労働者福祉運動の 理念と歴史、そして課題 連帯・協同でつくる安心・共生の福祉社会へ 労働 者福祉中央 協議会 (中央労福協) アドバイザー 高橋 均 1 1.中央労福協の歴史と理念~忘れつつある歴史~ 敗戦から復興へ~ 占領統治下の日本 窮乏生活にあえぐ国民…深刻な食糧危機 占領軍の民主化政策…民主化5大政策 1945年10月 ①女性の権利拡大…婦人参政権付与 ②社会の民主化…労働法制定(労働組合結成の奨励) ③教育の民主化…教育基本法制定(義務教育9年) ④政治の民主化…治安維持法廃止(思想・言論統制の廃止) ⑤経済の民主化…財閥解体、独禁法、農地解放 労働組合法・1945年…新憲法制定(1946年)より早く制定 • 1945年 昭和20年12月 労働組合法 • 1946年 昭和21年 9月 労働関係調整法 • 1947年 昭和22年 4月 労働基準法 2 ~労福協の誕生;忘れつつある歴史~ 労働組合が社会の一大勢力に 相次ぐ労働組合の結成 飢餓とインフレを背景に、「食料よこせ」「仕事よこせ」の 騒然とした情勢から労働運動は尖鋭化。労働組合は社会の一 大勢力に! 労働争議の頻発 ・1947年(昭和22年) ・1949年(昭和24年) ・1952年(昭和27年) ・1952年(昭和27年) ・1954年(昭和29年) ・1960年(昭和35年) 2.1ゼネスト「明日働けるだけの食い物よこせ」 東芝争議 血のメーデー 電産・炭労スト⇒スト規制法 近江絹糸争議 「人権闘争」 三井・三池闘争「総資本と総労働の戦い」 戦前組織人員40万人〈7%〉⇒戦後660万人〈50%〉 ・総同盟の再建 1946年 ・産別会議の結成 1946年 ・総評結成と分裂 1950年~1953年 *1964年 日本の労働界のナショナルセンター 総評、同盟、中立労連、新産別 3 ~労福協の誕生;忘れつつある歴史~ 労働組合と生活協同組合の連携 生活物資の共同調達がはじまり 労務用物資対策中央協議会の結成 〈中央物対協〉 1949年 労働組合と生活協同組合が連携…労働団体(総同盟、産別会議、全労連)、各産別組織、生協(のちの日本生協連) など36団体がスクラム 「この協議会を産業別単産および単産の上部組織(中央労働団体)の枠を超えたものとし…労働者の生活福祉問題解 決の組織として…」 ⇒生活必需品、労務者用物資の確保を目指す整合性ある運動を 労働組合福祉対策中央協議会へ 〈中央福対協〉 1950年 労働組合活動での「生活・福祉活動」の比重を集中的に高めるために 「われわれはこの際、全国的労働団体の福利厚生部門の力を統一結集し、強力な連絡調整、指導のための機関として、 ここに労働者福祉対策中央協議会を設け…」 ⇒物価の安定、社会保障の確立、住宅政策の推進、労働者の生活改善、レク活動の普及に向けて ⇒生協活動の拡大、働くものの銀行、共済制度の設立を運動課題に 労働者福祉中央協議会へ改変 〈中央労福協〉 1964年 中央福対協活動の広がりを受けて、更に福祉に対する労働者の主体性を明確にする ⇒労働組合と協同事業団体が共同し、統一した組織体として運動の(事業)展開へ ⇒生協、労働金庫、労働者共済など、協同事業団体が次々に誕生。そして全国的な広がりと発展へ 4 ~労福協の誕生;忘れつつある歴史~ 中央物対協の画期的な合意 歴史に残る日本の労働者福祉運動の原点 ☞この合意こそ、その後の労働者福祉運動の基本的な道筋を示す! この協議会を産業別単産及び単産の上部組織(中央労働団体)の枠を超えたもの とし、各単産の福祉対策諸活動を連絡調整しあって、意思統一をはかると共に、互 助共済機能の活発化による福祉の増進、社会保障制度の確立、労働者の生活福 祉問題解決のための政治的結集をはかる組織とする。 労働運動 労働組合間に、組織的競合の発生の危惧 労働者福祉運動 組織の枠を超え、全労働者的視点に立って、 福祉の充実を生活向上を目指すという一点 で統一し結集する。 “福祉はひとつ” 中央労福協創業の精神 5 ~労福協の誕生;忘れつつある歴史~ 労働者福祉運動の基本理念確立 1974年…労働者福祉要求の実現をつうじて、労働者・家族の生活向上と安 定を図り、真に平和で豊かなくらしを保障する社会をつくる (第26回総会・基本理念) ☞運動の原則 ①労働者福祉運動は、“労働運動”の一環 ②労働者の自発的・自主的な要求・活動 ③社会保障拡充、企業内福祉、自主福祉活動の総合的な展開 ④地域を活動の拠点にとし、組織・未組織を問わず結集 ⑤協同組合の理念・原則に基づく協同事業活動 ☞その任務 ①すべての労働者が共同して闘う政策の立案と実践活動の組織化 ②労働組合団体の意思統一のための連絡、調整 ③協同事業団体への運動指導と協同事業団体相互の協同の促進 ④労働組合団体、協同事業団体相互の連携と協力関係の強化 ⑤地域への普及、家族の運動への結集を日常化 6 ~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~ 労働金庫 労働者を質屋と高利貸しから解放を 労働者のお金は労働者の手で管理・運営!労働銀行の設立を 1949年11 総同盟第4回大会で自主的な共済事業と労働銀行創設を決議…相互扶助 の精神で労働者のお金は労働者の手で管理・運営する。 1950年 9 岡山県勤労者信用組合(現中国労金岡山県本部)、生協主導型で誕生 12 兵庫県勤労者信用組合(現近畿労金兵庫県本部)、労組主導型で誕生 1951年 2 総評第2回大会、労働銀行設立決議 「豊富な闘争資金を持ちながら金融機能を持たない…いわんや 労働者個人の生活資金に至っては銀行に預金を持ちながら…高 利の質屋・やみ金にたより益々生活の困窮に拍車をかけている」 労金法制定の 1953年 原動力に! 労働金庫法制定…全国的な誕生へ 労福協を中心に、労働者協同組合運動(ろうきん運動)が「労働運動の 一環」として取り組まれてきたのが大きな流れ!! 7 ~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~ 全労済 労働者の手で共済を! 支え合い・助け合い(連帯・協同)の実現を! 戦後の日本協同組合同盟(会長賀川豊彦)結成を機に、保険事業参入を強く主張す るが保険会社等の反対から実現に至らず。その結果、農協法や生協法で「共済事 業」とされる。1950年前後から労働組合と生協関係者から共済事業への関心が強ま り、中央福対協は「共済専門委員会」を設置。これを機に本格的な運動へと進む。 1947年 1948年 農協法 生協法 1951年 1954年 1955年 1958年 中央福対協第3回総会「共済事業活動の具体化」を決議 大阪(大阪労働者生協)で火災共済事業はじまる 新潟(新潟共済生協)、翌年には富山・長野・道・群馬・福島に広がる 前年に結成された「全国労働者共済生活協同組合連合会」(労済連)が 消費生活協同組合法に基づく法人として認可される いずれも保険事業ではなく「共済事業」とされる 1955年に発足した新潟では、その5カ月後に大火災に遭遇。「共済は信用が第一」の信念の もと、全国の労働組合の協力で掛金収入を上回る給付の支払いを実現。連帯と協同の力が、 事業の危機を乗り越え、労働者共済事業の社会的評価をかち取る歴史に残る一歩を標した! 8 ~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~ 労働運動の争闘の産物 ふたつの労金、全労済と県民共済 1946年 8月 総同盟再建 産別会議結成 1950年 7月 総評結成 10月 総評全国金属結成(総同盟全金解散) 11月 総同盟分裂(第5回大会) 1951年 2月 総評大阪地評結成(総同盟、海員組合脱退) 3月 総同盟解散、総評合流 6月 全金同盟(総同盟刷新派が総同盟再建…大阪、神奈川、埼玉 ) 二つの労金誕生 県民共済誕生 1952年1月 1952年7月 1952年3月 1953年8月 1953年11月 総評加盟組合を中心に大阪労金(大阪勤労信用組合) 大阪総同盟を中心に関西労金(大阪労働信用組合) 神奈川労金(神奈川勤労信用組合) …労金法制定… 神奈川総同盟が友愛勤労信用組合 1952年12月 4単産声明=総評批判(全繊、海員、日放労、全映演) 1953年12月 全繊総評脱退1953年 全金同盟が総同盟金属共済(単産共済) 1972年 全金同盟埼玉金属が県民共済(地域共済) 1954年 4月 全労会議結成(総評批判グループ) 1964年11月 同盟結成(労働4団体時代へ) 9 