ヘルスプロモーションの評価

ヘルスプロモーションの評価
(社)地域医療振興協会
ヘルスプロモーション研究センター
理事 藤内 修二
健康日本21中間評価
20項目/53項目が悪化
ベース
ライン値
直近実績値
目標値
(2010年)
20代女性のやせすぎ
23.3%
26.9%
15.0%
20~60代男性の肥満
24.3%
29.4%
15.0%
40~60代女性の肥満
25.2%
26.4%
20.0%
朝食を欠食する30代男性
20.5%
24.7%
15.0%
日常生活の歩数(男性)
8,202歩
7,676歩
9,200歩
日常生活の歩数(女性)
7,282歩
7,084歩
8,300歩
多量飲酒者の割合
4.1%
7.1%
3.2%
高脂血症の割合(男性)
10.5%
11.5%
5.2%
高脂血症の割合(女性)
17.4%
18.2%
8.7%
乳癌検診受診者
1064万人
766万人
1600万人
乳製品の摂取量
107g
146.2g
130g
指 標
保健事業の評価
• 評価の5W1H
Why
評価の目的は?
What
何を評価するのか?
Who
誰が評価するのか?
When
いつ評価するのか?
Where
どこで評価するのか?
How
どう評価するのか?
評価の目的は何か? Why
• 評価は,事業の効果を立証する(prove)ため!
成果(アウトカム)の評価が重要
← 行政評価の流れ アカウンタビリティ
• 評価は,事業の見直しや改善(improve)のため!
経過(プロセス)の評価が重要
効果が認められなかった
→ 事業の見直し(改善)のチャンス!
• 評価は,人材育成のため
理想の姿が見える!
• 住民との達成感の共有のため
スタッフと住民の
エンパワメント
スタッフがエンパワーされるとき
(保健師へのグループインタビューから)
① 自分の専門性が相手の役に立てる
② 事業の評価ができて,達成感が得られる
③ 住民の意識や行動が変わる
④ 住民と一緒に考え,共感できる
⑤ 同僚や他職種との共感,励まし,理解
⑥ 仕事の質について,上司の理解が得られる
⑦ 関係機関との意思疎通ができる
エンパワーと事業の改善につながる評価は?
• 成果(アウトカム)と経過(プロセス)の評価がつな
がっていることが重要
• 成果(アウトカム)が芳しくない時に,「もっと頑張れ」
では,評価の意味がない
• 経過(プロセス)のどこを変えれば,成果(アウトカム)
の改善が期待できるのかが明確になっていること!
例:妊婦の喫煙率が改善しない!
→ 小中学校における「防煙」教育の実施状況
何を評価するのか? What
• 医療費や健診の受診率だけが評価指標??
• 脳卒中による死亡状況(標準化死亡比)
• 要介護認定状況など,他にもたくさんありそう
• 事業の見直しにつながるには成果を評価する指標
から経過を評価する指標まで,評価指標の体系が
整理されていることが必要!
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい,エンパワメント
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
Quality of Lifeの評価
• Quality of Lifeの向上は保健事業の最終的な目標
• 標準的なQOL指標が少ないのが実情
例:「ゆったりした気分で子どもと過ごせる時間がある
母親の割合」
• QOL指標は保健事業の「めざすもの」にほかならない
QOLについては,当事者を含め,住民や関係者と
一緒に考えることが大切
どんな暮らしができたらいいのか?
• 専門職だけで考えると・・
「支援」が「指導」になってしまうので,要注意
• 住民のエンパワメントを評価する指標も重要
地域での検討して,指標の開発を
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
健康状態の評価(1)
• 「健康寿命」といった包括的な指標で評価することが
望まれるが,標準的な算出方法が確立していない
要介護認定の結果を用いて,簡便に算出する方法
も紹介されているが・・
(今年度中に研究班報告が出される予定)
• 平均寿命,全死因の標準化死亡比なども包括的な
健康指標
• 40歳の平均余命,65歳の平均余命,40~64歳の
標準化死亡比も有用
健康状態の評価(2)
• 特定の疾患による死亡状況
標準化死亡比がよく用いられるが・・
全国が良くなれば,改善していても値は増える
「勝ち組」と「負け組」の自治体が出るのが難点
経年的な変化の評価には年齢調整死亡率が良い
• 特定の疾患による年代別死亡率を比較するのも手
例:60代の脳血管疾患による死亡率
健康状態の評価(3)
• 要支援・介護率も健康状態の指標
高齢者の年齢構成で補正することが必要
• 標準化要支援・介護比(自治体の年齢構成で期待
される要支援・介護者数との比較)
要介護2~5についての標準化要介護比が有効
• 80~84歳人口に占める要介護2以上の者の割合
複雑な処理が不要で,保健事業や介護予防の良い
指標である!
