鉄道料金の決定要因 - 中部経済学学生

鉄道料金の決定要因
名古屋大学 根本ゼミ
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 現行の運賃規制制度
Ⅲ 分析の概要
Ⅳ 平均費用の推定
Ⅴ 収入費用比率の推定
Ⅵ まとめ
鉄道運賃に差があるのか?
JR東日本
• 39.2km
• 637円
1kmあたり
16.25円
• 40.1km
(名古屋-岡崎) • 620円
1kmあたり
15.46円
(東京-千葉)
JR東海
JR西日本
(京都-大阪)
• 42.8km
• 560円
1kmあたり
13.08円
三大都市の環状鉄道料金
出典・JR東日本 公式ホームページ
三大都市の環状鉄道料金
出典・大阪ファンクラブ
ホームページ
三大都市の環状鉄道料金
出典・名古屋市営地下鉄ホームページ
三大都市の環状鉄道料金
(円)
各環状線平均運賃
東京: 173.57円
名古屋:240.37円
大阪: 161.66円
※東京:東京駅
名古屋:金山駅
大阪:大阪駅
を出発駅として運賃を計上
研究の動機
鉄道料金は地域や鉄道会社によって
差があるのではないか?
差があるならば、
どのような要因で鉄道料金は
決定しているのだろうか?
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 現行の運賃規制制度
Ⅲ 分析の概要
Ⅳ 平均費用の推定
Ⅴ 収入費用比率の推定
Ⅵ まとめ
鉄道運賃は規制下にある
• 鉄道は、路線、駅、車両、トンネルなど固定費が
莫大
• このような産業で、規模の経済性が働くならば自
然独占状態(=1つの企業が市場を独占したほ
うが効率的)となる
• 実際に、日本の鉄道会社は地域独占に近い状
態である
• このとき完全競争市場は形成されず法外な運賃
になる恐れがある。
• よって規制の必要性が生じる
ヤードスティック規制
• 異なった地域に存在する企業に対して、ある共
通の評価指標を設定し、その評価指標に基づき、
経営努力がみられた企業には報酬を、より一層
の努力が必要と考えられる企業にはペナルティ
を設定するなどして、企業間に間接的な競争を
働かせて、内部効率を向上させる規制方式。
• この規制方式は、JR旅客会社6社、大手民鉄1
5社及び地下鉄事業者10社の3グループ合計3
1社で行われている。
• この規制方式で上限運賃が定められる。
出典:日本交通学会『交通経済ハンドブック』p79,80
上限運賃改定の際の流れ
●鉄道会社の事業内容や、事業環境の違いを補
正する指標で回帰分析し、基準コストを算定。
• 実際の費用が基準コストより低い場合
⇒効率性が高いと判断
⇒実際の費用と基準コストとの差額の半分が企業
に還元、半分が利用者に還元するような上限運賃
に改定
• 実際の費用が基準コストより高い場合
⇒効率性が低いと判断
⇒経営努力を加味した水準となる上限運賃に改定
鉄道運賃規制
• 運賃の上限を規制
⇒上限価格以下なら運賃は自由に決められる
• ヤードスティック規制
⇒効率性が高い鉄道会社は収益があげられる
このような規制の下
どのような要因で鉄道料金は決定するのだろうか
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 現行の運賃規制制度
Ⅲ 分析の概要
Ⅳ 平均費用の推定
Ⅴ 収入費用比率の推定
Ⅵ まとめ
分析の前に ー交通の単位ー
輸送人キロ
運んだ旅客数×乗車した距離
(旅客が利用したサービス量)
車両走行キロ
車両×走行した距離
(供給されたサービス量)
分析の概要
今回は、総費用は、「鉄軌道営業費」、総収入は「旅客収入」を用いる。
分析の概要(2)
平均費用は、
・規模の効果が作用するのではないか
・企業努力で内部効率が高いと下がる
のではないか
収入費用比率は
・企業努力で内部効率が高いと増加するのではないか
・競争環境にあると、低下するのではないだろうか
分析の概要(3)
「平均費用」「収入費用比率」をそれぞれ
回帰分析で推定する。
研究対象
◆名古屋鉄道
◆JR東海
◆近畿日本鉄道
◆南海電気鉄道
◆京阪電気鉄道
◆阪急電鉄
◆阪神電気鉄道
◆JR西日本
中京圏
関西圏
8鉄道会社の平成14年度
から平成23年度の
10年間のデータを使用。
データは、特筆の無い限り、国土交通省鉄道局監修『鉄道統
計年報』各年度版に寄った。
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 現行の運賃規制制度
Ⅲ 分析の概要
Ⅳ 平均費用の推定
Ⅴ 収入費用比率の推定
Ⅵ まとめ
平均費用
規模の効果が作用?
