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京都ネットエコン 2003/10/17
有効競争レビューの基礎となる
定量的分析手法の開発
2003/8/1//8/22//9/5//9/11//10/1
京都大学大学院経済学研究科 助教授
依田高典
1
有効競争レビューの計量経済的分析
2つの問題:
(1)データ入手の困難
(2)モデルの恣意性
・当面はアンケート等を利用した定性的分析が有効
・定性的分析と併せて、より精度の高い定量的分析を模索
発展の著しいミクロ計量経済学の積極的利用
(2000年度ノーベル経済学賞:J・ヘックマン、D・マクファデン)
世界に先駆け、BBサービスも視野に入れた有効競争レビューの基
礎となる定量的分析手法を開発、未来へ向けたデータとモデルの
蓄積をはかる
2
定性的分析を補完する定量的分析の提案
需要代替性の分析
・需要価格弾力性の分析 (→I)
・業者変更費用の分析 (→II)
参入障壁・供給代替性の分析
・地域別費用関数の分析 (→III)
(需要代替性分析の補完)
・コンジョイント分析 (→IV)
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I. 需要価格弾力性の分析
「支配的事業者(SMP)」の有無を検証:
STEP1: 「関連市場」の画定
STEP2:「市場シェア」の測定
「仮想的独占者(SSNIP)テスト」に必要な数値:
「需要価格弾力性」 ← 本実証研究で測定可能
「価格費用マージン」 ← データ不十分のため測定困難
「収支均等臨界弾力性」:
仮想的な独占者が、SSNIP(通常5%)を実施することによって、利益を得
ることができる価格弾力性の最大値
収支均等臨界弾力性=1/(0.05+価格費用マージン)
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「実際に推定された弾力性>臨界弾力性」
⇔ 値上げが利益とならないほど需要が「弾力的」
⇔ もしも当該製品(又は地域)を「関連市場」とすると、狭く画定しすぎ
る。
「実際に推定された弾力性<臨界弾力性」
⇔ 値上げが利益となるほど需要が「非弾力的」
⇔ 当該製品(又は地域)を「関連市場」とすることが適当。
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BBサービスの市場画定:
大容量・高速インターネット・アクセス:
ADSL・CATV・FTTHでは、定額料金制が一般的
従量料金に対して、トラフィックがどれだけ鋭敏に反応するのかとい
う意味での、需要価格弾力性は重要ではない
基本料金・モデムレンタル料等を考慮に入れた、月々の平均支払い
総額に対して、加入者数がどれだけ鋭敏に反応するのかという意味
での、加入需要(Access Demand)価格弾力性が重要
サービスの範囲(ex.IP電話を含んでいるのかどうか)、費用の範囲
(ex.モデムレンタル料やISP料金を含んでいるのかどうか)を正確に
測定できるように、アンケート等の調査手法を工夫
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需要価格弾力性分析
SSNIPによるSMPの認定。しかし実例は少なく、個々のサービスのマー
ジンの測定も困難なので、実際にはSSNIPが実施できない?