標準化要介護比(2以上)の算出例
男性
都道府県
都道府県の
都道府県の
当該自治体
期待される
の人口
要介護2
要介護率
の人口
要介護2
以上の者数
要介護2以上
a
b
65 ~ 69
26,056
494
70 ~ 74
24,255
75 ~ 79
d
d×c
1.9%
514
9.8
852
3.5%
694
21.1
16,766
1077
6.4%
362
23.1
80 ~ 84
9,346
1079
11.5%
214
24.6
85 ~ 89
4,866
982
20.2%
124
25.0
90 歳 以 上
1,851
578
31.2%
42
13.1
83,140
3,300
合
計
c = b÷a
以上の者数
116.7
人口構成から期待される要介護2以上の者数
当該自治体の実際の要介護2以上の数 131人
標準化要介護比(要介護2以上)
131÷116.7×100=112.3
健康状態の評価(4)
• 受療状況は健康状態の指標として活用できるか?
脳血管疾患,癌などの受療状況は使えるが・・
• 年齢構成の影響を強く受けるので・・
年齢調整が必要
→ 標準化受療比や地域差指数を活用
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 11”N 
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地域差指数(入院
1. 257
1. 124
0. 942
0. 875
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`

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1. 256
1. 123
0. 941
0. 874
福岡県 1.384 (全国3位)
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O—
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 11”N 
j
地域差指数(外来
1. 032
0. 989
0. 942
0. 910
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
`

`

`
1. 031
0. 988
0. 941
0. 909
福岡県 1.094 (全国3位)
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O—
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à ”ï 平成11年)
@
 •½ ¬
 11”N 
j
地域差指数(歯科
1. 014
0. 935
0. 885
0. 833

`
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`

`

`

`
1. 013
0. 934
0. 884
0. 832
福岡県 1.205 (全国1位)
健康状態の評価(4)
• 自覚症状のない慢性疾患では活用に注意が必要
慢性疾患などは受療するかどうかという行動の
要素が加わる
糖尿病の受療率が高いことは,悪いこと?
• 医療費は他の指標とあわせて評価することが不可欠
例:健診結果や死亡統計の評価とあわせて評価
• 他の要因(医療施設数,経済状態,就労状況など)
によって左右されるのが難点
平均寿命(男性)と地域差指数
1.3
1.2
医
療
費
(
地
域
差
指
数
)
1.1
青森
1.0
0.9
長野
0.8
相関係数 -0.302
0.7
0.6
75.5
76.0
76.5
77.0
77.5
78.0
男性の平均寿命(2000年)
78.5
79.0
79.5
歳
平均寿命(女性)と地域差指数
1.4
1.3
医
療
費
(
地
域
差
指
数
)
相関係数 0.198
1.2
1.1
1.0
沖縄
0.9
0.8
0.7
0.6
83.5
84.0
84.5
85.0
85.5
女性の平均寿命(2000年)
86.0
86.5 歳
人口10万あたり病床数と入院医療費地域差指数
地
域
差
指
数
(
入
院
医
療
費
)
1.6
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
500
高知
相関係数 0.918
1,000
1,500
2,000
人口10万あたりの病床数
2,500
高齢者の就業率と老人医療費
1,000,000
950,000
900,000
850,000
相関係数 -0.545
老 800,000
人
医 750,000
療
費 700,000
650,000
600,000
長野
550,000
500,000
15
17
19
21
23
25
高齢者の就業率
27
29
31
33%
人口10万あたり公民館数と老人医療費
1,000,000
950,000
900,000
老
人
医
療
費
850,000
相関係数 -0.389
800,000
750,000
700,000
650,000
600,000
550,000
500,000
0
10
20
30
40
50
60
70
人口10万あたり公民館数
80
90
100
医療費分析の意義
• 地域の健康課題を医療費の視点で明確にできる
① 保健事業の意義を事務職はじめ関係者と共有
生活習慣病対策がなぜ重要か?
脳卒中予防,糖尿病の合併症予防
整形外科疾患対策がなぜ必要か?
精神障害者の社会復帰に向けての取り組みが
なぜ必要か?
