G m (mod2) 送受信 T y x n G m n (mod2) T 復号(I):誤りの推定 z Hy HG m Hn Hn (mod2) T 復号(II):メッセージの復元 G m y n (mod2) T 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 7 復号問題 復号の本質はパリティ検査方程式 Hn z (mod2) 目的に応じて様々な解法がある 最良性:最尤復号,周辺尤度最大化 実用性:信念伝播法,RandomSearch 解析の容易さ:典型集合復号 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 8 典型集合 大数の法則:符号長が長いときほとんど全 てのノイズベクトル n に対して 1 N nl p O N , 0 1/2 N l 1 この式を満たすノイズベクトルを典型(的) 系列,その集合を典型(的)集合という 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 9 典型集合復号 典型集合からパリティ検査方程式を満 たすベクトルをランダムに1つ選ぶ 2つの誤りの可能性 I. 真のノイズが典型系列でない II. 真のノイズが典型系列であり,かつ複数の 典型系列がパリティ検査方程式を満たす 大数の法則から,タイプI.の誤り確率は 符号長とともにゼロに漸近 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 10 符号のアンサンブル ランダムに構成した低密度パリティ検査符 号には極端に性能の悪い符号が符号長の 負冪程度含まれている 以下では,典型的な符号性能を評価する ためにそれらを除いたアンサンブル (expurgated ensemble)を考察する 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 11 インジケータと誤り確率 タイプII.の誤りに関するインジケータ 1, タイプ II.の誤りが生じた場合 II n , H 0, そうでない場合 0 タイプII.の誤り確率 N 0 0 PII H II n , H nl Np l 1 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 12 インジケータのレプリカ表現 パリティ検査を満たす典型系列の数 N 0 0 n , H Hn Hn nl Np l 1 n n 0 レプリカ表現 II n 0 , H lim n 0 , H 4/12/2002 @ SMAPIP2002 0 1 0 1 0 1 Tokyo Institute of Technology 2 13 平均誤り確率の誤り指数 誤り確率のアンサンブル平均 0 N 0 PII lim n , H nl Np 0 l 1 lim exp N ; R, p exp NE R, p 0 誤り指数 E R, p lim ; R, p 0 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 14 レプリカ法による評価と 解析接続 誤り指数の評価は難しい 0 n , H Hn Hn nl Np l 1 n n 0 0 N ただし,が自然数の時だけは N a a 0 Hn Hn nl Np n ,H l 1 n1 ,n 2 ,,n n 0 a 1 0 #和の展開可能 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 15 レプリカ法(予稿を修正) 熱力学的極限:N →∞のとき自然数に対し, 平均評価 鞍点法,大偏差理論,組み合わせ論,etc #実際的にはほぼ鞍点法 解析接続:レプリカ添え字に関し対称性の制約 を課した評価結果は実数に対しても定義可能 #自然数に対しては複数の対称性が同一結 果を導く 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 16 あり得る問題(1):極限の取替え 評価したいのは 0 N 0 PII lim n , H nl Np 0 l 1 lim lim N 0 評価できるのは lim lim 0 N 多くの場合OK でも,今の場合は証明できていない(とりあえず前へ) 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 17 鞍点法 exp[Nf(x)] の複素積分を f’(x)=0 となる 点(鞍点)の値で近似 利点: 簡単 鞍点が単一ならN→∞で厳密 注意すべき点: 場合によっては「極小値」を与える 鞍点が複数ある場合は最大値を選ぶ必要 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 18 鞍点法関連で生じ得ること 負のエントロピー(SK,REM) ヘシアンの反転(SKモデル) 0 鞍点値の逆転(誤り指数評価) 0 A 4/12/2002 @ SMAPIP2002 B A B Tokyo Institute of Technology 19 あり得る問題(2):対称性の不定性 複数の対称性が自然数に対し同一結果 #ヘシアンの反転,負のエントロピーを解決する シナリオ 0 4/12/2002 @ SMAPIP2002 1 2 3 Tokyo Institute of Technology 20 あり得る問題(3):解析接続 未解決の問題 # の低い方が鞍点は優位 1 (a)自然数で優位 4/12/2002 @ SMAPIP2002 どっち? 1 (b)極限を取ったあと優位 Tokyo Institute of Technology 21 誤り指数評価と解析接続 低密度パリティ検査符号の誤り指数評価 は解析接続の問題が露になる しかも,情報理論ではk,j→∞での正解が 知られている 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 22 結果(k,j→∞のとき) 2つの鞍点系列 情報理論の正解に合わせるためには 自然数で優位な系列を選択すべき 0 1 0 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 1 23 結果(k,j→∞のとき) 誤り指数 for R 1 H 2 ( p) 0, E ( R, p) ln 2(1 H 2 ( p)), for R 1 H 2 ( p) E ( R, p) 1 Rc 0 0 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology R 24 結果(有限のk,j ) 2つの鞍点系列(数値的評価) 自然数で優位性が変化する可能性 1付近で優位な系列を選ぶ以外方法はない 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 25 結果(有限のk,j ) 誤り指数 情報理論の下限と赤い部分で一致 E ( R, p) 1 0 1 0 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Rb 0 Rc Tokyo Institute of Technology R 26 まとめと今後の展望 誤り指数の問題ではレプリカ法の問題点(特に 解析接続)があらわになる 一部厳密解が知られているのでSKモデルより検 討しやすい(と思う) 有限のk,j で情報理論の枠組みから詰める シミュレーションとの比較 極限取替えの証明(鞍点法を使わない) 4/12/2002 @ SMAPIP2002 Tokyo Institute of Technology 27
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