銀行と金庫? なぜ労働銀行じゃなくて労働金庫? ■1951年(S26)市街地信用組合の銀行転換政策 ☛ 信用金庫に変更 信用銀行案を拒否された大蔵省は、政府機関しか使用していない“金庫”の呼称を提案 …当時の『金庫』は、国または地方公共団体の現金出納業務を取り扱う機関とされ、政府系金融機関の みが使用 ■1953年(S28)信用金庫法改正以降、「金庫」の名称使用を禁じる ↴ …1951年(S26)総評第2回大会で≪労働銀行設立に関する件≫を決議 …1951年(S26)労働省の肝いりで≪労働金庫設立促進連絡会議≫が発足 …1953年(S28)労働金庫法制定、信用金庫法改正直前のため「金庫」を使用 ■これ以降の政府金融機関は「金庫」ではなく「公庫」を名乗る 10 「保険」と「共済」 何が違うの? 1 協同組合保険実現に向けた戦前戦後の動き 明治33年「産業組合法」 ☞ 日本で最初に協同組合を規定した画期的な法律 「産業組合中央会」 ☞ 大正13年大会「生命保険開始の件」決議…保険業法第3条の壁 … 「保険事業は…株式会社または相互会社に非ざれば之を営むことを得ず」 ☞ 昭和17年「共栄火災保険会社設立(買収)」 昭和21年、第1次金融制度調査会・保険業法改正専門委員会 …「現行保険業法に規定する保険業の形態に株式会社・相互会社のほか協同組合組織のものも認める」 大蔵省も条件付きながら認めるも、翌年の最終答申には反映されず削除 協同組合保険が“共済”と呼ばれるいきさつとも関連 11 「保険」と「共済」 何が違うの? 2 保険から共済へ~ なぜ共済となったのか 農業協同組合法制定の過程と重なる 大蔵省とGHQ(経済科学局)が反対 当初、GHQ(天然資源局)が農水省へ示した案には協 mutual relief に変更、大蔵省はこれを、 同組合にも「組合員の損害を保険する事業(business 「共済」と訳す of insuring) を認めていた。農水省はこれを、 背景に、明治40年の鉄道庁現業員にはじま mutual insurance = 相互保険に修正して提案 る海軍・陸軍・印刷局、逓信など「共済組合」 と称する組織があった。 共済の語源はどこに! 福沢諭吉 economy の訳「経済」、経世在民 世=くにを経=おさめ、民=たみを済=すくう 安田善次郎 明治14年「共済五百名社」 共立と経済の組み合わせ 共=ともに、済=すくう 安田生命保険の前身で初めて用いられた用語? 明治12年「共立商社」「大阪共立商店」 12 ~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~ 労働金庫・全労済 生みの親は労働組合と労福協 歴史的に、労働組合との関係は単なる業者の関係ではないのです! 全労済…火災共済事業にはじまり、1962年労済連元 受制度の生命共済、総合共済(慶弔共済)を開発。 1964年発生の新潟地震では新潟福対協と労済連 は総額で火災共済金の額に相当する給付をおこ ない、保険と共済の違いを明確にしめし、今日の 礎を築いた。 労働金庫…小口の生活資金にはじまり、教 育ローンや自動車ローン、金融機関では じめて住宅ローンを発売するなど労働者 の生活に密着した金融を展開、近年は多 重債務問題に注力し、ニッキン賞を受賞。 労働組合との関係は ともに運動する主体 なのです! 13 ~労福協の役割・機能;忘れつつある歴史~ 運動スタイル“福祉はひとつ”社会運動のかすがい役に 画期的だった「貸金業法改正 2006年12月」 「割賦販売法改正 2008年6月」の取り組み 同質の協力は和にしかならないが、異質なものの協働は積になる 中央労福協創業の精神そのもの ⇒ 福祉はひとつ 労働運動・消費者運動・市民運動が融合~中央労福協はその「かすがい役」 「社会の不条理」に立ち向かう社会運動の積重ねが、共感の得られる「安心・ 共生の福祉社会」にむすびつく。 14 2.労働運動をめぐる時代認識 ~いま、どんな時代に生きているのか~ 世界史的な時代の転換点 2012年 国際「協同組合」年 ☞世界中に広がる貧困の克服にむけて、協同組合の枠組みは有 効…、各国政府に対して、協同組合への税制上の後押しなど法 律的な後押しを奨励。 