スパイク解析理論入門

スパイク解析理論入門
理化学研究所 脳科学総合研究センター
脳数理研究チーム
岡田真人
背景(1/2)
多数のニューロンの
スパイクのデータ
タスク
行動,特徴
相互情報量
スパイクの統計量
平均発火率
高次統計量
逆問題
順問題 拘束
解剖学的知見
ニューラルネットワークモデル
予測
背景(2/2)
unit
スパイク列
多数ニューロンスパイクの
同時記録
1次統計量以上の情報
(平均発火率)
2次や3次以上の統計量
どのようにして統計的に取り扱うか
統計量
time
スパイク列をビット列に変換する
各区間にスパイクが高々1個と
なるように時間軸を離散化する.
ビン
時刻 t の i 番目のニューロンの発火状態
発火: 1, 非発火: 0 と対応させる
スパイク生成の同時確率分布
同時確率分布
からスパイクが生成されたとする.
自由度
現実的には決められない!!
取り扱える問題にする(1/3)
2変数の場合を考える
周辺化によって自由度を落とす
S2 S1
0
1
0
P00
P01
P10
P11
1
一部のデータは見なかったことにする
独立だと思う
独立同分布だと思う
時空間同時確率分布
時間と空間に分解
取り扱える問題にする(2/3)
時間に注目:1個のニューロンのダイナミクスに注目
S1 0 1 0 0 0 1 0 1 1 1 0 0
S2 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1
ニューロン間の相互作用も繰り込まれている
普通は T は大きい
自由度 2  1
T
これでも大変
定常性を仮定する
と
の関係と
と
の関係は同じ
自己相関関数
定常性を仮定する
と
の関係と
と
時定数
の関係は同じ
取り扱える問題にする(3/3)
空間に注目:同時刻のニューロン間の相関に注目
独立だと思う
サンプル数が足りない
定常性を仮定し,独立同分布だと思う
S1 0 1 0 0 0 1 0 1 1 1 0 0
S2 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1
ニューロンのダイナミクスも
繰り込まれている
対数線形モデル(2ニューロンの場合)
S2 S1
0
1
0
p00
p01
p10
p11
1
自由度 3
自由度 3
対数線形モデル
対数線形モデル(Nニューロンの場合)
N
N
C

2
1
自由度:  N k
k 1
1対1対応
自由度:
2N 1
対数線形モデル
いろいろな座標系
ニューロン数N=2の場合はとてもよい性質がある.
情報幾何的視点
対数線形モデル
log p( S1 , S 2 )  1S1   2 S 2  12 S1S 2  ,
ここで 1  log
直交性
p10
p
p p
,  2  log 01 , 12  log 11 00
p00
p00
p01 p10
1  p11  p10 , 2  p11  p01 , 3  p11
 - 座標 : η  (1 , 2 , 3 ), where3  12
 - 座標 : θ  (1 ,  2 ,  3 ), where 3  12
混合座標: ς  ( 1 ,  2 ,  3 )  (1 , 2 , 3 )
局所座標の性質
 g11
 
Fisher matrix(mixedcoord)  g 21
0

g12

g 22
0
カルバックダイバージェンスに関する
ピタゴラスの定理
D[ P : Q]  D[ P : R]  D[ R : Q]
相関成分
発火率成分
0 

0 
 
g 33

KL分解
検定
Χ2検定
 (1)
2
D( P : R)
 g 33R ( 3P   3Q ) 2
与えられた帰無仮説
~  (1)
2
D( P : P' )  D(Q : Q' )
 (2)
2
Q'
 g 33P ' ( 3P   3P ' ) 2  g 33
( 3Q   3Q ' ) 2
~  2 (2)
相互情報量の分解
推定された帰無仮設
I ( X , Y )  EP(Y ) [D[ ( X y) :  ( X )]]
 I1 ( X , Y )  I 2 ( X , Y )
相関の成分
I1 ( X , Y ) EP(Y ) [D[ ( X y) :  ' ]]
I 2 ( X , Y ) EP(Y ) [D[ ':  ( X )]]
平均発火率の成分
相互相関関数との関係(同時刻)
S1 0 1 0 0 0 1 0 1 1 1 0 0
S2 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1
と
は単調増加な関係
相互相関関数との関係(時間差t)
S1 0 1 0 0 0 1 0 1 1 1 0 0
S2 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1
に関して独立同分布の対数線形モデルを導入する
と
は単調増加な関係
2次の相互作用と相互相関関数の比較
h1  0
h2  0
J 21  5
J12  0
中間のまとめ
多数のニューロンの
スパイクのデータ
タスク
行動,特徴
相互情報量
スパイクの統計量
平均発火率
高次統計量
逆問題
順問題 拘束
解剖学的知見
ニューラルネットワークモデル
予測
統計量には繰り込んだ変数の影
響が入っている
S1 0 1 0 0 0 1 0 1 1 1 0 0
S2 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1
ニューロンのダイナミク
スも繰り込まれている
h1  0
h2  0
J 21  5
J12  0
相関関数だけで構造を議
論するのは注意が必要
逆問題
対数線形モデル(Nニューロンの場合)
自由度:
パラメータ
N
2N 1
個数:
N
C