3STEPアプローチ:
STEP1:選択構造の分析(市場画定の第一次接近)
選択肢の条件付き確率の独立性(IIA)をベースに、消費者の多段階
選択構造(カテゴリー)を計量経済学的に分析(ハウスマン・テスト)
STEP2:需要価格弾力性の分析(市場画定の第二次接近)
加入需要の価格に対する自己弾力性をベースに、弾力的・非弾力
的に類型化し、サービスの需要代替性を分析
STEP3:SSNIPテスト(最終的な市場画定)
SSNIPテストを実施。価格費用マージンが測定困難でテストが実施
できない場合は、推定された需要弾力性と臨界的需要弾力性が等
しくなる臨界的価格費用マージンを分析
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離散的選択モデル:
あるサービスに加入するかしないかという離散的選択
「プロビット・モデル」
「ロジット・モデル」 ←
多項モデル・入れ子モデルの発展が容易
確率的効用
=P(個人属性、選択肢特性)+撹乱項
個人属性:年齢・性別・地域・所得・学歴・家族構成など
選択肢特性:サービスの実効速度・実際支払額など
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「限界効果」の測定:
→ モデルから推定されたパラメータを用いて、消費者属性や選択
肢特性を表す説明変数が、当該サービスに加入する(あるいは加入
しない)確率に、どのような限界的な影響を及ぼすのかを分析
→ 月間支出額の限界効果から、サービスの加入需要の価格に対
する自己弾力性と交叉弾力性が判明
→ 弾力性それ自体が需要代替性に関る重要な情報を与えるとと
もに、価格費用マージンと併せてSSNIPテストも実行可能
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多段階離散的選択構造の分析:
「入れ子型モデル」 ← 本分析で採用
「サンプル・セレクション・モデル」
「ティア・モデル」
サービスの帯域に注目した選択構造:
第一段階:NB対BB
第二段階:DU対ISDN;ADSL対CATV対FTTH
サービスの常時接続性に注目した選択構造
第一段階:非常時接続対常時接続
第二段階:DU対ISDN(非常時接続) ; ISDN(常時接続)対ADSL対CATV対
FTTH
サービスの帯域とその上下対称性に注目した選択構造
第一段階:NB対非対称BB対対称BB
第二段階:DU対ISDN; ADSL対CATV;FTTH
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多段階離散的選択モデル:
サービスの帯域に注目した類型化
ADSLを選択
CATVを選択
BBを選択
FTTHを選択
DUを選択
NBを選択
ISDNを選択
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利用するデータ:
総務省「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究
会」のアンケート調査
利用可能な消費者属性:
インターネット・アクセス・サービスの種別:
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補足:専門用語の解説
IIAの仮定について:
例えば、ABCという3つの選択肢を考えよう。その内のAとBという選択肢を選択する確率の比が、AとBの選択肢の
特性のみによって定まり、Cという他の選択肢があるかないかということから独立である性質を「無関係な選択肢の独
立性」(Independence of irrelevant alternatives =IIA)という。これは、ある選択肢を選択する確率は、当該選択肢から
得る効用と、その他の選択肢から得る効用から決定されており、二つの選択肢の選択確率の比を取ったときに、関係
のない選択肢から得る効用の部分が相殺しあうからである。
ハウスマン検定について:
実際の経済主体の選択行動に関しては、IIAを満たさないことが多い。つまり、Cという選択肢が有るか無いかに依存
して、AまたはBを選択する確率の比が変わる可能性がある。そこで、IIAが満たされているかどうかを統計学的にテ
ストする方法がハウスマン検定である。ハウスマン検定の具体的方法は、先の例に従えば、Cを選択した人のサンプ
ルを取り除き、このサンプルをABという二つの選択肢からの選択を行っているサンプルと見なして、二つの選択肢の
モデルを推定する。ABという二つの選択肢のモデルと、もとのABCという三つの選択肢のモデルの係数及び分散共
分散行列から検定統計量を計算し、統計学的にテストすることによって、IIAの成立の有無を判定できる。
入れ子ロジット・モデルについて:
ハウスマン検定によってIIAが成立していないと判定される場合、入れ子ロジット・モデルを利用し、IIAに依存しないモ
デルを推定する必要がある。入れ子ロジット・モデルとは、選択を多段階に分割した多項ロジット・モデルである。第一
段階の選択肢において大まかな財のカテゴリを選択し(例えばABグループとC)、第2段階でそのカテゴリの中から具
