メコンデルタ国際研修を通じて開発された 参加型安全衛生プログラムの特徴 ○仲尾豊樹(1) 小木和孝(2)、 吉川徹(2)、川上剛(3)、辻裏佳子(4)、 吉川悦子(5) (1)(特活)東京労働安全衛生センター、(2)(財)労働科学研究所、 (3)ILOアジア太平洋総局、(4)福井県立大学、(5)東京有明医療大学 【背景】 我々はベトナムメコンデルタ地域で、2000年か ら10年間にわたり毎年、参加型改善活動を学ぶ 国際研修(Mekong Delta Program=MDP)を開 催した。同地域では1990年代半ばから中小企業 参加型安全衛生活動=WISE(Work Improvement in Small Enterprises)による改善活動が進み、農業 分野の参加型安全衛生活動=WIND(Work Improvement in Neighbourhood Development)が当地 で開発され成果が蓄積されており、参加型安全 衛生活動を体系的に学ぶ条件が整っていたため である。 この参加型対策志向研修(Participatory Action Oriented Training=PAOT)研修に参加した4ヵ 国の研究者・実践者(PAOT-Practitioner= PAOT-P)によって、10のPAOTが開発・実践され たので、その特徴を分析した。 【概要】 PAOTはベトナム、韓国、バングラデシュ、 日本で開発され、運営母体は政府・自治体、 公益団体・労働組合、個別事業所、大学・ 研究機関で、すべての国が3回以上MDPに参 加していた。 対象は中小企業労使、農民、医療・福祉 従事者、自営業・家内労働者であった。内 容は安全衛生全般、上肢障害・腰痛対策、 環境保護、石綿対策、感染症及び医療事故 対策であった。 実施方法は、アクションチェックリスト (ACL)とGPSフォトブック、グループ討議 がすべてのプログラムで用いられた。期間 は2日間以下であった。結果を表1に示した。 【効果】 1)ベトナムWIPEでは53名の労働者トレー ナーが育ち408の改善が収集され、APPLEで はスレート工場で30の改善が行われた。 2)韓国PAOT-GOHSでは、3年間で88企業に PAOTが行われ、302の改善が収集された。 3)バングラデシュGRAINでは約2000名が研 修を受け、80名のトレーナーが育った。 4)日本WINCでは2007年の2ヶ月間で140の 改善が行われ、現場改善活動は2002年から 低層住宅建設現場で40回以上行われている。 【着眼点】 MDPでは、PAOT-Pがグループ活動を通じ、1) 現地の良好事例(Good Practice Samples= GPS)に学び、2)トレーニングキットを開発し、3) 現地の人々に低コスト改善を強調する研修を行 い、4)その結果を相互評価した。 2010年8月、現地でシンポジウムを開催し、各国 で開発したPAOTの経験交流を行った。 メコンデルタ国際研修の流れ 現地のGPSに学ぶ 【考察】 10のPAOTの特徴は、 ①GPSに基づくACLやフォトブック・マニュ アル等を用いた多種の研修キットを現地語 で作成した点、 ②地方自治体・公益団体・大学研究機関の 連携が見られた点、 ③グループ討議、低コスト改善、フォロー アップを行うことで、参加型改善活動の経 験が蓄積され、アジアのPAOTネットワーク 拡大に寄与した点である。 トレーニングキットを作る 改善結果を収集し、 相互評価する 現地で研修を行い、改 善計画を作る 表1: メコンデルタ研修後4ヶ国で開発されたPAOTの概要 運営母体 PAOTの名称 開発国 対象 期間 ・ 自 治 別 事 業 大 学 ・ 研 究 機 関 所 自 営 全 綿 業 ・ 一 般衛 人 生 対 親 方 全 策 WIPE ベトナム 農民・中小企業 2005~2006 ○ ○ APPLE ベトナム 中小企業 2007~2008 ○ ○ ○ ○ 4 ○ ○ GREEN ベトナム 農民 2008~ ○ ○ 4 PAOAP- MSD 韓国 医療・福祉従事者 2003~2006 PAOT-GOHS 韓国 中小企業 2005~2009 ○ WIND-KOREA 韓国 農業 2009~ ○ GRAIN バングラデシュ 精米労働・建設 2006~ ○ 3 ○ WINC 日本 障害者介護 2007~ ○ ○ 10 ○ ○ WIDEN 日本 医療・福祉従事者 2004~ ○ ○ 5 ○ ○ 現場改善活動 日本 建設 2002~ ○ 10 合計 5 10 ○ ○ 安 石 ○ 9 ○ ○ ○ 9 ○ ○ 9 8 2 6 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 環 上 医 肢 障 療境 害 策事 ・ 腰 痛 故保 対 策 対 護 ○ ○ 4 3 症 対 策 ア ォ ク ト ル シ ブ ョ ッ ー ン チ ルク ェ ッ ・ プ ク マ 討 リ ニ ス ュ ト ア 議 環 境 ア セ ス メ ン ト 修 研 期 修 間 参 加 日 間 者 ボ ラ ン テ ィ ア ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ 1> ○ ○ ○ ○ ○ 5 染 研 フ グ ○ ○ ○ ○ 2 ○ ○ ○ 感 改善収集 ) 体 個 研修方法 PAOT 府 公 益 団 体 ・ 労 働 組 合 研修内容 ( 政 対象者 メ コ ン 中 デ 医 ル 療 小 タ ・ 福 研 企 使 民 農 祉 修 従 参 業 事 加 者 回 労 数 1 10 1 2 1 2 ○ ○ ○ ○ 1> ○ ○ ○ ○ ○ 1> ○ 1 10 9 10 2 10 4
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