2
1
N k
k 1
1対1対応
対数線形モデル
ニューロン数が多い場合
自由度:
2N 1
•相互作用の一様性を仮定
•相互作用の次数に上限を仮定
2N 1
この条件がどのような性質
を持つか?
統計力学的解析
この条件がどのような性質を持つか?
N→∞の極限を考える
J r :r次の相互作用の強さ
モデル
unit
time
高次相互作用 J r が与えられている場合
スパイク列からの高次相互作用
J r の推定
系の性質を議論
統計力学的解析(1/2)
統計力学では
理論解析の結果
分配関数が重要
例えば
系の巨視的性質
mのみで記述可能
統計力学的解析(2/2)
mの物理的な意味
= ニューロンの発火の期待値
系の巨視的性質
ニューロンの発火の平均発火率のみで記述可能
同様の計算により
系の対称性
  i   j 
1  m 系のr次の分散は0
平均発火率=
2
mr
mr
計算機実験1-1
系の巨視的性質
を用いてスパイクを生成
unit
mのみで記述可能
同じmを与える
J r の組は複数存在
(a)相互作用なし
J1 のみ値をもつ
(b)2体相互作用のみ
J 2 のみ値をもつ
(c)4体相互作用のみ
J 4 のみ値をもつ
(a)
(b)
(c)
同一の
m=-0.96
1 m
 0.02
2
time
計算機実験1-2
(a)相互作用なし
J1 のみ値をもつ
(b)2体相互作用のみ
J 2 のみ値をもつ
(c)4体相互作用のみ
J 4 のみ値をもつ
同一の
m=-0.96
平均発火率2%
1 m
 0.02
平均発火率=
2
高次相互作用の推定(1/4)
unit
time
高次相互作用 J r が与えられている場合
スパイク列からの高次相互作用
J r の推定
推定方法の性能評価
高次相互作用の推定(2/4)
観測されたスパイク列
高次相互作用
推定
Jr
モデル
の観測される確率
観測時のノイズ
:真のスパイク列
:観測されるスパイク列
高次相互作用の推定(3/4)
スパイク列
つまり
Jr
Jr
が観測される確率
を変更
に依存
が変更
ということは
スパイク列
Jr
が得られたとき
を変更
最も
まとめると
Jr
の推定値:
が起こりやすいような
が存在
J r の推定値
を最大化
ここで
対数周辺尤度
対数周辺尤度を最大化
スパイクの高次相互作用を推定
高次相互作用の推定(4/4)
今回は、ノイズはのらないものとした
高次相互作用の推定:
を観測
最急上昇法
を解く
J r を動かしてKを最大化
unit
計算の結果
この式をもとに
高次相互作用を推定
time
計算機実験2
:2次までの相互作用を持ち、
推定結果
J1  0.5, J 2  0.2
相互作用は
一意には決まらない
系の巨視的性質
mのみで記述可能
同じmを与える J r
の組は複数存在
J1  2J 2 m  const
推定方法の一般的性質
Kを、真の
計算すると
に関して平均をとる
一般的な
J r の推定の性能を評価
の条件で不定
を解くことで、高次相互
作用推定法の一般的な
性質をみる
計算機実験3
[K]の形
実線は最大値を結んだもの
推定結果の不定性
得られた推定値
推定値の収束の様子
均一な相関構造を仮定した場合のまとめ
もちいた仮定
• ニューロン数無限
• 相関はニューロンに依らず均一
• 相関の次数は有限で打ち切る.
推定方法
• 周辺尤度最大
化
結果
• 相関は一意には決まらない
正解
推定結果
J1  0.5, J 2  0.2
J1  2J 2 m  const
わかったこと
多数のニューロンの
スパイクのデータ
タスク
行動,特徴
相互情報量
スパイクの統計量
平均発火率
高次統計量
逆問題
順問題 拘束
解剖学的知見
ニューラルネットワークモデル
予測
高次統計量の理論(1/2)
2値ニューロン
・揺動散逸定数(線形応答理論,久保公式)
平衡点まわりのゆらぎが
高次統計量
・マスター方程式の方法
これらの知見が定性的にスパイキング
ニューロンでもどの程度成り立つか?
高次統計量の理論(2/2)
E-E間の詳細
r: 双方向結合 u: 一方向結合
av: 平均
d: 結合なし
E-E間の平均
I-I間の平均
E-I間の平均
(Ginzburg & Sompolinsky, 1994)
まとめ