2011年 国際「森林」年 2013年 国際「水」協力年 ☞ 環境・循環型の社会を重要視する世界的な趨勢 15 ~いま、どんな時代に生きているのか~ 新自由主義の横行と品格なき拝金主義 自己責任・成果主義を強調した新自由主義政策 ☞ 急速に広がった貧困・格差社会 社会保障制度が大きく揺らぎ、暮らしと労働の破壊が始まる。家族の絆 やコミュニティーが崩壊、職場の連帯・支え合いも劣化。 「貧乏物語」(1916年(大正5年);河上肇) 「食足らざるときは、土むさぼり民は盗す、争訟やまず、刑罰たえず、上(かみ)奢り下 (しも)へつらい風俗いやし…これ乱逆の端なり、戦陣をまたずして国やぶるべし」 「反貧困-すべり台社会からの脱出」(2008年;湯浅 誠) 働いても働いても貧困から這い出せないワーキングプア。一度転んだらどん底まですべり落ちていく。 日本社会は、誰でも、まちがえばこの斜面を転げ落ちる可能性を持ち合わせている。「すべり台社会」 からの脱出をめざすには、自己責任論の払拭が避けてはとおれない。 …100年近い時空を超えて、いまの日本は大正時代と同じ貧困・格差社会に! 16 ~いま、どんな時代に生きているのか~ 新自由主義の横行と拝金主義 給与水準、労働条件の大幅な低下 1年を通じて勤務した給与所得者の給与実態 国税庁「民間給与実態統計調査」より (単位:千人) *給与とは、1年間の支給総額(給与・手当及び賞与の合計額、給与所得控除前の収入金額で通勤手当等の非 課税分は含まない。 (単位:千人) 2011 年(平成 23 年) 比率 給与所得者数 100 万円以下 計 1994 年(平成 6 年) 3,931 8,6% 比率 給与所得者数 0~200 万円 23.4% 7.9% 4,277 9.8% 7,045 16.1% 7,770 17.8% 6,340 14.5% 4,722 10.8% 3,129 7.2% 2,195 5.0% 1,436 3.3% 947 2.2% 1,863 4.3% 382 0.9% 100 万円超 200 〃 6,762 14.8% 200 万円超 300 〃 7,965 17.5% 300 万円超 400 〃 8,377 18.3% 400 万円超 500 〃 6,408 14,0% 500 万円超 600 〃 4,210 9.3% 600 万円超 700 〃 2,578 5.6% 700 万円超 800 〃 1,761 3.9% 800 万円超 900 〃 1,153 2.5% 900 万円超 1,000 〃 729 1.6% 1,000 万円超 1,500 〃 1,338 2.9% 1,500 万円超 2,000 〃 274 0.6% 2,000 万円超 170 0.4% 148 0.3% 45,657 100.0% 43,726 100.0% 計 10,693 3,472 200~400 万 16,343 35.8% 400~600 万 10,618 23.3% 600~800 万 4,339 9.5% 800~1000 万 1,882 4.1% 1000 万超 1,782 3.9% 0~200 万円 7,749 17.7% 14,815 33.9% 200~400 万 400~600 万 11,062 25.3% 600~800 万 5,324 12.2% 800~1000 万 2,383 5.4% 2,393 5.5% 1000 万超 ※1 年間の支給総額(給料・手当及び賞与の合計額、 給与所得控除前の収入金額) 、 通勤手当等の非課税分は含まない。 ※給与所得者の平均年収 450 万円(1994)→409 万円(2011)▲9.1% 17 ~いま、どんな時代に生きているのか~ 新自由主義の横行と拝金主義 権利意識の低下と労働条件低下は比例する NHK放送文化研究所「日本人の意識調査」より 労働条件について強い不満が起き 労働組合を作る(団結権)ことが、 た場合どうしますか? 労働組合 憲法で国民の権利として保障され を作ると答えた比率。他に、しば ているのを知っている らく事態を見守る、上司に頼むの 選択肢あり。 