体的な財を選択している(例えばABグループの中からAまたはB)という選択構造を推定するものである。推定自体は
最終的にあるサービスが選択される確率は、第一段階で当該サービスが選択されたという条件付きの確率であると
定式化し、この条件付き確率及び第一段階の選択確率を推定する事になる。
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(続き)
入れ子ロジット・モデルと市場の画定について:
入れ子ロジット・モデルにおいてIIA仮説が緩和されるのは、入れ子ロジット・モデルでは第一段階の選択する確
率と、第二段階の選択肢に関する第一段階の選択を行った上での条件付き確率の推定を行っており、第一段階
で異なるカテゴリであると分割された選択肢間の分散が同一ではないとしているからである。分散が同一である
という統計的な特徴は、誤差項がモデルに含まれていない財の特性を表現しているとする解釈から、財の性質が
近いとみなす事が可能である。
従って、(1)IIA仮説に基づいた多項ロジット・モデルを推定し、(2)ハウスマン検定を行う事で誤差項の独立性を検
定し、仮に誤差項が独立ではないとされたのであれば、(3)入れ子ロジット・モデルを推定することで、第一次接近
的な市場画定(これを便宜的に「統計学的な市場画定」と呼ぼう)を行う。また、価格の自己弾力性と交差弾力性
を綿密に検討することから、第二次接近的な市場の画定(これを便宜的に「経済学的な市場画定」と呼ぼう)が可
能である。さらに、価格自己弾力性を用いて、SSNIPテストを実施すれば、厳密な市場画定(これを便宜的に「反ト
ラストな市場画定」と呼ぼう)を行うことが出来る。以上、依田研究室では、統計学的な市場画定、経済学的な市
場画定、反トラスト的な市場画定という一連の市場画定方法を新たに提案し、情報通信産業の複眼的かつ定量
分析的な競争レビューのための一助となることを期待。
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II. 事業者変更費用の分析
「ネットワーク外部性」:
加入者数が増えれば増えるほど、彼らの限界便益が高まるという性質。
「過剰慣性(excess inertia) 」:
より効率的にもかかわらず規模が小さいために、ネットワークの普及が妨げられる性質。
「スイッチング費用」:
あるネットワークから別のネットワークに乗換えるための費用。サービスやプロバイダを変
更するために物理的に発生する明示的な費用の場合もあれば、消費者の心理的な要因
のために発生する暗黙の費用の場合もある。
例えば、ネットワーク外部性が存在するようなサービスでは、既に大規模な
ネットワークに加入している利用者は暗黙のスイッチング費用を負担してい
るために、なかなか新しいネットワークに加入し直すことができないという過
剰慣性が存在する。
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スイッチング費用が高い場合:
既存の事業者が持続的な市場支配力を有し、新規参入者は消費
者にとって魅力的なサービスを潜在的に提供可能であるとしても 、
それが出来なくなる
スイッチング費用が低い場合:
仮に既存の事業者が現在は高い市場占有率を持っていても、新
規参入者がより魅力的なサービスを提供できれば、消費者は容
易に新しい魅力的なサービスへ乗換えることが出来る
英国OFTEL「有効競争レビュー・ガイドライン」:
有効競争の指標として、「消費者がサービスを変更する際の障壁
が存在するかどうか」を採用
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O・シャイの提唱するスイッチング費用の計測法:
スイッチング費用
=当該ネット標準料金
−[(最小ネット加入者数)/(当該ネット加入者数+最小ネット加入者数)]
×最小ネット標準料金
必要なデータ:
ある時点におけるサービス別・事業者別の加入者数・標準料金
シャイ・モデルの発展:
サービスのスイッチング費用と事業者のスイッチング費用を同時に計
算可能なモデルの開発
(i) アンバンドル・ケース
(ii) バンドル・ケース
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改良シャイ・モデルのイメージ:
アン バン ド ル・ ケース
事業者ラ ン ク j
( スイ ッ チン グ費用 š )
1
2
サービ ス種類 i
1
( 1 1)
( 1 2)
( スイ ッ チン グ費用² )
2
( 2 1)
( 2 2)
バン ド ル・ ケース
事業者ラ ン ク j
( スイ ッ チン グ費用 š )
1
サービ ス種類 i
1
( スイ ッ チン グ費用² )
2
( 1 12 1 )
2
( 1 2)
( 2 2)
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標準料金計算イメージ:
2003年第2四半期
自
至
平成15年7月2日
平成15年10月1日
料金(円/月)
加入者数(万人)
加入者増減(万人)
24Mbpsサービス
2800
20
10
-2800
12Mbpsサービス
2600
40
20
