教養の化学

教養の化学
第12週:2013年12月16日
担当
杉本昭子
レポート提出
レポートの提出日は来週の月曜日です。
12月23日(月)
忘れずに講義終了時に提出して下さい。
復習:化学結合(4)/化学量論(1)
1. 化学結合の種類は、物質の物理的性質に大きな影響を与えてい
る。そのため、イオン結合化合物、共有結合化合物、金属結合
物質それぞれが特有の性質を持つ。
2. 化学結合と同様に、分子間に働く分子間力の違いも、物質の物
理的性質に影響する。
3. 原子の質量は、陽子と中性子、それぞれ1個の質量(1.673 X
10-24g,1.675 X10-24g)から計算により求めることができる。
4. 原子の相対質量は、数字の取扱いを楽にするため、炭素12;12C
の質量(1.993 X 10-23g)を12と定め、これを基準に各原子の質量
を導き出した値を言う。したがって単位は無い。
5. 原子量は、天然に存在する同位体の存在比を加味した相対質量
の平均値を言い、周期表の値として記載されている。したがっ
てこれも単位は無い。
復習:化学結合(4)/化学量論(1)
6. 分子量は、分子の質量を分子式に基づき構成元素の原子量の総
和として表したもので、これにも単位は無い。
7. 式量は、分子量と同じ意味で、組成式で表される物質の場合に、
組成式に基づき構成元素の原子量の総和で表したもの。
8. 物質は、原子や分子、イオン等の粒子で構成されている。物質
の変化や性質はこの構成粒子の数に基づいて説明される。例え
ばAとBからCが生成する反応を考える時、反応する粒子の数が問
題となる。
9. 粒子の数は非常に多いため、一定数の粒子の集団を単位として
扱うことにする。一定数として、炭素原子12Cの12g中の炭素原子
の数が用いられた。12g÷1.993 X 10-23g=6.02 X 1023となり、
6.02 X 1023個の粒子の集団を1モルといい、モルを単位とした量
を物質量という。 6.02 X 1023/molをアボガドロ定数という。
復習:化学結合(4)/化学量論(1)
10. モル質量は、粒子1molを含む物質の質量でg/molで表す。一般に
原子、分子、イオンのモル質量は、それぞれ原子量、分子量、
式量にg/molを付けたものになる。
演習の解答と解説
アボガドロ数は6.00X1023とする。
1. 1円硬貨はアルミニウム製で、1枚の質量は1.00gである。この硬
貨1枚には、何個の原子が含まれるか。(ただしアルミニウムの原
子量を27.0とする。)(10点)
アボガドロ数
1.00 g
X 6.00X1023 = 0.037x 6.00X1023
27.0 g/mol
= 2.22X1022
mol
2.22X1022個
演習の解答と解説
2. 塩化マグネシウムの57gの物質量を答えなさい。ま
た、これに含まれる塩化物イオンCl-は何個か (マ
グネシウムの原子量は24、塩素の原子量を35.5とす
る。)(5点、5点)
MgCl2
57 g
95 g/mol
式量: 24+35.5X2=95
= 0.6
物質量:0.6 mol
0.6 X 2 X 6.02X1023 = 7.2X1023
Cl-数:7.2X1023個
有効数字
 0ではない数字に挟まれた0は有効である。
60.8 は有効数字3桁である。
39008 〃
5桁である。
 0ではない数字より前に0がある場合、その0は有効ではない。
0.093827 は有効数字5桁である。
0.0008 〃
1桁である。
 小数点より右にある0は有効である。
35.00 は有効数字4桁である。
8 000.000000 〃 10桁である。
 1X103 や 1e3 は有効数字が1桁であることが明示される。
1.000×103 は有効数字が4桁であることが明示される。
質問に答えて
 アボガドロ定数はなぜ12Cを基準に決めたのか?
