災害対策本部における 組織間連携に関する考察 ―連携のモジュール化の可能性― 加藤 健 災害情報 NO.9 2011 紹介者 総合科学専攻 4年 3081-6024 前田江里 1.はじめに 災害対策本部 =意思決定機関 意思決定機関として十分に機能していないと指摘 (人と防災未来センター研究部 2008) 機能するための要因 ①物理的要因 ・・・ 設備、非常用電源など ②人的要因 ・・・ 参集する人員 ③組織的要因 ・・・ 複数の機関による協力体制 被災自治体、警察、消防、自衛隊など 異なる組織間で情報共有を行い、速や かに連携した救助活動を行なわなけれ ば十分な機能を果たせない 製品開発の分野で使用 機能毎に整理・分割 具体性の無い連携ではより非効率 本稿では 「モジュール化」の概念を手掛かりに効率的な連携のあり方について模索 具体的には:いかにして各機関の相互依存性を低減させるか 相互依存の「頻度」と「経路数」に着目 2.災害対処機関の活動ドメインと情報共有の必要性 ドメイン・・・組織体の活動範囲ないしは領域のことであり、組織の存在領域 (榊原 1992:6) ⇒特定の方向に向けて行為を秩序付けるための指針 警察庁や消防庁の防災業務計画 ・警察庁・・・各関係機関との「緊密な連絡」や「相互協力」 警察、消防、自衛隊の の重要性を謳っている(警察庁2007:13-14) 3機関のドメインは、 ・消防庁・・・関係機関との緊密な連携を図ることを明記 部分的に重複 (消防庁2009:11) しかし 具体的なあり方については 災害時 「国民の生命・身体・財産の保 一切触れられていない 護」という中核理念が ⇒やみくもに連絡を取り合うことが効果的な 第一義的重要性を持つ 連携と言えるのか? ⇒互いに情報共有を行い、協 力体制の構築が求められる 3.連携の神話 (1)連携による非効率 「災害によって、たとえどんな困難が立ちはだかっても人々が連携をすればきっと克服できる」 と考える連携万能主義は神話に過ぎない。 逆に状況を一層困難にする場合も 部品a,b,cを会社X,Y,Zが担当 通常は各社とも100個製造 部品 消防に比べ、震源地付近の X Y Z 自治体職員は参集率が低い aこの水準に合わせた連携 b c 個数 80 会社 60 30 震災の影響で製造能力低下 分業という携帯で連携→全体の成果は一番低い会社の 水準にまで低下 災害時の複数の組織の連携でも同じ ネットワークが増加した場合の合意形成に (2)連携によるコスト増 至るプロセスにおいて 3.連携の神話 ・コミュニケーションの経路は増加 ネットワークの構築・・・連携の一形態 ・合意する確率は低下 他の機関などと結びつくと―――経路は加算的に増加 ・大幅なコスト増 全体の経路数は幾何級数的に増加 自分が結ぶ相手は1人増加 ネットワークの経路は倍増 N人の輪に増加した場合 経路数は N(N-1)/2 で増加 具体性の無い「緊密な連携」や「相互協力」を 強調することは誤った信念 3.連携の神話 (3)流動性という二側面 災害時には流動性が大きな要因となる ①災害対策本部を構成する構成メンバーの流動性 24時間体制→人員交替がある 前任者から後任者への情報の引き継ぎ 確実か?コストも増 ②構成機関の流動性 必要に応じて応援部隊も参集 ↓ 事前に組織を固定することが出来ない ⇒相互作用が複雑化 調整コストの 増加 相互依存性を低減しなければならない ・メンバー交代による他機関への影響を抑える仕組み作り ・コミュニケーションの経路数を抑える ⇒モジュール化 4.連携のモジュール化 災害対策本部に参集する各機関を一定のルールに基づいて連結させる連携作り ①準拠枠のルール化 判断の拠り所となる枠組みを各人員に任せず、予め災害対策本部で設定 自衛隊の群 避難所の増加 ⇒集団での意思決定の時間を短縮 避難所の増加 ②協力体制の群化 ⇒経路も幾何 役割が似ている組織を群化 級数的に増加 ⇒コミュニケーションの経路数を抑制 (図5) 連携のモジュール化による経験的妥 当性は未だ仮説的提言の段階 ただし 経路数の低減によって、新潟県中越 地震(平成19年7月16日)における柏 崎市役所で情報収集に効果があった。 各避難所との連絡を、市役所を Hubにしたことで情報経路を低減 ⇒群化と効果は同じ ⇒経路も加算 警察の群 的に増加 5.災害情報の粘着性 ―共通土台の構築に向けて― 連携のモジュール化である「準拠枠のルール化」と「群化」が機能する為には、 災害対策本部において情報の共有が前提。 災害情報の 粘着性 情報が被災地や各機関に留まってしまうこと 指揮系統や組織文化の異なる組織間での情報移転は 特に粘着性が高い 災害情報のドーナツ化現象 被害が甚大な中心地域からの情報は入りにくい コミットメント・フロー 日常的に関与のある組織に接触を求める傾向 ⇒正規の窓口ではなく警察・消防へ連絡 コミュニケーションで齟齬が発生 専門用語や地名など スムーズな情報共有のために、共通の基盤作り 自治体と災害対処機関が普段から「顔の見える関係」を作る 6.おわりに 災害時の協力体制の構築・・・相互依存性の性質を理解した 上での組織デザインが不可欠 準拠枠のルール化:人員の流動性による意見の 擦り合わせの機会の抑制 相互依存性の 低減 群化:参集機関同士での調整経路の膨張を抑制 災害対策本部が意思決定機関として機能する為に 各機関が災害対策本部を「意思決定機関」として 認識する必要 本部への情報提供 意思決定のための「手段」 or 提供そのものが「目的」→情報収集センター
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