組織率 1973年 39.3% 31.5% 33.1% 1978年 36.0% 30.7% 32.6% 1983年 28.9% 25.1% 29.7% 1988年 27.1% 22.0% 26.8% 1993年 25.5% 21.9% 24.2% 1998年 23.0% 20.5% 22.4% 2003年 20.4% 18.2% 19.6% 2008年 21.8% 17.8% 18.1% 18 ~新しい時代の扉の前 30年ぶりの時代の転換点 「あたらしい時代の扉の前」~30年ぶりの時代の転換点 30年 1945年(昭和20年) 福祉国家 ~ゆりかごから墓場まで~ ①セーフティネット ②政・労・使合意 1975年-1980年 新自由主義~市場経済至上主義 福祉国家はスタグ フレーションを克 服できない 2005年-2010年 労働を中心とした福祉型社会 働くことを軸とする安心社会 資本主義の原則(経済自由)の徹底 規制緩和 ①経済的規制緩和 ②社会的規制緩和 サッチャー レーガン 中曽根 オイルショック 英ポンド下落 伊リラ暴落 イギルス病 イタリア病 30年 2005年衆議院選挙 2007年参議院選挙 小泉構造改革 第二臨調行革(増税なき財務再建) 金融資本主義の始まり 新時代の日本的経営 ~非正規雇用の増大 暴走する新自由 主義、品格なき拝 金主義の破綻 2009年衆議院選挙 (政権交代) 「連帯・協同でつくる安心・共生 の福祉社会」 与党時代の労福協運動 協同組合(連帯) 経済の領域拡大 市場経済の相対比 19 ~新しい時代の扉の前 市場万能主義からの時代の転換 三つのエピソード ☞ ①1994年2月 舞浜会議(雇用か株主か) ⇒「新時代の日本的経営」 ☞ ②2005年9月 小泉郵政選挙 ☞ ③2007年5月 ホワイトカラーエグゼブションと解雇の金銭解決 “新しい時代の扉の前”で必要な時代認識 ★他力本願では「すべり台社会」になってしまう! ★お任せ“民主主義”ではだめ! 労働組合・協同組合=自分たちがその主体にならなければならない 20 ~市場経済の暴走と崩壊 暴走をとどめる装置とその劣化 市場経済万能社会からの転換を~連帯経済が重視される時代へ [経済社会の枠組み] 市場経済の暴走をとどめる 装置とその劣化 市場経済の領域 ① 仕事・熟練を通した人間の信用⇒軽視 (市場におけるモノ、サービスの売り買い) ⑤自給経済の領域 ⑥連帯経済の領域 ⑦中央政府・自治体 =公共経済の領域 (自分で生産、修理する) GDPにカウントされない (生協、労金、全労済など の協同組合やNPO、社会的 企業) (医療や介護・子育てなど 社会保障や いわゆる公共事業) ② 経営者の倫理観 ⇒喪失 ③ 法的規制(労働者保護規制) ⇒緩和 ④ 労働組合の抵抗力(組織率) ⇒低下 ⑤ 自給経済 ⇒縮小 (自分で物を作り、修理する) ⑥ 連帯経済(温かいお金) ⇒劣勢 ⑦ 中央政府・自治体=公共経済 ⇒市場に丸投げ ⑧ストック経済(地域社会や家庭) ⇒崩壊 ⑧ストック経済の領域 長い時間かけて蓄積された、人間関係や 地域社会における信用などGDPにあらわ すことが出来ないが、しかし人間社会に 欠くことのできない部分=ソーシャルキャピタル 資本の資本による資本のための経済社会から 人間の人間による人間のための経済社会へ *GDPにカウントされるのは太線囲み 21 ~市場経済の暴走と崩壊 暴走をとどめる装置とその劣化 暮らしと労働、家族、コミュニティの崩壊 市場経済の領域が膨張し、連帯経済の領域や自給経済の領域が削られ、 公共経済の領域も縮小してきた。 市場経済のなかに存在する暴走を抑止する“装置”が劣化した。 ①職場の変化 ▼仕事を通した人間関係、信頼関係の崩壊=「仕事」の軽視 ▼成果主義と能力主義、経営者の倫理観の喪失 ▼組織率の低下、労働組合の対抗力、労働法制の規制緩和 ②地域社会の変化 ▽自給経済や協同組合経済、公共経済=市場経済がおしつぶす ▽お互いさまのおつきあい=煩わしさの敬遠 ③絆の崩壊 ▼「拠り所」の欠如、貧困(貧乏+孤立)社会の現出 22 ~市場経済の暴走と崩壊 暴走をとどめる装置とその劣化 マネーゲーム化した資本主義への飽き 日本社会の底流の変化 ☞ お金の獲得を第一義とする競争至上主義から、日本社会が「落ち着いた社 会」を渇望し始めている ☞ 新自由主義経済から連帯経済社会へ、協同組合の価値の見直し “扉を開けた先”にある新しい時代 安心して暮らせる社会にするためには、市場や国 家のみならず、連帯・協同セクターとの協働的な ネットワークで問題を解決 連帯・協同でつくる 安心・共生の福祉 社会 23 3.