→ 関係課の連携につながることが期待される
② 保健事業の経済的な効果を医療費で表せる
脳卒中を10%減少させれば,医療費は年間○○
万円の削減につながる → 予算化獲得の根拠に
生活習慣と医療費の関係
運動
不足
医療費
(万円)
比率
喫煙
肥満
-
-
-
44.3
-
+
-
-
47.6
7.5%
-
+
-
45.2
2.0%
-
-
+
55.6
25.5%
+
+
-
53.2
20.1%
+
-
+
59.4
34.1%
-
+
+
60.6
36.8%
+
+
+
59.7
34.8%
健康状態の評価(5)
• 基本健康診査などの健診結果の活用
年齢階級別の有所見者の出現率を「地域保健・老
人保健事業報告」と比較する
標準化有所見比(受診者の年齢構成から期待され
る有所見者数との比較)も有効
健康状態の評価(6)
• 健康診査の問診などを活用しての「主観的健康度」
や「有訴率」の評価も有効
「ふだん,自分で健康だと思いますか」
(主観的健康度)は長期予後とよく相関する
「膝の痛みのために外出に支障をきたしますか」
(有訴率)も重要
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
生活習慣や保健行動の評価
• 食生活や運動などの生活習慣や健診受診や定期的
通院などの保健行動を評価する
• 健康診査の問診など,日常業務の中で情報を収集す
る仕組みを作ることが大切
• 健康日本21で設定された生活習慣の指標により,地
域比較も可能
• 若い世代の喫煙率をどうやって把握するか?
成人式に問診で喫煙率を調査,妊娠届出時にも
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
生活習慣や保健行動に影響を及ぼす
知識や態度,技術の評価
• 健康を優先しようと考えているか?
生活習慣の最も大きな規定要因である
• 健康的な生活習慣の必要性やその効果を理解して
いるか?
• 健康的な生活習慣を実践するための技術を習得し
ているか?
• これらは健康教育の効果を評価する直接的な指標
(学習の指標)
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
生活習慣や保健行動に影響を及ぼす
周囲のサポートや環境の評価
• 健康的な生活習慣や保健行動の実践のために家族
や周囲のサポートが得られているか
• 住民組織等の活動により,周囲のサポートが得られ
るようになっているか
• 健康的な生活習慣や保健行動の実践を容易にする
社会資源の利用が可能か
• こうした社会資源が地域にどれくらい存在するか
ヘルスプロモーションのめざすもの
個人のエンパワー
めざすものはQOLの向上
住民組織のエンパワー
健康を支
援する環
境づくり
(島内 1987,吉田・藤内 1995を改編)
この坂道の勾配をきつくしている要因の評価が必要
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
プロセスの評価
• 事業の実施経過(プロセス)を評価する
例:計画に記載された事業がきちんと実施されているか
事業の開催回数,開催か所数
例:事業や保健サービスは,住民に利用されているか
参加者数や利用者数
例:事業や保健サービスに対する住民の反応はどうか
教室の内容を十分に理解できたか?
教室で学んだことを実施しようと思うか?
学んだことは実践できそうか?
例:事業に関わったスタッフや関係者の反応はどうか
事業はスムーズに実施できたか?
実施しての手応えはどうか?
自分の専門性は十分に発揮されたか?
転倒予防教室の評価指標の例
• 成果(アウトカム)評価
転倒の不安なく,外出を楽しめている高齢者の割合 QOL指標
骨折のために要介護状態になる高齢者数
骨折による受療率,医療費
健康指標
週2回以上外出している高齢者の割合
生活習慣
「歩こう会」など自主グループの増加
組織・資源
• 経過(プロセス)評価
転倒予防教室への参加者数
参加者の感想(理解度,意欲)
転倒予防教室に協力した関係者の感想
図1 保健活動の評価指標の構造
Quality of Lifeの指標
健康指標
生活習慣や行動の指標
知識や態度
学習の指標
健康づくりの技術
生活満足度や生きがい
健康寿命,死亡率や有病率,有訴率
健康的な生活習慣,健診の受診
組織・資源 家族や周囲のサポート
住民組織等の活動状況
環境の指標 社会資源へのアクセス
保健事業量の質と量
普及啓発事業の回数,参加者数
関係機関との連携,住民参画
基盤整備の指標
マンパワーや施設の整備
協議会等の設置,制度づくり
基盤整備(構造)の評価
• 人的資源は増えたか?
• 組織資源は増えたか?
協議会などの設置
• 財政的資源は確保されたか?
• 情報資源は?