効率的だと低下?
効率的の指標は?
効率性分析DEAとは(1)
効率的とは、
生産量Y(output)を一定とした場合、
投入量X(input)が必要最低限であること。
Y=5 のとき、最低限必要な投入量をX*=3とす
る。
①X=3 のとき→効率的 効率値= 1
②X=5 のとき→非効率
効率値=3/5
③X=10のとき→かなり非効率 効率値=3/10
効率性分析DEAとは(2)
生産可能性フロンティア
効率性:理想的な投入
量に、どれだけ近い
か!
効率性分析DEAとは(3)
効率値DEAの算出方法
生産可能性フロンティア
y
外側のデータの点を
つないだのが
生産可能性フロンティア
0
X
DEA分析
Output=輸送人キロ
Input=駅数、職員数、車両数、軌道延長、電力量
(参考)
平均費用(AC)の推定(1)
補足(1)
補足(2)
平均費用(AC)の推定(2)
「車両走行キロ」の単位は千キロメートル
括弧内はt値
平均費用(AC)の推定結果の解釈
車両走行キロの係数から
平均費用には規模の効果が作用しているこ
とがわかる
DEAの係数が負であることから
効率性が向上すると平均費用は下がること
がわかる
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 現行の運賃規制制度
Ⅲ 分析の概要
Ⅳ 平均費用の推定
Ⅴ 収入費用比率の推定
Ⅵ まとめ
収入費用比率
効率性が高いと高くなる?
競争環境にあると低くなる?
競争度合の指標は?
競争度合の指標は?
A市
B市
人口 40万人
人口 40万人
山鉄道会社
C市
人口 20万人
谷鉄道会社
山鉄道会社の競合具合は??
人口が多い市ほど潜在需要が存在(=重要)
人口数を加味して競合他社数の平均を出してみよう!
競合指数
競合指数 ≡
(=人口数をウェイトとした競合他社数の加重平均)
(=競合他社が平均して何社いるか)
競合指数
A市
B市
人口 40万人
人口 40万人
山鉄道会社
C市
人口 20万人
谷鉄道会社
山鉄道会社の競合指数は??
40万人(A市)×1社(谷鉄道)+40万人(B市)×1社(谷鉄道)+20万人(C市)×0社
40万人+40万人+20万人(総沿線人口)
=0.8 (競合他社が平均して0.8社いる状態)
競合指数
競合指数(2011年度)
名鉄
JR東海
近鉄
南海
0.664661
0.566109
0.951178
0.851215
京阪
阪神
阪急
JR西日本
1.171698
1.296187
1.940789
0.577068
人口データ出典:住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(総務省)
収入費用比率の推定(1)
収入費用比率の推定(2)
「車両走行キロ」の単位は千キロメートル
括弧内はt値
収入費用比率の推定結果の解釈
係数
切片
競合指数
輸送人キロ/車両キロ
DEA
1.369
(33.84)
0.1009
(−3.237)
0.3220
(−14.17)
0.006588
(8.247)
0.002323
(1.702)
0.1821
(2.033)
競争環境にあると
収入費用比率が
低下する。
平均稼働率が高いと
収入費用比率が
上昇する。
効率性が高いと
収入費用比率が
上昇する。
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 現行の運賃規制制度
Ⅲ 分析の概要
Ⅳ 平均費用の推定
Ⅴ 収入費用比率の推定
Ⅵ まとめ
単位料金への影響
平均費用
効率性↑
↓
効率性が上昇すると、
単位料金はどうなる?
収入費用比率
競争↑
↓
運用率↑
↑
効率性↑
↑
効率性の単位料金への影響
DEA(効率性)が上がると、単位料金は低下
まとめ
平均費用は、
・規模の効果が作用する
・効率値が上がると、低下する
収入費用比率は
・効率値が上がると、上昇する
・競合指数が増加すると、低下する。
単位料金は、効率値が上がると、低下する。
考察
現行のヤードスティック規制では、実際の費用が基準
コストより低い場合において、実際の費用と基準コスト
との差額の半分が企業に還元、半分が利用者に還元
するような上限運賃に改定するとしている。
実際に、推定結果から
• 効率値が上昇すると、利潤が増えるため、企業としても
企業努力が報われる
• さらに、この時、単位料金も低下するため、利用者も恩
恵を受ける。
よって、現行のヤードスティック方式による規制が有
効に働いていると考えられる。
ご清聴ありがとうございました。