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わかりやすい力学と
機械強度設計法
(独)海上技術安全研究所
平田 宏一
第3章 機械強度設計の実際
実際の機械設計は・・・
★複数の力が複雑に作用する。
★部品の形状が複雑である。
マニュアル通りの設計はできない!
3.1 力を受ける部材
(1) 静的荷重を受ける部材の構造
板材を組み合わせて台を作る
適切な構造を考えることが重要
(2) ねじの強度
(a) 軸方向への引張り荷重
ねじに作用する力を理解
しておくことが重要
●ねじを締め付けた
だけでも引っ張り荷
重が生じる。
(b) ねじ山のせん断荷重
●最も壊れやすい断面で
のせん断応力を計算する。
●ある程度以上のねじ山が,かみ合わされ
ていなければいけない!
(c) ねじへのせん断荷重
魚ロボットの機構
通常,ねじにせん断荷重を与えてはいけない!
(2) 実際のねじの強度設計
●引っ張り,ねじ山へのせん
断,ねじへのせん断などが複
雑に作用する。
●複数のねじの締め付けにば
らつきが生じる。
●ねじの位置によって荷重が
異なることがある。
機械全体を見ることが重要!
1本のねじに,荷重が集中するこ
とがある!
3.2 動力伝達機構の強度設計
歯車
軸継手
軸受
軸
(1) 歯車の強度設計
★歯車機構の設計において,歯の強度を計算することはほ
とんどない。
★通常は,歯車メーカーのカタログに記載されている許容ト
ルクや許容伝達動力の値を参照する。
★設計において最も重要なことは,どの程度の負荷(トルク)
が加わるのかを正しく推測することである。
★強度計算の概略
(a) 歯の曲げ強さ
ルイスの式
(b) 歯面強さ
ヘルツの最大接触応力=接触面に変形を伴
う場合の応力
(c) 焼付き強さ
ヘルツの最大接触応力や潤滑の状態などを
考慮した詳細な計算
(2) 軸の強度設計
(a) 伝動軸
(b) 機械軸
(c) 車軸
荷重の加わり方によって,3種類に分類される。
軸に要求されている機能は何か?
(a) ねじれ荷重
トルク
せん断力
Tq  Z p
極断面係数
★ねじれ荷重の計算結果
ねじれ荷重を受ける軸の強度(SUS304:τa=147N/mm2)
この計算結果をどのように感じるか?
(b) 曲げ荷重
曲げモーメント
曲げ応力
M

Z
断面係数
(c) 強度計算時の注意点
(i) 応力集中
段付軸などでは応力集中に気をつけ
る!
(ii) たわみ
たわみが問題になることがある!
(iii) ねじりの固有振動数
共振すると軸が破損するこ
とがある!
(iv) 衝撃荷重・不慮の荷重
一定の荷重が加わるとは限
らない!
(3) 軸受の強度設計
●軸受の構造を知り,カタログを読みと
れることが重要!
最大荷重
基本静定格荷重C0(N)
寿命計算
基本動定格荷重C(N)で100万回転
3.3 圧力容器の設計
●スターリングエンジンは高圧ガ
スが封入された外燃機関
スターリングエンジン
(1) 圧力容器の設計計算式
●圧力容器規格により定められた
計算式を利用するのが基本
PDi
t
2 a 1.2P
ts  Di
CP
a
(2) 圧力容器の耐圧試験
●複雑形状な部品
や特殊材料の部品
では,入念な試験が
必要になる。
セラミックス製部材の油圧試験
3.4 機械の破損
どの部材(部品)が壊れやすいかを判断することが重
要!
部品が壊れる原因は?
破損した軸受
破損したシャフト(回転軸)
(1) 応力集中
局部的に高い応力
→応力集中
(2) 繰り返し荷重
荷重の有無や強弱が
繰り返される場合
小さい荷重でも破損
することがある
材料の強度や性質につ
いての検討が必要
(3) クリープ
高温・長時間の荷重
永久ひずみの増大
(4) 座屈
細長い棒の圧縮荷重
横方向にたわむ
細い棒には,圧縮より引張
り荷重がよい!