当面する労働運動の課題 ~塀の外へと運動と福祉を広げる~ 組織率の低下は労働運動の社会的影響力を低下させている 非正規労働者は雇用労働者の1/3、年収200万円以下のワーキングプアは1,100万 人超。100人未満の中・小零細企業の組織率は1.1%、パート労働者は5%程度。 すべての労働者のための運動へ すべての人に働く場を保障し、公正な賃金と均等待遇、セーフティネットが組み 込まれた「働くことを軸とした安心社会」の実現。 最低賃金1,000円の実現。 労働者福祉のウイングの拡大 労働運動とNPOや市民団体との連携 労働者自主福祉事業の幅広い展開 24 最低賃金 1,000円 / 労働条件は低位に平準化する Aさんの賃上げ (正社員/組合員) ①ベア ①定期昇給+②ベースアップ ②定昇 金 額 最低賃金 Bさん(パート/非組合員) @1,000円 29歳 年 齢 30歳 25 ~塀の外へと運動と福祉を広げる 社会的労働運動へ ビジネスユニオニズム 組合費を払っている組合員だけにサービスを提供する組合運動 ソーシャルユニオニズム 組合員以外の労働者・市民にも信頼され役立つ組合運動=社会的労働運動 働くひとの「拠り所」の創設 ライフサポートセンター パーソナルサポートセンター 労働運動と労福協運動が役割分担しながら新たな運動の展開 26 連合運動と労福協運動との関連性 協 その他生活上 の課題 福祉事業団体 育成強化 多重債務問題 連合労働運動 雇用・労働条件・税・ 社会保障 生活保護 消費者問題 高齢者課題 市民団体・NPO等とのネットワーク 27 4.労働者自主福祉運動の新たな展開 ~あらためて考える、ろうきん・全労済~ あらためて、考える !!“忘れつつある歴史” ■ろうきん、全労済は協同組合だったの? ■労働組合・労福協・労働金庫・全労済と協同組合の 関係性! ①誕生(母体) 中央労福協=労働運動と生協 労働金庫=岡山(生協)、兵庫(労組)…労働運動、労福協 全労済=労働運動と労福協 ②最良のビジネスパートナーのはずが! ろうきんと生協の事業と運動の関係性の希薄…その原因は? ③最高の運動サポーターのはずが! 同根であった労働組合と生協の関係が疎遠に…その要因は? 28 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 協同組合とは? 非営利とは? 協同組合とは?(株式会社との違い) 配当の原理 ・株式会社は出資金に応じて配当 ・協同組合は利用分量に応じて配当 非営利とは?(営利を目的としないの意味) 農業協同組合法 1947年(S22)11月19日 …営利を目的としてその事業を行ってはならない(第8条) …not the paying of dividends on invested capital(同条・英文官報) 消費生活協同組合法 1948年(S23)7月30日 …営利を目的としてその事業を行ってはならない(第9条) …not profit making (同条・英文官報) 今日的に定義すれば… 剰余金の処分は、利用高に応じた配分を第一義とし、出資金の配当はしない、 若しくは劣後にする 29 株式会社と協同組合、その違い! 株式会社 協同組合 利 益 1,000万円の資本金 株主A 600万円出資 株主B 400万円出資 一般消費者が購入 出資額に応じて配当 100万円 1,000万円の出資金 一人 1,000円出資金 一万人の組合員 一万人の組合員が利用 一万人の組合員が 株主A 60万円 株主B 40万円 利用分量に応じて還元 30 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 なぜ協同組合に税の優遇制度があるのか? 