• 自然環境資源は?
いつ評価をするのか? When
• 健康日本21の中間評価は5年後ということになって
いるが・・
中間評価で思うような成果が出ていなかったら,
それまでの5年間の努力は・・??
評価は5年(10年)後で良いのか?
10年後の目標
健診受診者に対する
問診などで得られた
生活習慣の数値
5年後の目標
必要に応じて軌道修正を早めに行うことが
ベースライン値
目標達成のポイント
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
ルーチンワークで経年的にモニターすることが重要
10 年
どうやって評価をするのか? How
• 評価のための実態調査を毎年できるだろうか?
そんなことをやっている暇や予算はない!?
• 日常業務の中で評価できることがポイント
健康診査の問診やヘルスアセスメントなどの活用
• 市町村合併に伴う電算システムの統一の際に・・
健診の問診項目の見直しを
• 健診受診者は一般集団よりも健康に関心がある人
が多いというバイアスがあるが・・
健診受診者に改善が認められなければ・・・
一般集団の改善も期待できない
• 無作為抽出で実態調査を行ったところで,回収率が
低ければ,バイアスは免れない!
誰が評価をするのか? Who
• 評価をするのは専門職だけで良いのか?
担当の事務職員や係長,課長も関わることが重要
課長や係長にも,事業の現場で住民の「生の声」
による評価を実感してもらおう
• 要介護認定のデータの加工等は担当の事務職員に
評価の「醍醐味」を味わってもらおう
• 住民や住民組織にも評価ができるはず
自分たちが評価を行うことで,取り組みの見直しに
食生活改善推進員による食生活のチェック
老人クラブによる高齢者の食生活の実態
こうした実態調査そのものが組織の良い活動に
どこで評価をするのか? Where
• 評価用の資料を会議室に集めて行うのが評価?
• 「事件は会議室で起きているじゃない!
現場で起きているんだ!」
(青島俊作)
• 住民と接する「現場」で評価ができるはず
• 住民に「指導」するスタンスでは,評価はできない
• 住民から「学ぶ」スタンスで接することで,数値化で
きない生の評価が得られる
検査結果の背景にある住民の暮らしや生活環境
に耳を傾けよう
評価が事業の改善につながるために
1.評価指標の構造が明確になっている
• ある指標が改善されなかったとき,その下位の指標
(その指標に影響を及ぼす条件)の改善状況を見る
ことで,その改善のためにどの条件を改善させれば
良いかがわかる
例:糖尿病の合併症で人工透析に至る人が減らない
糖尿病の定期的な通院ができているか?
食事療法などが実践できているか?
糖尿病の早期発見(健診受診)ができているか?
2.生活習慣を改善するための条件と
事業との関係が明確になっている
• ある条件を改善するために,どの事業をどの部分を
改善すればいいかがわかる
• 個々の事業の目的やその評価指標が明確になって
いることが必要
• 事業評価を契機に主要な事業について実施要領を
作成しよう
事業の目的,対象,評価指標,事業内容,
事業を進める上でのポイント
3.事業や取り組みの優先順位の検討
• 当該の健康課題を改善させる効果の大きさ
介入によって改善する生活習慣や保健行動と
健康課題の因果関係の強さ
取り組みの対象となる患者(住民)の多さ
• 生活習慣や保健行動の改善可能性
介入により生活習慣や保健行動を改善できるか
• 事業そのもの実現可能性
財政的な制約がある場合には,既存の事業予算
の枠内で実施可能か?
事業を実施するうえでの資源(関係機関,住民
組織・団体)が地域で得られるか?
4.事業評価の結果を課内や関係者で共有
• 評価結果を課長も理解している
事業の見直しやそのための予算の獲得,関係
機関との連携の必要性を理解している
• 医師会をはじめとする関係者と取り組みの効果を
確認している
取り組みをどう見直すのかを一緒に議論できる
市町村合併と保健事業の評価
• 市町村合併に伴う保健事業の調整(いわゆる,すり
あわせ)も評価の視点が重要
• 合併する市町村の事業の進めかたが異なる場合,
どの自治体のやり方に合わせるのか?
目的を達成するためにもっともの効果的なやり方
に合わせることが重要
• それぞれの事業の目的を確認しておくことが必要
事業の目的 = 評価指標を明確にすること
例:基本健康診査の事後指導の進め方
郵送で結果を知らせるだけで良いのか?