-2600
8Mbpsサービス
2400
30
-10
0
1.5Mbpsサービス
2200
10
-10
0
サービス区分
割引キャンペーン
割引額(
円/月;ない場合は0 )
加入者の平均月間支払額
[2800×20+2600×40+2400×30+2200×10
ー2800×10ー2600×20]÷100
=1740円/月
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C.クニッテルの提唱する市場支配力の検証:
スイッチング費用 → 価格費用マージン
特にクニッテルは、上記関係を長距離電話市場の分析に用いた
しかし、スイッチング費用を実際に観察可能な費用のみに限定
スイッチング費用モデルの計測と検証:
(i) ストック・データ(ex. 特定時点の加入者数)からスイッチング費用を
計算し、
(ii) フロー・データとしての市場支配力(ex.特定期間の加入者数の増
加率)に関して回帰
クニッテル・モデル
価格費用マージン
市場シェア
スイッチング費用
シャイ・モデル
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III. 参入障壁・供給代替性の分析
PPP・ISDN等のNBサービスと併せて、ADSL・CATV・FTTH等のBBサービス
の費用構造を明らかにし、参入障壁の存在・変化と供給の代替性に関する
市場構造を分析
米国ガイドラインにおける供給代替性:
SSNIPに反応して1年以内に参入・退出の際に有意な埋没費用の支出
なしに供給面での反応が生じる者
供給の代替性を巡る論点(林秀弥氏のコメント)
・ 供給の代替性と参入分析との違いは、基本的に、市場に入っていくのに、一から準備を
行わなければならないか(参入)、既存の資産・設備で対応可能か(供給の代替性)の違い
による。期間の違いもかかる違いを反映している。
・ 供給の代替性を市場で考慮しなくても、競争状態評価で考慮すればよいとの立場もあり
うる。供給面での考慮を、①参入分析で行うか、あるいは②市場画定の段階でも行うかは
、求められる競争評価のあり方にかかわる政策判断の問題。
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短期間
(1年以内)
新規埋没投資
必要なし
中長期間
(1年以上)
供給代替性分析
新規埋没投資
必要あり
参入分析
新規参入の3形態:
・設備ベースの参入
ex.電力系NCCは既存ネットワークで短期に供給代替可能、長距離NCCは参
入のために長期にわたる新規投資が必要
・再販売ベースの参入
ex.ダークファイバの長期リースを用いると、新規投資は必要ないが、中長期
的コミットメントが必要
・アンバンドリング・ベースの参入
ex.新規投資も長期的コミットメントも必要ないが、本来効率的な長期投資が抑
制され、技術革新が阻害される危険性
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自然独占性:
一つの企業がサービスを提供する方が複数の企業がサービスを提
供するよりも生産費用の上で効率的であるような性質
EUガイドラインでも、市場シェア以外のSMPの評価基準として、規模
の経済性・範囲の経済性を採用
自然独占性の十分条件:
(1) サービス毎の「規模の経済性」が存在
(2) サービス間の「範囲の経済性」が存在
自然独占性の検証:
(1)「費用関数」の計量経済モデルをデータを用いて推定、
(2)「規模・範囲の経済性」の有無を統計的に検証
(3)上記テスト結果を事業者毎・地域毎に比較分析
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費用関数:
総費用(=人件費+資本費用+物件費)と、諸生産要素価格(P)
と諸サービス量(Y)の関数関係を数学的に表現
諸生産要素:労働(L)・資本(K)・原材料(M)、
諸サービス活動:第1財(Y1)・第2財(Y2)
費用関数=C(PL, PK, PM, Y1, Y2)
費用関数:
「トランスログ型」を用いることが多い
利点:フレキシブルな関数形
欠点:多数のデータが必要(最低50程度)
限界費用情報は、いずれにせよ、SSNIPテストの際にも必要
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費用関数を利用した参入分析
規模の経済性
範囲の経済性
自然独占性
(費用劣加法性)
参入障壁
計量分析において確認すべきポイント:
・NBサービスにおいて、規模の経済性は存在するか
・BBサービスにおいて、規模の経済性は存在するか
・NBサービスとBBサービスの間には、範囲の経済性は存在するか
他にも併せて検討すべき制度的問題:
・設備の不可欠性・ボトルネック性
・管路・とう道・共同溝・電柱の利用状況
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諸変数の定義:
労働価格=人件費/期末従業員数
原材料価格=物件費/期末サービス加入者数
資本価格=資本財価格指数×(政府保証債利子率+減価償却率)
減価償却率=減価償却費/期首の電気通信事業固定資産