引き継がれてきた協同組合の税の優遇措置 協同組合には、事業分量配当の損金算入を始め法人税・ 固定資産税・事業税・印紙税などに優遇税制が適用 ☞日本の協同組合法制である産業組合法1900年(明治33年)成立に遡る ①日清戦争後の地方経済の維持・充実を背景に ②産業組合法の衆議院の法案審議…員外規制・県域規制と税の優遇措置は表裏 「産業組合法においては政府が保護する点は甚だ少ないから…所得税・営業税を免 除する位の保護を与えて然るべき」、「産業組合に所得税を課すということは一般 公衆に対しても営業をなすと見做してあるようで、組合員の範囲内で事業を行うと いうこの立法趣旨にもとる」、「相互の信用が能く密着して居る所の利便を図ると いう目的で、なるべく一市町村に亘らせぬ方針」 イコールフッティング論の台頭 31 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 彼らの教えに共通する精神とは 先人の教えに学ぶ①! 二宮尊徳 、ガンジー、ケインズ、賀川豊彦 彼らの教えに共通する精神とは! ☞二宮尊徳(1787~1856年)の信用事業、五常講・報徳冥加金(みょうがきん) 「五常講」は原始的な信用事業で、いわゆる利息をとらない信用事業 たとえば100万円借りて5年で均等返済するとしよう。 当時の年利2割で計算すると毎年20万円ずつ返済しても、元本はいつまでたっても減らな い。しかし、五常講では、毎年20万円返済すると5年で借金返済が完了する。 ところがこれには続きがある。毎年20万円ずつ返済しながら生活基盤を確立できたのは 周囲のおかげ、お礼にもう一年20万円出しなさい、と。これを報徳冥加金という。 結局6年で120万円返済することになるので、実質金利は年 6.2%。現在のろうきんマイ プランの利率にほぼ該当することになる。 報徳思想 経済なき道徳は戯言であるが、道徳なき経済は犯罪である (小田原市報徳二宮神社境内) 32 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 彼らの教えに共通する精神とは 先人の教えに学ぶ②! 二宮尊徳、 ガンジー 、ケインズ、賀川豊彦 彼らの教えに共通する精神とは! ☞ マハトマ・ガンジー(1869~1948年)の資本主義の七つの社会的大罪 1997年6月、オランダで開催されたOBサミットで、「大国や多国籍企業、国際的な金融 投機グループの横暴を憂うる」報告書が採択され、世界には、マハトマ・ガンジーが指 摘した7つの社会的大罪が今日でもはびこっている。これらを抑制し、自由と義務を均 衡させる手段の第一歩として、国連に対し『人間の責任に関する世界宣言』の採択を求 める」との提案が行われた。 1 3 5 原則なき政治 2 道徳なき商業 Commerce without Morality 労働なき富 Wealth without Work 4 人格なき学識(教育) 人間性なき科学 6 良心なき快楽 7 献身なき信仰 33 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 彼らの教えに共通する精神とは 先人の教えに学ぶ③! 二宮尊徳、ガンジー、ケインズ 、賀川豊彦 彼らの教えに共通する精神とは! ☞ ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946年)の「自由放任の終焉」 自由放任の終焉 1926年 資本主義は賢明に管理される限り、経済的目的を達成するうえで(最も)効率的なもの だが、本質的には幾多の点できわめて好ましくない…(それは)資本主義の本質的特徴 が「個人の金儲け本能」および「貨幣愛本能」に依存している(からだ)。 市場経済(資本主義)は堕落する~社会は市場経済だけで成り立ってはいない 34 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 彼らの教えに共通する精神とは 先人の教えに学ぶ④! 二宮尊徳、ガンジー、ケインズ、賀川豊彦 彼らの教えに共通する精神とは! ☞ 賀川豊彦(1888~1960年)の協同組合中心思想7カ条 協同組合生みの親 利益共楽 生み出した利益はみんなで分かち合う 人格経済 強欲に走らない 資本協同 元手はみんなで持ち寄る 非 搾 取 誰も掠め取らない 権力分散 一人一票原則、現場の近いところで決めていく 超 政 党 政府や政党におもねることのない自立の精神 教育中心 これらを繰り返し伝え学び勉強する 理念・道徳と本音・本性、人間のこころはいつもその 間を揺れ動く! 