頭数 1000 上から、合計、死産、先天異常、流産、早産の順 900 800 700 600 500 400 200 100 0 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 アカバネ病(Akabane disease) 対象家畜: 牛、水牛、めん羊、山羊 病原体: アカバネウイルス(Akabane virus)。エンベロープを持ち、 単鎖のマイナスRNAで、3本の分節で構成。 疫学: ウシヌカカ(Culicoides oxystoma)が主要なベクター。九 州以北では、夏から秋にかけてウイルスの伝播が起こり、冬期には 終息する。胎子感染による死産や先天異常を持った子牛の分娩は、 伝播が起こった年の冬から翌年の春にかけてみられる。 臨床: 妊娠動物が感染すると、流産、早産、死産または、四肢の 関節彎曲や脊柱彎曲などの体形異常や、水無脳症(大脳欠損症)な どの中枢神経異常を伴う先天的な奇形がみられる。流行株によって は、生後感染により子牛や育成牛に脳脊髄炎を起こし、後肢や前肢 の麻痺を伴う起立不能や運動失調などの神経症状を示す。 予防・治療: 市販されている生または不活化ワクチンを媒介昆虫 の活動が活発になる夏前に接種する。治療法はない。 上:受精3ヶ月の流産胎児 右上:妊娠9ヶ月での早産 胎児 右下:異常仔牛の間接湾 曲 母牛はほとんど無症状 異常仔牛の大脳欠損 大脳欠損による脳幹部露出 眼球振盪、前肢の回転運動、起立不能 胎児筋繊維の断裂・変性 ヌカカとは? ヌカカ科は双翅目(ハエ目)の中では 60余属、 4000種が存在する大きな群で、数属が混血動 物吸血性である。「糠粒のように小さい蚊」という 意味からヌカカと命名された。 25℃で 約1月 日本では約80種が既知で、哺乳類動物と鳥類嗜好種が明確に区別される。前者にはミ ヤマ、ホシ、ニッポン、ウシヌカカなど、後者にはニワトリヌカカ、その他数種が普通種。 成虫の多くは夜間活動性で、小数の種類が藻暮、昼間活動性。吸血・卵形成のサイク ルを2,3回繰り返し、一部の種では未吸血産卵が可能。 未成熟期の生息環境は、常時湿度が保たれた場所から水中へと多岐にわたっている。 水田、湿地などの水域を選ぶ群と、腐食、糞などを選ぶ群に分かれる。蚊幼虫と相違し、 水が干上がっても生存は十分可能。卵は黒いバナナ型で、1~2日で幼虫に孵化する。 幼虫の発育日数は温度に依存し、ニワトリヌカカでは16℃で40日、25℃で12日、30℃で は発育不可能となり、22.5℃の発育率が最高である。低温では大型、高温で小型の成虫 が羽化する。 畜舎・鶏舎に飛来するヌカカの生態とその防除について ウシガエルから吸血しているヌカカ 昆虫写真図鑑 4000種が存在するヌカカ科の仲 間には、家畜と無関係の種が大 半である。家畜伝染病を媒介す るヌカカは、それらとは生態を異 にすることから、媒介昆虫を制御 する際の工夫が必要となる。 ヌカカの1種から体液を吸われる モンシロチョウの幼虫 アルボウイルスによる牛異常 産の流行監視技術の開発 (動衛研 九州支所) 蚊(左)と ヌカカ(右、小さい方) 体長1~3mm 手首に取り付いたヌカカ ヌカカから分離された牛のアルボウイルス株数 ウイルス分離結果: アカ バネ、アイノ、イバラキ、 チュウザンおよびディア ギュラの各ウイルスがウ シヌカカから最も高率に 分離された。 1997 年頃から一晩に採取されるヌ カカの数が大きく増え、そのほとん どがウシヌカカであった。 アルボウイルス による牛異常産 の流行監視技 術の開発 (九州) 捕獲ヌカカの吸血源をELISA法で 調べたところ、2種がウシとヒツジ から、4種がウシから、2種がニワ トリから吸血していた。堆肥場や ドックの牛糞が混じった土壌から ミヤマヌカカが発生していた。 ヌカカの吸血源と発生源(北海道) おとり牛を用いた 抗体調査 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 牛異常産3種混合不活化ワクチン(アカバネ、アイノ、チュウザン) 製造用ウイルス株: アカバネOBEh1 株、チュウザンKh47株、 アイノJaNAr28株 牛の筋肉内に3 mlずつを4 週間隔で2 回注射 化学及血清療法研究所: 牛異常産AK・KB・AN不活化ワクチン 日生研(株): 牛異常産3種混合不活化ワクチン 京都微研: 牛異常産3種混合不活化ワクチン 共立製薬株: ボビバックACA アイノウイルス感染症(Aino virus infection) 対象家畜: 牛、水牛 病原体: アイノウイルス(Aino virus)。エンベロープを持ち、マイ ナス1本鎖RNAで3分節で構成。アカバネウイルスと同じブニヤウイル ス科、オルソブニヤウイルス属のシンブ群に属する。 疫学:臨床:予防・治療: は同じ 左:コガタアカイエカ、 右:ウシヌカカ 椎湾曲による頭部のね じれ、前肢湾曲 チュウザン病(Chuzan disease) 対象家畜: 牛、水牛、山羊 病原体: レオウイルス科、オルビウイルス属、パリアムウイルス群 に属するチュウザンウイルス。 疫学: 発生はわが国のみで、主に九州地方に限局している。和牛 で多発し、乳用牛での発生は少ない。ヌカカが媒介。 臨床:異常子牛の出産を主徴とし、流産や死産、早産は少ない。感 染母牛には異常はみられない。異常子牛にみられる症状は、虚弱、 自力哺乳不能および起立不能などの運動障害、間欠的なてんかん 様発作、後弓反張等の神経症状である。眼球の混濁や盲目等がみ られることもある。関節彎曲等の体型異常は認められない。水無脳 症、小脳形成不全症候群を伴うことから、小脳病変を示さないアカバ ネ病との鑑別が可能である 予防・治療: 市販されている生または不活化ワクチンを媒介昆虫 の活動が活発になる夏前に接種する。治療法はない。 下: チュウザン病自然 感染例。起立不能、頭頚 部の後弓反張、連続的な 四肢の回転運動や屈折な どの神経症状を示す。 上: 起立不能を呈す る生後2日齢の仔牛。 1985~86年にかけ 九州地方を中心に約 2400頭の発生。その後、 1999年に鹿児島県で 発生した。 イバラキ病(Ibaraki disease) 対象家畜: 牛、水牛 病原体: レオウイルス科 オルビウイルス属 流行性出血熱ウイル ス血清群 疫学: 発生地域は関東地方以南に限られている。1959~1960年 に大流行があり、関東以南で約43,800頭が発病した。1997年には 242頭の発病牛がみられ、さらにこのウイルスが原因と考えられる流 死産が約1,000頭発生した。ヌカカが媒介。 臨床症状: 軽度の発熱とともに、食欲不振、流涙、結膜充血・浮腫、 泡沫性流涎、鼻腔・口腔粘膜の充血・鬱血・潰瘍、蹄冠部の腫脹・潰 瘍、跛行等がみられる。発症牛の致死率は約20%。これらに加えて 死流産もみられている。 予防・治療: 生ワクチンを適期に接種して予防します。対症療法と して補液および誤嚥性肺炎の防止が効果的である。 右: 嚥下障害にともな う飲水の逆流 下: 舌麻痺による舌 の先端部の持続的突出
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