実現可能性の議論の前に,事業の目的を確認し,
「評価」の視点で検討を
健康日本21の評価
中間評価試行事業から
「健康日本21」の達成
評価の概念図
⑥QOLの向上,健康指標の改善,生活習慣指標の改善,住民意識の変化
地方計画の
目標の達成度
③計画の推進と進行管理
・地方計画の周知
・計画書の活用状況(予算編成等)
④事業の変化
⑤連携の推進
・住民や関係者への支援
・事業の評価
・部局間の連携
・市町村への支援
・事業の見直し
・関係機関・団体との連携
・地域健康資源の活用,開発
・取り組みの基盤整備
・企業との連携
(既存の事業の見直し)
・環境整備に向けての取り組み
・住民組織との連携
・進行管理組織((進捗状況の把握)
・データ収集,モニタリングシステムの構築
・目標の見直し
①計画策定のプロセス
・策定組織の設置に関して
(構成メンバー,活動状況)
・現状把握及びニーズの把握
(住民や関係者からのヒアリング
や実態調査)
(既存の保健統計など分析)
(地域の健康課題の明確化)
・住民・関係者と目的,目標の共有
②計画内容
・目標 (独自性など)
・目標と事業の関連
・具体的な取り組み
(住民主体,優先順位)
・基盤整備,環境整備
計
画
策
定
プ
ロ
セ
ス
活地
動方
状計
況画
の
目
標
達
成
の
た
め
の
中間評価の実際
• 計画に盛り込まれた評価指標の評価だけではない
① 計画策定のプロセス
② 計画の内容
③ 計画の推進と進行管理
④ 保健事業の変化
⑤ 連携の推進
なども評価
→ 26項目からなる評価表を作成した
• 「事業実践評価表」,「目標達成度評価表」も作成
策定プロセス
• 策定組織
策定組織には、必要な関係者が含まれていたか。
策定組織には、住民が含まれていたか。
策定組織は、検討や議論等を活発に行ったか。
• 現状およびニーズの把握
地域の健康課題は明確に把握されているか。
住民のニーズは充分に把握されているか。
• 住民や関係者との目的、目標の共有
計画の策定過程での議論を住民や関係者に公開
していたか
計画の内容
• 目 標
地方計画の目標設定は、独自性のあるものか。
• 目標と事業の関連
目標を達成するための事業が明確になっているか。
事業実施にあたり、優先順位を検討しているか。
• 具体的な取り組み
地方計画の取り組み内容や役割が住民・関係者
ごとに具体的に示されているか。
• 環境整備
地方計画の各目標分野に、健康づくりを支援する
環境整備について記載があるか。
計画の推進と進行管理
• 地方計画の周知
地方計画や実施状況を、わかりやすく住民に周知
しているか。
• 地方計画の活用状況
地方計画は、他の事業の計画や予算編成に活用
されているか
• 住民や関係者への支援
地方計画に基づく住民や関係者の活動等を支援
しているか
• 地域健康資源の活用
地域自主組織の活動状況(活動数、活動内容)に
ついて把握しているか。
計画の推進と進行管理
• 取り組みの基盤整備
地方計画を推進するための体制を整備しているか
分野別の専門部会の設置など
• 進行管理組織
進行管理組織を設置し、進捗状況を把握しているか
• データ収集、モニタリングシステムの構築
評価指標について、データ収集の方法があるか
• 目標の見直し
目標や評価指標について、見直しを行っているか。
• 事業の評価
目標に基づいて、事業の評価を行っているか
保健事業の変化
• 事業の見直し
新規事業の開始だけでなく、既存事業の見直しを
行っているか
• 環境整備に向けての取り組み
食環境や運動環境の整備など、健康づくりを支援
する環境整備に取り組んでいるか
連携の変化
• 部局間の連携
関係部局との連絡、調整が円滑に図れているか。
• 関係機関・団体との連携
関係機関・団体等との連携が円滑に図れているか
• 企業との連携
地域の健康づくりに向けて、連携が図れているか
産業保健との連携が円滑に図れているか。
• 住民組織との連携
住民組織、ボランティア、NPO等との連携が円滑
に図れているか
事業実践評価表
• 分野
• 目標,目標値
• 事業名
• 事業目的
• 事業の概要
• 期待する効果 改善が期待される評価指標
• 具体的な活動状況
• 今後の取り組みや課題
目標達成度評価表
1.目標課題 (内容)
2.目標値 (健康関連データ等)
3.ベースライン値
4.最近の値
5.最近の値の把握方法
6.モニタリングや目標達成に向けての今後の課題