35 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 協同事業の社会的価値と力量を高める① 協同の思想の優位性の確立 「商品の優位性」をめぐる市場での対抗と「販売(普及)手法」の区別を明確に 協同組織の神髄は連帯・支え合い・助け合い。”困った時はお互いさま”とは! 非営利,,,暮らし,,,信頼,,,協同組合経済の特徴と優位性 “業者/お客様”の関係から共に運動する主体に ろうきんや全労済は、単なる「出入業者」ではない 労働組合の議案書(運動方針)に「ろうきん運動・全労済運動」を掲げよう 労働組合も事業団体も設立時の初心に立ち返る努力を、そして運動の積重ねを 36 ~あらためて考える、ろうきん・全労済 協同事業の社会的価値と力量を高める② 協同組合経済(血の通った温かいお金)の拡大 融資審査の姿勢とリスク管理の疑問…過度の優良性の強調は“貸し渋り”の危険 グッドマネー(意思を持ったお金)が社会を変える…SRI(社会的責任投資) 組合員、退職者の金融ニーズに適った支援を…多重債務は自己責任ではない ろうきんの住宅ローンはピークアウト…骨太の血の通った融資政策 ☞気づきのキャンペーンの再構築…なぜ気づきのキャンペーンをおこなったのか ☞労金法施行令第3条第8項…生協130億、社会福祉法人15.6億円、医療法人0円 NPO13億円の融資の現状をどう評価するか ☞公益追求のビジネスモデルを…団塊世代の老後の支援=バリヤフリー、高齢者向 け集合賃貸住宅(社福、生協、医療法人との連携)、資産管理をふくむ生涯取引 サービス(遺言、相続、成年後見人、リバースモーゲージ等々)の本格的な展開 全労済の「住まいと暮らしの防災、保障点検運動」から見えるもの 37 労働運動・労働者福祉運動の課題 ~最も共助を必要としている人々の参加~ 連合の2013年新春アピール 「社会運動の核となり、格差、貧困など社会の不条理に敢然と立ち向かっ ていく覚悟です。そのためには、労働金庫、全労済、労福協等と培ってき た共助の輪に、非正規労働者、長期失業者など最も共助を必要としている 人々が参加できるよう、具体的な取り組みを進めなければなりません」 共益から公益へ 協同組合は「共益」組織であるが、「公益」に最も親和性のある組織 労働組合は社会的労働運動をすすめる使命をもつ 38 ~最も共助を必要としている人々の参加 労働運動・労働者福祉運動の課題 労働組合から公益を発揮する具体的な提案を 労働組合から共益組織としてはじまった労金や全労済に対して、一緒に公益に うってでようと呼びかけよう 新しい公共 労働組合・協同組合に認められている優遇税制の一部を「公益」に 例えば、労働金庫の出資配当金、利用配当金の一部を利活用できないか? 労働組合の「闘争積立金」の一部を運用して、その利息を使わせてもらえないか? 経団連1%倶楽部のような発想を協同事業団体共有の目標にできないか? TPP、イコールフッティングへの対抗軸に ①ICAの地域コミュニティーへの貢献の原則 ②協同組合の特性と社会的役割(公益)を訴求し、金融・保険の競争条件(公的介入、税 制優遇)のイコールフッティング化に対抗 39 ~労働運動・労働者福祉運動の課題 民主制の担保とソロバン勘定 ソロバン勘定をあわせることと理念の追求 両立させることの難しさは、協同組織として永遠の課題。 民主制こそ協同組合の特性であることの自覚 事業と運動は車の両輪 片輪がはずれては、もやは労金運動や全労済運動に展望はない 労働運動、事業組織の役割分担の自覚と相互牽制の発揮を 40 5.あらためて 「連帯」と「自由」の意味を考える いまの日本社会は、貧乏プラス孤立の貧困社会 そこそこ食べられる連帯社会にするために、労 働組合・協同組合は役割を発揮しよう 労働運動がめざす「連帯社会」は、いい時も悪い 時も支え合う、お互いの違いを認め合い、他人と の煩わしい関係も受け入れながら、みんなが少し ずつ折り合いをつけながら生きていく社会なのだ から。 41 おわり ありがとうございました 42
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