注1:1992年度から1997年度まで、NTTは地域事業部毎の「有価証券報告書」「事業
部財産目録及び損益計算書」「事業部役務別損益計算書」「電気通信役務通信量等
状況報告」等を公表。それに基づき、経済学者が様々な電話・専用回線に関する市
場構造分析を実施し、政策論に貢献。
しかし、1999年NTT再編成に先立ち、NTTは地域別の財務データの公表を廃止。さ
らに、2002年NTT地域会社の経営形態見直しによるアウトソーシング会社の設立で、
財務・会計データに基づく、信頼できる計量分析と政策分析は困難な状況に。
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費用関数を用いた参入分析:
十分に細かい地域単位のデータと分析が必要
・地域毎の参入障壁を画定するため
・十分な統計的優位性を確保するため
・単なる競争評価のみならず、設備開放の是非やユニバーサルサー
ビス政策にも幅広く応用可能
注2:データ収集に当っては、特定の事業者が不当に競争上不利にならないように、ま
た事業者の負担が過度なものにならないように、十分配慮。必要な場合には、データの
守秘義務に関しても、明確なルールを設定。
地域単位データの区分案:
・地域系NTTの場合:
ブロック(東17・西16)別に集計されたデータ
・それ以外の加入者系アクセス回線設備を持つ事業者:
当面は営業エリア単位
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例:NTT西日本の16ブロック体制
本社費用は除き、支社・営業系子会社・設備系子会社・共通系子会社別の費用データを集計
して、地域別に営業費用費目(人件費・物件費・減価償却費等)を導出
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ブロック毎に営業費用を集計:
営業活動の実態を反映した地域別の細かな参入分析が可能に
例えば分析の結果わかること:
・東京では、光アクセス・サービスは技術的に自然独占性を有し、依然として参入障
壁が高いと言えるかどうか。ならば北海道はどうか。さらに、両者の費用格差はど
の程度か。
・電話サービスと光アクセス・サービスを同時に提供する事業者と、光アクセス・
サービスだけを提供する事業者とでは、どちらが費用上アドバンテージを持つのか。
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IV. コンジョイント分析
従来マーケティング・リサーチで発展してきた手法:
評価対象について、それが持つ様々な属性に分割して評価
例:「高速インターネット・アクセス」というサービスを、通信の速度、通信速度の上下対
称性、IP電話等付加機能、コンテンツの充実度、企業ブランド、そして価格・・・といった
属性ごとに分解し、それぞれ評価
現状の市場に存在しない対象についても分析可能:
「表明選好法」:現実の市場データを利用するのでなく、アンケートのような仮想的データ
を利用
新製品を開発する時などにおいて、どういう商品コンセプトが需要されているのか、どの
属性に重点をおいて開発すれば販売量を増やせるのか
また公共プロジェクトの評価や環境の価値評価といった非市場財への適用も活発
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質問・解析の仕方によって、コンジョイント分析は3種類にタ
イプ分け可能:
(1)評点(rating)型
(2)順序(ranking)型
(3)選択(choice)型
近年では選択型が一般に普及
アンケート調査票の作成作業:
属性・水準を設定し、それらを組み合わせてプロファイルを作り、数
問の選択形式(あるいは評点・順位付け形式)の問題を設定するこ
と
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選択質問: イ メ ージ
( 1 ) 次の 5 つの商品で も っ と も 購入し たいも のはど れで すか?
最高速度
通信の対称性
IP電話
放送番組配信
事業者系列
月額
商品1
約10M
非対称
○
×
新規通信会社系
4,000円
商品2
約1M
非対称
○
○
新規通信会社系
5,000円
商品3
約30M
非対称
×
○
新規通信会社系
2,000円
商品4
約100M
対称
×
×
電力会社系
8,000円
商品5
約30M
対称
○
×
大手通信会社
8,000円
回答ら ん 商品番号:
( 2 ) ま た 、 現状の通信サー ビ ス から 、 い ま 選ん だ 商品に 乗り 換え た い と 思
いま すか?
{ はい いいえ }
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データ解析手法:
完全評定型では最小二乗法で各属性係数βを推定
ペアワイズ型、選択型などでは離散的変数を解析するためロジッ
トモデルなどの離散選択モデルを利用
ロジットモデルはランダム効用理論と整合的であり、厚生経済学
の議論にのせることができる点で優れる
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