そもそも原子の相対質量、原子量の基準は・・・歴史的背景がある。
• 1860年に今の原子量の基礎が築かれる。
Oの原子量を1としたり、10としたり、Hの原子量を1としたり・・・
• 19世紀末
• 国際原子量委員会が制定: Oの原子量を16.00000と定める。
現在
• 1962年 IUPAC(国際純正および応用化学連合)、IUPAP(国
際純正および応用物理学連合)がC12を基準とし、原子量
12.00000とし、現在にいたる。(Cがアボガドロ定数個集まれば
その質量は、12.01115グラムとなる。)
原子量は常に精密測定がなされ、2年に一度、国際原子量委員
会から新しい値が発表される。
化学量論(2)
物質量の計算、モル質量、モル体積
第12週講義
もう一度、物質量(Mole)
物質量(mole)の概念が登場する背景
1. 原子は陽子数の違いによって区別されている。(周期表の順)
2. 陽子、電子、中性子の各1個の重さは決まってる。
3. 原子の質量に関係するのは、陽子と中性子で、1個の重さに対
応する数を掛けた総和である。
例
12C
陽子6個
1.6726x10-24X6
1.99265x10-23g
中性子6個 1.6749x10-24X6
4. 取扱いやすくするため、基準値としてこの12Cの質量を12.00000
とし、各々の原子の同位体の存在比を加味した、相対質量を
考案した。これが原子量である。(周期表に記載)
もう一度、物質量(Mole)
5. 原子の重さは、あまりにも小さいために実測できない。
6. 反応式は関与する粒子(原子・分子・イオン)の個数の比を示
す。
物質量(mole)の概念の登場
1. 化学で扱う原子・分子・イオンは全て粒子と考える。
2. 化学では、これらの粒子の量を測る場合「個数」で表した方が便
利である。
3. そこで炭素12C12gに含まれる原子数(原子の数)を基準にする。
12g
12C原子1個の質量
=
12g
1.99265
g
x10-23
アボガドロ定数
= 6.022 x 1023 個
6.022個x1023の粒子=1モル(mol)
もう一度、物質量(Mole)
物質量(Mole)
6.022個x1023の粒子=1モル(mol)
アボガドロ定数=6.022x1023/mol
どの物質でも原子量をgで表した量に等しい量には、その物質の原
子が6.022x1023個が含まれる。
したがって、1 g のH, 12 gの C, 23 g のNa は全て 6.02 x 1023 atoms
であるから全て1モルである。
モルの単位で表わされる粒子(原子、分子、イオン)の集団
を物質量という。
もう一度、物質量(Mole)
モル質量: g/mol
1モルの質量をモル質量という。
例えば 1 mol Li = 6.94 g Li・・・・・・・・ 6.94 g/mol
化合物1モルの質量は、化合物を構成している元素の原
子量(正確には、相対的原子質量)を合計してそれにgを
付けることにより得られる。
モルの概念が登場したことで・・・
原子量は簡単に質量(グラム)に変換できないという問題が解消!
もう一度、物質量(Mole)
水1molに含まれる粒子の数とそれらの質量
水素原子と酸素原子はいくつあ
るか?
図中の粒子6個は、便宜的に6.02X1023個の粒子を表している。
もう一度、物質量(Mole)
水1molに含まれる粒子の数とそれらの質量
図中の粒子6個は、便宜的に6.02X1023個の粒子を表している。
水分子1molの質量は?
水分子1mol中の水素原子の質量は?
もう一度、物質量(Mole)
水1molに含まれる粒子の数とそれらの質量
酸素原子の質量は?
グラムとモルの変換


化合物の重量(g)が与えられた時モル(mol)に変換できるし、逆もま
た同じ
変換のためには先ずモル質量を計算する
g
g = mol x g/mol
mol = g  g/mol
Formula
HCl
H2SO4
NaCl
Cu
g/mol
36.46
98.08
58.44
63.55
mol g/mol
g
mol (n)
0.25
9.1
53.15 0.5419
207
3.55
1.27 0.0200
Equation
g= g/mol x mol
mol= g  g/mol
g= g/mol x mol
mol= g  g/mol
モル質量、モル体積
粒子1モルあたりの体積をモル体積という。
物質量は、気体の体積と関係づけることもできる。
気体1モルの体積は、モル質量と密度から求められる。
温度0℃,1気圧における窒素1モルの体積は、
28.0[g/mol]
=22.4 [l/mol]
1.25[g/l]
一般に気体1モルの体積は、そ
の種類によらず標準状態で22.4
lである。
物質
モル質量
g/mol
密度
g/l
1molの
体積(l)
He
4.0
0.18
22.4
Ne
20.2
0.90
22.4
N2
28.0
1.25
22.4
O2
32.0
1.43
22.4
モル質量、モル体積
一般に気体1モルの体積
は、その種類によらず標
準状態で22.4lである。
物質
モル質量
g/mol
密度
g/l
1molの
体積(l)
He
4.0
0.18
22.4
Ne
20.2
0.90
22.4
N2
28.0
1.25
22.4
気体は種類によらず、同温、同 O2
圧、同体積の気体中に常に同
数の分子を含んでいる。これを
アボガドロの法則という。
32.0
1.43
22.4
同温、同圧の下で、気体の体積は分子の数(物質量)
のみに比例する。
モル質量、モル体積
物質量(モル)まとめ


化合物の重量(g)が与えられた時モル(mol)に換算できるし、逆もま
た同じ
換算のためには先ずモル質量を計算する
g
g = mol x g/mol
mol = g  g/mol
mol g/mol
物質量(モル)まとめ

モル体積は気体の種類に関係なく、22.4l
従って化合物の体積(l)が与えられた時モルに換算できるし、逆も
同じ
l = mol x 22.4l/mol
l
mol
22.4l/mol
物質量(モル)まとめ
ダースとモルの用い方
アボガドロ数
物質量(モル)と反応式の関係
化学で扱う原子・分子・イオンは、全て粒子と考える。
化学では、これらの粒子の量を測る場合「個数」で表し
た方が便利である。
なぜなら反応は重さではなく、個数で決まるから
実際の反応を反応式を使って少し考えてみましょう。
物質量(モル)と反応式の関係
窒素28gを十分な水素と反応させ、全てアンモニアにす
る。アンモニアは何グラムできるか。
但し、原子量は、H=1、 N=14とする。
化学反応式を使ってこの反応を表すと・・・
N2
+ 3 H2
2 NH3
化学反応式からわかること
1)何から何ができるか
ハーバー法によるアンモニア合成法
2)粒子の数の関係
物質量(モル)と反応式の関係
N2
①、②、③と粒
子の数が増え
ても係数の比
は常に一定
+ 3 H2
2 NH3
物質量(モル)と反応式の関係
反応式は関与する粒子(原子・分子・イオン)の個
数の比を示す。
化学反応式の係数と化学式が示す粒子の間に
は、係数の比=粒子の数の比(モル比)という関
係が成り立つ
物質量(モル)と反応式の関係
窒素28gを十分な水素と反応させ、全てアンモニアにした
とすると、アンモニアは何グラムできるか。
但し、原子量は、H=1、 N=14とする。
化学反応式からわかること
N2
+ 3 H2
2 NH3
1)何から何ができるか
ハーバー法によるアンモニア合成法
2)粒子の数の関係
物質量(モル)と反応式の関係
物質量:モル
どの粒子(原子、分子、イオンなど)も、1モルの数はアボ
ガドロ定数
化学反応式の係数の比=物質量mol)の比
N2
+ 3 H2
2 NH3
1X(6.0x1023)個 3X(6.0x1023)個 2X(6.0x1023)個
=1 mol
=3 mol
=2 mol
物質量(モル)と反応式の関係
モル質量:g/mol
物質を構成する粒子(原子・分子など)1mol 当たりの質量
その値は、その物質の原子量または分子量に等しい。
N2
+
3 H2
2 NH3
物質量の比
1 : 3
:
2
N2(モル質量28g/mol)の28gの物質量は
28g÷ 28g/mol=1mol
NH3はN2の2倍の物質量できるから
1mol x 2=2mol
よって発生するNH3(モル質量17g/mol)の質量は
17g/mol x2mol=34g…【答え)
濃度と濃度計算
濃度と濃度計算
化学や、生物学においては、モル濃度がよく使
われる。
濃度とは、溶液中の溶質の割合をいう。
モルとは、物質量を数で表す単位で、モル濃度
とは濃度の尺度である。
モル濃度の意味をしっかり把握し、濃度計算を
身につけよう!
濃度計算
溶液
濃度が問題になるのは、基本的に溶液中
溶解の仕組み
溶解:液体に別の物質が溶ける現象
溶解して均一な混合物になった液体を溶液という。
このとき水のように物質を溶かすために使った液体
を溶媒、溶媒にとけている物質を溶質という。
濃度計算
イオン結晶の溶解
NaClを水に入れると電離して生じたNa+とCl-が拡散する。
NaClが水に溶けやすいのはNa+やClが極性分子の水と静電的引力により
結びつき安定に存在できるためである。
Na+の水和
濃度計算
分子でできた物質の溶解
エタノール分子中にはヒドロキシ基(-OH)の原
子団があり、水分子と水素結合をするので、水に
よく溶ける
一般に-OH基や-NH2基が分子中に
あると水素結合を作りやすいので、水
によく溶ける。
極性が大きい分子は、分子が水分子
とクーロン力で結びつくので水に溶け
やすくなる。
エタノールと水の混合
濃度計算
溶液の濃度
溶液中の溶質の割合を表したもの。
1. 質量パーセント濃度
溶液100g中に含まれる溶質の質量(g)の割合を表す。液体
や固体物質の濃度として一般によく用いられる。単にパーセ
ントというと質量パーセントを意味する。
質量パーセント濃度[%]=
溶質の質量(g)
溶媒の質量(g)+溶質の質量(g)
X 100
濃度計算
2. 体積パーセント濃度
溶液100mLの中に含まれる溶質の体積 (ml)の割合を表す。
空気の組成の表示など、主に気体の濃度を表すのに用いる。
体積パーセント濃度[%]=
ある気体の体積(L)
混合気体の全体積(L)
X 100
濃度計算
3. モル濃度
溶液1L中に含まれる溶質の物質量 (mol) を表す。試薬びん
から溶液を取り出したとき、モル濃度が分かっていれば、その
体積を量ることで溶質の物質量が簡単にわかるので、化学実
験ではモル濃度を使うことが多い。
溶質の物質量(mol)
モル濃度[%]=
溶液の体積(L)
X 100
演習
1. 窒素分子7.0gは標準状態で体積は何リットルになるか。
2. 二酸化炭素、33gの物質量は何モルか。
この分子1個の質量は何gか。
註: 原子量は、N=14,C=12,O=16 とする。
アボガドロ数は6.00X1023とする。